曇天二ヒカルノハ、死ノヒカリカ、ソレトモ   作:インサイト

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要求

「おい!おい友利!」

 

  高城と別れて、友利に半ばひきづられるように村の中へと入っていった僕。友利の意図がわからず、思わず友利を引き止めた。

 

「なんです?」

「なんですじゃねえよ!なんで高城置いてきたんだよ!」

「彼が後で事情を話すといってきたからです」

「それを信じるのか?」

「逆に聞きますけど、信じないんですか?」

「いや....そうじゃないけど....でも、せっかく楽に遭遇できたのに!もしかして、これからあいつ僕たちから逃げるつもりかもしれないじゃないか!」

「遭遇て....谷城さんは、高城を珍獣か何かと思ってるんですか」

「でも、しかし」

「でももしかしもいりません!」

 

  一喝される。

 

「確かにわたしたちは一人でも多くの超能力者を救わなければいけません。しかし、はじめに言ったでしょう?この任務は、能力者たちに『納得』してもらわないといけないって!あなたは何でもかんでもいいから星ノ海に放り込めばいいと思ってるでしょう。でも、わたしがそうはさせません!」

 

  こうも激しく怒られると、逆に冷静になってくる。

 

「もう2度と、わたしたちのような犠牲者を出さないためにも、必要なんです!」

「.....分かったよ。オーケイ。お前の言う通りにするよ」

「わかればいいんです。わかれば」

 

 

 

 

「しかし実際問題、どうする?まず、なんであいつがこの村に残っているのか、それを探らないと」

「まあそれは見当がついてます。というか、もうある程度の筋道はたててあるんです」

「マジで?どんなの?」

「いいえ、言いません。敵を騙すにはまず味方からっすよ」

「えええ....俺も騙すなよ」

「それよりも、谷城さんも何か考えてください」

「なんでだよ。お前が考えてあるんなら別にいいじゃん」

「そういう訳にはいきません。こういう緻密な計画の場合、計画通りに進む方がむしろないんです。だからこそ、プランB、プランCをも練らなきゃいけないんです」

「分かったよ。じゃあ、考えてみるよ」

 

そして、言われた通りに考えてみる。

まず最初に、僕たちの目的から整理しよう。

目的、能力者、高城丈士郎をここから連れ出し、星ノ海学園に入学させること。

制限時間、まだ2月なので、一応2カ月あるが、出来る限り早い方がいい。具体的には、希望的観測だが、今日決着がつけば、それは大いに結構。

次に障害。

おそらくこの村を買収し、レジャー施設か、ダムでも作るだろう、あのうざったらしいクソ野郎、矢吹。

現在高城は、この村の全権大使として、あの矢吹と交渉しているのだろう。

ここまで来たところで、僕にある提案が浮かんだ。

 

「なあ、友利ーーー」

 

瞬間、

これは僕の年齢から見れば、あまりにみっともなく、恥ずかしいので、大切な人である友利の前で演じたくなかった失態だった。これはもう立ち直れないほどではないが、なかなかに恥ずかしい。いい歳こいて、

雪に足を取られて滑るなんて。

友利が驚きの表情で見ていた。

「いってえ!」

頭を打った。ここに来てから僕は転んでばかりな気がする。

 

「うわあ⁉︎」

 

しかしまだ災難は続く。

地面がまるでアイスステージよように凍っており、転んだ余波でさらに体が滑る滑る。

何かにぶつかった。硬い壁のようなものだ。

後ろを振り返ると、それは巨大な木造建築。いや、巨大な、というのは真下から見上げていたからそう見えただけで、実際は僕が二人縦に入るくらいの大きさだ。

 

「いっててて....なんだここは?」

「何かの倉庫でしょうか?」

 

立ち上がって全体を見やる。と、僕とぶつかった衝撃なのか、入り口の扉が開いてしまっていた。

 

「開いてるけど...どうする?」

「もちろん覗きます」

「もちろんなんだ...」

 

もちろんらしい。

中を覗くと、そこには狩りに使うのか、猟銃、そして、火薬、さらには包帯や薬草などがある。

 

「そうですね...。火薬、粉のやつ、そして、球のやつ。幾つか持っていきましょうか」

「はあ?それって、盗むってこと?」

「そうなりますね」

「なんでだよ⁉︎おかしいだろ!そんなことしなくちゃいけない理由がわかんねえよ!」

「理由があればいいんですか?」

「いや、そういう訳じゃ」

「これがいずれ役に立つからです。わたしは確信してます」

「確信って...また隼翼さんみたいなこと言って...。分かったよやればいいんだろやれば!」

 

そう言って、袋に詰められた粉状の火薬と、塊になっている火薬を適当に見繕って、ポケットに入れた。

 

「まあ、これがばれても、別にわたしは関係ないし...」

「おい、今なんかなめたことぬかしやがったよなお前」

「何も言ってないっすよ?」

「ばっちり聞こえたぞ!関係ないとかそんなの!お前だって教唆の罪だからな!」

「違いますよ、谷城さん。わたしが無理やり脅されて...ってことにすれば万事OKです」

「なんか涙出てきたよ」

 

倉庫から出ると、すぐそこに高城が座っていた。

交渉に失敗したのだろうか、哀愁漂う雰囲気だ。

 

「おや、あなたたちは、そこで何をしていらっしゃるのですか?」

「いや、えーと、ま、まあ、うん。ちょっと探索をばと思って...」

 

まさかこの村の住人に、倉庫の中身をパクりました、なんて言える筈もなく。

 

「谷城さんが火薬盗んでましたー」

筈もなく...。

 

「おいいいい!お前ぇ!」

「.....は?」

「ほら、高城さんがバカみたいになってるじゃないっすか!」

「いやいやいや、まずばらすなよ⁉︎」

「うっわー谷城さんさいってー人様のもの勝手に盗むって、まさに外道ですねー」

「てめええええ!」

「ちょっとあなた!何してるんですか⁉︎ただでさえこの村の資源は少なくなる一方なのに、勝手に持ち出されては困ります!返してください!」

「いや、これは、あの、友利のやつが、きっと役に立つって」

「えー、そんなこと言いましたっけー?」

「てめええええ!」

 

茶番だった。

 

「で、どうだったんだ?」

「...やはり、ダメでした。なんとか有耶無耶にしましたが、一向に話がまとまりません」

「分かりました。では、こちらとも交渉しましょう」

「...はい?」

「わたしたちは、あなたを星ノ海学園に入学させなければいけない。しかし、あなたはこの村にいなければならない。具体的にはいつまでですか?」

「....そうですね。せめて、あの買収が無しになるまでは」

「はい。分かりました。では、わたしたちが解決しましょう」

「.....はい?」

「全部わたしたちに任してください。この村の窮地を救ってみせます。その代わり、わたしたちの要求を呑んでください」

「....しかし」

「早く決めた方がいいぞ?お前も時間がないんだろう?」

 

完全にてきとうに言ったが、しかし当たりだったようで、

 

「....そうですね。分かりました」

 

どうやら腹をくくったらしい。

「お願いします!どうか、この村を、救ってください!」

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