みんな、ありがとう!!!
「で、具体的には、どんな方法をとるのですか?」
「だから教えませんよ。敵を騙すにはまず味方からなので」
「そうですか...」
「そんなことより、高城さん」
「はい、分かってます。この村の現状を、説明するんでしたね。協力してもらう以上、知ってもらわねばなりませんから」
この村の現状...。まぁ、あの矢吹の態度からして、だいたい想像はつくが。
「この村は、現在、矢吹グループによって、買収されようとしています。目的は、超大型レジャー施設の建設。矢吹グループとは、ここ北海道を拠点とした、いわゆる財閥のようなものです」
「買収...やっぱりか...」
友利がつぶやく。
「目的は?」
「この村は、地理的に観光客の足が向きやすいそうなのです。この北海道は広い。例えば札幌のような都市部などではないと、駅や空港からは行きにくいです。しかし、ここ松方村は、駅や空港にそれなりに近く、さらに平地や更地が多いために建築地にはもってこいの場所、だそうです」
「いや待て、そもそも僕たちはこの村に来る際、タクシーで30分くらいかかったんだけど。それは近いとは言えないんじゃないか?」
「それはあなたたちが正しいルートを通って来てないからです。正しい道を使えば、長くて15分、短くて10分で着くことができます」
らしい。そうか、だからタクシーに乗るとき運転手に変な顔されたのか。違う道通ればいいのに、わざわざこんな遠回りして、何考えてるんだ?みたいな。
「ここは一応、書類上はこの村の所有になってはいるが、実際はまったく使われていない土地が多い、とされています。しかし、そこは牛や豚の放し飼い、つまり放牧地になっているだけなのです。ただ、そのことを何度言っても、たかが家畜風情にその広さはないだろう、とまったく取り合ってもらえない、どころか連中はこのままゴリ押しして交渉を終わらせ用としている....。我々をただの牧畜や畑仕事しかできない、頭の悪い奴らだと思ってるのです!」
ダン!と、高城は地面を殴りつける。ギリ、と歯ぎしりの音がして、拳には血が滲む。
「私は、この村を守りたい!家族を無くし、帰る場所がなくなった私を、この村の人々は、受け入れてくださった...!事情も何も聞かないで、ただ、大丈夫だよ、と慰めてくれた...!それで私がどれだけ救われたか...!」
「高城...」
「...」
「今度は、私がこの村を、この村の人々を救う番なのに、恩を返すべきなのに!私は、私は...!」
高城は目に涙を溜め、空に向かって吼える。
「私は.....情けない!自分一人の力で、自分を救ってくれた人に対して、恩返しもできない自分が情けない!あなたたちを頼らなければ、何もできやしない、自分が情けない.....」
高城は、四つん這いになって、地面に涙を落とす。
うずくまり、嗚咽が漏れる。
涙が水溜りになってきた。
ああ。
何故僕は。
こうもボロボロの人間を見ると。
自分を見てるみたいで。
思い出す。
自分がボロボロで、情けなくて、悲しくて、虚しくて、空っぽで、切なくて、死にたくて、狂ってて、認めたくなくて、全てが嘘で、それを望んで、でも現実で、傷つけられて、傷つけて、傷つけられて、消えて無くなりそうだった。
そんな感じが、自分の中に残ってて、底の方に残ってて。
僕も、記憶を失うまでは。僕が本当の僕だった時は。
こんな仮初めじゃなくって。
本当の僕も。
こんな姿だったのだろうか
友利は。
こんな空っぽで、虚ろで、ボロボロの僕を。
救ってくれたのだろうか。
ああ。
何故だろう。
放っておけないんだ。
まるで、
僕みたいだ。
手を伸ばす。
気づけば、いつの間にか。
高城に、触れた。
「大丈夫だ」
「.....え?」
「大丈夫。大丈夫。大丈夫だ。必ず僕たちが、お前を助けてやろう。救ってやろう。大丈夫だ。こうなった僕たちは、地上最強、無敵無双だ。だから、安心しろ」
「.....谷城、さん」
「さぁてと....。そろそろ本気出すか、友利」
「わたしはもともとガチ、ですからね」
「友利さん...」
「高城さん。わたしは、わたしたちは、あなたを助けるために、本州から飛んできたんです。あなたを助けるためなら、それこそどんなことだろうが、協力しますよ」
「二人共....」
そう言って、高城は袖で涙を拭いた。
そして、赤くなった目で、
「はい!必ず、この村を救いましょう!」
高らかに、宣言した。
その後、僕たち3人は、高城の家へとお邪魔した。どうやら高城、一人暮らしらしい。高城曰く、
「まあ、いつまでもおばさまたちにご迷惑をおかけするわけには参りませんから」
と、いうことらしい。
外側は完全に江戸時代のようなスタイルだったので、てっきり、火鉢に木の床、そこに座布団が敷いてあって、あぐらをかく、なんて江戸時代スタイルかと思ったが、あくまで外見だけであって、中身は普通のインテリアだった。
リビングには、灯油ストーブに、こたつが完備。外には干物を干すのだろう、網がかけられている。 当然、こたつの上にはみかんがどっさり、もっこりとのっけてある。
現在、高城がお茶を淹れに行っている。
なんというか、こう、言いにくいが、ジジくさい部屋だった。
妙に部屋だけが妙齢だった。
「おおおおお.....おこたあったけー」
「おいおい...あんまりはしゃぐなよー、いや、はしゃいでないな...むしろ、くつろいでいる...おい、人ん家であんまりくつろぐなよ」
「ええー、じゃあじゃあ、谷城さんも入ってくださいよー、おこた。きもちいーですよー。てんごくにでもいっちゃいそーなきぶんれすー」
だんだん呂律が回らなくなっている。
そこまで気持ちよさそうだと、その....入りたくなってくる。
いやしかし!落ち着け考えろ冷静になれ僕!今さっきくつろぐなと言ったばかりじゃないか!自分の言葉には責任持たなきゃいけな
「あ、おこたでたべるみかんさいこー」
即、手のひら返し!
「そ、そうかー、みかんが美味しいんだったら、こりゃあもう入るしかないよなーおこた。あー、あったまるー」
「あったまるー」
「お茶がはいりました、ってなんか二人が一瞬でこたつの魔力に取り憑かれだらだらゴロゴロととろけるように人の家でまるで自分の所有物のようにだらだらしているー!」
まるで茶番である。
「では、作戦会議を始めましょうか」
「そういえば谷城さんなにか思いついたって言ってませんでしたっけ?」
「え?言ったっけ?覚えてないなぁ...確かに思いついたけど」
「そうなんですか⁉︎では、早速お話してくださいますか!」
「まあ、いいけど。別に僕は友利みたいに隠したりしないし」
「じゃ、言ってみてください」
「う、うん。じゃあ...
まず、作戦内容はこうだ。まずは、僕の《爆発》の能力や友利の《不可視》の能力で奴らを一斉に撃破。そして、あの矢吹を脅して、もうこの村にはこないように、法に則って契約書か何かを書かせる。これはどうだ?」
「うーん...まあ、作戦自体は悪くないですけど、穴だらけというか希望的観測というか....。
まず一つ目の問題点。高城さんの《瞬間移動》はともかく、谷城さんと《爆発》や、わたしの《不可視》はとんでもなく使い勝手が悪い。わたしは自分が指定した人物以外には普通に見えますし、谷城さんに至っては目くらまし程度の威力しかありません。だから脅しには使えないです。
そして二つ目。これはもうなんと言っていいか...そんな契約書なんてわたしたちがいなくなった途端に破り捨てるに決まってるでしょ?」
「え?でも、法に則って書くから、いいんじゃ...」
「矢吹グループは、とても大きな財閥です。小さな法や契約の一つや二つ、簡単に握りつぶすことができます」
「そっかー、いい案だと思ったんだけどなー」
「いやでも、案が出てくるのはいいことだと思います。なので、これから時間をかけてたっぷりと」
「ああああああああ!!!!!」
「うわあ⁉︎」
「ど、どうした?」
「すっかり忘れていたぁぁぁぁ!」
「何を?」
「次回の交渉、それが今から....30分!あとたったの30分で、しかもこれが、最後の交渉、これで成立しなかったら、この村は買収.....」
「はいぃぃぃ⁉︎」
「まじですか⁉︎なんでもっと早く言わなかったんですか⁉︎」
「い、いや。その、泣き崩れて余裕がなくて....」
「えー......まじですか....あー、もう!とりあえず。早く行かないと!ここから交渉場所まで、走って10分かかるから...しょうがない。二人共、なんとかわたしにアドリブで合わせてください!」
「何に?」
「これからのこと全部に話を合わせてください、ということです!」
「何言ってんのかわかんないけど、わかった!がんばる!」
「うん、がんばれ!」
「私も、頑張ります!」
そうして慌ただしく、家から飛び出した。
しっかり大地を踏みしめ、走っていく。
決意を胸に、新たに。
さあ、行こう。
行き先は、交渉会場。目的はこの村の救済。
次回、高城編、終幕。