一夏と箒に怒りを覚える読者がいる一方で、二人が恐怖することに共感する読者などいて、作者は非常に驚いています。
狼男の姿を持つオリ主が周りと和解するのには多くの困難があると思われますが、これからも応援よろしくお願いします。
後、評価が意外と低くて驚きました。まあ、作者自身の力量不足が原因ですけどね。
僕が意識を取り戻した時、目の前に広がっていたのはクリーム色の天井だった。
「・・・ふぅ」
頭を少し揺らし、意識をはっきりさせた所で周りを確認する必要はなかった。どうやら寮の部屋だ。
「大丈夫?」
ふと声がしたので振り向くと・・・
「!?!?」
何故か裸エプロン姿の刀奈がいた。
「どうしたの!?まさか怪我でも?」
「いや!そうじゃなくて・・・その・・・」
「じっとしてて!」
刀奈がベットに乗り上がり、近づいて来る!
「どこか痛いの?」
「い、いえ!」
僕は顔を赤くしながら否定してるけど、刀奈はからかってるのか心配しているのか近づいて来る。
「あわわわわわわわ」
気付けば、唇が触れそうな所まで顔が近づいていた。
「熱でもあるの?」
「い、いえ・・・その・・・」
「もしかして・・・この姿?」
刀奈のにやけ顔を見て僕は確信した。からかってるんじゃない。僕の反応を見て楽しんでるんだ・・・良い意味で。
「良かった。和也君が他の女の子に目移りしなくて」
刀奈は安心したのかベットから降りて、僕に裸エプロンの姿を見せつける。
「だからって・・・そんな姿に・・・な、ならなくていいじゃないですか」
「こういうの好きなんでしょ?」
このままだと僕の理性が削られてしまう。
「好きではありません!早く制服に着替えてください!」
「もう!少しぐらい楽しんだって罰は当たらないよ」
「頼みますから、早く着替えてください」
「着替え・・・覗かない?」
「覗きません!」
刀奈はふてくされた顔をしながらシャワールームに入って行った。
「はぁ・・・」
僕は落ち着いて今までの状況を整理した。
「確か一夏に胸ぐらを掴まれて意識を失って、誰かが僕をこの部屋まで運んで行った。だとすると・・・」
僕はすぐさま手の匂いを嗅いだ。
「・・・やっぱり。また・・・誰かを・・・」
僕の手からは・・・
血の匂いをかき消す様に石鹸の匂いがする。
・・・・・・
千冬姉が負けたと知った時、俺は途方もない怒りを感じた。
理由は分からない。唯々、やり場のない怒りを和也にぶつけていた。
一時限目が始まる前に俺は千冬姉に屋上で連れて行かれ、話をされた。
「一夏。お前はブリュンヒルデの弟だからISを動かせたと言われて嬉しいか?」
「嬉しくないが」
「では、高原がISを動かせた理由は何だ?」
「それって、狼男だからじゃないのか?」
「何故、高原を人として見ない?同じ男性操縦者のはずだ」
「俺は狼男じゃ・・・」
俺が言い切る前に千冬姉のビンタが炸裂した。
「いたた・・・」
「もう一度言う。何故、高原を人として見ない。たとえ、狼男であろうとあいつは人として生きている」
「その前に、どうして和也は狼男になったんだ?過去の事故でなったって言うけど、俺やクラスの皆はさっぱり分からないよ」
「それについて詳しく知る人物が明日の朝、学園にやって来る」
「誰なんだ?」
「高原専属の医者だ。自称だがな。一組全員に高原の狼男について話す予定だから、その時にじっくり聞け」
その後、高原を人として見なかったら一発殴ると言って千冬姉は職員室に去った。だけど・・・
「俺は・・・和也を怪物呼ばわりした」
俺は和也の胸ぐらを掴み怪物呼ばわりした。あいつだって怪物と呼ばれて嬉しくなんかない。俺はそんな事を気にせずあいつの意識がなくなるまで胸ぐらを掴み続けてた。
「この・・・愚弟がぁぁぁ!」
「うぐっ!」
もし千冬姉が殴りに来なかったら、俺はそのまま和也を絞め殺してたに違いない。
「何故お前まで高原を敵視する!」
「千冬姉がこいつに負けるわけないだろ!」
「この馬鹿者が!」
千冬姉は怒りの鉄拳を俺の顔に殴りつけた。
「朝に言ったことを忘れたのか!高原は人として生きようとしている。それさえも忘れたと言うのか!」
「俺は・・・」
何故か俺は千冬姉に言い訳をしようとした。その時だった。
「ち、千冬姉・・・」
「織斑先生だ!」
「いや・・・う、後ろ・・・」
千冬姉の背後に大きな黒い影が映っていた。
「っ!?」
千冬姉は気配を即座に察し距離を取った。黒い影の正体・・・
「高原・・・!」
狼男姿の和也だったが、和也ではなかった。
「ガルルル・・・」
歯をむき出しにし、肩で息をし、千冬姉を鋭く睨んでいた。
そこにいたのは狼男だった。
「人としての意識を失ったのか・・・」
千冬姉は苦い表情をしながら近くにあった竹刀を取り、構えをとった。
「少し痛いが我慢しろ。すぐに終わらせる!」
千冬姉は狼男と高速ですれ違い様に竹刀を振り下ろした。
「きゃあん!」
情けない鳴き声をあげて、狼男は倒れこんだ。
「すげぇ・・・」
たった一撃で狼男を倒した。
千冬姉が狼男に負けたなんて嘘だと思った。だって、千冬姉を負かした狼男が床に寝そべ・・・
「ぐうっ!」
千冬姉が悲鳴をあげ、膝を着いた。俺は一体何があったのか分からないまま、千冬姉の所に駆けつけた。
「千冬姉・・・はっ!」
千冬姉の左腕から血が流れていた。刃物で切り付けられたような跡じゃない。太く鋭い爪で深く引き裂かれていた。骨までには到達はしていないが、片手では隠し切れない程、肉が生々しく露出していた。
「一夏・・・頭を冷やして考えろ・・・私は保健室にうぐっ!・・・保健室に行く。お前は篠ノ之と一緒に・・・高原を部屋まで運べ。ルームメイトには・・・先生が事情話すと言え」
千冬姉は痛みを堪えながら道場を後にした。
その後、箒と一緒に和也の爪を洗い二人で部屋まで運んで行った。裸エプロンのルームメイトに戸惑いつつも千冬姉に言われた通りに言って、俺は部屋に戻った。
「どうすればいいんだ・・・」
俺は今日の行いに後悔している。千冬姉は俺がブリュンヒルデの弟のように特別な目で見るなと言いたかったんだ。なのに俺はそれに気付けなかった。
「確実に和也を孤独に陥れたじゃないか・・・」
これは完全に俺が悪い。どうすればいいんだ・・・謝って許してくれるものじゃない。
「帰ってたの・・・」
そうこう考えてる内に簪が帰って来た。
「どうしたの?」
「いや・・・クラスメイトを酷く傷つけてね・・・謝っても許してくれない事をしたんだ」
「分かるの?」
「え?」
「謝っても許してくれないって・・・分かるの?」
彼女のセリフに思わず言葉を失った。
「そのクラスメイトに・・・謝っていないのに許されるかどうかなんて・・・分からない」
「じゃあ、どうすれば・・・」
「まずは謝る。それで許されなかったら・・・それまでの事をしてしまったと後悔する。許されたら・・・自分の浅はかさに後悔する」
後悔するしかないのか。というより、何か怒ってないか?
「簪、怒ってないか?」
「怒ってる」
「何で?」
「謝らずに・・・悩んでるから」
明日、和也に昨日の事について謝ろう。それで、あいつから嫌われても仕方がない。そんな最低なことをしたんだ。全てを守るとか言って、あいつ一人を傷つけたんだから。
俺は明日学園に来る人物の事をすっかり忘れたまま、今日の授業の復習に取り組んだ。
次回、自称「高原和也専属の医者」が登場します。