インフィニット・オオカミ   作:陸のトリントン

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書くべき事を書いたら4000字位になっていた件について。


狼男誕生秘話

内田雅文

 

医学界でその名を知らない人はいない。

 

ありとあらゆる分野に長けており、彼の手により救われた難病の患者は数知れず。

 

彼の提唱した理論は、ノーベル生理学・医学賞を受賞する程、医学への探求心は物凄いものであった。

 

また、彼の教え子達は医療現場で大きな成果を遂げ、周りの医者達からは神と崇められる存在であった。

 

大学時代の俺は、その人の研究室で熱心に医学の勉強をしていた。

 

温厚で、生徒たちの質問を真摯に答え、人望の厚い、まさに医者の鏡と言える人だった。

 

俺はこの人の元で医学を学び、多くの人を救おうと考えていた。

 

俺だけではない。この人の研究室にいる生徒全員が思っていたことだ。

 

 

 

そんな俺が研究室に入って半年が過ぎた頃だった。

 

その時の研究室には俺以外の人物はいなかった。

 

ある者は就職活動だったり、私用で欠席だったり、風邪で欠席と、運が良かったのか俺以外は全員欠席だった。

 

先生は出張で席を空けていて、俺は授業で使う医療キットの整理をし終え、研究室で勉強をしようと思っていた。

 

だけど、研究室には誰もいない。先生の机を拝見しても罰は当たらないと思い、俺は興味本位で先生の机の上にある資料を読み漁っていた。

 

内容は医者の卵にもなっていない俺が理解するには難解な内容のモノばかりだった。

 

それでも医療現場の最前線がどんなものなのか、神と崇められる者の考えが何なのか、好奇心に駆られた俺は資料を読み漁っていた。その中に奇妙な研究報告書があった。

 

「動物細胞の移植による人体への影響と課題」

 

その時の俺は内容が理解できず、軽く目を通しただけで読むのを止めてしまった。

 

それが後の悲劇の幕開けとは知らずに・・・

 

 

 

その後、俺は留年せずに卒業し、大手の病院で働いていた。

 

上司に叱咤激励されながら、医者の卵として日々を過ごしていた。

 

それから1年が経ったある日の事、事件が起こった。

 

病院内で騒ぎが起こった。

 

受診を禁止されていた患者が暴れだしたという、おかしな内容だった。病院というのはどんな患者でも受診は出来ると思い、現場へ向かって行った。

 

そこにいたのは・・・

 

 

 

母親と小さな狼男の二人だった。

 

 

 

病院側は狼男の受診を受け付けていないと言い張り二人を追い返そうとしていたが、狼男がそれに反発をしていた。

 

俺は病院側の言い分が正しいとは思わなかった。なぜなら、あの狼男の少年は泣き叫んでいるように見えたからだ。

 

事態の収拾を治めようと、俺は彼の面倒を見ると立候補して事なきを得た。

 

その後、狼男の少年を小さな診療室に連れて行き、事情を聴こうとした時だった。

 

「お願いが・・・あります」

 

狼男の少年は人間の姿になり、俺に頼みをした。今起こってる事に混乱しつつも、少年の頼みを聞こうとした。俺は医者のはしくれだから、できる限りの最善を尽くそうと考えていたが・・・

 

 

 

「僕を・・・殺してください」

 

 

 

少年の頼みは自殺願望に近いものだった。俺はその頼みを聞き入れられないと否定した。

 

「僕のせいで・・・お母さんとお父さんは・・・辛い目にあっているんです。僕がいなくなれば、お母さんとお父さんは辛い目にあいません。お医者さんなら、僕を・・・」

 

俺は少年の言葉を遮り怒鳴った。半人前の俺でも分かる。命は投げ捨てるものではない。生きるために使うものだと俺は少年を説得した。少年は泣きながらも自分の存在を否定し続けていた。

 

「だって・・・僕のせいで・・・お母さんとお父さんは・・・バカにされて・・・家は汚されて・・・うぅ・・・」

 

少年の言い分を聞いていたが、何故少年が狼男になったのかを俺は知らなかった。原因を辿れば救済はあると思い、少年に自分を狼男にさせた病院と院長を聞いて、俺は驚いた。

 

 

 

少年を狼男にさせたのは、内田雅文が院長の病院だった。

 

 

 

何故、先生の病院でその様な事が起こったのか、俺は先生と病院のありとあらゆる事について調べ始めた。

 

その病院では数年前から謎の失踪事件が起こっていた。

 

失踪した人は出身、病状、身体的特徴、共通項が一個も見当たらなかった。

 

何度か警察の立ち入り捜査は行われたが、有力な証拠がなく全て不起訴処分で終わっている。

 

さすがに不審に思った俺は意を決し、その日の深夜に潜入することにした。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

病院受付所

 

「ふぅ・・・病院の見取り図を丸暗記して正解だったな」

 

俺は病院裏口の排気口から病院の受付所に潜入した。その時の俺はまるでスパイ映画の主役みたいに心の中ではしゃいでいた。

 

「さて、見取り図にしか載っていない秘密の地下室はと・・・」

 

俺はこの病院を調べてる時に、ある噂を知った。

 

 

 

この病院には誰も知らない、秘密の地下室があるという。

 

 

 

その地下室に狼男の秘密があると思った俺は先生の診療所に入り、しらみつぶしに探し始めた。

 

「見取り図だと、ここだと思うが・・・これか?」

 

俺はベットの下にある取っ手を引いた時、何かが動く音がした。俺は音がした方を見ると、床から階段が現れた。

 

「ビンゴ!」

 

俺は好奇心に駆られるまま階段を降り、地下室に入って行った。

 

 

 

「何だよこれ・・・」

 

俺の目に映っているのは、培養液に浸かれてる人体や内臓だった。

 

その全てが本には載っていない奇異な形をしていた。

 

机の上には資料が綺麗に整理されいた。

 

「これは一体・・・」

 

俺は培養されているものに目が奪われ・・・

 

「葉山君ではないか」

 

「先生・・・!」

 

背後に先生がいる事すら気付けなかった。

 

「君がここを嗅ぎつけるとは・・・恐れ入ったよ」

 

「先生・・・これは・・・」

 

俺は冷や汗を流しているのに対し、先生は顔色一つ変えず俺の質問に答えた。

 

「これは私の夢なんだ」

 

「夢?」

 

「私はね、人狼が大好きなんだ。気高く、雄々しく、強く、人の全てを超越した存在・・・それが人狼。私は、大人になったら人狼を誕生させようと思い、勉学に勤しんでいた。そして、遂に私の夢は実現した!私の作った薬で人狼が誕生したんだ!長かった・・・私の努力が報われたんだ」

 

先生はまるで子供の様にはしゃいでいたが。吐き気を催す程、温厚な先生の姿は無かった。

 

「先生・・・聞いていいですか?」

 

「何だね?」

 

「その夢の為にどれ程の苦労をなさったのですか?」

 

「人狼を誕生させるために人体実験を行ったが、成功するまでに12人が死んだ」

 

「人体実験!?」

 

「ああ。だが、13人目でやっと成功したんだ」

 

先生は顔色変えず・・・いや、自分が行ってきた事に一切の罪悪感を感じず、俺の質問に答えていた。

 

「先生・・・人狼になった人の名前は?」

 

「確か、高原和也君だったかな。和也君のお陰で、私は改めて人体の神秘を見せつけられたよ」

 

「人体の神秘?」

 

いつの間にか、俺は自分の手を強く握っていた。これは恐怖で握っているのではなく、怒りだ。人として、医者としてやってはいけない人体実験を行い、それに悪びれる様子の無い先生の姿に怒りを覚えていた。

 

「ああ。理論上だと、子供に薬を投与したら体が耐え切れずに死んでしまうはずなのだが、彼の体は耐えきる所かそれを自分の細胞だと勘違いし、それを受け入れたのだ。体の隅々まで薬は行き渡り、彼は本当の人狼になったんだ。しかも体が受け入れた恩恵なのか、強靭な生命力まで手に入れたんだ。お陰でISと言う訳の分からない兵器の攻撃を喰らっても、普通に死ぬことはなくなった」

 

先生は若干興奮気味になりながら、人狼について熱く語っていた。そのために犠牲になった人などいなかったのように。

 

「元に戻る方法は・・・あるんですか?」

 

「それはない。人を超えた存在が、人に戻るなどナンセンスだ」

 

「先生・・・和也君は・・・自分が人狼である事に悲しんでいます。だから・・・」

 

「葉山君。彼は自分が人を超えた存在であることに気付いてないだけだ。君は彼に人を超えた存在だと・・・」

 

 

 

「動くな!警察だ!」

 

 

 

俺は怒りに身を任せ先生を殴ろうとした時、警察が乱入してきた。

 

病院内でも先生を不審に思っていた職員はいたらしく、化けの皮を剥がそうと失踪事件の証拠を探していたらしく、先生が地下室に入って行く所を事件の証拠としてでっち上げようとしたが、本当に事件の証拠になるとは思ってもいなかったみたいだ。

 

こうして先生は逮捕され、謎の連続失踪事件と人体実験による人狼計画は終わりを告げた。

 

だけど・・・和也を人に戻すことができない事実に、俺は悔しがることしかできなかった。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

一年一組 教室

 

「以上が、和也を狼男にさせた人物と俺の関係だ。何か質問はあるか?」

 

俺は何も言えなかった。和也を狼男にさせた犯人は、自分のやってる事に罪悪感を持ってるどころか好奇心旺盛に取り組んでいたことに引いていた。何人かの生徒は想像してしまったのか、体を震えさせていた。

 

「言い忘れてたことがあった。その先生は死刑の実刑判決が下されて、6年半前に執行された。だから、お前達が誘拐される心配はないからな」

 

物凄く軽い口調で言ってるが、内容が重い。

 

「質問がないなら・・・」

 

「せ、先生!」

 

葉山さんが話を切り上げようとした時、箒が席を立ちあがった。

 

「何だ?」

 

「あの時の事件から何か分かった事はあるんですか?」

 

「それがね・・・ないんだ。資料はページの欠落が多く、全て知っているのは先生だけなんだが、先生がいない今ではもう迷宮入りの状態だ。それでも、俺はあいつが人に戻る方法を探し続ける。それが、先生の教え子である者の償いだと信じて」

 

「分かりました」

 

箒は何かを決意し、席に座った。あいつも話を聞いて何か思い当たるものでも見つけたのかな。

 

「で、そこの英国淑女は何か質問はないか?」

 

「・・・ございません」

 

セシリアの怒りは既に収まっているが、どこか納得いってないと言うか、何か引っ掛かる表情をしていた。

 

「和也は今、生徒会長に事情徴収を受けているから午前中は授業に参加できない。だから、和也が午前中の授業について聞いてきたら、素直に答えるんだぞ」

 

「は~い」

 

葉山さんの頼みにのほほんさんと言う人だけが答えた。そういえば、のほほんさんはどうして和也にフレンドリーに接してるんだ?

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

和也と刀奈の部屋

 

「あの・・・刀奈」

 

「なーに?」

 

「そろそろ離れてください!」

 

「やだよ!和也君の意思じゃないとはいえ、織斑先生を傷つけた罰だよ」

 

「だからって・・・」

 

 

 

「狼男の姿になってる僕を、ベットの上で抱きつかなくてもいいじゃないですか!」

 

 

 

「いいじゃない。私は和也君のフカフカを味わって、和也君はYシャツ越しで私の体を味わってるじゃない」

 

「年頃の男女がするべきことじゃないですよ!?」

 

「いいの。こういうのは恋人同士がしていいことなの」

 

「いやいやいや!僕は嬉しくないです!」

 

「私の体って、そんなに魅力が無いのかしら・・・」

 

「いや・・・そうじゃなくて・・・」

 

「だったら、私の魅力を和也君にたっぷり教えないとね!」

 

「いやぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

高原和也

 

生徒会長による拷問(?)を受けている最中である。




最後のオリ主と刀奈のやり取りは、コーヒーブレイクみたいなものです。

次回はオリ主の専用武装が登場する予定です。
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