インフィニット・オオカミ   作:陸のトリントン

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オリ主の母視点の話を書くはずだったが、いつの間にかオリ主の母と一夏の対話になってしまった。そんなお話です。


狼男のおふくろ

「あのぉ、私の顔に何か付いていますか?」

 

「いえ、付いてはいませんが・・・」

 

俺、織斑一夏は和也のお母さんに呼ばれて食堂で一緒に夕食を食べているんですが・・・

 

「そういえば・・・何を話そうとしていたのかしら?」

 

肝心の話を忘れてしまっている状態である。

 

「・・・・・・」

 

俺は午後の授業が終わった後、千冬姉に呼び出され生徒指導室で反省文を書いていて、謝る事が出来ずに放課後を迎えた。

 

「すぐに謝っても、和也は素直に受け止めない。少し時間をおいてから謝りに行け」

 

と、千冬姉は言ってたがそれは逆効果なんじゃないかな。すぐに謝った方が互いの溝を深くしなくて済むと思うんだが。

 

「思い出したぁ!」

 

考えている内に和也のお母さんは話したい事柄を思い出したようである。

 

「何ですか?俺に話したい事というものは?」

 

「それはですねぇ・・・」

 

 

 

「カズ君を怪物って呼んだの?」

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、俺の額から汗が滝の如く流れ始めた。

 

「周りの人達の話を聞いたんですけど、織斑君がカズ君を怪物呼ばわりしてカズ君を怒らせたって言ってたけど・・・それって本当の話なの?」

 

生きて帰れる気がしない。だけど、和也を怪物呼ばわりしたのは事実だけど怒らせてはいない。俺が怒って和也を絞めたんだ。

 

「はい・・・」

 

俺は覚悟を決め、和也の母さんの質問に答えた。

 

「そうなんですかぁ。ごめんね、こんな事の為に呼び止めちゃって。お詫びに夕食でも奢りますか?」

 

「い、いえ、結構です」

 

物凄くマイペースで、どう話をすればいいのか分からない。和也を怪物呼ばわりしたのに、顔色一つ変えずに笑顔で喋る姿に戸惑う。

 

「そういえば、織斑君はIS学園で何かしたい事とかあるの?」

 

突然、話題が切り替わり俺の話になった。

 

「何かしたい事はないですけど、目標みたいなものはあります」

 

「あら、何かしら?」

 

「俺に関わる全てを守ることです」

 

「全てを・・・守る?」

 

すると、突然考えこんだ。俺は何か変なことを言ってしまったのか?

 

「う〜ん?織斑君は昔、何か嫌な事とかあったの?」

 

「え?」

 

「全てを守りたいと言う程だから、何か・・・心に傷を負うような事があったのかなぁって」

 

鋭い所を突いてくるけど実際はそうだ。第二回モンド・グロッソ決勝戦の時、俺は誘拐された。千冬姉が助けに来てくれたけど、俺は自分の無力さを呪った。いつも何もできずに千冬姉に守られてばっかり。俺は誰かにこれ以上守られてはいけないけど・・・

 

「そういえば、織斑君のお姉さんは何をやってらっしゃるのですかぁ?」

 

「IS学園の教師で、一組の担任です」

 

「あらぁ。じゃあ、千冬さんは織斑君のお姉さんなのね」

 

和也のお母さんは別の意味で守らなきゃいけない気がする。

 

「でもね、織斑君。お姉さんに守られてるのが嫌だから、全てを守るのは間違ってると思うよ」

 

「あの、どうして分かるんですか?」

 

「さっき、お姉さんの事について聞いたら随分暗い顔してたから、もしかしてと思って」

 

女性の勘は鋭いってテレビで言ってたけど、本当に鋭い。

 

「話を戻すけどね織斑君、お姉さんは織斑君を守りたいから頑張ってるんじゃないの。お姉さんは織斑君が自立できるように頑張ってるの。それをただ守られてると思っては駄目なの。織斑君もお姉さんをちゃんと守ってるから、お姉さんも織斑君を守ってるのよ」

 

「俺が千冬姉を守ってる?」

 

「ええ。家事でも料理でもいいの。お姉さんの負担を軽くしたい思いで行った事は全てお姉さんを守ってる事に繋がってるのよ」

 

「そうなんですか?」

 

「そうなの。感謝の言葉を言わないのも問題はあるけど、お姉さんを守ってるのは確かだから。だから、お姉さんに守られているのが嫌だから全てを守ろうとするのは間違ってると思うわよ」

 

「でも、千冬姉に守られてるのは・・・」

 

「お姉さんは織斑君に何を望んでいるのか聞いた事はあるの?」

 

「いえ、ないですが」

 

「なら、ちゃんと聞かないと」

 

「言わなくても、大体の事は・・・」

 

「家族でも、ちゃんと言葉にしないと伝わらない事はあるの。だから自分の想いを言って、お姉さんの想いを聞かないと駄目よ。IS学園にいるんだから、ちゃんと言わないと」

 

言われてみれば、俺は千冬姉と将来の事をちゃんと話したことはないし、千冬姉が俺をどう思っているのか聞いた事も無い。それに感謝の気持ちを込めて何かをプレゼントした事も無い。千冬姉と一緒にいた時間なんてISが出現してからめっきり減った。IS学園にいるんだから、ちゃんと姉弟の会話をしないとな。

 

「分かりました。後で話をしてみます」

 

「じゃあ、私はお姉さんが逃げないように話をしますから」

 

逃げないようにって、千冬姉の身に何があったんだ・・・

 

「じゃあ、今日のお話はここまでで・・・」

 

「あの、いいですか?」

 

「何かしら?」

 

話は脱線したけど、俺は和也を怪物呼ばわりしたことでお母さんに呼ばれたんだ。お母さんは知らないけど、俺は和也を怪物呼ばわりした挙句、首を絞めた事を謝らなければならない。

 

「和也を怪物呼ばわりして・・・」

 

「それはカズ君に言うべき事じゃないかしら?私に謝っても、カズ君が許してくれる訳じゃないのよ?」

 

「心配を掛けて、和也を絞めてお母さんに謝らないのはおかしいです」

 

「私は別に怒ってなんかいないわよ」

 

「え?」

 

「自分が大きな失敗や過ちに気付いて、それを償おうと必死に行動してる人を許さないわけないじゃない。織斑君がカズ君にちゃんと謝って、お友達になってくれれば私はそれだけで十分よ。重要なのは原因を知った後、自分がどう行動するかなの。だから、お姉さんとカズ君の事をよろしくお願いします」

 

そう言い、和也のお母さんは席を立ちあがり去って行った。

 

「俺が千冬姉を守ってる・・・か」

 

昔から千冬姉に守られてばかりと考えていたけど、俺が千冬姉を守っていたと和也のお母さんは言った。

 

「本当はどうなんだろう?」

 

そういうのも含めて、今日の夜にでも千冬姉に聞かないとな。でも、まずは和也に謝りに行かないとな。

 

「一夏・・・」

 

「箒?」

 

早速、和也を捜しに行こうとしたら物陰から箒が現れた。

 

「もしかして、さっきの話を聞いていた?」

 

「ああ・・・最後まで聞いていた。それでだな・・・その、特訓の事なんだが・・・お前のルームメイトに今後の事を任せた」

 

「え?箒にルームメイトの事を話してないんだが」

 

「クラスメイトの布仏本音がお前のルームメイトと深い親交があって、本音を通じて頼むように私が言ったんだ」

 

箒が他の人に俺の特訓を託すなんて、昔の箒からは想像もできない行動だな。

 

「その・・・白状すると私は、お前と一緒にいたくて特訓を始めたんだ」

 

「じゃあ、あの剣道は俺と・・・」

 

「それ以上、口に出すな!恥ずかしいだろ!」

 

「あ、ああ・・・」

 

まあ、食堂でこんな会話をしてる時点でおかしいだろうな。

 

「だが、昨日の一件と葉山さんの話、そしてお前と和也のお母さんの話を聞いて私は決心した。クラス代表戦の特訓を他の生徒に譲ると。昨日と今日で、私は自分が井の中の蛙だと思い知らされた。私だけが辛い。私以上に不幸な者はいないと思っていた。だが、葉山さんの話を聞いて・・・」

 

「箒、これ以上は言わなくていいよ」

 

「一夏・・・」

 

「和也のお母さんがさっき言ったじゃないか。重要なのは原因を知った後、自分がどう行動するかだって。だから、和也を捜して一緒に謝ろう。例え、和也に許されなくてもいいからさ」

 

「ああ・・・」

 

箒は暗い顔を振り払い、いつものように凛々しい顔立ちに戻った。

 

「そういえば、和也はどこにいるんだ?」

 

「和也は整備室にいると本音から聞いた」

 

「整備室の場所分からないからさ、道案内頼むよ箒」

 

「分かった」

 

俺は箒の後を付くように整備室へと向かった。

 

整備室に向かっている箒の後姿を見て、少し箒が大人になったと感じながらも和也の謝罪を考えていた。




この話を執筆するにあたって、一夏の考えを頭ごなしに否定しては何の成長にも繋がらないと思い、一夏には物事を多方面に見させるように促すような話にしました。

原作だと随分偏った思考の主役だと思っていましたが、周りにまともな大人がいなかったら変な思考の二つや三つは持ってしまうと思いました。もし、一夏の傍にちゃんとした大人がいたら、全てを守るなどという思考は生まれなかったと思います。

というより、原作にちゃんとした大人がいない気がする・・・



次回は、箒の心情をメインとした話を執筆する予定です。
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