実は重要な事を言い忘れてました。それは・・・
セシリアは一夏に惚れません。
一夏と篠ノ之さんとの和解から時は流れ、クラス代表戦当日。
「あれから練習はどうしたの一夏?」
「ルームメイトの簪と練習をしたけど、結構ハードだった。そっちは?」
「朝に練習して、放課後は武器の開発と整備の勉強、夕方に練習かな」
「俺以上にハードだったなんて・・・」
僕と一夏は第三アリーナのピットで代表戦までの特訓について話してた。
「そういえば、ルームメイトの簪さんってどういう人なんですか?」
「落ち着いた子で、練習の時は説明を交えつつのレクチャーしてくれる優しい子かな。でも、模擬戦は鬼のように厳しかった」
「実戦練習までできるなんて凄いよ。僕は的当てしかやってないからきっと良い成果が出るよ」
「まあ、簪も専用機持ちだったし、実際どうにかなるな」
楽観的に勝負を見ていた一夏だが、この数日で急成長を遂げたに違いない。
この数日に模擬戦が出来ただけでも、一夏のセンスの高さが窺える。きっと、オルコットさんとの戦いは良い勝負になると思う。
「随分、簪ちゃんにしごかれたみたいだね」
「楯無さん!」
そんな他愛のない会話をしてる中、刀奈が笑顔で応援しにやって来た。
「簪ちゃんったら、毎日織斑君の事で相談しに来て驚いたわ。かなり腕を上げたって聞いたから、簪ちゃんを泣かせる様な真似をしたらお姉さんが成敗しに来るからね」
「はは・・・そうならない様に頑張ります」
刀奈の黒い微笑みに一夏は乾いた笑みしか返せなかった。
「その簪さんは今どこにいるんですか?」
「簪ちゃんはね観客席で織斑君を今か今かと待ってるわ」
簪さんには一度会ってみたいな。刀奈が世話になってるから挨拶ぐらいは・・・
「織斑君!織斑君!織斑君!」
山田先生の慌ててるような慌てていないような声がスピーカーから響く。
「織斑君の専用機が届きました」
山田先生の声と同時にピット搬入口から一体の灰色のISが姿を現した。
「これがお前の専用機、白式だ。フォーマットと初期化は高原が戦ってる間に終わらせろ」
千冬さんの声がピット内に響いてるけど・・・大丈夫かな。ここ最近、母さんの天然ぶりに振り回されてる光景を何度も見てるから。
「じゃあ、私は特等席から応援してるから頑張ってね」
刀奈は陽気にピットから走り去った。一夏は白式に乗り込み、第一移行を終わらせるためピット内を歩き始めた。
「和也。頑張って行けよ」
「分かったよ。期待に応えられるか分からないけど、やれることはやってくるよ」
僕は専用武装を搭載した打鉄に乗り込み、アリーナをふらつきながらも飛び出した。
・・・・・・
「あら。逃げずにやって来ましたわねケダモノさん」
アリーナから飛び出た時に聞こえる観客の嘲笑。まともに飛ぶことのできない僕を道化師か何かと思っているらしい。でも、そんなことはどうでもいい。
「あなたに最後のチャンスをあげますわ」
僕が気になるのは・・・
「・・・と、思っていましたがケダモノにあげるものなど何一つありませんでしたわ。何か言うことは無くて?」
「オルコットさん。僕はあなたに聞きたいことがあります」
「なんでしょう?」
オルコットさんの恐怖心だ。
「オルコットさん。どうして僕を恐れるんですか?」
「な・・・!?」
すると、アリーナは静寂に包まれた。恐らく、僕の質問は相当場違いな質問だと思う。だけど、オルコットさんは意地を張ってでもその恐怖を掻き消そうとしている。何かを思い出さないように必死に意地を張っている。
「あなたが僕を憎悪する理由は分かりません。だけど・・・」
「言いたいことはそれだけですか。なら・・・」
僕の言葉を遮り、オルコットさんは僕に銃口を力強く向けた。
「無様に地面にひれ伏しなさい!」
・・・・・・
管制室
「山田先生。和也君のISは?」
「今の所、異常は見られません」
「そうですか・・・」
私と和也君の訓練は苦難の連続だった。
それは特訓を初めて二日目の事。突然、和也君の乗っていた打鉄が原因不明の機能停止を起こした。最初は整備不良か何かと思っていたが、新しく乗り換える度に機能を停止し続けるのはおかしいと思いデータを閲覧すると、途中で原因不明のエラーが起こり機能停止に陥ってる事しか分からなかった。葉山さんにもこの事について話して、ISと狼男について研究が始まったけど・・・
「調べ始めて分かったことが何も無いなんて・・・」
「楯無、高原はまだISを使ってひと月も経っていない。万策尽きたような落ち込みをするな」
「織斑先生・・・」
織斑先生は腕を組んだまま表情を変えず、和也君の戦いを見てるけど・・・
(目の下の隈が気になる・・・)
「楯無、何か言ったか?」
「いえ・・・」
凄い読心術だ。
・・・・・・
「あれならオルコットさんの圧勝だね」
「狼男って大したことないんだねぇ」
「IS適正、低いんじゃないの?」
試合展開はオルコットさんの一方的な優勢である。ボウガンを使わせないようにBT兵器で四方八方から撃って、僕を地面に叩きつける。地面に叩きつけられるたびに僕の耳から観客席の罵倒が聞こえる。ハイパーセンサーは使っていない。人の姿でも聴力は狼男と変わらない。だから、どこかで陰口を叩かれても僕には筒抜けである。でも、使い方によっては便利である。人の態度や、騒音の中での人の特定などには役立つ。この聴力のお陰で、オルコットさんの使うブルーティアーズの位置や移動場所は分かる。
「機体が思うように動かない!」
刀奈と練習してからISは動かせるようになったが、長時間乗る事が出来ない。長時間乗っているとISの動きが鈍くなって、最終的に原因不明のエラーを起こして動かなくなる。練習を重ねてISに乗れる時間は長くなってきてるけど、精々15分が限界。そして・・・
「残り3分・・・」
打鉄のディスプレイに表示されているタイマーは3分を切った。このタイマーが0になった時、そこからは時間との勝負。どの位の時間、ISを動かせることができるのか。
「そろそろ降伏したらよろしいのでは?原始的な武装で、満足にISを動かせないケダモノがわたくしに勝つことなどできませんわ」
「それでも・・・僕は戦う。抗って、抗って、抗って、抗って、自分の明日を自分の手で掴み取る!何かに怯えて逃げるよりはマシです!」
「なら、あなたが抗っている相手がどれ程強大なのか思い知りなさい!」
オルコットさんはブルーティアーズを展開し、僕に止めを刺しに来た。
「最後のチャンス!」
BT兵器を展開する時、オルコットさんは構えを取る癖がある。しかも表情は余裕の笑顔。おまけに腰についている武器は使用されていない。恐らく使うまでもないと思っているはず。そこが僕がオルコットさんに対抗できる部分だ。オルコットさんの腰にはミサイル、つまり大きな爆弾を腰にぶら下げている。しかも使う気配が一切ない。
「そこを狙うしかない!」
僕はボウガンに矢をセットして、力強く板バネを引っ張りオルコットさんの腰に狙いを定める。この作業を1秒で行えるのは特訓の成果かな。
「これなら・・・」
僕はそのままボウガンのトリガーを引こうとした時だった。
『エラーが発生しました。ISの機能を停止します』
15分も経っていないのに、打鉄のディスプレイに表示されるエラーメッセージ。それと同時に打鉄の機能を停止し、僕の体を4つの光が貫いたのはその直後の事だった。
セシリアがオリ主を恐れてる理由は狼男と言う訳ではありません。
次回かその次の話で明らかにする予定なので、お待ちください。
ちなみに千冬さんの目に隈が出来ていた理由は、オリ主の母と一緒生活してたら隈が出来てしまったのです。