クラス代表戦は和也の怪我で中止。いや、怪我なんてものじゃない。
セシリアとの戦いで和也のISは原因不明の機能停止。その直後、和也はセシリアのブルーティアーズのBT兵器を直に喰らった。和也の体から細く蒼い閃光が突き抜けた時、観客席もピットにいた俺も言葉を失った。
絶対防御
それはすべてのISに備わっている機能で、搭乗者が死ぬのを防止するために付いている。無論、IS学園に配備されているISにもその機能は備わっている。
俺も観客席にいる人も絶対防御という存在に妄信していた。
「搭乗者は絶対に死なない」
そんな夢のような機能は目の前の惨劇で僅かな亀裂が走った。
「嘘・・・だろ?」
蒼い閃光が和也の体を貫いた直後、糸の切れた人形のように倒れた。そして、倒れた和也の体から大量の血が流れ始めた。
『きゃあぁぁぁぁぁ!』
映像で観客席がパニックに陥ってる様子が見える。
初めて、ISを使った試合で死亡事故が起こった。
俺の頭は真っ白になった。
さっきまで頑張れとエールを送った和也が・・・
狼男でありながら、頑張って学園生活を送っていた和也が・・・
『悪い冗談はおよしなさい!早く・・・早く立ち上がってください!これでは・・・これではわたくしが・・・わたくしは・・・こんな事をするために・・・頑張って来たのでは・・・』
セシリアが涙を流しながらも自分を保とうとしていたが、俺はフィールドに倒れてる和也をただ見ることしかできなかった。
・・・・・・
試合が中止になった後、混乱している山田先生からアリーナの使用中止と学園にある全ISの緊急検査の知らせを聞いた後、俺は和也が治療室にいるという噂を聞きそのまま猛ダッシュで向かった。
治療室前
「千冬姉!和也は!?」
「今、葉山先生が治療を行っている」
「治療って・・・」
「良く分からないが、何かに賭けているみたいだ。それと廊下は走るな」
「こんな状況で走るなって・・・」
「こんな状況だからだ」
千冬姉は冷静を保っている様に見えたが、ふと右手を見たら出席簿が歪んでいた。千冬姉も今回の事故に相当心を痛めてるというより、これで心を痛めない方がおかしい。
「ところでセシリアは?」
「寮で安静にしている。事故が起こった後、ピットに戻り気を失ったみたいだ」
セシリアを責めるつもりはない。あいつだって今回の事故を起こしたく起こしたわけではない。ただ、あいつがどうなったのか気になっただけだ。
「織斑先生!和也君は!?」
「落ち着け、楯無。生徒会長であるお前が乱れてどうする?」
「ですが・・・!」
楯無さんが何か言おうとした時、治療室のドアが大きく開いた。
「葉山さん!和也は!?和也はどうなったんですか!?」
葉山さんは何か戸惑っている表情をしている。まさか・・・
「・・・見せたいものがある。付いて来てくれ」
「見せたいもの?」
俺と千冬姉、楯無さんは葉山さんに付いて行き、辿り着いたのは・・・
「和也が寝ている・・・」
ベットで寝ている和也だった。
「葉山先生。一体何を?」
「織斑先生。和也を治療室に置いたのは、事故発生からどの位時間が経った?」
「事故発生から1時間と5分だ。本来なら30分も経たないはずだったが、ISを展開したまま倒れてたせいでISを外すのに時間が掛かった」
1時間も掛かったなんて、それじゃあ・・・
「少なくとも和也は肺、胃、心臓、脊髄の付近が損傷したと思われる」
そんな致命的な損傷をしたと思われるなんて・・・ん?
「したと思われる?どういう意味だ」
「これを見れば分かる」
そう言い、葉山さんはベットの布団をめくった。
「これは・・・!」
「どういう事だよ・・・?」
半裸の和也が眠っているが、傷痕一つ残っていなかった。
「俺が治療に当たろうとした時、特に目立った外傷が無かった。一応、内臓の方に損傷があると思い安静にしているが治っている可能性はある」
「いや、和也はセシリアの・・・」
「確かにセシリアの攻撃を喰らい、血を流して倒れた。そして傷は治り、生きている」
どういう事だよ・・・ますます意味が分からない。
「かつて内田先生が『お陰でISと言う訳の分からない兵器の攻撃を喰らっても、普通に死ぬことはなくなった』と言ったが、それがヒントなのかもしれない」
「一体何が・・・起こってるんだよ」
「一夏、お前が混乱するのも無理はない。普通の人なら死んでいる攻撃を、僅か一時間位で完治するのは確かにおかしい。だとすると・・・」
「狼男が、今回の事故の要ではないかと睨んでいるのか」
「そういう事だ」
千冬姉は状況を理解しているけど、俺はますます分からない。和也は撃たれた。血を流して倒れた。なのに無傷・・・意味が分からない。
「とりあえず、無事だって事なのは分かったが後の事が面倒だな」
「そこは私と山田先生が何とかする。医者のお前が心配することではないだろ?」
「高原和也専属の医者に無理を言うな」
そう言い、葉山さんは仕事の書類を整理し始めた。もう、終わりなのか?
「さて、俺が言いたいことは全部言い切った。生徒会長以外は退室をしてください」
え?何で?
「一夏。高原と楯無の関係を聞いてなかったのか?」
「え?・・・ああ!」
「そういう事だ。織斑先生もご協力をお願いします」
「当の本人は上の空状態だが大丈夫なのか?」
「なら尚更だ。さあ、退室するぞ」
俺は葉山さんに押されるがまま、治療室を後にした。
・・・・・・
「和也君・・・」
私は悲しかった。
「どうしてこうなるの?」
和也君が無事だとか、セシリアちゃんとの戦いで怪我をしたとかではない。
「和也君が辛い目に遭わないといけないの?」
私はそのまま、ベットで寝ている和也君の顔に近づいた。
「和也君は私なんかより頑張って努力しているのに、こんな辛い目に遭うの?」
彼はしっかり者で生徒会の書類や予算の事で助言を与えて、私を助けてくれた。優しくて、いつも皆をまとめようと頑張っていた和也君なのに・・・
「これじゃ・・・」
何も出来なかった自分が悔しい。
「和也君の彼女失格じゃないの」
「失格じゃないよ」
え?
「こうやって学園生活を送れてるのは刀奈のお陰だよ」
「和也・・・君?」
「ごめん。心配かけちゃって」
「うぅ・・・ぐすっ・・・」
私は涙を抑えることが出来なかった。和也君が目を覚ましただけなのに、涙もろくなるなんて・・・
「ところで、葉山さ・・・うわっ!」
「良かった・・・生きてて・・・良かった」
「刀奈・・・その、どいて・・・」
「嫌だ・・・離したくない・・・」
「えっと・・・」
和也君は戸惑っているけど、離したくない。理由は特にないけど、離したくない。
「僕、服を・・・」
「離したくない・・・」
「あははは・・・」
「和也君が生きている。今はそれだけで私は嬉しいの。だからこのままにしてくれない?」
「・・・分かったよ」
和也君は私の頼みを聞いて、30分は抱かせてくれた。
「和也君・・・」
「何?」
「大好き」
次回は事故発生後のセシリア視点の予定です。