インフィニット・オオカミ   作:陸のトリントン

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今回は事故発生後のセシリア視点がメインです。

この話は書くのに少し苦労しました。

セシリアをどのように扱うのかが大体決まる話なので、それなりに考えて書きました。


英国淑女と狼男

わたくしが幼い頃に両親は事故で亡くなりました。

 

母はISが登場する前からいくつもの会社を経営し成功を収めた人だった。

 

父はISが登場する前から母の顔色を伺う態度の弱い人だった。

 

そんな二人が列車の横転事故で亡くなった。

 

どうしてその日、一緒にいたのかは分かりません。ただ分かったのは、莫大な遺産をわたくしが守らなければならないと言う事でした。遺産を守る一環として受けたIS適正テストがAという高い適正値を残したため、政府が国籍保持をする代わりに第三世代ブルーティアーズの運用試験車に選ばれた。両親が残した莫大な遺産を守るため、わたくしは努力しました。

 

なのに・・・

 

「お母様・・・」

 

寮の部屋でわたくしは呆然としていました。

 

わたくしは両親の遺産を守るために努力した。そしてIS学園に行き、彼と出会った。

 

 

 

高原和也

 

 

 

あの男は父と似た匂いを持っていた。いつも腰が低く、人の顔色を伺うような話し方をしていて嫌でしたわ。

 

最初は「狼男」と言う理由で軽蔑をしていましたが、葉山幸助さんの話を聞いた後は「父と似た人」と考えを改めました。

 

狼男であろうとなかろうと情けない人は情けない人。それに変わったことはありませんでした。

 

IS適正がDと聞いた時は開いた口が塞がりませんでした。

 

織斑千冬さんの弟さんでさえBなのに、IS適正がDの男性操縦者と戦うと思うと怒りが込み上がっていました。

 

そんな男に負けてしまっては、イギリス代表候補生もとい、オルコット家の名に泥を塗ってしまうと思ったからです。

 

クラス代表戦まで、高原和也を完膚無きに叩きのめそうと練習を怠りませんでした。

 

 

 

そして、クラス代表戦当日。わたくしは高原和也との戦いは織斑一夏の前哨戦と考えながらブルーティアーズを展開したままフィールドで待っていました。

 

IS適正Dの男性操縦者。わたくしはIS適正Aのイギリス代表候補生。結果など試合を見なくても分かる。ほんの数日でわたくしを凌駕するとは微塵に考えてもいなかったからです。

 

そして、ピットから現れた打鉄。ふらつき、安定したスピードも出せない操縦者は高原和也以外に考えられませんわ。

 

「あら。逃げずにやって来ましたわねケダモノさん。あなたに最後のチャンスをあげますわ・・・と、思っていましたがケダモノにあげるものなど何一つありませんでしたわ。何か言うことは無くて?」

 

わたくしは挑発の意を含め、彼に降伏するよう勧めました。目に見えて分かる試合など、双方の時間の無駄だと感じたからです。

 

「オルコットさん。どうして僕を恐れるんですか?」

 

しかし、彼がここに来た理由が戦う訳ではなく、わたくしがあの男に恐怖している理由を聞いてきました。

 

「あなたが僕を憎悪する理由は分かりません。だけど・・・」

 

「言いたいことはそれだけですか。なら・・・」

 

わたくしが恐怖する理由があるなら狼男であることですが、そんなものは些細な事です。憎悪する理由は・・・

 

「無様に地面にひれ伏しなさい!」

 

あのような情けない男と戦うことです。

 

 

 

試合は言うまでもなく一方的にわたくしの優勢でした。

 

スターライトMk-Ⅲにクロスボウで対抗しようとする姿は滑稽でした。

 

ブルーティアーズのBT兵器に対しては手も足も出せないまま無様に撃たれてました。

 

転ぶたびに観客に笑われ、反撃しようとしてカウンターを喰らうたびに観客に笑われ、立とうとして転ぶたびに観客に笑われ、肩透かしも良い所でした。

 

「そろそろ降伏したらよろしいのでは?原始的な武装で、満足にISを動かせないケダモノがわたくしに勝つことなどできませんわ」

 

流石に酷に思った私は再三、降伏を勧告しました。

 

「それでも・・・僕は戦う。抗って、抗って、抗って、抗って、自分の明日を自分の手で掴み取る!何かに怯えて逃げるよりはマシです!」

 

彼は今の現状を理解していないと思い、落胆しました。まさか二人目の男性操縦者は現実を見れない男だと。

 

「なら、あなたが抗っている相手がどれ程強大なのか思い知りなさい!」

 

一気に勝負に出ようとBT兵器を展開し、彼の四方を囲みました。だけど彼はそれを気にせずボウガンをわたくしに向けたままでした。周りをよく見なかった彼を見下げつつ、ブルーティアーズから蒼い一筋の閃光が放った。

 

その4つの閃光は彼の体を貫き、糸の切れた人形のように倒れこんだ。

 

そして、倒れた体から赤い鮮血が流れ出た光景を見た後の事はあまり覚えていません。

 

うわごとのように何かを呟き、ピットで意識を失っていたと山田先生に言われ、気持ちを落ち着かせるために部屋に戻りシャワーを浴びましたが、心が晴れることはありませんでした。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

ベットに座り、気を落ち着かせようにも落ち着く事は無かった。

 

「わたくしは・・・何を・・・」

 

両親の残した遺産を守るために代表候補生になり、ブルーティアーズで好成績を残し、そして・・・

 

「人を・・・撃った・・・」

 

ブルーティアーズで撃った。私は彼を・・・

 

「違う・・・彼は人じゃない・・・ケダモノよ・・・」

 

彼は人ではない。人ではないと否定する度にわたくしの心は苦しくなっていく一方で会った。

 

「どうして・・・どうしてこんなに心が苦しいのですか?」

 

「それはね、嘘を付くのが嫌だっていう心のサインなの」

 

「そうなんですか・・・え?」

 

この部屋にはわたくし以外は・・・

 

「どうも。カズ君のお母さんです」

 

「きゃあぁぁぁ!」

 

わたくしは思わずベットから転げ落ちてしまいました。どうして!?ドアにはロックが掛かっていたはずです!

 

「織斑先生に頼んで、全ての部屋の合鍵を作って貰ったの」

 

織斑先生!どうして一般の職員に合鍵を作るのですか!?

 

「それでね・・・えーとっ・・・セシル・オーディンさんでしたっけ?」

 

「セシリア・オルコットでございます」

 

気を落ち着かせてベットに座り直しましたが、このお方はどこかのエージェントなのですか?

 

「セシリアちゃん。聞いていいかしら?」

 

「な、なんでしょうか?」

 

「セシリアちゃんは昔、狼に襲われたことがあるの?」

 

「ど、どうして!?」

 

「狼男の話題になると少し嫌な顔をするから、何か嫌な事でもあったのかなと思って」

 

わたくしはこの人に到底敵う事はできないと悟り、真実を話しました。

 

「わたくしが小さい頃のことでした。森の中で遊んでいた時、獰猛な狼と遭遇しました。その頃のわたくしは狼に恐れを抱き、逃げることもできませんでしたわ。その時、父上が助けに来て事なきをえました。なのに・・・」

 

気付けばわたくしはベットのシーツを強く握っていましたが、それを気にすることはありませんでした。

 

「なのに、父上は自分が悪かったとわたくしに謝っていました」

 

「それが原因で狼が嫌いになったの」

 

「父上もです・・・いつも人の顔色を伺って話していて、態度は弱く、情けない人でした。そんな父上に私が助けられたなんて思うと・・・」

 

「セシリアちゃん。それは違うわよ」

 

「え?」

 

「お父さんはセシリアちゃんの事が嫌いだって言ったことある?」

 

「あ、ありません」

 

「人の顔色を伺う態度の弱い人でもセシリアちゃんの事を大切に思ってるの。だから、狼に襲われた所を助けに行ったの。それを情けない人だなんて言っちゃいけないわよ」

 

「ですが・・・」

 

「本当は、お父さんに謝りたいんじゃないの?」

 

「!?」

 

どうしてわたくしの心が見えるのですか!?

 

「セシリアちゃんに何があったのか分からないけど、これ以上自分に嘘を付くのは良くないと思うよ」

 

「わ、わたくしがこれ以上嘘を付いているなどと・・・」

 

「なら、どうして涙を流しているの?」

 

「え?」

 

わたくしは近くにあった手鏡を手に取り、自分の顔を見てみたら・・・

 

「どうして・・・わたくしが・・・」

 

「セシリアちゃん。ここはセシリアちゃんを苦しめるためにある場所じゃないの。色んな人、色んな考え、色んな悩みを持っていても、仲良く学園生活を送る場所なの。だから、もう一人で思い悩まないで。皆がいるから」

 

「わたくしは・・・わたくしは・・・」

 

わたくしは和也のお母様に抱きつき泣きながら謝った。

 

「ごめん・・・なさい。わたくしの・・・ワガママを押し付けて」

 

「いいのよ。大切なのは過ちに気付いた後、自分がどう行動するのかなの。だけど、今は思い切って泣いていいわよ」

 

「ごめんなさい・・・お父様、お母様」

 

父の気持ちを考えず、自分の理想を父上に押し付けた。それはオルコット家として恥じるべき行為である。今のわたくしに出来る事は何なのか、考えながらもわたくしの意識は眠りについてしまった。




次回はクラス代表就任パーティーを執筆する予定です。
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