インフィニット・オオカミ   作:陸のトリントン

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今回はちょっと話が進展します。


パーティーと狼男

クラス代表戦から3日が経ち、僕は保健室で葉山さんから体の状態について聞いている。

 

「僕の体はどうなってますか?」

 

「クラス代表戦で大量の出血。心臓や脊髄付近、内臓等の損傷。それにも関わらず、3日で元通りになるのは異常以外の言葉が見当たらない。だが、それを解明する手掛かりは手に入った」

 

葉山さんは赤い液体の入った瓶と数枚の書類と写真を机の上に置いた。

 

「それは?」

 

「お前の血液と分析結果だ。クラス代表戦で出血した分をかき集めたものだ。それを分析した結果、赤血球と白血球等の血液の成分量が少なくとも常人の三十倍以上。それと謎の成分が同じぐらいある事が分かった」

 

「謎の成分?」

 

「ああ。この写真を見ろ。これはお前の血小板を電子顕微鏡で撮影したものだ」

 

葉山さんが差し出した写真には、謎の成分が全面に付着している血小板が写っている。

 

「他の血液の成分も同じような状態だが、血小板に多く付着していた」

 

「これが、狼男と深い関係があるんですか?」

 

「かもしれない。これが一体何なのかは、調べ始めた所だから結果は聞かないでくれ」

 

「じゃあ、どうやって電子顕微鏡を?」

 

「お前がよく知る人物に頼んで持って来てもらった。お陰で電子顕微鏡が無かった頃より、解析が随分進展している」

 

電子顕微鏡を持って来るって、何をしてるんですか・・・

 

「こっちは血液の分析で忙しくなるが、学園生活はガールフレンドがどうにかしてくれるから問題は無いか」

 

「それはそれで問題はあるんですよ」

 

「どうしてだ?恋人と一緒にいられるのは喜ばしい事じゃないか」

 

僕は大きくため息をつき、三日間の療養生活について語った。

 

「僕の体をペタペタ触って、時には自分の肌を見せたりして、髪を洗おうとした時は裸になろうとして僕と一緒にシャワールームに入ろうとしたんです。食事の時も口移しをしようとしたり、とにかく騒がしい療養生活でした」

 

「和也。それはお前に構って欲しいんだよ。一年も遠距離恋愛をしてれば、一緒にいたいという気持ちを優先するもんだ」

 

「分かるんですか?」

 

「大体想像がつく。それに、お前と楯無は互いに素直になってない部分がある。お前が素直になれば彼女もそんな色仕掛けみたいなことをせず、素直になるだろう。恋人いない歴が年齢の俺が言うのも何だかな」

 

何か聞いてはいけない事を聞いたような気がする。

 

「とにかく、今日でお前は退院だ。今日の夕方、一組が食堂を借り切って何か催しをやるみたいだから行ってみたらどうだ?」

 

「はい。皆には迷惑を掛けたから、それを謝らないと」

 

「謝る必要は無い。お前は物事を悲観する部分があるから、少しは気楽に構えた方が良い」

 

「は、はあ・・・」

 

そう言い、葉山さんは僕にある紙を差し出した。

 

「これは?」

 

「生徒会の誓約書。楯無がお前に渡して欲しいと言ってな。どうする?」

 

確かに葉山さんの言う通り、少しは素直にならないといけないかも。

 

「どうするも何も、僕は生徒会に入るつもりです」

 

「なら、ここの所にサインしてくれ。後で俺が届ける」

 

「いえ、僕が届けます。今日の夕方、僕が食堂にいれば楯無さんも来ますから」

 

「分かった。それでは任せたぞ、生徒副会長さん」

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

食堂の前に辿り着いた時には、既に催しは始まっていた。『織斑一夏クラス代表就任パーティー』と書かれたのろしが吊るされている。どうやら一夏がクラス代表に選ばれたけど、どうして彼が選ばれたんだ?僕が療養している間に試合でも行われたのかな。でも、ISを使った試合は中止だからオルコットさんが辞退?でも、それは僕との試合での事故だから、一夏の試合とは関係ない。じゃあ、どうして一夏がクラス代表になったんだ?

 

「一人で考えても仕方がないけど・・・入り辛いな」

 

全治半年ぐらいの怪我をしたのに3日で全治するのは異常だ。これをどう説明すればいいんだ。その時、不思議な事が起こって治ったなんてジョークにもならない。実はまだ分かってない以外に思い当たる言葉が見当たらない。

 

「・・・しょうがない。意を決して入るしかないか」

 

僕はこれから起こる悲鳴を覚悟して、食堂に入った。

 

「いやー!これでクラス対抗戦は盛り上がるね!」

 

「ほんとほんと!」

 

「ラッキーだったよね!同じクラスになれて!」

 

食堂内は物凄い熱気に包まれている。一夏がクラス代表になったことにクラスの皆は嬉しさを隠すつもりはないけど・・・

 

「他のクラスから来てないか?」

 

パッと見て、顔を見た事ない生徒があちらこちらにいる。簪さんはクラス代表戦まで一夏のコーチを担当してたから分かるけど、他の生徒達は何の目的で来てるんだ?

 

「とりあえず、一夏にクラス代表就任おめでとうぐらい言わないと」

 

僕はエールを送ろうと、一夏の所へ向かったが・・・

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!」

 

僕の背後で甲高い叫び声が上がった。事件かと思い振り向いたら、他のクラスの女子生徒が僕を指差して震えていた。そして、周りの生徒は僕を見るたびに僕から遠ざかっていった。

 

「うそ・・・何でここにいるの?」

 

「あの時、オルコットさんの攻撃で倒れたんじゃ・・・」

 

「イヤ・・・来ないで」

 

「あれは・・・演技だったの?」

 

これはあらかじめ分かっていたけど、いざ直面すると結構キツイ。

 

 

 

「えっと。クラス代表戦の時は・・・」

 

「か・・・帰れ!バケモノ!」

 

「あ、ISより恐ろしいモノなんか・・・いらないのよ!」

 

 

 

これは完全に僕が雰囲気を壊してしまったみたいだ。とりあえず今は謝るしかない。

 

「すみません。皆さんに多大な迷惑をお掛けしたのは・・・」

 

「和也!大丈夫なのか!?」

 

僕の謝罪を遮り、一夏が僕の前に現れた。

 

「え、ええ・・・お陰様で」

 

「良かった。お前が無事でホッとしたよ」

 

一夏の言動に僕を含めた生徒達がざわめきだした。僕も何が起こっているのか分からない。一組だけは何食わぬ顔で僕を見ていた。

 

「実はクラス代表戦の後、のほほんさんが和也の事で話し合おうって授業を一時間使って話し合ったんだ」

 

一夏曰く、のほほんさんを中心に僕に対する偏見をなくそうという働きが行われたと言う。手始めに一組内の僕に対する偏見を無くす運動を始めた。その結果、クラスの4割は僕に対して友好的になろうとしているみたいだ。ちなみにオルコットさんや篠ノ之さんが率先してクラス内での偏見をなくそうとしているらしい。

 

「そこまで大袈裟な事をしなくても大丈夫ですけど」

 

「だけど、お前がクラスでひとりぼっちになるのは俺だって見過ごすわけにはいかない。それに楯無さんに言われただろ?あまり根を詰めるなって。それに、お前はどこか距離を置いて学園生活を送っているように見えるからさ、ここで親睦を深めないか?」

 

僕と一夏以外は女子なのに、そこで普通に過ごすのは至難の技ですから。

 

「おりむーの言う通りだよ。たかやんはどこか身構えてて声を掛けにくい所があるってみんな言うんだよ~」

 

「身構えてると言うより、皆が僕を警戒してるだけだと思いますが」

 

「そうかもしれないけど・・・うーん」

 

のほほんさんが悩み始めた。

 

「たかやんの言ってる事は正しいけど・・・何て言えばいいんだろ~」

 

「素直に自分の気持ちを伝えることですわ」

 

のほほんさんの疑問に答えた声が僕の背後から聞こえた。

 

「オルコットさん・・・」

 

オルコットさんが思い詰めた顔をして僕に近づいてきた。僕が療養している間に何か大きな事でも起こったのかな。

 

「和也さん。あなたに浴びせて来たご無礼は・・・」

 

「それは僕にも非があるから別に謝る事じゃないよ。それに、クラス代表戦のは事故だから・・・」

 

「それでもです。事情を知ってるにも関わらず、あなたに行った無礼を何と詫びればよろしいのですか。これでは、全て高原さんが悪い事になるのでは・・・」

 

「だから、互いに非があったから起こったことだから・・・」

 

「葉山先生の言葉を忘れたのかな和也君?」

 

大体、予想は付いてたけど・・・

 

「物事を悲観する部分があるから、少しは気楽に構えた方が良いって言われたじゃない」

 

刀奈が楽観と達筆に書かれた扇子を広げて、僕とオルコットさんの間に入り込んできた。

 

「セシリアちゃんの真剣な思いをそんな風に答えるなんて駄目じゃない。こういうのは素直に受け止めるのよ」

 

「素直に答えたんですけど」

 

「そう?私には回りくどい受け答えをしてるようにしか見えないけど?」

 

「回りくどいって・・・」

 

「堅苦しい言葉を選ぶから回りくどい受け答えをしてるんだから、素直に簡潔に答えないと。後、生徒会の誓約書にサインしてくれてありがとう」

 

刀奈は扇子を閉じて僕がサインした生徒会の誓約書を見せつけた。その技術をスリに使わなければいいけど。

 

「えっと・・・オルコットさん。僕はこの通り元気だし、そんなに落ち込まなくて大丈夫だから。それに、オルコットさんが良ければ僕と友達になってくれないかな?」

 

友達って言って作るものではないと思いながらもオルコットさんに手を差し出した。

 

「わたくしで良ければ構いませんが、ひとつよろしいですか?」

 

「よろしいですが、何ですか?」

 

「苗字で呼ばれますと、堅苦しい印象が残りますので名前で呼んでいただけませんか?」

 

「名前で呼ぶのは少し・・・馴れ馴れしいと思いますが?」

 

「わたくしはそう思いません。なので、名前で呼んでいただきませんか?」

 

「えっと・・・」

 

周りを見回したら、一組全員が目を見開く様に僕を見ている。まるで名前で呼びなさいと言わんばかりに。

 

「じゃ、じゃあ、セシリアさん」

 

「さんはいりませんわ」

 

「せ・・・セシリア」

 

「はい!」

 

やっぱり名前を呼び捨てするのは抵抗がある。

 

「たかやん。最初は物凄く抵抗を感じるけど、親交を深めるのも小さなことからコツコツとやるんだよ~」

 

「本音ちゃんの言う通りよ。でもね和也君、たまには私にも構って欲しいな」

 

のほほんさんの言ってる事は正しいけど、刀奈の言ってる事はただの私欲じゃないですか。

 

「先輩の言ってる事は・・・」

 

「はいはーい!新聞部で―す。噂の新入生二人に突撃インタビューしに来ました!」

 

どうして僕が言いたい時に限って、他の人が割り込んでくるんだ・・・

 

「じゃあ、私は薫子ちゃんに和也君との恋の軌跡を話しちゃおう」

 

「ええ!?ちょと待ってください!」

 

「嫌よ。和也君の偏見を無くすにはこうするしかないんだから」

 

「逆に反感を買うだけですから!」

 

黛さんの色々と偏った取材を阻止するために、僕は急いで刀奈の所へ走って行った。

 

そういえば、これは何のパーティーだっけ?




次回はセカンド幼馴染ではなく、オリキャラが登場します。

セカンドはちょっとだけ待ってください。
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