僕は一夏達を部屋連れて行こうとしてドアを開けた。
・・・その後の記憶が無い。
気付いたらベットの上で寝ていて、隣で刀奈が裸で寝ていた。いつになったら寝巻を着てくれるんだろう・・・僕の理性が確実に削られるのに。
一夏に聞いても答えをうやむやにして答えてくれないし、箒とセシリアに聞いても目を逸らして答えてくれませんでした。一体、何があったんだ?
そんな事を考えてる中、一組では転校生の話題で持ちきりでした。
「転校生?今の時期にか?」
「うん、何でも中国の代表候補生なんだってさ」
「ふーん」
「あら、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」
「別にこのクラスに入るわけではないだろう?騒ぐほどの事ではあるまい」
「どんな奴なんだろうな」
「む・・・気になるのか」
「ん、まあな」
「ふん・・・」
一夏達も転校生の事が気になってるけど・・・
「和也、どうしたんだ?」
「何か・・・変な予感というか、嫌な予感がするんだ」
こういう予感は嫌でも当たるから困るんです。
「何だよそれ?」
「その、何というか・・・転校生が可愛そうな目に遭うような感じかな?」
「それは無いだろう」
一夏は笑顔で僕の不安を無くそうとしてるけど、それが不安なんです。
「ところで、その転校生はどういう人なんですか?」
「何でも、中国代表候補生だって~」
のほほんさんの話だと、一ヶ月遅れの中国代表候補生だと・・・一ヶ月遅れ・・・中国?引っ掛かるワードだな。
「でも、今のところ専用機を持っているクラス代表は一組と四組だけだから、余裕だよ」
「フリーパスの為に織斑君頑張ってね!」
クラス対抗戦の優勝景品は学食のスイーツが半年間無料のフリーパスのためか、皆が意気投合して一夏にエールを送っているけど・・・
「一夏、転校生の事で言いたいことがあるんだけど」
「何だ?」
「教室のドアに寄りかかってる人が転校生じゃないかな?」
「「「「「え?」」」」」
僕の言葉にクラス全員が教室のドアに視線を移した。そこには・・・
「鈴・・・?お前、鈴なのか?」
「そ、そうよ!中国代表候補生、凰鈴音って・・・あんた!」
顔を真っ赤にして、僕に指をさす中国代表候補生の凰鈴音さん。
「何ですか?」
「何で私の登場を無茶苦茶にするのよ!」
「えっと・・・その、すいません鈴音さん」
それにしても、少し泥臭い。一ヶ月の間、山籠もりでもしてたのかな。
「まあいいわ。それにしても久しぶりね一・・・」
「久しぶりだな和也。背は伸びたか?」
どこか明るくノリノリなセリフが鈴音さんの台詞を遮った。
「この声は・・・」
ああ、思い出した。確か仕事の都合で中国に行ってて一ヶ月間音信不通だった・・・
「よお!元気に学園生活送ってたか?」
父さんだ。しかも、新品の白シャツとジーパンという『ちょっと前までど派手な仕事をやっていました』ファッションでやって来た。
「和也・・・あの人は?」
「皆さんに紹介します。この人は僕のと・・・」
一夏の質問に答えようとした時、父さんが突然教室から吹き飛ばされ、廊下の壁に強く叩きつけられた。
「父さん!?」
原因はすぐに分かった。鈴音さんがISの腕で父さんを殴ったからだ。国際問題になりかねない行為をどうして平然と行うんだ?
「鈴・・・俺とコンビ組まないか?」
「組まないわよ!」
それにしても父さんは平気みたいだ。ちゃんと手加減をしてくれたみたいだ。
「あんたがいると碌な事が無いわ。さっさと自分の部屋に戻りなさいよ!」
「悪いが、ここのクラスに自己紹介しろと担任の先生に言われてな」
「その担任は誰よ!私がぶん殴って・・・」
「確か、織斑千冬とかだったかな?」
「・・・え?」
担任の名前を聞いた途端、鈴音さんは顔を青ざめISを解除した。
「また後で来るからね!逃げないでよ、一夏!」
捨て台詞を吐いて、鈴音さんは全速力で教室を後にした。
「何で逃げたんだろう?一夏は何か分からない?」
「分かるような・・・分からないような・・・」
一夏の歯切れの悪い答えに僕は首を傾げるしかなかった。
・・・・・・
「まさか、和也の父さんがトレジャーハンターなんて」
「子持ちの既婚者でトレジャーハンターをやってる人はそんなに多くないからね。驚いても仕方がないけど、織斑先生が授業にいなかった方が驚いたよ」
「・・・え?」
昼休みになり、僕は一夏と箒とセシリアと一緒に学食に向かっている。織斑先生は所用で授業を行えないと山田先生からの説明があったけど、一体何だろう?
「和也さん。和也さんのお父さまはいつも世界中を飛び回ってるのですか?」
「トレジャーハンターとは言うが・・・食っていけるのか?」
「確かに。いくらトレジャーハンターでも稼ぎが良いとは限らないからな」
三人の疑問はもっともだ。トレジャーハンターを職業としている父親なんて珍しいですからね。
「仕事の時は世界中を飛び回って、仕事が無い時は家でゴロゴロしてるよ。でも、稼ぎの方はかなり稼いでくるみたい。何でも通帳の桁が8桁以下になった事が無いって母さんが言うんだ」
「「「え!?」」」
「でも、仕事でお金が7桁消えるから億万長者みたいな生活はしてないよ」
「どこからツッコめばいいんだ・・・」
「何か・・・姉さんより凄い人だな・・・」
「庶民のお仕事はこんなにも命懸けなのですか・・・」
三者三様の反応が返って来たけど、箒のお姉さんはどんな人物なんですか?セシリア・・・庶民の仕事はこれとは別の意味で命懸けです。
そんな他愛(?)のない会話をしてる中、食堂の前に着いた。目の前に鈴音さんがいるけど様子が変だ。というより、食堂自体の様子がおかしい。皆、言いたいけど言ってはいけない。そういう雰囲気が食堂を支配している。
「鈴。どうした・・・ん・・・だ?」
一夏が鈴に声を掛けて寄って行ったら、一夏が固まってしまった。どうしたんだろう?メデューサが食堂にでもいるのだろうか?
「一夏。一体どうし・・・たん・・・だ・・・」
「お二人共、一体何が・・・」
箒、セシリアが続けざまに寄って行って固まったけど、食堂で何が起こっているんだ?僕は意を決して食堂に入った。その中では・・・
「おむすびは強く固く握らずに軽く握る程度で」
「え、ええ・・・」
「みそ汁は火加減と味噌の配分と具材の両を考えるの」
「は、はい」
「そうそう。包丁を使う時は猫の手で」
「味見して見て」
「若干、味が薄い感じが・・・」
「和食は調味料じゃなくて、具材本来の味を楽しむものなんです」
母さんが織斑先生に料理の指南をしていた。割烹着に身を包み、母さんに教わりながら不器用な手つきで調理をしている織斑先生。立場が逆のような気がするけど気のせいだな。
「ち、千冬姉・・・?」
「お、織斑先生が・・・」
「料理を・・・してる!?」
「一夏・・・夢だよねこれ?」
4人共、いや、食堂にいる生徒達全員が驚いている。・・・・・・どうして驚くんだろう?
「母さん。何で織斑先生に料理のいろはを教えてるの?」
「あらカズ君。実はちっちゃんね、料理があまり上手じゃないの」
「ちっちゃん?」
「織村千冬だから、ちっちゃん」
母さん・・・先生にあだ名を付けるのはやめて。僕が色々と恥ずかしいから。織斑先生の顔が『世界最強のIS操縦者で元日本代表』の顔をしてないよ。恥じらう乙女の顔をしているよ。
「お、お母さん・・・どう・・・ですか?」
「「「「「お母さん!?」」」」」
皆が驚くのも無理はない。どんな人にもお母さんと言われても気にせず、相手が強盗でも普通にお茶を出して接するんだ。
「うん!これなら大丈夫。『ちっちゃん定食』の出来上がり!」
周りの生徒達の口が開いたままだ。一夏なんか・・・
「箒・・・これは・・・夢なのか?」
「夢・・じゃない」
「それより・・・ちっちゃんって・・・」
一夏と箒と鈴音さんが見てはいけないものを見てしまった顔をしてる。
「前々から気になったのですが、和也さんのお母さんは運動とかお得意なのですか?」
「いえ。学生時代はずっと料理研究部に所属していました」
「では、和也さんのお母さんの何が織斑先生を圧倒させているのでしょう?」
恐らく、天然と言われてる部分だと思います。
「さあ!生徒の皆さんに『ちっちゃん定食』を配りましょう!」
「はは・・・ははは・・・」
この出来事を境に、織斑先生は「ちっちゃん」のあだ名で呼ばれるようになってしまった。
千冬さん・・・合掌
今更ですが、この作品の展開が遅い事に気付きました。
展開を早めにした方が良いですかね?