インフィニット・オオカミ   作:陸のトリントン

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今回の話は「現実はそう上手くいかない」という話です。


現実の狼男

千冬さんが食堂で働いていたのが衝撃的だったのか、昼の授業は織斑先生と生徒全員が上の空だった。

 

理由は分からなくもないですが、そこまでショッキングな光景では無いのに。実際に料理を作って、スキルを上げるのが近道なのです。なのに、どうしてそこまでショックを受けなければならないのか分かりません。千冬さんだって頑張ってるのに。

 

そんな不満を抱えつつも、僕は整備室で黛さんの特別授業を受けている。整備をしながら勉強をしているおかげで、黛さんのアシスタントなら出来るぐらいの状態にはなっているけど・・・

 

「非常に言いづらいけど・・・クラス代表戦後の高原君の評判はかなり酷いよ。特に整備班の評判は最悪ね。高原君のせいじゃないけど、動かなくなったISを再び動かすのに結構な手間と時間が掛かってね」

 

僕の立場は悪化の一途を辿っている。クラス代表戦以降、僕を見る目が明らかに変わった。代表戦以前は「興味」や「戸惑い」などの視線があったけど、今では「殺意」や「憎悪」といった視線が増えている。先輩や教員達の対応もかなりドライになっている。そんな中でも真摯に対応してくれる先輩は、黛さんと虚さんと刀奈の三人だけ。教員は千冬さんと山田さん以外に誰もいない。

 

「一組の皆が頑張って高原君の風評被害を食い止めようとしてるけど、焼け石に水と言った状況だね。どうしたらいいんだろうね?」

 

僕が打鉄の整備をしてる横で黛さんは腕を組んで、僕の事で頭を悩ませている。

 

「仕方がないですよ。普通の人なら死んでもおかしくない攻撃を受けたのに、数日で五体満足に動ける人なんていたら僕でも驚きますよ」

 

「そうだと言っても、弟子の君が不当な扱いを受ける事に納得してないのよ。ISが故障したら、全部高原君のせいで済まされるのは不愉快なの」

 

いつから弟子になったんだろう?

 

「ところで、僕が乗るとISがエラー起こす原因は分かったのですか?」

 

「その事について興味深い話を聞いたわ。クラス代表戦の時のデータで、ISの反応値が学園内で飛び抜けていたって」

 

「反応値?」

 

「ISの適正検査で重要視されている部分でなの。詳しく話すと専門の知識が必要になるから省略するけど、その数値が高ければ搭乗者の動きがISに反映されやすいの。で、高原君の反応値が学園内で一番高いんだけど・・・」

 

「高すぎてISが反応に追えなくなったんですか?」

 

「そうだとしたら、警告の一つや二つは表示されるわよ。それなのに表示されずにエラーを起こすなんて可笑しいじゃない?だから、反応値以外に原因があるんじゃないかって調査してたら・・・」

 

「私に捕まったわけ」

 

話を聞いてたら黛さんの背後から刀奈が現れた。どうやって整備室に入ったんだ?ドアは一つしかないし、ドアが開けば音で分かるし・・・超能力?

 

「薫子ちゃん。心配してくれるのは嬉しいけど、和也君の個人情報を盗もうとするのはどうかな?」

 

笑顔なのに笑っていない表情をしている刀奈が黛さんの右肩を掴み寄って来る。

 

「いや・・・そのね。それは、ジャーナリストとしての血が・・・」

 

「薫子ちゃん?何か言う事があるんじゃないの?」

 

「あの・・・」

 

「薫子ちゃん?」

 

「・・・ゴメンナサイ」

 

二人のやり取りを見て、『夫の浮気を問いただしている奥さん』と言う言葉が思い浮かんだけど・・・言葉通りの光景だ。

 

「まあ、薫子ちゃんの言ってる事に間違いはないわ。反応値だけはIS学園いえ、ブリュンヒルデを上回ってるのは事実よ。それ以外は平均以下だけど、そこは頑張って練習よ」

 

猛特訓と達筆に書かれた扇子を広げて説明してるけど、その表情はどこか不安を笑顔でごまかしているようだった。

 

「そうですか。じゃあ、僕は夕飯を作って来ますので先に失礼します」

 

僕は刀奈の辛い姿を見るのに耐え切れず、言い訳をしてその場から去って行った。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「たっちゃん。このままで大丈夫なの?」

 

「大丈夫よ。教員の方は織斑先生と山田先生が何とかしてくれるから・・・」

 

「そうじゃなくて、高原君とたっちゃんの進展よ。高原君、たっちゃんが無理してるって感づいちゃったわよ。このままだと、高原君がどこかで無理をするかもしれないわよ」

 

「・・・・・・」

 

薫子ちゃんの言葉に私は返す言葉が見当たらなかった。

 

確かに薫子ちゃんの言ってる事は事実である。クラス代表戦以降、ISに対する認識以上に狼男の危険性が上がっている。セシリアちゃんは自らの慢心が起こした事故であって、和也君に一切の非は無いと言っても和也君に対する偏見が払拭されることは無く、寧ろセシリアちゃんの行動に正当性があると主張する輩が現れる始末である。生徒会や一部の教員達で何とかしてるけど、結果は悪い方向にしか向かっていない。

 

「ここはさ、高原君に素直に甘えてみたらいいんじゃない?」

 

「でも、和也君は慣れない学園生活で苦労してるのに・・・」

 

「だからよ。頑張ってる高原君にご褒美を与えて、今後の学園生活を有意義に過ごさせやすいようにするのよ。そのプランを立ててあるから大丈夫よ」

 

「・・・本当にデート関連の手回しは早いわね」

 

私は薫子ちゃんの恋愛関連のの手回しの良さに呆れるしかなかった。

 

でも、デートね・・・そういえばデートなんて一度もしたことないわね。

 

「クラス対抗戦が終わった後にデートしたいけどいいかしら?その代わり・・・」

 

「分かってるわよ、デートの事を記事にしても悪いように書かないから。なんせ、私は『高原和也専任記者』に任命されたからね」

 

「任せたわよ薫子ちゃん」

 

薫子ちゃんの言葉でほんの少し期待を持つことはできたけど、胸の中の不安が全て消えることは無かった。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

学生寮 和也と刀奈の部屋

 

「この事については明日、一夏に聞いてみます。一夏が鈴音さんに酷い事を言ったと言う内容で」

 

「頼むわ。はあ、どうしてあんたのお父さんは人の話を聞かないのかしら?」

 

「それは・・・鈴音さんも察してるはずですが」

 

「まあ・・・話を聞く気のない組織に追われたらそうなるわね。後、鈴でいいわよ。何か、同年代に他人行儀な対応されると少し虫唾が走る」

 

「は、はあ。これが普通なんですが・・・」

 

「そういう態度をとってると、女性から舐められた態度をとられるわよ。それにあんたは恋人に対して奥手過ぎるのよ!大体・・・」

 

高原和也。狼男の姿で凰鈴音に恋人との付き合い方を教われている。




ちなみに、鈴はオリ主の父親のせいで狼男を見ても驚くことはありません。
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