文章量の調整は意外と難しい。
ちなみに和也の狼男のスペックは少しずつ紹介します。
そうしないと話が無駄に長くなってしまうので。
卒業式。刀奈先輩がこの学校を卒業する日。僕が刀奈先輩に告白できる最後のチャンス。
僕はそのプレッシャーに飲み込まれそうになりながらも、告白のチャンスを伺っていた。
「がるる・・・」
「おいおい。狼男で卒業式に出るのか?」
「この姿じゃないと落ち着けなくて」
「刀奈先輩に告白するのがか?」
「そ、そうじゃないけど・・・」
「狼男で否定されても説得力を感じないぞ」
教室の中で狼男になっているが、親友は気にかけることなく話してくれる。
昔から地元にいる人は僕が狼男であることを知っているし、その姿で遊んでたりしてたから怖がる事無く接してくれるけど、そうでない人は僕を奇異な目で見て近づかない。
確かに狼男だから、人の能力と本能、狼の能力と本能を掛け持っている。いつ、僕が狼の本能で行動するのかが怖くて遠ざかってると思う。奇異な目で見られるのは慣れてるし、狼になりそうな時は人気の無い所か、理解者や友人の前で狼男になって何とかバランスを保ってる。
この人と狼のバランスをとるのが非常に難しい。狼男には好きな時になれる。だけど、ストレスが溜まると狼の本能か人の本能なのか狼男になりたくてムズムズしてしまう。さらに無理をして溜め込むと、感情の爆発と同時に狼男になって暴走しだす。しかも、暴走した時の記憶は無いという嬉しくない特典付き。
過去に一回暴走したけど、母さんの激怒した顔を見て三秒で沈静化したらしい。
「お前、いい加減腹をくくって告白をしろ。このSHRが終わったら、一回きりの告白チャンスが来るんだから」
「分かってるけど、どうも口が動かなくて」
「狼男になって夜、山の中で遠吠えするお前が言うセリフか?」
「ぐるる・・・」
「このままだと、お前のあだ名は『
「そのあだ名は勘弁してほしい」
「何がいいんだよ?『餓狼』?『牙狼』?それとも『ワイルドウルフ』?」
「いや、狼から離れて・・・」
僕のあだ名はすべて狼関連のあだ名しかない。狼男なんて珍しいからな。
「皆、席に着け。高原、元の姿に戻れ。卒業式を狼男で迎えるのは先生としては嬉しくないぞ」
「すみません」
「まあ、本音を言えばその姿で卒業式に出ても良いんだけどな」
ちなみに僕のクラス担任は学校でも数少ないホラーオタクです。僕の狼男を見た瞬間、僕がドン引きするぐらい目を輝かせるほどのオタクです。
・・・・・・
「いやー、終わった」
「終わったね」
SHRが終わり、僕は親友と一緒に学校を出た。
「お前、まさかこのまま帰るのか?」
「え・・・」
「あそこに『高嶺の花』の刀奈先輩がいるぞ」
親友が指した所に刀奈先輩がいる。しかも、学校名物の大きな桜の木の下で待っている。
「学校のチャイムは故障して鳴らない。刀奈先輩は桜の木の下で待っている。しかも桜は咲いている。お前は恋愛ゲームにありがちな「卒業式の日に告白する」というシチュエーションを台無しにするのか?」
「何を言ってるのか、さっぱり分からないよ」
「とにかく行って砕けろ」
僕は友人に押されるがままに刀奈先輩の所へ行かされた。
・・・・・・
「はぁ。結局、高原君には会えなかった・・・」
リムジンが迎えに来る時間が迫って来てる。『更識刀奈』として最後の学校生活になるのに、告白もできずに終わるなんて。
「簪ちゃんと仲直りして、更識の当主になると決めたのに、告白が出来ずに終わるなんて」
この大きな桜の木の下で愛が実ると、その愛は永遠に続くと言う噂を聞いたけど・・・
「噂・・・だよね。はあー、何か期待した私がバカだった」
高原君に告白できずに終わる。これも青春なのかな・・・
「刀奈せんぱーい!」
「この声は確か・・・」
高原君の友達の声?
「いやー、すみません呼び止めてしまいまして」
「いいえ。別に私は気にしてないから。生徒会長、最後の仕事は何かしら?」
私は「生徒会長」と達筆に書かれた扇子を広げた。まあ、察しは付くけど。
「いえ。俺じゃなくて、こいつなんです」
友人の背後から高原君が顔を出した。
「高原君?」
「そうなんです。俺の用はこれだけなんで、それでは先に失礼します!」
高原君の友達は空気を読んで疾風の様にその場を去ってくれた。
・・・・・・
どうしよう。親友のお陰で何とか桜の木の下に着いたけど・・・緊張する。
脈が早くなってるのが分かる。このままだと緊張のあまり、狼男の姿で告白してしまう。それだけは避けなくては・・・
「か、刀奈先輩!」
「何かしら?」
「ご、ご卒業、おめでとうございます」
「ありがとう。高原君に生徒会を任せたから、頑張ってね」
「は、はい!」
うおー!あほー!告白をするんだろ、告白を!こ、告白をしないと・・・
「あら、迎えが来たみたい」
・・・え?
「高原君。私が卒業しても元気で学校生活を送ってね」
刀奈先輩がリムジンに向かって歩き始めた。しかも、黒スーツの男が僕を睨んでる。
「あ・・・」
駄目だ・・・僕の告白は未遂で・・・
・・・・・・終わってたまるかぁ!
「あの!」
「ん?何かあるの?」
刀奈先輩が振り向いてくれた。黒スーツの男が何か身構えてるけど、気にしたら負けだ!
「一つ、言い忘れたことがありました!桜の木の下まで来てくれませんか?」
刀奈先輩が黒スーツの男を説得して、何とかチャンスを手に入れた。
「なーに?私に言い忘れた事って?」
どうする?このまま告白なんてしたって、突然の事で呆然とするからちょっとした前書きを言おう。
「その・・・僕、刀奈先輩に出会えて色々と変わりました。特別扱いされて生きてるのが億劫だった僕を助けてくれたのは先輩でした。狼男である僕がこうして学校生活を送れたのは先輩のお陰です。何でもそつなくこなして、いつも笑顔を絶やさない先輩に僕は元気を貰いました!」
「うん・・・それで?」
リアクションがイマイチ!?
・・・ええい!当たって玉砕して死んでやる!
「そんな僕が言うのもおかしいんですけど、僕は・・・」
「僕は?」
「刀奈先輩が好きなんです!どうしようもなく好きなんです!」
「・・・・・・」
桜の花びらが何枚か舞ってるけど、告白のセリフ・・・間違えた!?
「ぷっ!」
・・・え?
「あっははははは!」
わ、笑われたー!ああ・・・僕の青春が・・・
「悩んでた私がバカみたい!」
「え?」
「実はね・・・私も君が好きなの。友達じゃなくて恋人として付き合いたいの」
僕の何かが動き始めた。
「い、いいんですか!」
「告白したのはそっちよ。いいに決まってるじゃない」
刀奈先輩は僕に近づき、紙を差し出した。
「この紙に私の携帯の番号とメアドが書いてあるから、寂しくなったらいつでもかけてね。それじゃ・・・」
そして、刀奈先輩は僕の唇にキスをした。
「最初で最後の中学生のキスよ」
「先・・・輩」
「先輩って呼ばないの。刀奈って呼んで」
「か、刀奈・・・」
「好きだよ、和也君」
顔を赤くし、刀奈はリムジンに急いで乗り込み、僕はリムジンが走り去ってもその場から動かなかった。
・・・・・・
「ああ、良かった!両想いだったなんて!」
私はリムジンの中で今回の告白に歓喜している。
「勇気を出して告白した姿・・・最高!」
車窓を開けて、先程告白を受けた学校を見た。大きな桜の木が小さく見える程、遠くまで移動しているのに・・・
「ウオーーーーーーーーン!」
私と和也君の恋路を祝福するかのように、彼の遠吠えと学校のチャイムが町中に響き渡った。
次回でISがやっと登場します。