インフィニット・オオカミ   作:陸のトリントン

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皆さん、お待たせしました。

クラス対抗戦当日の話です。

今回は会話メインの話なので、対戦描写はありません。


狼男とクラス対抗戦 その1

僕の公開処刑の後、刀奈の提案でクラス対抗戦で一夏が優勝したら鈴の真意を明かすという形で事を収められた。

 

鈴さんは公開処刑を執行できたのかどうか分からないが、やけに上機嫌でした。僕は恥ずかしさのあまり、色んな意味で死にたいと思った。刀奈は何故か勝ち誇った顔をしていたけど、何と戦ってるんですか・・・

 

ISの練習は、謎の活動停止を起こしては直し、起こしては直しの連続です。周りからは黛さんを利用しているのではないかと噂され、何故か目の敵にされる始末。黛さんも誤解を解こうと頑張っていますが誰も真摯に耳を傾けてくれません。

 

僕自身も誤解を解こうとクラスメイトと頑張っていますが、誤解が解ける気配がありません。

 

悪戦苦闘をする中、クラス対抗戦の日がやってきました。しかも一回戦から一夏と鈴の対戦。簪さんの特訓を受けてるとは言え、相手は中国代表候補生。しかも、父さんと一緒に冒険をした仲(?)だから、油断できない相手だけど・・・

 

「一人で観戦か・・・」

 

最前列で観戦しているが、僕が座ってるエリアだけ人がいない。周りのエリアを見てみると、おしくらまんじゅうみたいに詰め寄って座っている。

 

「はぁ・・・何もしないのに」

 

他の生徒達の言動や黙認する教員の方々にうんざりしつつも、僕は二人がいるアリーナのフィールドを見つめている。

 

「あれが鈴さんの専用機なのか」

 

鈴さんの専用機は第三世代では珍しく、燃費と安定性を重視して作られた機体であると父さんから聞いた。何でも一緒に冒険をして、ISの強さに疑問を感じたとかどうとか話していたけど父さんと一緒に冒険したら、世界が180度変わって見えてしまうから仕方がない。鈴さんは悪くない。悪いのは父さんだ。それ以外の理由が考え付かない。

 

「たかや~ん」

 

背後からのほほんとした声が聞こえて来た。声の正体は言うまでもなく、のほほんさんだ。

 

「のほほんさん。どうしたんですか?」

 

「隣に座っていいかな?」

 

「いいですけど」

 

「えへへ~」

 

何故かにやけながら僕の隣に座るのほほんさんを見て、何故か寒気が走った。こういう時に限って碌な事しか起きない。

 

「皆はどうしたんですか?」

 

「たかやんの所に行こうとしたら、先生達に止められた。私だけがたかやんの所に行けた~」

 

「そうですか・・・はぁ」

 

「たかやん、怒ってる?」

 

「怒ってはいないです。ただ、いつになったら他の生徒と話せるんだろうと思っただけです」

 

「気持ちは分かるけど、焦っては駄目だよ。慎重に行動しないと」

 

「分かってる」

 

いつもの近況に対して会話をした僕とのほほんさんだが、一つの疑問が浮かんだ。

 

「のほほん。一つ聞いてもよろしいですか?」

 

「なに?」

 

「入学当初から僕に抵抗なく接してくれて嬉しいんですが、怖くなかったんですか?」

 

「そんなに怖くなかったよ。会長からたかやんの話を聞かされてたから」

 

「かた・・・楯無さんが?」

 

「そうだよ。会長の悩みを解決してくれた事とか、会長を褒めてくれた事とか、会長の仕事を手伝ってくれた事とか、色んな話を聞かされたよ。だから、たかやんは悪い人じゃないのは分かってたよ」

 

事前に刀奈から話を聞いていたから、抵抗なく・・・ちょっと待って。何で刀奈から話を聞けたんだ?

 

「楯無さんとは昔からの知り合い?」

 

「うん。幼馴染でね、更識家に仕えるメイドさんなんだよ~」

 

「・・・仕事を無駄に増やしかねないメイドさんみたいだ」

 

「え~。かんちゃんと会長と同じことを言ってる~」

 

「かんちゃん?」

 

「おりむーにISの指導をしている子だよ」

 

更識家と「かんちゃん」に関しては刀奈からほんの少しだけ聞いたけど、のほほんさんの家系が凄い家系である事が分かったよ。

 

「でもね、私もたかやんには感謝してるんだよ」

 

「感謝?」

 

「うん。実はね、かんちゃんと会長は去年まで仲が悪かったの」

 

「自分の優れた能力が原因で妹にコンプレックスを持たせてしまった事ですか?」

 

「知ってるの?」

 

「会長の悩みが妹との仲直りと自分の家系についての相談だったからね。その時の思い詰めた表情は、今でも覚えてます。生きる事に意味を見いだせなくなって、自分という存在を自ら消し去りたいと願わんばかりと泣きついてきました」

 

二人きりの時だけ、刀奈は生徒会室で僕に相談を持ち掛けていた。最初はちょっとしたプライベートの悩みだったけど、段々と家系と妹に関する悩みが増えていった。学園祭が始まる1週間前、刀奈は僕だけに更識家と自分が次期当主になるという事を涙ながら話した。妹との不仲、自分と他人が生きている世界の違いに、彼女の心はボロボロだった。もう、いっそのこと自分という存在がこの世界から消えたいというほどであった。

 

「でも、たかやんが真摯に相談に乗ってくれたお陰でかんちゃんの仲も元通りになったし、家系で思い悩む事も無くなったの。だから、私もちゃんとお礼が言いたいの」

 

のほほんさんの言う通り、実体験を交えながら刀奈の相談に答えた。彼女の支えになりたい一心で努力した結果、彼女は妹との不仲を解消し、更識家の次期当主のなった。

 

「お礼って、会長の支えになりたいと思って頑張っただけで・・・」

 

当主になったからと言って、特別扱いする事も無く接しています。彼女も一人の女性ですから。

 

「支えになりたい一心で頑張った結果、会長の心は救われた。それは布仏家代表して、感謝します」

 

のほほんさんは真面目に言ってるはずなのに、間延びした口調のせいなのか緊迫感が伝わってこない。

 

「いや、別に・・・」

 

大したことでは無いと言おうとした時、アリーナのフィールドから大きな爆発音がした。アリーナの遮断シールドの防音効果で耳がやられることはなかったけど、フィールドの中央では黒煙と炎が上がっている。

 

「あれは何!?」

 

さすがの出来事にのほほんさんは慌てている。狼の本能なのか、慌てることなく警戒心を剥き出しにしている僕がおかしいんだ。

 

「あれは・・・」

 

煙が消え、そこから現れたのは黒いISの姿をした何かだった。




次回から、無人機との対決を予定しております。
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