卒業式に告白して楯無こと刀奈と恋人になった僕は「ギャルゲーウルフ」という不名誉な称号を授かり中学三年生になった。刀奈とは電話やメールでのやり取り以外できないので、絶賛遠距離恋愛中です。IS学園の生徒会長に更識家の当主、更にはロシアの国家代表になるための特訓を毎日やっているらしいです。
本当はデートの一つや二つはしたいけど、仕方がありません。
僕の方は変わらず副会長を務めています。どうやら、僕が生徒会長になることを不愉快に思う人たちが多数を占めていたせいで生徒会長にはなれませんでした。まあ、慣れてるから別に構いませんが。
そんなこんなでそれなりに学校生活を満喫し、地元の高校に受かって卒業式まで待ったなしと思っていました。
「何で、僕達がこんな目に・・・」
「おいおい。今更、愚痴をこぼしたって仕方がないだろ」
友人に愚痴をこぼす程、僕は今の状況を喜んでいません。
卒業式に向けて準備を始めた矢先、世界で初めてISを動かした男性が現れた。
名前は織斑一夏。
「ブリュンヒルデ」という異名を持つ世界最強のIS操縦者「織斑千冬」の弟。
彼がISを起動したおかげで、全世界で第二の男性IS操縦者の捜索が行われた。
僕の町でも捜索が行われたが、町全体が捜索する気がない。
なんせISに対して町全体が無関心だからだ。ISがあろうとなかろうと町はいつも通り穏やかで平々凡々。都心ではISという存在が大きいが、こっちは狼男という存在が大きい。その違いが町がISに無関心だと考える。
話は逸れたが、僕が落ち込んでる理由はISの起動試験を受ける事ではありません。
「何でISの起動試験を体育館でやるの・・・」
体育館で起動試験を行うことです。卒業式の準備で体育館の掃除を終えたばかりなのに、勝手に体育館で起動試験を行われるのは努力を水の泡にさせられた気分です。
「でもさ。こんな町に織斑千冬が来るなんて、運がいいのかな俺達は?」
「僕は、織斑千冬が狼男に興味を持ってるだけだと思う」
しかも、織斑千冬さんがわざわざ来てるので周りは女性のガヤでうるさいです。
「次の方、どうぞ」
「俺の出番だ。ほらよっと」
いつの間にか友人がISに触れて起動しないことを確認した後、ガッツポーズをとっていました。
「和也!次、お前の番だぞ」
「まあ、起動する訳ないだろうし・・・」
僕は係員に従いISの前に立った。
「そのISに触れてください」
「分かりました」
僕はやる気なくISに触れた。まあ、起動する訳ないだろうし・・・
「・・・え?」
ISが光った・・・起動したの?
「起動したの!?」
数人の係員が慌ててディスプレイを見てる。これって・・・
「和也・・・動かしたのか?」
「みたいだね・・・どうしよう?」
「どうしようって、狼男で逃げたら?」
・・・逃げるのも戦いの一つだしね。僕はISに乗るんじゃなくて、人並みの生活をして人並みの幸せを感じて人並みの人生の終わりを迎えたいからな。
「逃げ・・・」
「逃げるな」
逃げようと180度旋回したら、織斑千冬さんがそびえ立っていました。
「ここで逃げたら、様々な研究機関が君を手に入れようとあらゆる手段を尽くす。それでもいいのか?」
万策尽きる・・・
・・・・・・
「母さんごめん。こんなことになって」
「大丈夫よ。何年カズ君のお母さんをやってると思ってるの」
僕がISを起動させて三十分足らずで母さんが呼び出され、学校の応接室で僕と母さんと織斑千冬さんによる三者面談が行われている。
「では、話をさせていただきます。息子さんがISを起動させました。ここで彼に二つの選択肢があります。研究機関等に所属するか、IS学園に入学するかのどちらかです」
「IS学園って、あのIS操縦者を養成する学校ですか?」
「え、ええ・・・」
母さんが間の抜けたトーンで質問したのか、織斑千冬さんが戸惑いながら返答した。母さんはいつもこんな感じなんです、織斑千冬さん。
「研究機関等の所属は彼がISを起動させたメカニズムが分かるかもしれませんが、人体解剖など人権の侵害に関わるおそれがあります。我々としては彼の保護を兼ねてIS学園に入学することを推奨します」
「あら、そうですかぁ。カズ君、IS学園に入ったらいいかなって思うけど?」
母さんは僕を心配してIS学園に入学することを勧めてるけど、僕には人並みの幸せを得るという夢があるのに・・・
「すみません。僕には地元の高校へ進学することにしてるので、研究機関とIS学園のどちらも行くことはないです」
すると、千冬さんの表情が暗くなった。
「残念な話だが、進学は諦めるしかない」
「え?」
「君がISを起動させた事は全世界に知れ渡っている。君が狼男だという事もだ。仮に地元の高校へ進学したとしても君の命を狙う者がこの町に来るだろう」
「じゃあ、IS学園か研究機関のどちらかしかないんですか?」
「君には辛いだろうが、その二つしかない」
「分かりました。IS学園に入学します」
研究機関等に所属してモルモットみたいな生活だけはしたくない。僕は狼男であっても人間として生きたい。
「あのぉ。私はどうなるんですか?」
「お母様は政府から指定された施設で生活していただくことになりますが」
「だったら、私もIS学園に入れさせてくれませんか?」
・・・え?
「お母様。それは・・・」
「食事やお掃除は得意中の得意なので、用務員か食堂で働けないでしょうか?」
「いや・・・」
母さんの独特なオーラに千冬さんがしどろもどろになってる。
「だめでしょうか?」
「後で・・・聞いてみます」
ブリュンヒルデが妥協した。
「二日後にお迎えに参りますので、それまでに荷物の準備をお願いします」
「分かりました」
僕がこの町にいられるのも明日までか・・・何だか寂しいな。
「あのぉ」
「何ですか?」
「一緒に昼食を食べますか?」
「・・・大丈夫です」
千冬さん・・・・・・僕の母さんはいつもこんな感じです。
次回は狼男のスペックとIS適正試験を執筆する予定です。