五人が一夏の彼女になるには何か物足りなさを感じたので。
IS学園
それはIS操縦者、技術者の育成を目的とされ、あらゆる国家や組織の干渉を受けないという特殊国立高等学校である。僕はそのIS学園で新しい学園生活を始めることになった。狼男と言うのは既に知れ渡っているから皆が奇異な目で見ても気にはしないけど・・・
「これは・・・想像以上に辛い・・・」
匂いだけはどうにかならないのものか。窓はすぐに閉められて教室内は何かの匂いでいっぱいだ。おかげで体調はすこぶる悪い。何度吐きそうになったか。それに・・・
「・・・」
隣の人は緊張のあまり硬直している。確か織斑一夏だったけ。もういいや。僕は入学までの三週間、参考書との格闘で・・・眠い。
「全員揃ってますね!それではSHR始めます」
眠気と吐き気。その両方に襲われてる僕は・・・
「Zzz・・・」
初日から寝てしまった。
「・・・!・・・!」
・・・ん?
「・・・!・・・・・・!?」
何か・・・声がするような・・・
「た・・・!・・・せ!」
すごく・・・怒っているような・・・
「目を覚ませ!」
「はいっ!」
僕は誰かの怒号に目が覚めた。
「い、居眠りして・・・す、すみません!」
最悪だ。学園生活初日から居眠りしてしまうなんて。
「全く・・・お前は居眠りするためにIS学園に入学したのか?」
僕の目の前には黒スーツの織斑千冬が出席簿を片手に見ていた。
「すみません・・・」
「まあいい。高原、自己紹介をしろ」
僕の出番まで回ったのか。周りは呆然と僕を見ている。ここは自己紹介でなんとかイメージアップさせないと。
「高原和也です。皆さん知っての通り、ISを動かした二番目の男性操縦者で狼男です。ですが、狼男とか関係なく一人のクラスメイトとして接してください。これから一年間よろしくお願いします」
「「「「「・・・」」」」」
女子校でこんな自己紹介しても、ノーリアクションなのか。
「高原・・・」
「はい」
千冬さんはポケットミラーを取り出し、僕の顔を映した。
「狼男ですが・・・何か?」
「はぁ・・・どうしてそこは母親譲りなんだ?」
「いや、狼男だってことは既に・・・」
「知られているが、全員が信じてるわけではない」
改めて教室を見回すと、僕の姿に怯えてる人が半数以上を占めていた。
「高原。授業を受けるときは狼男にはなるな」
「すみません。気をつけます」
こうして、僕の学園デビューは盛大に失敗した。
・・・・・・
「はぁ。盛大に失敗したな」
中学の時は狼男になっても特に言われることなんかなかったけど・・・
「狼男になれないのは・・・辛いな」
そうなると、夜中に狼男で学園内を走り回るしかないか。いや、夜間の警備はいるからまずは説得を・・・
「あの・・・」
「ん?」
考え事をしてたら、誰かが声を掛けてきた。
「高原・・・和也だよな?」
声の正体は織斑一夏だった。というより、そんなに怯えなくていいんだけど。
「確か・・・織斑一夏君だっけ?」
「ああ。寝てたから聞いてなかったもんな。俺は織斑一夏。よろしく、高原」
「よろしくお願いします、織斑君」
僕は友好の証として握手しようと右手を差し伸べたが・・・
「ああ、俺は一夏でいいよ」
一夏は何かに恐れ、頭を掻くために右手を使った。
「じゃあ、僕の事は和也って呼んでくれないか?」
「ああ。和也、一年間よろしく!」
そう、爽やかに返答したけどすごく怯えてるのは目に見えて分かってるから。ここは素直に謝って交流を深めないと。
「ごめんね。僕が狼男のまま自己紹介して、怖かった?」
「いや!・・・怖いと言うかなんというか・・・」
完全に怖がってること隠す気ないよ・・・
「とにかく凄いんだな!狼男になれるなんて」
「僕は生まれつき狼男になれる体質とかじゃなくて・・・」
「ちょっといいか?」
狼男になった経緯を話そうした時、ポニーテールの少女が僕の声を遮った。
「箒?」
「知り合いなんですか?」
「俺の幼馴染だが・・・」
一夏の幼馴染である箒さんは何故か僕を厳しい目つきで睨んできてるんだけど、何もしてないよ。ただ、男同士仲良くしようと会話しただけですが。
「すまないが、一夏を借りていいか?」
「別にいいですが・・・一夏は?」
「俺は構わないぜ」
「では、屋上で話そう」
箒は一夏の手を引っ張り、教室を後にした。
さて、教室にいる男性操縦者は僕一人になりました。
「あの子が二人目の男性操縦者よ」
「狼男の姿で自己紹介したって・・・」
「小さくてかわいいよね」
「狼男はちょっと・・・」
「狼男がなんでこんな所にいるの・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・狼に食べられたい・・・」
色んな人の意見が聞こえてくるけど、気にはしていない。気にしたら負けだからだ。
「知ってる人がいないとこうなるんだ・・・」
まあ、ここから新しく友達を作ればいい話だし。今は参考書を読むか。
「この参考書、分野ごとに分ける事はできなかったのかな?」
ISの基礎知識から進学までに必要な知識が詰め込まれている参考書だが、電話帳と見間違えるぐらい厚い。
ISの法律やシステムの説明、使用されている武装や歴史などが参考書に書いてあるが、一つの本にまとめる理由が分からない。分割した方が分かりやすいと思うのに。
「えーと・・・各武装のセッティングの注意事項と・・・」
「たかや~ん」
何か母さんみたいな間の抜けた声が聞こえたけど・・・気のせいかな?
「たかや~ん」
とりあえず反応はしよう
「えっと・・・僕の事?」
「そうだよ~。高原だから、たかやん」
僕に声を掛けたのは母さんと似た雰囲気を持ちボデボデの袖が特徴の少女だ。
「確か、布仏本音さんですか?」
「そうだよ~。のほほんって呼んでね~」
「よ、よろしくお願いします。のほほん」
洞察力は優れてるけど、警戒する必要はないか。
「たかやんは意外と警戒するね~」
「野生の勘が勝手に教えてくるから」
「狼男になったのはそれが原因?」
「あれは癖でね、仮眠をとる時には狼男になった方が楽なんだ」
「そっか~」
周りの人は僕を奇異な目で見てる中、授業開始のチャイムが教室中に響き、各々の教室に戻って行った。一夏も戻って来たけど、何か暗いな。
「・・・」
「一夏、どうしたんだ?」
「い、いや、何でもない・・・」
僕を見るなり顔を背けたけど、箒さんに何を言われたんだろう。
そんな疑問が残る中、授業は開始された。
次回はイギリス代表候補生が色々と言います。