スパイダーマンとセシリアの揉め事の後、千冬は頭を抱えながらも職員室に戻り、束と連絡を取ることにした。普段なら掛けて来いなどと言わない束の事だ。何か重要なことでもあるのだと思ってかけてみる。案の定、連絡はすぐに着いた。
「はい、もしもし。」
向うからは数年ぶりの友人の声が聞こえた。
「私だ。」
「ちーちゃん!よかった~!かけてきてくれたんだね~!いやあ~束さんはうれしいよ~!」
束は嬉しそうに言うが千冬にとっては相変わらずだと少し呆れた。
「それで私に用事ってなんだ?大変だと言っていたからかけたが・・・・」
「そうそう!実はね、ちーちゃんにだけ教えるビックニュースがあるんだよ!」
「もったいぶらないで早く言え。私だって暇じゃないんだ。」
「そう怒らないでよ~。久しぶりの会話なんだからさ~ねっ?」
千冬は頭を抱えた。これで本当にくだらないことだったら電話を切ろうかと考えた。
「実はね・・・・・」
「うん。」
「いっくんがが生きていたんだよ!」
「はあ?」
千冬は呆れた。今まで消息すら掴めなかった一夏が生きているなんてどうして、どこにいるかもわからぬ束が知っているのだ。冗談にもほどがあるため千冬は電話を切ることにした。
「言いたいことが終わったなら私はもう切るぞ。」
「ちょっ、ちょっと待ってよ!本題はここからなんだから~!」
「一夏が生きているならどこにいる?お前にしては見え透いた嘘すぎるぞ、束。」
「むきー!ちーちゃんにそんなこと言われるとは思わなかったよ!だったら、この束さんが教えてあげるよ!いっくんは・・・」
「はいはい、どこだ?アメリカか?中国か?」
千冬はもう呆れて真面目に聞くのもばかばかしくてしょうがなかった。
「スパイダーマンでした!(´▽`*)」
「はあ!?」
千冬は唖然とする。あの覆面男が一夏?確かに素顔は見ていないから断定できないがあの行動からにしてどう見ても一夏とは考えにくい。千冬は一呼吸おいて束に真面目に聞く。
「確かにスパイダーマンという男が今日私のクラスに来たがどうして奴が一夏だといえる?根拠はどこにあるんだ?束。」
「ふふふふ、そこがこの束さんのすごいところなんだよ~!」
千冬はおそらく向こうでは束が自慢げに答えようとしている姿が思い浮かべた。
「私も最近見つかった男性初のIS適合者に興味をもってね。彼の経歴を洗いざらい調べてみたんだよ。そしたらどうなったと思う?」
「正体がつかめたのだろう?」
「ところがどっこい!分かったことは彼が最近の正体不明の怪事件に関わっていること以外はな~んにも出てこないんだよ!つまり、経歴については全く正体不明!そこで別の方法で調べてみたんだよ。」
「と言うと?」
「過去の医療機関の資料をあさっていたら偶然彼の血液サンプルが保管してある病院があったのを確認したんだよ。その病院に頼んでそのサンプルを分けてもらったんだよ。」
「それって・・・・お前一体どういう方法で・・・」
「それは、ひ・み・つ!」
千冬は考えた。おそらくあの束のことだ。また何らかの取引でもして譲ってもらったんだろう。でなければ、早々簡単に渡すわけがない。
「それで、彼のDNA検査をした結果、一夏と一致していたということか?」
「ピンポ~ン!さすがちーちゃん!読みが早いね~!これでわかったでしょ?この束さんのビッグニュースだってね~。まだ素顔を見ていないから本人だと言いきれないけど・・・・?ちょっと、ちーちゃん?聞いてる?」
携帯からは束の声が聞こえていたが千冬は何も答えることができなかった。
「一夏が生きていた・・・・でもどうしてあんなことを・・・・」
彼女がこの理由を知るのはまだ先のことになる。
放課後、スパイダーマンは一人職員室に来た。
理由はあのセシリアとの件での注意である。しかし、彼らしく廊下には誰もいないにもかかわらず天井を蜘蛛の如く移動しながらやって来た。そして、千冬の目の前でも決めポーズを決め現れた。そして注意をし終えた後スパイダーマンが去ろうとしたとき千冬が呼び止める。
「そろそろ、正体を見せたらどうなんだ?スパイダーマン・・・・いや、一夏。」
スパイダーマンが足を止める。
「・・・・・・・」
「お前の過去を調べさせてもらったとき、私の友人がお前の血液サンプルをもらってな、検査をしたら私の弟と一致していた。これでも否定するなら構わないが・・・・」
「・・・・・・・」
スパイダーマンは黙ったままだった。
「もし、お前が本当の一夏だったら聞いてくれ。あのとき、お前が誘拐されたとき、政府が口封じをしていたとはいえ私はお前を守ってやれなかったと後悔していたんだ!私がもっとしっかりしていればと。だから、許してくれとは言わない。私の一生の頼みだ。もう一度二人で一緒に暮らさないか?今までお前のことを見ていなかった分今度は・・・・・」
「はははは・・・・」
「?」
スパイダーマンは突然笑い始めた。
「はははははは・・・・・ははははは。」
「スパイダーマン?」
スパイダーマンは振り向き千冬を見る。
「流石は束さんだな。俺の血液を見つけて正体を暴くとは・・・」
「やはりお前は一夏なのか!?」
「そうさ。俺は、元あなたの弟の織斑一夏だ。」
「一夏、お前は今までどうして・・・」
「だが、俺は貴様のことを許せん!!!」
「え?」
千冬はその言葉に衝撃を受けた。
「確かにあの時は政府の連中が口封じをしていたからすべてがあなたのせいだとは思っていない。だが他のことはどうだ!俺は昔から周りに『出来損ない』、『織斑千冬の恥さらし』、『劣化コピー』と散々言われてきたんだ!俺はそれを敢えてあなたには言わなかった。何故かわかるか?」
スパイダーマンの問いに千冬は何も言いようがなかった。一夏は確かに自分に比べて劣っている部分が多かった。しかし、彼女は必ず越えられると信じて敢えて何も言わなかった。この行いは一夏の友人だった弾たちによってわかり、ひどく悔やんだ。スパイダーマンは言葉を続ける。
「それは余計なことで心配させたくなかったからだ。でも、あなたと見たらどうだ!俺は、あなたに褒められたことが一度もない。周りからもだ。だから苦しかった。あなたのそばにいることが。自分の居場所がないことが!でも、今の俺はスパイダーマンとして自分らしい自分を見つけることができた。俺はもう居場所がないところに戻るつもりはない!」
「待ってくれ、一夏。そのことについては・・・・」
千冬は言いかけるがスパイダーマンはポーズをとりお馴染みの言葉を言う。
「復讐に燃える男、スパイダーマン!!」
ジャンジャジャーン!ジャジャジャン!デケデンデンデンデン!ジャンジャジャーン!
「今言った通り、俺はあなたを姉とは認めない。後、もう俺をその名で呼ぶな!織斑一夏はあの時死んだんだ!」
そう言い残すとスパイダーマンは脱兎のごとく走り去ってしまった。現場には千冬だけが残されていた。
「私は、私は・・・・・どうしたらいいんだ・・・・・」
千冬はもう取り返しがつかないと悟り、涙を流してその場に膝まづいた。
「一夏・・・・・・一夏・・・・うぅ・・・」
その光景を遠くからスパイダーマンが眺めていた。
「ごめんね・・・・千冬姉・・・・・」
彼はそう言い残し去っていった。
スパイダー・ストラトス初のシリアス回だと思います。面白くないかと思います。なお、原作を読んでいない分、キャラ崩壊の危険性大ですので続く場合は読者の方には苦情が来る可能性があるのでその場合はこの作品は白紙に戻るのかもしれません。それではまた機会があればまた次回。