そよ風と荒風の間に   作:かえー

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5-3 革命

艦娘達の目線の先には島風が立ちはだかっていた。島風は口を開く。「ごめん、聞いた。さっきの話聞かせてもらった。」

いつも通り島風は真顔でその目は紀伊を見据えていた。「私は…どうして艦娘になったのか、いつ艦娘になったのか、どうやって艦娘になったのか…分からない。艦娘は言うことを聞くのが使命だと前から思っていた。けど…数日前に気づいた、自分達には意志があるって。自分で戦う意思を持てば…今までと何かが変わるって思った。けれど…」島風は目を背ける。神通が体を支える。

「けれど…意志を持って戦った艦娘は…海に沈んでいった。私は怖かった。意志を持つことが。私は考えた。意志を持つか持たないか。私はあの日のことを思い出した。あの、提督が辞めたあの日のこと。皆は違反を無視して提督を止めた。覚悟を持っていたんだ。私になかったのは意志ではなく覚悟。」島風が紀伊に近づく。そして、紀伊を見上げ決意した。

「私は…責任を全うするため、自分の意志で言う。私はこの日本海軍連合艦隊旗艦を引き継ごうと思う。この覚悟を私は忘れない。だから…皆、私についてきてくれる?」

皆、顔を見合わせる。しばらくして、一人前に出てくる。

出てきたのは…黒い帽子に水色の髪、背が低いその姿…その名前は響だった。「乗るよ。私は君と同じ船に乗る。どんなことがあっても私はついていくよ。」島風の前に手を差し出す。集団の中から続々と艦娘が出てくる。夕立、竹、時雨、霞、能代、長門、ドイツ艦…支えていた神通も手を添える。敷波も吹雪も頷いて手を添える、やがて、その場にいる全員手を乗せる。後から来た信濃も手を乗せる。そして、紀伊はにこっと笑い手を乗せる。「島風さん、これが貴方の仲間です。」改めて島風は艦娘を見る。皆島風を見ている。「…私は深海棲艦と和睦する。それでもついてきてくれる人は…私についてきて!!」島風は走り出した。出撃口に向かって…

 

::::::→サーモン諸島

海上には大和率いる連合艦隊が戦いを繰り広げていた。が、大和たちは弾薬が切れはじめ、火力も落ち始めていた。

「被弾報告。飛龍、最上が被弾。」「気にせず戦ってください。それぐらいじゃ死にやしません。」笑顔のまま、空母棲姫に砲撃を続ける。そこに、人工棲姫がまた、目標補足していた。「ターゲットロックオン。目標、大和。武装全門開け、徹甲弾、対艦ミサイル、超電磁砲、すべて装填完了。」砲が向けられたことにやはり気づかない大和。「はっ…」母相が火を噴く直前に人工棲姫はバランスを崩す。バランスを崩させた相手は…空母棲姫だった。空母姫はわざと人工姫にタックルし、砲撃をやめさせたのである。が、大和はその空母姫に攻撃を続ける。「貴方は…絶対潰す。」が、空母姫は人工姫を羽交い絞めにし始めた。これじゃ、空母姫を狙うことができない。

「新たな艦影!!十二隻います!!」「…あれは、島風ちゃんだ!!」

 

文月が指差したそこに、島風が率いる連合艦隊が到着する。

「お疲れ大和。あとは休んで…」大和は手を振り払う。「ふざけるな!あと少しなのに…引けるわけない!!」

その言葉を聞き島風は呆然とする。が、意気があると思いそのままほおっていおいた。

島風たちは深海棲艦を撃沈ではなく損傷させ、できるだけ退避させた。そこに姫が一人乱入する。

白い髪をツインテールにし、不敵な笑みをする…南方戦棲鬼だ。彼女は砲撃こそしないが、この戦況を楽しんでいるようだった。

「島風、深海棲艦には過激派と普通の組があるそうだ!南方海域は過激派による犯行だ!」「…あの鬼を叩く!私に続い…」「待った!そこは私に任せてほしいわフラッグシップ!」ビスマルクが前に出る。「私の攻撃、かわせるかしら?」ビスマルクたちは砲撃を開始する。加え、ビスマルクは魚雷を発射した。

砲撃は避けるが、突然の雷撃に南方戦棲鬼は被弾し、艤装の4割を消費した。そのまま不敵な笑みは変わっていない。それと同時に、大和が水面に足を着いた。「大和!」朝日が近づく。大和の顔は苦しそうだった。

「…戦闘を続行…してください…!」苦し紛れに大和は命令した。

 

その中、空母姫に縛られていた人工姫が、ミサイルを発射する。誘導能力はなかったが、無差別に艦娘に襲いかかる。「私に任せてください。51cm砲の凄さ…見せます!」紀伊の背後の主砲が動く。他の艦娘は砲撃体制のため離れる。砲塔が動くと同時に海域に轟音が鳴り響く。そして、ブザーが鳴り発射態勢が整った。

「音響弾、装填!発射!」凄まじい轟音が響き渡る。遠くにいる艦娘でも衝撃で吹き飛ばされてしまいそうだ。見事ミサイルを撃ち漏らすことがなく、爆破した。が、人工姫は攻撃の手を緩めない。また、電磁砲の発射態勢に入っていた。「それはさっき僕達の妹を沈めた砲だ逃げて!!」最上が注意するが、目標は大和に向けられていた。が、背後にいる空母姫がまた阻害した。先ほどまで攻撃を引き止めていた彼女は既に大破状態であった。人工姫も修復素材が底をつき、お互い危ない状態だった。

「人工姫を倒す!水雷戦隊は魚雷を装填!主力艦隊は援護をお願い!」「任せろ島風!」神通たちが発射態勢を整える中、遠距離から武蔵たち主力艦隊が砲撃して、敵を減らす。

『武蔵…貴方はそちらに行くのですか?』大和の苦しそうな声が無線から流れる。「違うな、お前が勝手に区別しているだけだろう…大和。素直になれよ…」そう言った直後無線が切れた。

「水雷戦隊魚雷発射態勢!」神通が合図をしようとしたその時、島風が魚雷発射を制止した。その行動に思わず神通は驚く。「なんで止めるんですか…!何かあったんですか…?」「あれ……加賀だ…」島風の指差す先には空母姫がいた。そう、彼女は鹵獲轟沈された赤城と融合した加賀である。覚悟を決めた島風でもかつての仲間に弾を打ち込むなんて気がひける。今回の作戦を、無視し、加賀を助けるか…助けたら秋月みたいに元に戻るかもしれない。轟沈してしまえば救うどころかサルベージもできない。島風は揺れた。また、迷ってしまった。

と、その時プラズマが光る音がした。人工姫が電磁砲のチャージを始めたのだ。先ほどまで食い止めていた空母姫は振り回されていた。何かを見つけ島風は加賀の元へ向かう。「島風さん!危ないです!!」神通が制止するがもう聞こえない。「島風を援護するわ!行くわよ!」艦隊の全てが島風の周辺を攻撃し始めた。島風の前方、周辺には障害物がなくなり空母姫の近くまでたどり着いた。

空母姫は何かを喋っていた。島風の目を見て…涙を流して。「イ、い…?私ハ、モう元二戻ることハできナい…多分、時間…ガ経テバ沈む……。ダカラ…!私ハ…最後まで…貴方タチと共二…戦ウ!!撃ッテ!」そう言うと、空母姫は最後の力を振り絞り人工姫を殴る。そして、思い切り抱きついた。人工姫は動けない。完全な隙だ。

「私ノ…私達ノ……!一航戦の力ぁァァぁぁぁ!」「魚雷発射ぁぁぁ!」島風の号令で魚雷が放たれる。全ての魚雷が人工姫の足元に直撃し大爆発を起こした。人工姫の装甲に穴が開き、水が大量に浸水した。

「被弾率…90%…浸水開始…機関部完全破損…浮上力極低下…尚…も…沈没…ちゅ…う……」人工姫が沈む。大きな波を起こし、海中へと消えていった。後ろにいた加賀も姿あとなく消えていた。「人口棲姫沈黙…ソナーにも反応がありません…周囲に艦影ありません…私達の勝利です!!」サーモン島が歓喜に揺れた。島風も大役を果たし、大きな息を吐く。何か、スッキリした気持ちだった。

 

そして、作戦が終了し、全艦娘が撤退を開始する。島風も水雷戦隊に混ざり撤退を開始した。「舞鶴鎮守府へ、今からサーモン島海域から離脱します。」海域離脱が始まり、島風は最後尾を走った。

 

突然の轟音。艦娘の目は音の元へ向いた。

音の近くには島風。その前にはレ級が立っていた。レ級の尻尾の砲台が島風の顔に向いている。島風は正座で海面にへたり込んでいた。艤装が大破していて動けそうにない。

 

「…死ネ」

 

主砲の口が開く。ガバッと音が鳴り中から16inchの主砲が出てくる。その主砲は…島風の顔に向けられていた。離れていた艦娘が増速し島風に近づく。しかし、撤退を始めていて距離が遠く誰も助けることはできなかった。

「島風!」「島風ちゃん!」「島風さん!」「ぜかましー!」だが、艦娘の声を虚しく…

 

島風は砲撃された。

 

勢いよく海中に叩きつけられる島風。頭の半分はなくなっていた。意識が朦朧とする中手を伸ばしていた。

「皆は…逃げた……か……」意識が途絶えた。




ついにサーモン島の戦い完結!果たしてどんな結末なのか…あともう一話頑張りたいです…!

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