6-1ーh 独白
初瀬を助け数週間が経ち、だいぶ落ち着きを取り戻した日本、舞鶴鎮守府。かつては全ての艦娘が集結し、深海棲艦たちと戦い続け、和睦ならないまま、支配されていた海域を取り戻した。今、艦娘たちは鎮守府近海の哨戒活動や輸送船の護衛活動を無賃金で行っていた。
「こちら夕張、鎮守府近海に問題なし!」
「よくやった、次は酒匂の番だからそろそろ引き上げていいぞ?」
「ありがとうございます!終わったらお風呂最初にもらっていきますね?」
「おう。あ、明石が帰ったら保健室に来るよう言ってたぞ?また変な装備でも開発したか?」
「嘘!?明石さんついにあれを完成させたんですね!!すぐ行きます!!」
と、興奮が冷めないまま夕張は無線を切り指令室は再び静寂に包まれる。前までは艦娘達であふれかえってたここも今は元のメンバーで生活している。
「そろそろ時間か…」
白い服を着たこの男、名前は伏せられているが艦娘達には提督と呼ばれている。提督は座りながらドアの方を見る。それと同時にドアからはノックが聞こえそれと同時に体の大きな艦娘が入ってくる。大和型の制服で身を包んだ敷島型戦艦、初瀬だ。
「初瀬、今から独房へ同行してもらう。少し話を聞きたい。記録係で大淀も同行している。話したくないことは話さなくてもいいが…君が深海棲艦だった時に知ったこと、覚えていることを話してくれ。」
「そんなこと言わなくても分かってるって…忘れたことなんてないし、すべて話すよ。なんせ話しなかったらあの人が黙ってないし?」
初瀬はそういうと廊下に目線を移した。が、その先には何もいなかった。
時ところ変わって独房にある一室。臨時で取調室にし、提督と大淀、そして初瀬の三人が入る。
「さて、一気に話してほしいのだが…いいか。」
「そのつもりで…あまり長い時間いるのは嫌だし話すよ…私が深海棲艦に入った理由は知ってるだろうから…それ以外をね…」
「私が南方棲姫と契約して、すぐに深海で黒いドレスを着ている目が赤い人と会った。その人から私は深海での待機を命令された。『私の仲間が北方海域を支配している。お前は逃げそびれ、南方海域に来た艦娘たちを撃退せよ。』ってね。その言葉道理南方海域で待ち続けた。案の定お前たちは来たよ。ただし海域攻略をして、逃げずに本気で立ち向かってくるところだけ違った。おかげで計画は大崩れ、多分今頃別の海域を支配しようと計画中だよ…」
「その海域は…今のところ度の海域も深海棲艦の姿が確認されていないが…」
「…深海棲艦のアジトが近い…、中部海域。彼女たちは再び海域奪還の準備を進めている。」
「敵は…この作戦の黒幕は誰だったか覚えてますか?」
大淀がメモを取りながら質問する。全ての会話を紙に打ち込み、中部海域の所要マップも記録し初瀬の話から予想戦力を記録しはじめる。相変わらず連合艦隊の最後の旗艦は仕事をテキパキ行う。
「元々は私たちが侵略を始めたわけじゃないんだ。」
全員が耳を疑う。艦娘達はもちろん、提督たちですら深海棲艦が侵略を始めていたと聞いていた。聞いた話が矛盾し、何を信じればいいか分からなくなる取調室。
「沈んだ直後に聞いた話…黒いドレスの女性は言った…「私たちは人間に復讐するもの…人類は私たちを捨てた。」ってね。そのあと私はどういう意味だと聞いたよ。そうしたら彼女は「人類は私たちの要望を聞かずに攻撃した。それに対し、われらは報復を行うと…」さ。それで私は目覚めちゃったんだ。人類は自分が蒔いた種を私たち艦娘という道具を使ってなかったことにしようとしてるって。そして、私の利害と一致したからこの作戦に参加したんだ。気は全く変わらなかった。あと…彼女たち深海棲艦には二つのグループがあることを知った。私たちみたいな報復する過激派と、何も思わずただ海域を漂っている、平和組。それは目が青い方が平和組で、目が赤い方が過激派だよ。」
それも初めて知る。
「なら、今まで私たちが鎮守府近海や南東諸島で迎撃していたのは…」
「そう、貴方たちが沈めていたのは何も関係のない平和な深海棲艦。命令もなく、姫クラスがいないのでリーダーがおらず、私たちのところには全滅したと情報が入っていた。」
なるほどと提督は手を叩き、大淀に告げる。「中部海域の偵察を行う、舞鶴の艦娘達を集めてくれ。なおこれは極秘任務扱いとする。」
「というと…つまり…」
「舞鶴鎮守府は…海軍を敵にまわす。また俺の勝手にしてしまうが…」
「きっと…みんなが嫌と言ってもあいつだけついてくるよ…必ず。」
二人を前に初瀬が自信たっぷりに言う。二人のもその意味が分かっていて、なんだか少しおかしくなって笑ってしまった。が、この時誰も気づいていなかった。三人以外にこの会話を聞いてしまった物が一人いたと。
講堂には舞鶴所属の艦娘たちが集まった。艦娘たちが整列を終えたとき、その前には提督が立っていた。
「さて、今回は中部海域を偵察してもらう。深海棲艦が出ている気がするんだ。」
提督はあまり今回の情報を漏らさないように言おうとする。この尋問の情報が艦娘に漏れたとき、恐らく二つの状況が待っている。まずは混乱。艦娘たちはこの情報を聞いたはいいが、本部から全く連絡が入っていないために本当の情報がどうなのかが分からない。そこから話が変わっていき最初の話からどんどん変わり、デマが流れたら、いったい誰が自分の言うことなんて聞いてくれるのか。そしてそこから起こるもう一つの状況、暴動である。以前にも島風の決意の際にその作戦にはのらない艦娘が何隻かいた。デマが起こらなくても深海棲艦を倒すか倒さないかで別れ、運が悪ければ艦娘同士でやりあうことになりかねない。そこにデマが混ざるものならもはや止める収拾もつかない。提督は誰かがこれを見破らないかとても不安でいっぱいだった。
「いきなりどうしたのだ。いきなりそんなところを偵察など。」
長門の発言に二人はドキッとする。いいわけがなく初瀬と提督は大淀を見る。
「今回、輸送船団から聞いた話だと、その海域の水面下に黒い影のようなものが見えたと聞いたんですよ…もしものために確認で偵察に向かおうということです。海軍本部には報告しておきますので、心配せずに出撃してきてください。」
大淀の的確な説明に艦娘たちも納得し、いつも通り出撃準備を始めた。が、皆同時に気付く。今までの作戦で皆を引っ張ってきた艦娘たちのリーダー。
「島風がいない!!」
鎮守府が混乱に包まれた。