そよ風と荒風の間に   作:かえー

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思いっきり某アニメにハマった作者です。遅れて第二話です。話が進むごとに文字数が増えちゃいます。あまり気にしないでください。第二話です。


1-2 本当の正体

ブインに来て一週間。島風からして演習も何もかも詰まるものがなかった。何故、ここの駆逐艦たちは騒ぐ事ができるのだろうか。とある演習で、島風は単艦で六隻に挑むことになった。その勝負で島風は一度も被弾せずに、六人を倒しきったのである。とはいえ、相手はこの前一緒に艦隊を組んだ暁たちだった。その暁たちは、島風に当てることに怯えてしまって、一度も島風付近に砲撃していないのである。それでは、つまらないので、島風は単に自分の連装砲ちゃんたちを使い、一人で片づけたのである。その戦いで島風は全くと言っていいほど手ごたえを感じなかった。またつまらない一日が過ぎていくのであった。

 

翌朝、雲行きが怪しい中ブイン基地のドアを誰かが叩く。ノックの音に気づいて、提督自らドアを開ける。そこには、川内型の三隻がたっていた。

「よく来てくれた…!入ってくれ!!」提督はまだ新築のブイン基地に三隻を招き入れた。

 

「川内型軽巡洋艦…その一番艦川内!」「川内型軽巡洋艦二番艦…神通です。」「艦隊のアイドル!那珂ちゃんだよー!いたっ!」川内が那珂を小突く。そして睨んで「川内型の三女那珂だよ!」

「しばらくの間この鎮守府にいてもらう!訓練もこの三人に任せる!これを機会に練度をあげてくれ!」

提督が拡声器で駆逐艦たちに報告。そして、壁にすがり様子を見守り始めた。

その日から川内型の訓練が始まった。今鎮守府にいる、十隻。三隻ずつに分けられ、これを一時間ずつ行う。神通の訓練は実戦、川内は夜戦、那珂はよく目立つ練習だった。

普通の駆逐艦たちは楽しんでいながら、時に息が切れていたりしている。島風は訓練を淡々とこなした。

その中でも、那珂の訓練だけ苦戦した。

「いい?皆いつか旗艦をするかもしれないから、ここでは旗艦になった時の目立ち方について訓練するよ!」

那珂が歌を歌い始める。「私がはいって言ったら私が言ったことを繰り返してね!」

子の訓練が島風には地獄にしか思えなかった。ただですら人と話すのが苦手なのに、なぜ目立ち、それに歌まで歌わないといけないのがよくわからなかった。

一時間が経ち、島風は地面にひれ伏していた。そこに偶然通りかかった、磯波が声を上げて驚く。

「島風さん!大丈夫ですか!?ドッグ連れて行きますね…!」

いや…ドッグはやりすぎだろう…島風は磯波を止めるため「被、弾、、して、ない、う、ごけ、る」と、かた事だが話した。ふつう灘大丈夫に見えないだろうが、磯波は島風の言葉を信じ島風を立たせ、立ち去って行った。何故、磯波は自分を助けたのか、まったく理解できなかった。

 

〇〇〇〇〇〇

 

神通が提督に訓練の際のスコアを提出しに行った。神通は一つ気になることがあった。レポートを渡すついでに提督に聞いてみた。

「あの…提督、今日の訓練の報告書です。一つお伺いしてもよろしいですか?」

「ん?なんだ神通、何か不備があったか?」

「いえ、不備はないんですが…一人だけ性能が違う駆逐艦がいるのをご存知かと…?」

「うちの鎮守府はみんな素晴らしい駆逐艦が集まっている。ずば抜けている艦娘はいないよ。」

にっと笑い提督は答える。言うべきか言わないべきか神通は迷ったが、覚悟を決め言った。

「島風さんは…ご存じですね?実はあの子…」

「えっ…!?」提督室の空気が重くなった。

 

△△△△

 

訓練から数時間が経ち、駆逐艦たちは講堂に集められた。

「さっき、上層部から南西諸島への出撃を命じられた!旗艦は吹雪!随伴艦に白雪、磯波、深雪、響、島風が付け!以上!」

正直、出撃も面倒くさい。気だるい気持ちで出撃準備を始めた。

 

旗艦の吹雪はこの鎮守府に初めて着任した艦娘であり、練度も一番高い。軽巡や重巡がいないこの鎮守府では姉的存在だ。改装もすでに終わらしてある。

「抜錨!」吹雪の声で艦娘が装備から錨を降ろす。島風は海を滑って行った。

 

吹雪率いる艦隊は北東に向かう。磯波が島風の近くに行く。

「島風ちゃん…本当に大丈夫…?」どうやらさっきのことをまだ心配してくれてるようだ。

「轟沈してないし…大丈夫。」島風は最低限の情報を教えておいた。

そこに響も近づいてくる。「どうしたんだ二人とも?」響の顔はこちらの話に興味津々の顔だ。島風は嫌だったが磯波は今日あったことを話し始める。「今日、訓練が終わったあとに…島風ちゃんが…」

喋んな!島風は内心叫んだ。が、それを口にすることが出来ない。怖いのだ。なんとか、気をそらさないといけない。島風は周辺を見渡した。東側に黒い塊が見えた。深海棲艦だ。グットタイミングで来た深海棲艦に感謝しながら、何時もより少し大きい声で島風は叫んだ。

「て、敵艦…みゅ…!」

噛んだ。だが、しっかりと伝わっていたようだ。しかし、吹雪たちは首を傾げ、周囲を何度も見た。どうやら見えていないようだった。確かに見えているのに。島風は少しいらつき、スピードを少し上げた。

 

△△△△△△

 

モニターから提督と神通はその様子を見ていた。モニターからは分からないが神通は確かに独特の雰囲気を感じ取っていた。

「敵艦…距離1km…急速に迫っています。」

「ここからは見えないが…吹雪たちにも見えてないのか?」提督が目を凝らしモニターを見る。

「まだ吹雪たちには見えないと思います。、この感じ…長く海にいればモニターからも感じ取ることができます。」

モニターの中で島風は砲撃する。砲撃した先には、まったく何もなかった…ように見えた。砲撃後に上がった水柱からは黒煙が噴き出していた。その間に島風は速力を上げる。その時提督は気付いた。

「島風は手を抜いている…?」神通に問うが、神通も首をかしげていた。

「おかしいです…あの波の高さから確かに相当の馬力が出てるはずです…!」すると神通は目を見開き「前の出撃映像は…!!」提督は画面を切り替え前回の出撃映像に変える。そして、お互い画面を確かめた。提督が声を上げる。「まさか…!!」

「島風は…一人だけ抜錨していません!!」無線を入れる。しかし、海上はもうそんなどころでもなかった。

 

〇〇〇〇〇〇

 

吹雪たちは旗艦の軽巡へ級を狙っていた。先ほどの島風の砲撃で一隻撃沈をもぎ取った、しかしその直後その距離500mから、深海棲艦が浮上してきたのである。

「響ちゃんと、深雪、島風ちゃんは駆逐艦たちを片づけて!磯波と、私、響で旗艦を片づけるから!旗艦を倒したら全速力で撤退します!頼みます!!」吹雪の命令に返事は帰ってこなかったが、作戦通り、半々に分かれて敵を狙っていった。

少し経ち、黒煙が吹き出ている中、残ったヘ級を吹雪達は撃沈に追い込んでいた。島風達はすでに駆逐艦達を撃沈しており、吹雪達と合流しようとしていた。刹那、島風がまた叫ぶ。

「吹雪!退避して!危ない!!」

えっ…?吹雪の動きが一瞬止まる。回避運動を始めた頃に吹雪の足元には魚雷が迫っていた。間一髪で直撃は避けた。しかし、吹雪は中破してしまう。島風がすぐ近づいてくる。吹雪に対しこう言った。

「回避に専念して。私が倒すから。」その言葉には確かな自信があった。そして、吹雪の12.7cm連装砲を奪い取り、へ級に向かってかけて行った。

だが、ヘ級は既に中破。雷撃は不可のはずだ。だが、島風には雷撃の正体が何か分かっていた。雷巡チ級だ。その方向に島風は魚雷を放つ。そして、すぐ方向を変えヘ級に砲撃を浴びせる。両方向から爆発が起こる。島風は吹雪の近くに寄って行き作戦終了を伝えた。島風は艦隊を外れ一目散に鎮守府に帰投した。

 

吹雪達が鎮守府に帰投した頃には島風の姿は鎮守府内には無かった。吹雪は提督室に入っていく。が、島風はそんなこと全く興味が無かった。今日も鎮守府の屋根に登る。なにもないのにこんなことを期待する。

明日も何かあることを祈って。

鎮守府の屋根で眠った。


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