そよ風と荒風の間に   作:かえー

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2-2 潜む影

☆☆☆☆☆☆トラック島

 

「この輸送が成功すれば…深海棲艦は…壊滅できる!」

男が藁の塊を見て頷く。海上には人型にまとめられた藁の塊。「あとは…これを輸送してくれる艦隊はいないか…?」

男は司令書を漁り艦隊を探す。一枚の紙にある一人の艦娘に目をつけた。「例の艦隊…か…」

 

→→→→→→ブイン基地司令室

 

「えー今日は輸送船団のルート偵察を行ってもらう。」ブインに沈黙が走る。「えーっとな…もう一度言うぞ、輸送船団のルート偵察だ。海域攻略はしないぞ?」「なんでだよー!」「私たちはなめられているのか?」続々と駆逐艦娘から、文句が飛ぶ。「いいか?戦うだけが艦娘の仕事じゃないんだぞ?輸送船団を守ることだって人間を守ることに繋がるんだ…頼む…今回はバシー諸島だ…海外旅行できると思って行ってくれ…頼む…」提督が手を合わせ頼み込む。

「まぁ、レディーになるには地道な作業も大切よね?やってあげるわ!」暁が手を上げる。「まぁ…私がやるよ…いいだろ?」敷波も手を上げる。「今の二人に加え、昼までに艦隊を発表する!準備して出撃できるように!解散!」提督の言葉で、集会は解散となった。「あ、忘れてた!文月、長月は後で講堂に来い!」

「ふにゃぁぁぁ!?」文月は既に泣きそうになっていた。長月はその文月を連れ講堂へと向かった。

 

♪♪♪♪♪♪バシー諸島

 

島風たちに伝えられた今回の作戦…それは偵察を兼ねての輸送船団のルート妨害を防ぐものだった。最初は意欲を見せていた暁がイラつきを覚えていた。

「全く…いつまでこれを続ければいいのかしら…司令官っ…!」

「暁、さっきと言ってることが違うぞ?」響が突っ込むが他の艦娘も確かにイライラしているように見える。今、島風率いる駆逐隊はバシー諸島周辺に待機していた。しかし、張り込みを始めてから五時間、ただその場に居座り続け…前回みたいに移動もできず、指令を待ち続け艦娘達はイライラしていた。

島風はそのイライラの中水上に座り周辺を見渡していた。島風が考えるに深海棲艦は潜行移動も可能だ。この海域には現れず、別の海域に姿を現しているかもしれない…が、隠れていてもおかしくは無い。海域に入ってからソナーで水中の様子を聞くが、水の音しか聞こえてこない。

「…何かに見られてない?」

「確かに…そんな気がします…寒気がしますね…」駆逐艦の二人が何かを感じ取る。島風は察する。やはり何かいると。「単横陣…波をできるだけ大きく立てて航行して。」

島風の指令に駆逐艦達は従い、駆逐隊の周りには大きな波が立つ。そう、バシー諸島は昔多くの輸送船が沈んで行った海域。潜水艦によって沈められた輸送船達。この海域は潜水艦にとってとても有利なのだ。だが、島風達は誰もその事実を知らない。さらに潜水艦がすぐ近くに迫っていることも。

「魚雷発射音……後方だ、回避!」単横陣が崩れ単独での回避運動に移った。魚雷は無誘導で駆逐隊を抜けていき60mほど先で爆発した。全員がソナーを働かせるが、何も気配が無い。エンジン音も全く聞こえず、その存在は島風達を混乱させる。「…潜水艦です!!きっと潜水艦ですよ!こんな静かに航行できるのは!」吹雪が叫ぶ。「潜水艦は雷撃を避け、自分たちの雷撃距離まで近づけるまで、海中を泳ぐ…輸送船団には迷惑です。」「この潜水艦隊は私達のことを輸送船団だと?」「十分あり得ます…!」その時島風の口角が少し上がった。「それは好都合。なら、私達が最後まで輸送船を装って引き寄せよう…10ノットで海域を離脱。大きな回避運動はやめてさりげなく避ける…やるよ。」島風が駆逐隊の後ろに回り駆逐隊は離脱を始めた。




「私達にも出番がないですかね〜?」
「さぁねー?横須賀の提督が全てだからねぇ…グビグビ…」
「そうですか…」
「そういやさー鳳翔はなんでこの店開いたんだー?」
「それは…出撃のないみなさんが休憩できるようという願いがあって…やっと出来ました…!」
「それって…ここ出番ない組の聖地って事だよね?」
「え、えぇ…?」
というわけで二幕二話でした。ブインのネタがそろそろ切れそう…ではでは…

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