講堂に呼び出された艦娘達。彼女達は慌てることなく速やかに二列を作った。「駆逐艦九隻、軽巡一隻、重巡一隻。計11隻揃いました!」吹雪が提督に報告。「休め!」「今速報が入った。深海棲艦により、佐世保鎮守府が陥落した。」「!?」基地内がどよめきに包まれる。「深海棲艦の奇襲で佐世保鎮守府の艦娘が8割轟沈、行方不明となった。なんとか、深海棲艦は追い払えたが佐世保周辺は黒い雲が覆っており雨が降り続いている。生存状況は駆逐艦…時雨のみ。」ざわざわ。駆逐艦の声はさらに大きくなっていく。中には泣き出す駆逐艦もいた。「そこでだ!今沖ノ島付近に深海棲艦達は停泊しているようだ。こいつらを叩く。」メガホン越しに提督は叫ぶ。「いいか!お前達は俺に落ち着きを教えてくれた!戦った!だから、俺もお前達とともに戦って落ち着くと言うことを共有したいと思った!そんな時でもないかもしれないが…頼む…戦おう。これ以上犠牲を出さないため…!」
提督は涙を堪え頭を下げた。そうだ、提督として仲間の死は心をえぐるほど痛い。そして、自分たちの仲間がそうなるかもしれない。考えただけで倒れてしまいそうだった。もし誰か轟沈してしまったらどうしよう、また被害をこうむってしまったらどうしよう…
その雰囲気の中二人を引っ張り出しここから出て行こうとする艦娘が一人。
「島風、お前は…」「遅い。」「お前はどう思ってその行動をしている…?」「………」講堂に沈黙が走る。「お前は…」「そんなにつべこべ言う暇があったらさっさと出撃したらどう!」島風が怒鳴る。提督や駆逐艦たちはひるんで、声すら出すことができなかった。島風は歩いてその場を去っていく。
「誰かついてくるかなぁ…」「島風、さすがに三人だけだと佐世保の二の舞どころか誰も助からず海の底だ。何かあるんだろう?」実は島風はノープランで今に至る。何も考えなしに怒鳴り散らしたのである。島風は首を振ろうとした。「全く、島風さんはせっかちですね…!」「まぁ、先輩として意欲があるのは認めてもいいかな!」「古鷹…鬼怒…」そう、後ろには二人の巡洋艦が立っていた。「でも、艦隊組むならあと一人は欲しいよね…」「あ、アタシがいくよ…!」そこに立っていたのは敷波だった。「ま、まぁ島風がさ、ここに入ってから、私も島風みたいな人になれば意見聞いてもらえるかなーって…同じこと思っている艦娘はいないかと思ってて…」「時間がない、何?」「深海棲艦を傷つけずに倒したい…だから…私もついていく。」「…ご勝手に。」これで艦隊が六人となり出撃体制が整った。「行くよ。抜錨。」海上に足を踏み出した。
文月と響は島風の行動にはついていくつもりだった。理由は分からないが何かの気持ちが島風と一致したのであろう。が文月、響はお互いの顔を見合わなかった。理由も聞きもせずただ、島風について行った。
そして海が荒れる頃。深海棲艦達も島風達に気づく。黒い塊たちは波を立て、島風達に立ちはだかっていった。
「そろそろ…あっちのボスが来るころじゃないか?」響が予感を察する。「戦艦級が三隻、軽巡…いや、空母級が入れ替わった…」艦隊の再編成がおこなわれる…そこまでは、島風の中ではまだ、想定内だった。「…背後から艦載機の感あり!」鬼怒が慌てて報告。「回避!!」扇形に散っていった。誰も被弾せずに回避したが、気は抜けない。今度は戦艦級の砲弾が頭から降り注ぐ。「ぐっ!」響に砲弾が直撃する。「響ちゃん!きゃっ!!」続いて文月、鬼怒、さらには古鷹も被弾していった。今回の敵はただの敵じゃない…「敷波!逃げろ…!!」回避しながら島風が叫ぶ。「嫌だよ!こんなところで引くわけにいかない!」やめてくれ、島風の中に何か渦巻くもの、そう彼女の姿が目に見えたのだ。実際にいるわけではない。が、確かに島風の目にくっきりと映る。
やめて…やめてよ!島風は動けない。幻想の彼女が近づいてくる。「島風避けて!!」敷波の声は島風には届かなかった。16inch砲弾が直撃。島風の体が水面に叩きつけられる。「旗艦がやられました…撤退しましょう…」古鷹が言葉を絞り出す。「分かったよ、撤退する!」島風を曳航し、海域離脱を試みる。が、艦隊の後ろには軽巡級や、駆逐級が先回りしていた。「そんな…」文月が泣き出す。「私達…死んじゃうの…?」その時、駆逐級が燃え出す。少し道が開けた。「逃げ…て…は…やく…!」島風が立ち上がり戦闘体型に入る。「何をしているんだ…逃げるんだ…」が、響の差し出した手を振り払い、こう言った。「提督には…最善の手を尽くした。被害は最小限に抑えた…これを日本に報告してくれ…と…」時折バランスを崩し力一杯叫ぶ。「分かりました、古鷹が離脱します…文月さん、着いてきてください。」「嫌ですぅ!ここで離れたら…島風ちゃんが死んじゃう!!」ごねる文月を引っ張り古鷹は海域離脱した。
「何故…逃げない…!!」島風が艦娘達を睨むが口を揃え艦娘達は答える。「仲間を放って置いて逃げるわけにも行かないでしょ?」その時島風の視界は晴れた。彼女の影は消えていき、深海棲艦の周りが黒い空では無い、青い空が見えた。輸送級の不安も何処かに飛んで行ってしまうほど、島風の心はスッキリとした。
分かったよ…天津風。間違ってるかもしれないけど…天津風がいなくても…他の仲間と迎えを待っているから…から…いつでも帰ってきてよ。
「旗艦?」響が顔を覗き込む。「ごめん、考え事してた。次はお前達を逃がす番。逃げた後に私も続く。」「聞けないね。」鬼怒が首を振る。「まさかさ、私が轟沈するとでも?こいつらの弾ぐらい簡単に避ける。お前達より私の方が性能高いし。」にやける。「言ってくれるね…基地に帰ったらお仕置きね!皆、旗艦命令だ、安全に帰るよ!」艦隊が背を向けたその時…一つの艦隊がこちらに向かってきた。「…増援…」「嘘だ…」予想外だった。遠くから聞くに間違いなく重巡主体の艦隊。エンジン音から確実に戦艦がいる。自分たちには弾薬も残っていなければ、燃料も帰投すれば切れるほどしか無い。覚悟を決めた。文月達が状況を説明してくれてるといいけれど。が、島風の耳はこの戦艦達の音が聞き覚えがなかった。「…まさか…!?」そう、日本から臨時艦隊が、派遣されたのである。「みなさーん!これを使ってください!」白いジャージの艦娘がドラム缶を渡す。ドラム缶の中には一人ずつ魚雷や燃料、弾薬や物資が入っていた。「洋上補給…」「はい!これでまた、戦えますが…どうしますか?」
「ここで弾く奴はうちの基地にはいないね!」「駆逐艦が頑張ってんのに引けば軽巡の…長良型の名が廃る!」「…私も賛成だ。旗艦、後は君次第。」「…沈んでも公開すんなよ?戦闘態勢!」「補給終わるまで、敵は私達が相手しますね!」「撃って来ない敵は攻撃しないで!恐らく殺意が無い!」「分かりました!しっかりと分析して砲撃しますね!」緑髪のメガネの戦艦に伝える。「一応…私、霧島です。以後お見知り置きを。」丁寧に一礼。雄叫びをあげ戦闘をしに行った。
補給が終わり、島風達は立ち上がる。「行くよ!攻撃開始!」艦娘達は深海棲艦への攻撃を再開。砲弾が飛び魚雷が爆発し、火を上げ沈む。深海棲艦の数は極端に減少した。
「主砲、追尾して…撃て!」霧島の掛け声に派遣艦隊は砲撃を開始する。「艦載機が接近!」ヲ級flagshipから、艦載機が発艦されていた。が、その艦載機に対して島風の後ろからも艦載機。「五航戦の力をなめるなぁ〜!!」弓道着姿の少女が弓を放つ。放たれた弓矢は艦載機に変わり、敵を攻撃する。「間に合った!私は瑞鶴。またあったらよろしく!」また走って行った。
そして、私達の前にまたル級flagshipが立ちはだかった。「目標、ル級flagship周辺。狭窄を狙って…撃て!」ル級周辺に砲弾。避けることができず、ル級に少しずつダメージが入る。そのせいあってか攻撃が減ってきた。やがて、相手も弾が切れたのか攻撃がなくなった。離脱を始めようとしていた。が、艦娘全員で囲む。逃げ場はなくなった。海中に逃げれば魚雷が待っている。「もし逃げたかったらこの海域を諦めて。そっちの提督と話をしたい。時間があればだけれど。私はそっちが傷つけたくて傷つけていないと信じたい。」島風は頭を下げた。そして、他の艦娘も頭を下げる。「これも…信頼か…」響が呟く。ル級は一枚の紙切れを落として海域を離脱した。
「なんだこれ…」敷波が目を凝らし紙切れを見るが、紙切れは汚れが酷く何が書いてあるかわからなかった。
島風達は基地に帰投した。臨時艦隊とは別れ洋上補給のおかげで元気が有り余り、補給がいらなかった。その中、提督室に艦娘が二人と提督が一人。「転属…だと?」「はい、私はもともと舞鶴の艦です。非常にわがままかもしれませんが、私は舞鶴に帰りたいと思います。」「まぁ…そうなる日は来ると思ってはいたが…」提督は頭を抱える。「実は吹雪が横須賀からオファーが来てここを離れることになってしまった。秘書艦がいなくなってしまうから、痛いのだが…」「無理なら…」「いや、行ってこい。俺らははお前を保護するのが仕事。だから、いいんだ。報告はしておくから…準備してこい…な?」「秘書艦どうすっかな…」「敷波がいます。」島風が答える。「敷波なら…ここを引っ張れますよ。あと、吹雪と同じセンス…ってやつを感じます。」これだけ言い残すと、島風は部屋を後にした。部屋にある荷物を全てドラム缶に詰め込み、自分の腰に巻きつける。片付けが終わった時、机の上に何かあるのに気づく。そう、黒いコートが置いてあった。「これ…」それは彼女の着ていた物と全く同じであった。「今行くよ。迎えにね。」夜の海を島風は駆けて行った。舞鶴を目指し、明日の何かを目指して。
「あまり戦いたくありません!正義の心!妙高!」
「仲間の仇は絶対討つ!那智!」
「勝利と美貌が呼んでいる!足柄!」
「「「四人合わせて海域を守る重巡戦隊ミョコレンジャー!」」」
「な、なんですかそれ…」
「鳳翔さん!これは妙高型のアピールです!ビール三人分くださいっ!」
「ところで…羽黒ちゃんは?」
「また、休暇とってて…」
(四人揃ってないような気がします…少し気になります…)
というわけでついにブイン編完結です!ここから、舞鶴編に繋がって行きます!いやぁ、長かった。ではでは、次は4ー1で会いましょう。ではでは。