Fate/Grand Order 輪廻の従者   作:初代凡人

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ジャンヌゥゥゥウウウウウ!! なぜなのですぅ↑↑!? なぜ私の元へお出でになさらなかったのですか!? オォ、ジャンヌゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウ!!

………失礼。取り乱しました。ついついCOOLな旦那状態に。いやー、相変わらずの物欲センサーですね。おのれ、引き運……!!

今回のピックアップはエミヤさん引けたから満足してますけどね。………でも、最初の10連でピックアップ対象のアサ子すら来なかったのは解せない。

さて、長くなりましたが、本編をどうぞ!


特異点IF 空の境界
境界での出会い


ライズside

 

「…………ん?」

 

ああ、いかん。いつの間にか寝てたのか。今日はいよいよ第一の特異点に行くっつーのに、寝オチするとは………。もっと気を引き締めなきゃな。にしても――

 

「此処どこだ?」

 

周りを見渡すと、そこにはビルが並び立つ景色が広がっていた。俺はその中心にある歩道のど真ん中で起きたという状況。よくひかれなかったな…。

 

だが、あいにく周囲の建物に見覚えのある物は一切ない。看板には主にひらがな、カタカナ、漢字が使われているから日本であることに間違いはないだろうが、此処が日本のどこなのかは全くわからない。それに――

 

「………いくらなんでも静かすぎるな」

 

ビルの立ち並びに歩道や車道の大きさから、此処が都心であることがわかる。にも関わらず、車どころか人影すら見当たらない。周囲は暗いため時間帯は夜だろうが、深夜であってもこの人通りのなさは異常だ。明らかに普通じゃない。

 

「…………マシュー!!」

 

近くにマシュがいないか叫んでみるが、返ってきたのはビルに空しく反響してきた俺の声だけ。

 

「………ヘーイ、ロマンさーん。応答プリーズ」

 

通信をしてみるが、ノイズ音が鳴るだけで他は何も聞こえない。……完全に孤立してるな。見知らぬ街中で一人。………迷子という単語が浮かんだが、不愉快なのですぐに消した。

 

「…………とりあえず、歩いてみるか」

 

このまま此処に立っていてもしょうがない。それに、ある程度進めば誰かいるかもしれない。そんな根拠のない望みを胸に、夜の繁華街を進んでいく。

 

 

 

――――――――――

 

……………どれくらい歩いただろうか。歩き始めて大分経ったとは思うが、未だになんの進展もない。

 

街並みを確認したが、ビルは一つ一つ違うもののため結界の類いでもないとは思う。だが、時計がどこにも見当たらない。知らない街で時計もなしに歩いてると、時間の感覚が狂う。こういうのは精神的に結構キツいものがある。

 

早く何かしらの進展が欲しい。そう思いながら歩いていると――

 

「お?」

 

明らかに周りとは違うデザイン――よく言えば目立つ、悪く言えば浮いているマンションが目に止まった。今までのが普通だった分、余計にそう思ってしまう。

 

いや、それはいい。それよりも、俺の目に止まったのはあのマンションの玄関前。

 

「……………」

 

――そこには、一人の女性が立っていた。黒髪の短髪で、凄く整った顔立ちをした美人だ。青い和服を着ているが、なぜかその上に赤いジャケットを羽織っている。何より目を引くのは、その手に持つむき出しのナイフ。言っちゃ悪いが、不審者にしか見えない。

 

「――ったく、最悪な夢だ。殺し続ければ目が覚めるかと思えば、余計に目が冴えてくるときたもんだ。ゾンビや幽霊じゃ、物足りないってのもあるけど」

 

ある程度近づくと、黙っていた女性が突然口を開いてそんなことを言った。物騒なことと気になることが聞こえたが、今は置いておこう。

 

「お前を殺せば、何か変わるか?」

 

目の前の女性は、俺に対して鋭い殺気を放っているのだから。

 

何か誤解されてるみたいだし、ここは落ち着くように説得を試みよう。

 

「あー、ちょっと待ってください。俺は此処がどこかもわかりませんし――」

 

「会話は必要ない。長くなりそうだし、厄介ごとに首を突っ込んだのはそっちだ。なら、ナイフ(こいつ)を頭に突き立てて終わらせてやるよ。そうするのが一番早いからな」

 

ダメだ。殺る気は満々のようだが、話をする気はゼロのようだ。面倒臭そうにしながら、ナイフを構えて戦闘準備万端といった感じだ。

 

黙ってやられる訳にもいかないため、こちらも構える。とりあえず、極力受け流して疲れるのを待つか。

 

 

 

ライズside out

 

 

 

no side

 

ライズが構えて、女性の動きに集中する。互いに動かなかったのは数秒。女性の方に変化があった。

 

――彼女の目の色が変わったのだ。例えではなく、実際に目の色が黒から青になった。

 

(あの目は見るからに普通じゃない。魔眼の類いか?)

 

ライズがそう考えてる内に、女性が前方へ跳び出す。そのスピードはライズの予想より遥かに速く、一瞬で距離が詰まる。

 

それを確認した瞬間、ライズは全身に強化と硬化をかける。女と油断していたがために、まだかけていなかったのだ。しかし、あくまで冷静に女性の動きを見る。

 

(狙いは――頭か)

 

先程の宣言通り、彼女はライズの頭に向けてナイフを振りかざす。ライズは硬化のかかった頭で受け止めようとする。

 

 

 

 

 

――その瞬間、何度も経験した――死への悪寒が走った。

 

 

 

 

 

(――っ!!)

 

ライズはシュミレーションで死ぬ度に、どんどん自分が死ぬ瞬間を直感的に察知するようになっていた。――自分の直感が告げているのだ。そのままでは死ぬぞ、と。

 

そして、ライズは咄嗟に左腕で頭を庇い、全身への硬化を左腕に集中させた。かけれる最大の硬化を付与した腕。例え英霊の宝具であろうとも、大抵のものには耐えうる硬度を誇るだろう。

 

故に、ナイフは皮膚を切ることもできずに表面をなぞるだけとなった。

 

 

 

 

 

――しかし次の瞬間、腕はナイフになぞられた部分から先が切り落とされていた。

 

 

 

 

 

「な――!?」

 

ライズは、腕を切り落とされた痛みも一瞬忘れてしまう程に驚いた。それは当然だ。自分の硬化による硬度は誰よりも知っている。そして、その硬度でナイフを通さなかった。にも関わらず、目の前に映る光景ができたことが信じられなかったのだ。

 

だが、女性にはライズの驚きなど関係ない。すぐに殺す予定が狂ったのは確かだが、些細な問題だ。ナイフを握り直し、再びライズの頭目掛けて振りかぶる。

 

だが、ライズも殺し合いの経験は多い。動揺してしまったが、すぐに目の前の女性に意識を戻し、ある結論が出る。

 

(二撃目はヤバイ……!!)

 

ライズは強化を両足に集中させ、全力で後退した。

 

女性はその速さは予想外だったのか、少し目を見開いた。が、すぐさまそのあとを追う。しかし、瞬間的スピードはライズの方が上のようで、少しずつ距離が空く。

 

(まずいな。硬化に関係なく切られるとわかった以上、無闇に接近戦をしかけるわけにもいかない。受け流すなんて悠長なことも言ってられないな。――殺す気でやらなきゃ、俺が殺される)

 

ライズは後退しながら対抗策を考える。そして、一つの作戦が浮かんだ。といっても、それは作戦にしては大分無理やりな力技だ。

 

(……まあ、四の五の言ってられないよな!)

 

ライズは後退をやめて立ち止まる。それを見て、女性も立ち止まった。

 

「どうした? 鬼ごっこはおしまいか?」

 

「………ああ。あんたには悪いが、俺も殺される訳にはいかない。――殺そうとする以上、殺されても文句はないな?」

 

次の瞬間、ライズは強化した脚力で跳躍した。女性はそのあとを追わずに、様子を見る。跳んだ先には、高層ビルがあった。

 

(――高速解析(オーバートレース)開始(オン)!!)

 

ビル側面に着地するのと同時に、ライズはビルの内部を解析する。その時間は1秒にも満たないが、短時間に高層ビル内の全ての情報が入ってきた代償として脳の一部が悲鳴を上げ、ライズの頭に激痛が走る。だが、その頭にはビルの隅々までの情報がしっかりと入った。

 

(生体反応――なし!)

 

それを確認すると同時に、ライズは片手両足をビルにつけ、全力で跳ぶ。その反動に耐えられなかったビルに大きな亀裂が走り、そのまま亀裂は広がり続けビルは悲鳴を上げながら折れ、女性の方へ倒れていく。

 

(ふーん、それが狙いか)

 

ライズはビルからビルへ跳び移り、次から次へと折っていく。その全てが女性に向けて倒れる。

 

最後にライズはマンションの前に着地し、右腕で内部を解析する。

 

(――ん?)

 

その際、ライズは今までのとは違うことに気づく。動体反応が複数確認されたのだ。しかし、生体反応は今までと同じ0。このことに違和感を覚えたが、生体反応ではない以上、ライズがすることに変わりはない。

 

強化(ブーストアップ)腕力(アームズ)――!!)

 

ライズは右腕に強化をかけてマンションを全力で殴りつけ、今までのビルのようにへし折る。その後、倒れてくるマンションを避けるために横へ跳ぶ。

 

一方、女性はライズを見てただけで、一歩も動いていない。今も自分の方へビルが倒れてきているにも関わらず、逃げようとしない。

 

(なんで逃げない? 多少は避けられるのを覚悟してたが、まったく逃げないとはどういうことだ?)

 

ライズもその様子に顔をしかめている。

 

――すると、とうとう女性に動きが見れた。着物の帯から新しくナイフを取り出し、それぞれの手でナイフを構える。

 

(………おい、まさか――)

 

ライズはどうやってあれを回避するのか想像してたが、女性は先程から逃げるそぶりは見せてない。となれば、答えは二つ。防御に徹するか――

 

「結構面白い考えだけど――これじゃあオレは殺せない」

 

落下物そのものを壊すかだ。

 

ビルが女性を押し潰す。だがその瞬間、ライズは確かに見た。

 

 

 

 

 

ビルが切り刻まれ、その残骸が崩れ落ちるのを――。

 

 

 

 

 

巨大なビルが地面に落ち、それによってまった残骸や土煙で女性が見えなくなる。

 

(…………ビルまで真っ二つか……。どういう能力だ?)

 

ライズは能力に検討がつかなかった。表面を切るだけで――正確にはなぞるだけであらゆる物を真っ二つにする能力なんて聞いたことがなかったのだ。しかも、硬さも完全に無視して切るという無茶苦茶な能力が余計に混乱させていた。

 

しばらくして煙が晴れ、ビルの残骸が姿を現す。――当然、その中心にはあの女性が無傷で立っている。

 

「どうした? 次の作戦はないのか?」

 

挑発的な笑みを浮かべてそう尋ねたが、本人にそういった意図はなかった。ただ、こんな無茶なことをしでかす輩なのだから、面白そうな作戦がまだあるのではという純粋な楽しみから出た笑みだった。

 

「………いや、実を言うとどうしようか悩んでるんですよね。これでそちらの能力に検討がつくと思ったが、余計にわからなくなるし」

 

「なんだ、つまらない。なら、もう終わらせていいか? さっさとこんな夢からはおさらばしたいんだ」

 

そう言って、女性は再びナイフを構える。

 

(さて、どうするか………………とにかく、左腕をどうにかするか)

 

「――魔術回路(トレース)変換(オン)

 

切断面から魔術回路が飛び出し、欠けた左腕の形に変わる。繋がって血が巡ったあと、確認のために指を動かす。

 

それを見て、女性は目を見開いた。

 

「お前、その腕どうした? 義手でも転移させたのか?」

 

「こんな高度な義手が造れるのなら、特許でもとって儲けてますよ。――こいつは俺自身の腕です。元に戻したまでですよ」

 

「…………面白いなお前。――まあ、いいか。戻すにしても、そのためには頭がなけりゃ話にならないだろ? なら、最初とやることは変わらない」

 

「……やっぱり、そうなりますか」

 

これは何を言っても無理と理解した。一方的に殺しにきてるとはいえ、今のところはそこまで被害を受けてないから手を出したくはないのがライズの本音だが、こんなところで死ぬわけにもいかないため、反撃に出ることを決めた。

 

 

 

 

 

「随分なことをしてくれたな、貴様ら」

 

 

 

 

 

「「――っ!?」」

 

そこに、突然第三者の声が響いた。二人が声のした方に目を向けると――そこにはドス黒い何かが立っていた。そのドス黒い何かはよく見れば揺らめいていることがわかる。それが炎だと認識するのに時間はかからなかった。

 

だが、炎の中で二人を睨み付ける眼光はまったく鈍ってはいない。むしろ、より鋭くなっているように感じる。

 

「…………お前の知り合いか?」

 

「………あいにく、黒い炎を纏う人に覚えはないです。むしろ、俺はそちら側の人かと思いましたが」

 

「冗談。オレだってあんな変な奴に覚えはない」

 

その人物のことは互いに知るはずもなく、やり取りはすぐに終わり、目の前の存在へ警戒心を向ける。

 

「……本来なら、此処は怨霊たちやサーヴァントを集め、特異点の1つとする予定だったのだが………………まさか、こんなに早く破壊されてしまうとはな」

 

(………特異点だと?)

 

「……………あんた、ライノールの親玉か? もしくは手先のサーヴァントか?」

 

ライズが黒い存在へ問いかけるが、それは軽く笑われて終わる。

 

「親玉か、だと? ――ハッ! 笑わせる。俺は親玉になったつもりなどない。まして、どこの誰ともしれん奴に使えた覚えもない。…………だが、貴様の敵であることは確かだ」

 

「そうか………………なら、やることは決まった」

 

ライズはそう言いながら構える。敵のサーヴァントであるとわかり、この場所に来た理由も黒い存在にあるとわかった以上、原因であろうこのサーヴァントを倒すのが一番早いと判断したのだ。

 

「随分と威勢のいいことだ。――だが、お前たちの相手は俺ではない」

 

黒いサーヴァントがそう言うと同時に、二人を取り囲むように半透明の幽霊が出現する。そのどれもが、下半身をなくした骸骨が浮いているという不気味なものだ。

 

「チッ。またこいつらか」

 

「…………また? それってつまり…」

 

「ああ。ついさっきまでオレはこいつらと戦ってた。あれで全部かと思ったけど、まだこんなにいたんだな」

 

舌打ちをしながらナイフを構える女性。彼女の悪態に肯定するように、幽霊たちはその数をドンドン増やしていき、遂には50を越える幽霊が二人の周りを漂っていた。

 

「……………なるほど。つまり、あなたは味方というわけだ」

 

「は? 何言ってるんだ、お前? オレからして見れば、お前だって敵だ」

 

「敵の敵は味方というでしょう? ………少なくとも、俺はあいつらのようにあなたへの敵意はない。なら、此処は一時的にでも手を組むべきだと思いますけど」

 

ライズが女性へそう提案すると、しばらく思案したあとに渋々といった感じで口を開く。

 

「……………わかった。今はこいつらを倒すことを優先しよう。あの黒い奴を倒すのは、結構キツそうだしな。――けど、妙な動きしたらすぐに殺すからな。忘れるなよ?」

 

「怖い人だな。言われなくても、あなたに何かするつもりはないから安心してください。…………ところで、こいつらは触れますか?」

 

「ああ。さっき戦った時、普通に踏みつけれたぞ。こいつらは怨念で呪い殺そうとするんじゃなくて、物理的に殺そうとしてくるみたいだ」

 

「そうですか。ならよかった。触れなかったらどう対処しようかと――」

 

ライズがそう言ってる最中に、しびれを切らした幽霊たちの何体かが二人へ襲いかかる。幽霊たちは異様に長く、鋭くなった指で二人を切り裂こうとその腕を振り下ろした。

 

 

 

 

 

――しかし、切り落とされたのは幽霊たちの両腕だった。

 

 

 

 

 

そして、次の瞬間にはその幽霊たちの体が砕ける。

 

「オオオオォォォォォォ…………!!」

 

体の大半を失った彼らはか細い断末魔を上げながら消えていった。

 

「………おい、邪魔するな」

 

「えっ、今結構いいコンビネーションでしたよね? 俺何か悪いことしましたか?」

 

「当たり前だ。一撃で決めるつもりだったのに、お前が間にいたせいで腕しか切り落とせなかっただろ」

 

「ま、まあまあ。蹴りでカバーしたからお咎めなしで……」

 

戦いの最中で、軽い言い合いをする二人。敵が近くにいるこの状況で、考えられない行動だ。しかし、さしたる問題にはならない。

 

――少なくとも、この幽霊たちでは二人にとっての脅威とはなりえないからだ。唯一の脅威であろう黒いサーヴァントも、こちらを見てるだけで一切動く気配がない。故に、二人はこのようなやり取りができる。

 

しかし、そのやり取りを黙って見ている幽霊たちではない。仲間がやられたことなどまったく気にしていないようで、二人へと襲いかかる。

 

だが、二人は振り返りながら幽霊を倒していく。ライズは幽霊をその拳と蹴りで砕き、女性はナイフでその体を切り裂く。全てを一撃で葬り、50はいた幽霊たちはあっという間に片手で数えれる程度になってしまった。

 

「おいおい、この程度か? 倒しがいがないな。これなら武器を持った骸骨の方が幾分かマシだぜ」

 

「………骸骨が武器を?」

 

「ええ。武器によってしっかり遠距離と近距離に別れるので、あっちの方が戦い方としては上でしたね」

 

「……………なるほど。こいつらでは勝てないとは思っていたが、こうもあっさり倒すか……。――ならば」

 

黒いサーヴァントが呟くと同時に、残り僅かの幽霊たちに異変が起きる。動きを突然止めたかと思うと、その体が煙のように消えてしまったのだ。

 

「撤収させたのか? ってことは、とうとうあんたが戦う気になったって――」

 

「いや、違う。…………何か来るぞ」

 

女性が警戒を強めた声で警告する。実のところ、ライズは見えていなかっただけで、女性はその目でしっかりと見ていた。消えていった幽霊たちが、ある一点――黒いサーヴァントの後ろの瓦礫に吸い込まれていったのを。

 

そして、その瓦礫の隙間から何かが出てくる。それは、先程までとは比べ物にならない巨体を持つ幽霊だった。

 

大無限地獄堂(だいむげんじごくどう)――。本来ならば、特異点となったこの時代の要となるはずだったが…………まあ、問題ない。充分力は蓄えた。――貴様らに、こいつを始末できるか?」

 

「……………ただ単に図体がデカイってわけじゃなさそうだな」

 

「ああ、あれは普通じゃない。いくらなんでも線が多すぎる。あれじゃあ、いくら切ってもキリがないぞ」

 

(線?)

 

二人が警戒を強める。女性の言葉の一部が理解できなかったライズだが、敵は待ってくれない。

 

「当然。数億単位の死の象徴だ。そう簡単には倒せん。貴様らが負ければ、これの一部となってもらおう」

 

「フン。負けるつもりはない。線が見えるなら、殺せるのは確かだろ? ――その数億の怨霊、殺し尽くしてやるよ」

 

女性がナイフを構えて突撃しようとするが、ライズがその前に手を出して止める。

 

「なんだ? 邪魔するならお前から切るぞ」

 

「そんなつもりはないですよ。ただ、確認したいことがいくつか。――まず、あなたの魔眼はモノの死を見る能力ということで間違いないですか?」

 

「……………そうだよ。オレにはそれが線になって見えてる。けど、あれは線が多すぎるんだよ」

 

「なるほど。なら、その線を減らせばどうにかなるということですよね?」

 

「そりゃあ、できると思うけど……………どうするんだ?」

 

「簡単な話ですよ。――あれは俺が相手します。あなたは殺せるようになったら突っ込んで、あれを仕留めてくれればいい」

 

「………………オレはそれでもいいけどさ、お前だけで相手できるのか?」

 

女性にライズを心配するような考えはない。ただ単に、あれを一人で相手できるか疑問に思って質問しているだけだ。

 

それに対して、ライズは微笑みを浮かべる。

 

「問題ありません。それに――奥の手は残ってる」

 

ライズは胸に手を当てて少しの間瞑目し、呪文を唱える。

 

 

 

 

 

「――――封印解除(フリーズリリース)侵呪開始(オーバールイン)

 

 

 

 

 

それと同時に、女性はライズに起きた変化に気づく。

 

(――消えた?)

 

先程までは見えていた死の線が、ライズの体から見えなくなったのだ。女性はそのまま地獄堂とサーヴァントに視線を移すが、しっかりと線が見えている。魔眼の能力がなくなったというわけではないようだ。

 

(まさか………死の概念を消したのか?)

 

彼女の魔眼は、直死の魔眼と呼ばれる(もの)だ。その眼に映る線は、あらゆるモノにいつか来る終わり――言わばモノの寿命。それを切ることにより、どんなモノだろうと切断し、殺すことができる。

 

――その線が見えないということは、死なないのと同義。女性はそんなことができるライズに少なからず驚いた視線を向ける。

 

「…………この状態で長く活動するのは、俺も避けたいんでな。――さっさと決めるぞ」

 

そう言って正面を見据えるライズ。その様子は、先程とは違うものだった。その金髪の一部が白髪になり、右眼が青から赤へと変わっている。…………その姿は見る者が見れば、かつてのライズ――剛の姿が重なって見えているだろう。

 

ライズが片手を地につけて腰を低くする。次の瞬間、その姿が消え硬いアスファルトが砕ける。ライズは地獄堂へ向けて高速で突っ込んでいたのだ。それに対し、地獄堂はその巨大な4つの腕で空を薙ぐ。すると、それによって発生した真空の刃がライズへ向けて飛んでいく。

 

しかし、ライズはそのほとんどを避け、避け切れないものは強化と硬化が施された腕と脚で弾いた。流石に無傷とはいかず皮膚が裂けて血が出てるが、その傷口は目に見える速さで塞がっていく。

 

それに怯まずに真空の刃を飛ばす地獄堂だが、全て捌かれ接近を許すことになる。しかし、その直前に腕を振るうのをやめ、胸の中心へ集める。するとその掌に怨念の業火が集まり、灼熱の大砲となったそれがライズへ向けて放たれた。

 

すぐそこまで迫っていたライズは、至近距離で放たれたそれを避けきれず、業火に呑まれて見えなくなる。…………しかし、それも一瞬だった。業火の中から影が飛び出し、地獄堂の懐に飛び込むと同時に拳を叩き込む。その一撃で地獄堂の腹を形成していた骸骨の顔が砕け散った。

 

――それを行った者は他でもない、ライズだ。業火に包まれたはずの体は、皮膚から少し煙を上げているだけで火傷は一切負っていない。

 

一部とはいえ腹を砕かれた地獄堂は悲鳴を上げる。…………いや。よくよく聞き取ると、それは砕かれた破片から聞こえていた。

 

(……やっぱりか)

 

その悲鳴――断末魔を聞いてライズはある確信を得る。

 

しかし、地獄堂は怯むことなくそのかぎ爪を振り下ろす。ライズは地獄堂の頭へ跳躍してそれをかわし、そのまま頭を蹴り砕く。全てを砕くことはできなかったが、顔の半分がなくなった。

 

それでもなお、怯まずにライズへ腕を振るう。しかし、その内の一本に拳を叩き込む。すると巨大な爪は砕けてなくなった。だが、その他の腕は捌き切れないと判断したのか、ライズは腕の一つを足場として跳躍することで後退する。

 

(怯む様子なし………。だが、さっきから聞こえるこの断末魔……。やっぱり、こいつは取り込んだ幽霊で外郭を形成してる。その見た目が、あれ………。となれば、これの切っ掛けとなった核とも言える奴があの中にいるはずだ。なら、あの外郭を破壊してその核を露にしてやれば――)

 

地獄堂は再び業火を放つ。しかし、ライズはそれに構わずに突っ込む。再び業火に呑まれるライズだが、やはり大きなダメージは負ってない。

 

ライズは再び地獄堂の懐に入ると、迫ってくる腕を砕きながら腹部へ飛び移る。その腹部はいつの間にか元に戻っていた。

 

(別の怨霊を取り込んで再構築したのか? ――なら、その隙を与えないようにしてやるよ)

 

再び拳を叩き込む。先程と同じく断末魔が響くが、それに構わずもう片方の拳を叩き込んだ。休むことなくその作業を続けられ、地獄堂は腹部を再構築することができないようだ。

 

地獄堂は貼り付いているライズへ向けてかぎ爪を振り下ろす。決して怯むことはないが、心なしかその腕の動きが速くなっている。……まるで、焦っているかのように。かぎ爪がライズの背中を切り裂くが、深い傷ができることはなく、ライズも腕を休めることはない。

 

(この反応は――当たりだな!)

 

自分に対する攻撃の必死さを感じたライズはそう確信すると同時に、右腕を大きく振りかぶる。そして、先程よりも強力な一撃を叩き込んだ。その威力で地獄堂の腹部は大きく抉れる。

 

すると、そこには先程までの幽霊たちと同じ姿をした幽霊が姿を現した。だが、その幽霊は他と比べても明らかに強い気配を纏っており、霊感のないライズにもわかるほどのものだった。

 

「――よぉ。引きこもりは終わりだぜ、亡霊」

 

不敵な笑みを浮かべて幽霊を見るライズ。表情もないはずの幽霊は、それを見て戦慄しているような雰囲気だ。恐怖で固まった幽霊だが、我に返り地獄堂の3つの腕でライズを掴み、そのまま業火を直に放つ。ライズは一瞬で燃え上がり、人の形をした業火となった。

 

「……………直にやれば、効くと思ったか?」

 

それでも、ライズは平然と話す。その声音からして、痛みを耐えて喋っているわけではないとわかる。更にライズは続ける。

 

「それにな………お前を見つけた時点で勝敗は決まったんだよ」

 

 

 

 

 

「――じゃあな」

 

 

 

 

 

刹那、ライズの横を何かが通った。その影は止まることなく地獄堂の本体である幽霊の元へ行き――切り裂いた。

 

その影の正体は、あの女性だ。女性は幽霊を視認した瞬間にどの線かを把握し、それを的確に切った。

 

「――ギオオォォォァァァァァァアアアアアア!!」

 

地獄堂の本体である幽霊は今までの幽霊とは比にならない絶叫を上げ、取り込まれた幽霊たちでできた外郭と共に消滅した。それと同時にライズを包んでいた業火も消える。やはり、ライズに目立った傷はできていない。

 

地獄堂が完全に消えたことを確認すると、ライズの髪は元の金髪に、眼は青色に戻っていた。

 

「…………ふぅ、終わりましたか」

 

「何言ってんだよ、まだだろ? ――本命が残ってる」

 

安堵したライズに対して女性が声をかけつつ、黒いサーヴァントを見据える。

 

「………見事だ。こうもあっさり倒すとはな。それに貴様……」

 

黒いサーヴァントはライズへ視線を向ける。

 

「……………まあいい。元々、奴にそこまで従う義理もないからな。俺は俺のやりたいようにやるだけだ」

 

そう言って、黒いサーヴァントはこの場から立ち去ろうとする。女性は逃がすまいと飛び出そうとしたが、ライズがその前に回り込んで進路を塞ぐ。

 

「邪魔するなって言ったよな?」

 

「邪魔しますよ。俺はこれ以上戦うのはキツいんです。そうなれば、あなた一人であいつと戦うことになる。流石にそれは厳しいと思いますけど?」

 

「…………チッ」

 

女性は渋々といった感じで姿勢を元に戻す。

 

「ほう。俺を見逃すのか? 次に会う時は、貴様の脅威になるかもしれないぞ?」

 

「いいですよ。どのみち、戦うことは決定されたようなものだし、何より今は万全じゃない。そんな状態で、そこいらのサーヴァントより強そうなあんたと戦いたくはないですからね。…………というか、影だけのあんたと殴り合いができるとは思いませんが」

 

「フッ、そうだな。だが、その女の眼ならばどうにかできたかもしれないぞ。………まあ、俺には関係ない話だ。その判断が間違っていなければいいな」

 

黒いサーヴァントはそう言って消えようとする。ライズは慌てて問いを投げかける。

 

「あぁ、ただ一つだけ問いたい。――あんたは、誰なんだ?」

 

「サーヴァントが真名を答えると思うか? …………だが、そう問われたのならこう返そう」

 

黒いサーヴァントは一呼吸置き、消える直前にこう口にした。

 

「――待て。しかして希望せよ」

 

そして、この場から完全に消えた。しばらくの沈黙が続いたが、耐えれなかったライズが口を開く。

 

「……………で、まだ戦いますか? とりあえず、原因と思われる奴はもう消えましたが……」

 

「………もういい。めんどくさい。あれだけ派手に戦ったのに、結局勘違いだったなんて拍子抜けもいいところだ」

 

「俺は誤解を解こうとしたんですがね……」

 

「お前何も言わなかっただろ?」

 

「あなたが話をすっ飛ばしたんでしょう! ……………はぁ、ダメだ。解放したから体が重い。今は1秒でも早く休憩しよう。えーと、腕は………」

 

ライズは女性から離れ、先程切られた自分の腕を探す。少しすると、運よく瓦礫に潰されてなかった腕を見つけた。ライズはそれを回収すると、傷口に触れる。

 

10秒程すると、腕を放り投げる。その腕の甲からは令呪がなくなっていた。代わりに、ライズの右腕に令呪が浮き出ていた。

 

ふと、ライズは意識が遠くなる感覚を覚える。それが夢から覚めようとする前兆だとすぐに理解することができた。

 

「…………すいませんが、もうお別れみたいです。最初こそ戦いましたが、協力ありがとうございました」

 

「オレは別に悪いなんて思ってないからな」

 

「はいはい。――あ、よければ名前を教えてくれませんか? これも何かの縁ですし。俺はライズ・アルスティと言います」

 

「…………式。両儀式だ。……まあ、また会うことがあれば、ボディーガードくらいはしてやるよ」

 

女性――式は軽く笑みを浮かべてライズを見る。ライズはそれを見ながら意識を失った。

 

 

 

――――――――――

 

「………先輩。先輩!」

 

カルデアの一室、此処はライズに割り当てられた部屋。寝ているライズを起こそうと、マシュが揺すっている。フォウも応援するかのようにライズの上で跳び跳ねる。

 

流石にライズもこれだけされたためか目を覚ます。

 

「ん………………あぁ、マシュ。起こしに来てくれたのか。ありがとう」

 

「いえ。おはようございます、先輩」

 

「あぁ、おはよう。フォウもおはよう」

 

「フォウ!」

 

ライズはマシュに挨拶しながらフォウの頭を撫でる。

 

「先輩。今日はいよいよ第一特異点へのレイシフトです。…………まだまだ未熟ですが、先輩は絶対に護ってみせます。だから、一緒に頑張りましょう!」

 

「あぁ、そうだな。――それじゃあ、行くか」

 

ライズはそう言って立ち上がり、マシュとフォウは先に部屋を出ていく。ライズもそれに続こうとする。

 

「………ん?」

 

だが、ドアの前で突然立ち止まる。それに気づいたマシュが振り返り声をかける。

 

「先輩? どうかしましたか?」

 

「いや、なんでもない。気のせいだった。――ほら、早く行こう」

 

ライズはマシュの背中を押して部屋をあとにする。

 

(……まったく。質の悪い夢だ)

 

 

 

 

 

――――――――――

 

残りの魔術回路数 291




ところで、絆レベル上限が上げられましたけど、皆さんはどれくらい上がりましたか? 自分はセイバーオルタさんの絆レベルを上げようと頑張ってますが、6にすら行ってません。これどんだけかかるんでしょうね(汗)

とにかく、次回はとうとう第一章です。………はい、遅いですね、すいません。今言えることはただ一つです。……………英霊召喚は一章中にやります!

それでは、次回予告をどうぞ!



「此処が、第一特異点だよ」



「気軽にダ・ヴィンチちゃんと呼ぶように」



「ボンジュール、ムッシュー。よし、完璧です」



「私はジャンヌ。ジャンヌ・ダルクです」



「こういう風に――お手ぇ!!」



次回 フランスの聖女
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