Fate/Grand Order 輪廻の従者   作:初代凡人

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今回のピックアップに絶望した初代凡人です。え、なんで絶望したかですって?

いえ、ピックアップの内容に文句はないんですよ。駄狐欲しいですよ。☆4の二体も持ってないやつなので、ラッキーと思って十連引いたんですよ。

…………結果、ピックアップに当たってるのがダレイオスさんしかいないという紙引きに。というか、本当にピックアップしてるんだよな、と疑ってしまうほど今回のガチャは引きが悪かったですね。他の方々はちゃんと引き当ててるみたいですし、自分の運が悪いだけですね。…………ナイテナイヨ?

本編をどうぞ(泣)


解放と邂逅

no side

 

「………敵影なし、と。なんとか引き離せたか?」

 

あれから少ししてライズたちは大橋付近に到着し、ライズは物陰から自分たちが通った道を見て、サーヴァントが追ってきてないか確認している。

 

『それが、まだ機械の調子が悪いみたいで、反応を途中で見失ったんだ。反応が見つかり次第連絡するけど、油断はしないで」

 

「了解」

 

ロマニからの通信を聞きつつ、ライズはマシュとオルガマリーに向き合う。マシュは肉体的に、オルガマリーは精神的に疲弊している。

 

「どうなってるのよ!? なんでサーヴァントがいて、しかも襲いかかってくるの!?」

 

色々なことが立て続けに起きたせいで、オルガマリーは半ばやつ当たり気味にライズに向けて怒鳴る。

 

「落ち着いてください、所長。先輩に当たっても何もわかりません」

 

「……いや。大体の予想はついてる」

 

マシュがライズを庇うが、その本人は驚く発言をした。

 

『本当かい、ライズくん? よければ、聞かせてくれるかな?』

 

「構いませんよ。さっきのサーヴァントはおそらく、この冬木で行われた聖杯戦争によって召喚されたものでしょう。けど、あれにはマスターがなく、しかも影のようになっていた。聖杯戦争についてはある程度知ってるが、こんな例は一切聞いたことがない。つまり、この特異点における聖杯戦争も、すでに何かがおかしくなったものなんですよ」

 

特異点そのものが時代の大きな歪み。その状況で行われるものは、それだけで狂っている可能性が高いのだ。

 

「でも、変わらないことがある。それが俺たちを――正確にはマシュを狙う理由だろう」

 

「私を、ですか?」

 

「ああ。さっきも、あいつは俺を害になる敵と認識するまでお前しか狙ってなかったからな。マスターの指示かと思ったが、あいつはマスターなしだったみたいだから、すぐに理由が特定できた」

 

「それはなんなの?」

 

現在進行で巻き込まれているオルガマリーは、一刻も早く理由が知りたいらしく、ライズに詰め寄る。それに動じることなく、ライズは口を開く。

 

「――サーヴァントの敵はサーヴァント。さっきのライダーも、ほとんど理性は残ってない様子だった。本能のみでサーヴァントであるマシュに襲いかかってきたんでしょう」

 

「何よそれ……! マシュはこの街の聖杯戦争とは関係ないのよ!?」

 

「言ったでしょう? 本能のみでサーヴァントに襲いかかるって。聖杯戦争に参加してるか、してないか。それこそ奴らにとっては関係ないことなんですよ。――サーヴァントかどうか。奴らが重要視するのはそれだけです」

 

ライズの言葉を聞いて、オルガマリーは何も言えなくなってしまった。いや、オルガマリーのみならず、マシュとロマニも何も言えないでいる。

 

『――っ!? ライズくん、マシュ! 後ろだ!』

 

だが、そんなロマニが突然叫んだ。その焦った様子から、二人は即座に理解した。二人はそのまま後ろへ振り返る。

 

「見ツケタゾ。新シイ、獲物。聖杯ヲ、我ガ、手ニ…!」

 

そこには、先程のライダーと同じように黒いモヤにつつまれた人形の物体がいた。いや、よく見ればその影は身につけてる服そのものが黒いローブだ。更に、その右腕は異様に長く黒い布に包まれている。

 

「まったく気配がありませんでした! こんなに近くにいたなんて……!」

 

マシュが言うように、その影との距離は10メートルあるかどうかだった。

 

「機械で探るロマンさんにしかわからなかったってことは、アサシンか? ――いや、この際それはどうでもいいか」

 

ライズがそう言いつつ全身に強化と硬化をかける。すると、アサシンは懐から何かを取り出し、それをライズとマシュに投擲した。

 

――それは、黒塗りの短剣だ。しかし、そのスピードは尋常ではなく、銃弾の如き速度で飛んでいく。

 

「敵であることに変わりはないようだしな!」

 

その速度に内心驚きつつも、ライズとマシュはその場から飛び退くことでかわす。目標を失った短剣はそのまま地面に突き刺さる。だがその際、突き刺さった地面を少し砕いていた。

 

(雑な投げ方だったってのに、なんて速度と威力してんだよ……。アーチャーの矢と大差ない威力だ。油断はしない方がいいな)

 

「マシュ、距離を詰めて戦うぞ! 相手の主な戦法は今みたいな遠距離からの投擲のようだ! 距離を空けたら一方的に攻撃され続ける!」

 

「はい!」

 

二人はアサシンに向かって走り出す。しかし――

 

「チッ! あいつ速いな!」

 

アサシンは二人と一定の距離を保つようにバックステップを繰り返す。その速度は二人の走る速さとまったく同じで、しかもまだ余裕があるように見える。

 

それに対し、二人は既に全速力。更に、アサシンの短剣も時折飛んでくる。このままでは追いつけないだろう。

 

そのため、ライズはある行動をとろうと考えた。

 

「マシュ! 俺の足に乗れ!」

 

「っ!? ――はい!」

 

突然訳のわからないことを口走るライズだが、マシュは最初は戸惑ったものの、すぐにライズが上げた足に向けてジャンプした。それは、ライズを信じているからこそできる行動だ。

 

ライズはマシュが乗ったのを確認し、狙いを定める。マシュもここにきて何をする気かわかり、盾を正面に構える。

 

「――行け!」

 

アサシンが短剣を投げた直後、ライズは全力の一蹴によりマシュをアサシン目掛けて飛ばす。そのスピードは、アサシンの投擲にも勝るものだ。

 

当然直線的なため、既に投擲された短剣が容赦なく襲いかかるが、マシュが正面に構えた盾によって弾かれる。アーチャーの矢と同等の威力を誇るそれを受けたにも関わらず、マシュのスピードはあまり落ちていない。

 

「はぁぁぁぁあああああ!!」

 

短剣を全て弾くと、マシュは盾を振りかぶる。アサシンは予想外の行動に反応しきれていない。このままいけば、致命的な一撃を与えることができるだろう。

 

 

 

 

 

――だが、マシュの軌道に異物が侵入してきた。

 

 

 

 

 

「え――」

 

銃弾並みの速度で飛び、盾を大きく振りかぶっていたマシュは対応できず、その異物によって斬られてしまう。

 

「あぁ!?」

 

「マシュ!?」

 

マシュを飛ばすと同時に、回り込んでアサシンの元に走っていたライズも突然のことに驚き、マシュの方に目を向ける。

 

「――っ!! よりにもよって、このタイミングで新手か……!」

 

マシュの血が落ちている場所には、斬り捨てたであろうサーヴァントがいた。その手に持つのは槍――正確には薙刀だ。文字通り、そのサーヴァントが横槍を入れたため、マシュは斬られてしまった。

 

だが、モヤのかかるその背をよく見ると、様々な武器が収められている。刀、槍、棒、更には熊手まである。

 

「――ハハハハハハ!!」

 

そのサーヴァントは狂ったように笑い出した。それに続いてアサシンが口を開く。

 

「遅イゾ……ランサー。――ダガ、イイ。今ハ、アノ娘ニ、トドメダ」

 

そう言ってアサシンと、新たに来たランサーのサーヴァントが倒れるマシュへ近づく。

 

(ダメ…! まだ、倒れちゃ……!!)

 

マシュはなんとか立ち上がろうとするが、斬られた腹に激痛が走りうまく立ち上がれない。

 

(今殺されたら、先輩が……!)

 

今、命が危ういのは自分だというのに、マシュは自分が死んだあとのライズの身を案じている。せめて自分のマスターだけでも逃がそうと、痛みを堪えて立ち上がろうとする。

 

だが、現実は非情だ。そうやって命懸で頑張るマシュの目の前には――

 

 

 

 

 

「………ナンノツモリダ、()()?」

 

 

 

 

 

(――え?)

 

アサシンが言った言葉に、マシュは驚いて顔を上げる。そこには、アサシンとランサーが立っており――

 

 

 

 

 

「見りゃわかるだろ? ――これ以上、こいつは傷つけさせねぇ」

 

 

 

 

 

その前で、逃げてほしかったライズが仁王立ちしていた。

 

「……せ、先輩…」

 

「無理するな、マシュ。そのまま休んでろ。魔力供給量を上げるから、少しでも早めに回復してくれ」

 

「ち、がう……! 逃げ――」

 

「逃げてってか? それは無理だな。このままじゃ、お前を失うことになる。というかな……」

 

ライズは面倒臭そうにため息をついて、マシュに振り返る。

 

「言ったろ? 助けが欲しければ頼れって。――まあ、頼まれなくても助けるがな」

 

しかし、その顔は優しい笑みを浮かべていた。

 

だが、背を向けられて黙っているほど、サーヴァントたちは甘くない。ランサーが無防備な背に薙刀を振り下ろす。

 

(先輩!!)

 

マシュはライズに危機を知らせようとするが、時既に遅い。

 

 

 

 

 

(―――魔術回路290本(メインサーキット)封印解放(オールリリース)全回路始動(ブースター)出力最大(フルドライブ)――!!)

 

 

 

 

 

薙刀の刃がライズの身を斬り裂こうとした瞬間――ランサーは突然後ろに吹き飛んだ。

 

「ナ――」

 

その後方にいたアサシンも巻き添えにして、30メートルほど先の瓦礫に衝突することで、ようやくその勢いが止まる。マシュはその光景を見て――いや、その目に映っているのはライズだけだった。

 

「先……輩…?」

 

目の前にいたマシュだからこそ、ライズが何をやったのかがわかったが、それと同時に信じられなかった。

 

――ランサーの薙刀があたる直前、ライズの魔力量が桁違いに跳ね上がり、次の瞬間には後ろにいたランサーに振り返り、その腹部に拳を叩き込んで殴り飛ばしたのだ。

 

言ってるだけなら普通に聞こえるが、相手はサーヴァント。ただの人間と比べても桁違いの戦闘力を誇る存在だ。魔術師だからといって、その事実に変わりはない。

 

そんなサーヴァントと戦うというのは、無茶を通り越して愚の骨頂。正気の沙汰ではないとしか言えない。

 

――それなのに、自分の(マスター)はサーヴァントに正面から単独で挑み、一撃をくらわせた。その事実が、マシュを混乱させてしまっていた。

 

ライダーとの戦いでもライズが決め手になってはいたが、サーヴァントであるマシュが一緒に戦い、致命的な隙をついてくれたからこそできたことだ。更に言えば、今とは逆で2対1で有利だったためというのもある。

 

しかし、今のライズは正真正銘、一人でサーヴァントに立ち向かっている。一体どのような魔術を使えば、サーヴァントに対抗できるというのか。

 

「……やっぱり、長くはやってられないか…」

 

ライズは先程殴りつけた右腕を見る。ところどころ皮膚が破れ、血が出ていた。

 

「っ!? 先輩、怪我を!?」

 

「……いや。これは代償みたいなもんさ。命に比べりゃ充分安いだろ? だから心配するな」

 

「ですが――」

 

マシュがライズの身を案じて止めるが、それは大きな金属音によってかき消える。

 

「面白イ 面白イ!!」

 

吹き飛んだランサーがライズに突っ込み、ライズはあろうことか薙刀を足で受け止めてしまったのだ。

 

ランサーは狂ったように同じ言葉を繰り返す。黒いモヤに包まれたサーヴァントは個体差はあれど、理性を失っているようだ。

 

それに対して、ライズは呆れたように――だが、凄く冷めたため息をつく。

 

 

 

 

 

「面白かねぇよ。――テメェ、五体満足で死ねると思うな」

 

 

 

 

 

――その瞬間、とてつもない殺気(プレッシャー)がランサーに向けられた。

 

「――!?」

 

ランサーは薙刀を引っ込め、その場から退避する。すると、先程まで自分の頭があった位置に鋭い蹴りが放たれた。いや、そのスピードはあまりに速く、ランサーの頬を掠めている。

 

頬が切れ、血が滲み出してくるが、それよりも速くライズの左手が伸び、ランサーの頭を掴もうとする。しかし、そこに後方のアサシンが放った短剣が飛んでくる。

 

アーチャーの矢にも匹敵する投擲された短剣。いくら硬化をしているとはいえ、くらえばひとたまりもないだろう。

 

――だが、ライズはあえて無視した。なぜか? その理由は至って簡単だ。

 

――キィン!

 

「ナニ!?」

 

アサシンはその光景を見て驚愕した。それは当然だ。あの短剣は〈ダーク〉というもので、アサシンが昔から愛用していた短剣なのだ。

 

――その愛用の短剣が、ただの人間の腕に弾かれたのだから、驚くなという方が無理な話である。

 

そう。ライズが避けなかったのは一番簡単な答えだ。――効かないから。ただ、それだけだ。

 

動揺して動きが止まったアサシンとは裏腹に、戦況は進んでいた。ライズはランサーの頭をわし掴みにすると、一気に地面へ叩きつけた。その衝撃により、地面に亀裂が走って砕ける。

 

「ガ――」

 

いくらサーヴァントといえど、この一撃は相当堪えるようで、ランサーは苦悶の声を上げる。だが、それを聞いて手を緩めるほど、ライズは甘くない。

 

「――あばよ」

 

身動きがとれないランサーに対して、容赦のないラッシュを叩き込む。

 

――ライズの戦い方(殺し方)は、()()()そうだった。他者より秀でた強化を使い、常人離れした攻撃力で相手の皮膚を破り、骨を砕き、内臓を潰す。

 

そして、念には念を入れて相手の頭を――

 

 

 

 

 

捻 切 る

 

 

 

 

 

既に死ぬところだったランサーも、頭が体と別れた瞬間に絶命し、消えていった。それを見届けて、ライズはアサシンへと狙いを定める。

 

「――がっ!!」

 

今まさに、アサシンへ突撃しようとしたライズだったが、その直前に体へ激痛が走る。

 

(これ以上は無理か……!)

 

よく見れば、ライズの体についている血は返り血だけではなく、裂けた皮膚から流れ出た本人の血も多かった。その証拠に、両腕はズタズタになる程皮膚が破れ、大量の血が流れ落ちている。

 

ライズはやむなく強化と硬化を解除する。――度を越えた強化は身を滅ぼすことになる。まさにその代償が、今のライズの体を襲っているのだ。

 

アサシンは状況を正確には判断できていない。たかが魔術師ごときに、サーヴァントが殺された事実も理解できないでいる。だが、1つだけ確かにわかっていることがあった。

 

――今は、あの危険因子を始末できるチャンスだと。

 

アサシンはさっそく行動に移った。懐から愛用のダークを取り出し、隙だらけなライズに向けて投擲する。狙いは頭部。確実に仕留めるために、全力の投擲を行った。

 

「先輩!!」

 

マシュが叫んで危機を知らせるが、ライズが顔を上げた瞬間にはダークは5メートルのところまで迫り――

 

 

 

 

 

割り込んできた火球とぶつかり、爆発した。

 

 

 

 

 

「――っ!?」

 

目の前で突然起きた爆発に、ライズは思わず腕を前に出し顔を守る。

 

自分の愛用の短剣が、いきなり乱入してきた火球によって粉砕されたことにアサシンは驚愕する。

 

だが、それに一番驚いたのは、目の前での出来事を見たライズだ。マシュはまだまともに動ける状態ではなく、かといって何かの魔術を使った様子もない。では、誰が今の火球を放ったのか?

 

「何者ダ!?」

 

アサシンが火球が飛んできた方向に叫ぶ。

 

「――何者って程じゃねぇよ、ご同輩。あんたと同じサーヴァントさ。なんだ? 泥に触れて心と一緒に目まで腐ったか?」

 

そこにはローブを羽織り、杖を持つ青髪の男性が立っていた。新たなサーヴァントの出現に全員が驚くが、一人だけ別のことで驚いている者がいた。

 

「――ランサーさん……?」

 

思わずそう口に出た言葉を聞いたサーヴァントが、ライズの方に顔を向ける。

 

「ん? 生憎だが違うぜ。俺はキャスターのサーヴァントだ。まあ、確かにランサーとしての適正はあるがな。というか、ランサーならついさっき坊主が始末しただろ?」

 

キャスターの言葉を聞いて、ライズは確信した。

 

(やっぱり、この人はランサーさんだ…)

 

だが、それと同時に理解した。――これは何かが狂った第五次聖杯戦争。見覚えのないサーヴァントがいたり、ランサーもキャスターとして現界していてもおかしくはない。

 

ならば、変に混乱させるような発言はしない方がいいとライズは判断した。

 

「……ああ、いえ。人違いでした。すいません」

 

「まあ、別に構わねぇが。……それよりも、その両腕はしばらく使えないようだな?」

 

「……ええ。魔術の方もできれば使用は控えたいですね」

 

「だろうな。それの原因は膨大な魔力での魔術使用によるものだ。ったく、いきなりあんな桁違いの魔力を出して体が無事で済むわけがねぇのに、無茶なことしやがって」

 

「無茶には慣れてるんで、問題ないですよ。……ただ、俺はもう戦えませんから…」

 

ライズはそう言ってマシュの方を見る。

 

「マシュ! 大半の魔力はそっちにやるから、あとは頼んだぞ。――それで、さっきよりも動けるはずだ」

 

その言葉を聞いた直後、マシュの体に先程までより明らかに多くなった魔力が流れ込んだ。

 

(っ!? これは――!?)

 

すると、マシュの体に力がみなぎり、まだ残っていた傷が瞬時に治る。そのおかげで、マシュはすぐに立ち上がることができるようになった。

 

「ナンダト!?」

 

その光景を見て、アサシンは驚愕した。マシュにつけられた傷は、決して浅いものではない。確かにサーヴァントは治癒能力が人より高く、ある程度の傷なら少しで治ってしまうが、マシュの身に起きた今の治癒はサーヴァントといえど明らかに異常なスピードだ。

 

「せ、先輩! これは――」

 

マシュ自身も困惑して、ライズに説明を求めようと顔を向ける。しかし、ライズは口を開かずにアサシンを指差すだけだ。だが、マシュはすぐにその意味を理解した。

 

――あいつを倒せ。

 

「――はい!」

 

マシュは理解したと同時にアサシンに突っ込む。不意をつかれたアサシンだったが、ギリギリでマシュの攻撃を避ける。

 

ひとまず、距離をおくためにアサシンは後方に飛ぶ。アサシンの戦い方はダークの投擲が主なものだ。先程のように距離を保ちながら投擲によって一方的に攻撃すれば、マシュ一人だけなら倒せると考えたのだ。

 

――だが、その考えは一瞬で崩れることになる。

 

アサシンを追うためにマシュが走る。そこまでは先程と同じだ。

 

しかし、そのスピードは先程の比にならなかった。先に行ったアサシンに追いつくほど、そのスピードは上がっていた。

 

「ナニ!?」

 

「やぁぁぁあああああ!!」

 

本気ではなかったとはいえ、突然のことに対応できずにアサシンは腹部を斬られた。

 

「グゥッ!?」

 

そのまま勢いが止まり、アサシンは倒れる。その上にマシュが乗り――

 

 

 

 

 

アサシンのつける仮面ごと、刃で貫いた。

 

 

 

 

 

「アァ――」

 

アサシンは小さな断末魔を上げ、消えていった。

 

「はぁ……はぁ…!!」

 

疲労したわけではないが、マシュは息を荒くしている。当然だ。先のライダー戦ではとどめはライズがさした。

 

つまり、今のがマシュにとって初めての1対1(サシ)だったのだ。精神的疲労が大きいのも仕方ないと言えるだろう。

 

「後方支援しようかと思ってたんだが、そんな必用なかったな。にしても、あの嬢ちゃんのステータス強化は坊主の魔術か?」

 

黙って観戦していたキャスターがライズにそう問いかけた。それに対し、ライズは首を横に振る。

 

「魔術は使ってませんよ。今使ったら傷が大きくなるんで。――あれはただ単に、マシュが元々持つステータスが戻っただけですよ。まあ、俺の魔力でちょいと強化されてますが」

 

「自分から戦いに行ったり、サーヴァントのステータスを上げたりと。色々と規格外だな」

 

「魔力だけですよ。それ以外は並以下ですし」

 

「先輩!」

 

ライズとキャスターが話しているところに、マシュが割り込んでくる。マシュはライズを庇うようにキャスターの前に立つ。

 

「おいおい。そんなに警戒するな。別に危害を加えるつもりはねぇよ。というか、そのつもりなら嬢ちゃんが戦ってる内にもう何かやってるさ。――いや、それ以前に助けてねぇな」

 

「………」

 

「マシュ、大丈夫だ。この人はそんな姑息なことはしねぇさ。俺にはわかる」

 

(正確には()()()()()()だけどな)

 

「……先輩がそう言うなら」

 

ライズに説得され、ようやくマシュは警戒を解く。

 

「ありがとな、坊主。ところで、あんたらはどこから来た? この街の生き残りでもなさそうだし、そこら辺の説明をしてくれないか?」

 

「はい。こちらも、此処で起きたこと、起きていることについて詳しく聞きたいので、話しましょう。……ただ、もう一人連れがいるので、その人を回収してからでもいいですかね?」

 

「ああ。構わねぇぜ」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

ライズside

 

「――なるほど。それがおたくらの目的か…」

 

あれから少しでオルガ所長を見つけ、本人から散々文句を言われたあとに俺たちの目的を説明した。

 

「それじゃあ、キャスターさん。この冬木で何が起きたか、教えてくれますか?」

 

「ああ。といっても、俺にも詳しいことはわからねぇんだ。いつの間にか、俺たちの聖杯戦争は違うものになっていた。街は一夜で炎に呑まれ、人間はいなくなって、俺たちサーヴァントだけが残った。そんな中、一番に戦いを再開したのはセイバーの奴だった」

 

セイバー、か……。できれば、あの人であってほしくないが…。

 

「そのセイバーは、一人でランサー、アーチャー、ライダー、アサシン、バーサーカーを倒しちまったんだ」

 

――どうやら、その可能性は薄いようだ。

 

「セイバーに倒されたサーヴァントは、黒い泥に汚染されてさっきの奴らのようになった。……まあ、自分で言うのもあれだが、俺は勝ち残ったんじゃなくて生き残ったってわけだ」

 

『実力はない、と言ってるのですか?』

 

「アーチャーならなんとかなる。ただ、セイバーとバーサーカーは俺一人じゃどうにもならねぇ。だが、坊主と孃ちゃんでもどうにもならないぞ。断言できる」

 

「でしょうね。特に、バーサーカーには勝てる気がしません」

 

「何弱気なこと言ってるのよ。あんた、ランサーを捻り潰したんでしょ? バーサーカーくらい――」

 

何も知らないオルガ所長がそう言ってくる。だが、俺は首を横に振る。

 

「無理です。キャスターさんが一人で相手できないとなると、相当ヤバい奴ですし………キャスターさん。そのバーサーカーは、かなりの大男ですよね?」

 

「おお、そうだぜ。なんでわかったんだ?」

 

「……まあ、それはさておき、もしキャスターさんが言ったことが本当なら、俺との相性は正に最悪。ダメージすら与えれるかどうかというレベルです。それくらいヤバい奴なんですよ」

 

俺の言葉を聞いて、オルガ所長は何も言わなくなった。

 

「まあ、バーサーカーは近づかなければ襲ってこないようだから、相手にしないって手もある。だが、それを倒したセイバーも充分すぎるほど強い。それに、今の二体とアーチャーを含めて、三体が原因である大聖杯の近くにいる。――それでだ。坊主にちょいと提案がある」

 

「いいですよ。手を組みましょう」

 

俺は提案の内容を先に言った。勝手に切り出した俺に三人は驚くが、キャスターさんはむしろ笑っていた。

 

「おう、話が早くて助かるぜ」

 

「まあ、互いに現状は戦力の増強が必用ですからね。第一、俺たちが戦う理由もありませんし」

 

「そういうこった。――そっちの三人もそれでいいか?」

 

キャスターはライズ以外の三人の意見を聞く。

 

「あ、はい。私は先輩さえよければ……。それに、悪い方ではなさそうですし」

 

「……戦力を増やすためには、手段は選んでられないわね」

 

『……まあ、僕も悪くないとは思うよ。ただ、あまり信用しすぎるのはどうかと――』

 

「ロマンさん、今更ですよ。ここまできたら信用するしかないんです。――まあ、俺は最初から信じてますが」

 

そう。此処で会う前から、なんやかんやで結構一緒に行動してたんだ。ランサーだろうがキャスターだろうが、この人はクー・フーリンだ。その在り方は変わっていない。

 

「………不思議なもんだな。坊主とは初めての対面のはずなんだが、なぜか懐かしさを感じる」

 

「それだけそちらも信頼してくれてるってことじゃないですか? 何はともあれ、仮のマスターとしてよろしくお願いします。キャスターさん」

 

「ああ。腕前は期待させてもらうぜ、坊主」

 

こうして、俺たちはキャスターさんと行動を共にすることになった。

 

――目指すは、この災害と聖杯戦争の原因である大聖杯。




はい。なんかライズがとんでもない数字を口にしました。大丈夫。あなたの目は正常です。私の頭が異常なだけです。普段使っているのは10本で、封印を解いたのが290本なので、ライズが持つ魔術回路は300本となります。

いや、自分でもやりすぎかなとは思ったんですが、こうでもしないと後々出す予定の能力が腐ってしまうので……。わざわざ自分の魔術回路の大半を封印していたのも一応理由はあります。それは後のストーリーで触れます。……まあ、解放したあとの状態を見れば大体わかると思いますが。

あと、ライズが一人で普通にサーヴァントを倒していましたが、ああもあっさりだったのは相手が油断していた点が大きいです。あれですよ。種火集め超級で油断してたらゴールドマドハンドにクリティカル出されていつの間にか誰か死んでるのと同じです。

ちなみに、ライズのステータスをサーヴァントのように表すとこんな感じになります。


通常時
筋力:B 耐久:B 敏捷:C 魔力:D 幸運:D 宝具:―

全魔術回路開放時
筋力:A+ 耐久:A+ 敏捷:B 魔力:EX 幸運:D 宝具:―


どちらも強化、硬化全力使用時です。全力でいけば上級のサーヴァントにも正面から挑めます。ただ、話の中で出てきたバサクレスさんのようなタイプとは相性最悪です(宝具的な意味で)

これでも細かい部分をカットしたのですが、それでも一万手前までいきました。文章不安定すぎワロス。

それと、せっかくのFateなので今回から次回予告のようなものを入れてみます。イメージはUBWの次回予告と同じ感じです。ネタが切れない限りは続けていきたいです。それでは、この辺で。



「このまま行っても、宝具が使えないのは大きすぎるデメリットだね」



「危険すぎるわ! マシュが死んだらどうする気!?」



「俺はお前を信じるだけさ」



「焼き尽くせ! ――灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)!!」



「先輩を――守る!!」



次回、宝具展開
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