Fate/Grand Order 輪廻の従者   作:初代凡人

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ジャンヌオルタ、キター! でも石足りないうおおぉぉぉぉぉぉ!! ………………課金するしか(血走った目)

ある程度予想してたとはいえ、だいぶ長くなってしまいました。すいません。12000以上って一体……。

それでは、本編へレッツゴー。


グランドオーダー、開始

ライズside

 

「……………」

 

同じ宝具がぶつかり合い、少しの間光と闇によって視界が塞がれた。

 

――ピキッ

 

そんな音が、俺の手元から聞こえる。そこには、刃に大きな亀裂が走った理想を描く勝利の剣(エクスカリバー・レヴェリー)があった。まあ、これは形成するための魔力を使い切ったからであって、なんの問題もない。

 

亀裂は刃から柄にまで広がり、とうとう砕ける。すると、破片は地面へ落ちる前に粒子となって霧散した。所詮は投影して創った借り物。役目を果たした以上、形を残しておく意味はないからな。

 

「――なるほど。我ながら、気づかぬ間に手を抜いていたのかもしれんな」

 

視界が晴れ、セイバーさんの姿が見えた。無傷に見えるが、実際は違う。

 

――バキンッ

 

儚い音が響くと同時に、約束された勝利の剣(エクスカリバー)が砕け散る。それと同時にセイバーさんの鎧に一筋の光の傷ができる。そのまま彼女の体は粒子となって消え始める。

 

「聖杯を守り通す気でいたが、己が執着に(かぶ)いたあげくに敗北するとは。……結局、どう運命が変わろうとも、私一人では同じ末路を迎えるというわけか」

 

「あ、どういう意味だ? テメェ、何を知っていやがる?」

 

セイバーさんが気になることを言い、キャスターさんがそれについて問いを投げかける。

 

「いずれあなたも知る。アイルランドの光の御子よ。――グランドオーダー。聖杯を巡る戦いは、始まったばかりだということをな」

 

セイバーさんの体の大半が消える。もう10秒程で完全に消えてしまうだろう。

 

「………あぁ、それと一つ、言いそびれたことがあった」

 

セイバーさんはそう呟くとこちらを向き――

 

 

 

 

 

「――強くなりましたね、(たける)

 

 

 

 

 

あの頃と同じ笑みを浮かべ、あの頃の名を呼んでくれた――。

 

言い終わると同時に、セイバーさんは消えていく。………ヤバい。あまりの嬉しさに泣きそう。

 

「って、うおぉ!? 俺もか!?」

 

と、後ろからキャスターさんの驚きの声が聞こえてきた。涙を引っ込めて振り返って見ると、キャスターさんも体が消え始めていた。

 

「ありがとうございました、キャスターさん。ご協力、感謝します」

 

俺はキャスターさんへ頭を下げて礼を言う。

 

「今さら何言ってんだ! ――地獄までつき合うって言っただろ?」

 

え――?

 

俺はその言葉に驚いて顔を上げる。すると、キャスターさんは笑いながら――

 

「縁があれば、また会おうぜ! そしたら今度はランサーとして、あの時みたいに戦ってやるよ――剛!」

 

(かつて)の名を呼び、消えていった。

 

………どうしてだ? セイバーさんは記憶を継いだことがあるからまだわかる。けど、キャスター――ランサーさんにまでそんな能力があるとは思えない。

 

「――ぱい! 先輩!!」

 

「っ!? あ、あぁマシュ。お疲れ」

 

「はい。…………勝ったんですよね」

 

「ああ、そうだ。よく頑張った」

 

マシュに労いの言葉をかけつつ頭にポンポンと手を置く。サーヴァントになって間もないのに、これまでの連戦で死ななかったのはすごい。まともな聖杯であれば、俺の願いを頼む権利をマシュに譲ってるところだ。

 

『………ライズくん。今のはなんだい? どことなく相手の宝具と似てたけど…』

 

「あれですか? あれはあの人――セイバーさんが持っていた聖剣の本来の姿。俺はそれを投影しただけです」

 

『いや、投影しただけってなんでもないように言うけど、とんでもないことだからね!?』

 

「別になんでもないとは思ってませんよ。あれだって代償なしで楽々使えるものじゃないんですから」

 

「――え、先輩。代償ってどういうことですか?」

 

げ、マシュが代償って言葉に食いついてきた。連戦が終わって疲労してる今は心配をかけたくはない。どうせあとで言おうとは思っていたし、ここは話を逸らそう。

 

「それはあとで説明するよ。それより今は――オルガ所長」

 

「……………」

 

誤魔化すためにオルガ所長へ声をかけるが、驚いた表情のまま何かをぶつぶつと呟いていた。何か気になることでもあったのか?

 

「あの、聞こえてますか? 所長?」

 

「っ!? え、ええ。――よくやりました、ライズ、マシュ。見事に任務を達成しました――」

 

「いやいや。まだ達成してないんじゃないですか? この特異点ができた原因であろう物を、まだ回収してないでしょう?」

 

『…………………あ、そうだ! 聖杯!』

 

ようやく気づいたロマンさんが叫ぶ。それを聞いてマシュとオルガ所長もハッとした顔になる。

 

「そ、そうね。まずは聖杯を回収しましょう。この特異点の異常はもう消えるだろうけど、その原因を放っておいたらどうなるかわからないもの」

 

「はい。至急、聖杯の回収を――」

 

 

 

 

 

「――いや、君たちがここまでやるとは思わなかったよ」

 

 

 

 

 

突然、この場の誰でもない――当然通信先のロマンさんのものでもない声が聞こえてきた。しかし、聞き覚えはある。少し前まで聞いていた、常に微笑みを浮かべたある人の声。

 

しかも、聞こえてきた方向は聖杯。そちらに視線をやると、聖杯はとある人物の手元に浮いていた。

 

「魔力量も平凡以下で、どこか抜けていたからと善意で見逃してあげた私の失態だな」

 

「――レフ・ライノール」

 

そこに立っている人物は、生死不明の一人となっていたレフ・ライノールだった。

 

『レフ? ――まさか、レフ教授!? そこにいるのかい!?』

 

「うん? その声はロマニくんか? そうか、君まで生き残ってしまったのか。すぐに管制室に来てほしいと言ったのに、私の指示を聞かなかったようだね。まったく――」

 

ライノールさんは突然糸目を見開き、その口からは鋭い牙が覗く。

 

「どいつもこいつも統率のとれてないクズばかりだな。おかげで吐き気が止まらない。人間というのは、どうして定められた運命からズレたがるんだ?」

 

…………今の発言で、俺の中の疑念は確信へ変わった。あの管制室の爆発、それを仕掛けたのも――

 

「あんたの仕業か、ライノール。カルデアをめちゃくちゃにしたのも――この特異点を造り出すために聖杯を悪用したのも」

 

「その通りだよ、ライズくん。しかし、この特異点を造り出したというのは言い過ぎだな。私は基点を造っただけで、そこから先はさっきまでいたセイバーの役割だ。私にすべての罪を擦り付けるのは――」

 

「間違いだ、とでも言う気か? ――そう言った瞬間、テメェの首をへし折る。テメェがあの人に何か吹き込んだんだろ? まあ、完全に操り人形にすることはできなかったようだが」

 

「……………」

 

最後の言葉を聞いて、ライノールは苦い表情を浮かべる。やっぱりな。最初、セイバーさんは見られているから黙っていたと言った。つまり、ライノールに対して完全に従っていたわけじゃないということだ。

 

「…………レフ! レフなのね!? ああ、よかった! あなたがいないと、この先どうやってカルデアを守ればいいかわからなかったもの!」

 

っ!? おいおい、オルガ所長!? なんでライノールに駆け寄ってるんだ!? 今のやり取りを聞いてなかったのかよ!?

 

慌てて脚力を強化する。

 

 

 

 

 

――ガクンッ

 

 

 

 

 

が、すぐに強化は切れ、それと同時に体の力も完全に抜けその場に倒れる。嘘だろ、おい……! ようやく馴染んだと思ったらこれかよ…!!

 

「――――!? ――――――!!」

 

視界も聴覚もどんどん薄れていき、自分と周囲が分断されていく。微かに聞こえる声も、誰のものかわからない。やっぱり、完全解放して一日も経たずに投影はマズかったか……。

 

あぁ、ヤバい…………。意識まで遠く――

 

 

 

 

 

『あんたのそれは、体への負担が大きすぎるわ。乱用すれば、自身を滅ぼす力よ。くれぐれも、使いどころを間違えないでちょうだい』

 

 

 

 

 

……………………わかってる。お前こそ、肝心なところでミスるくせに――

 

 

 

 

 

『私もあんたのことは嫌いじゃないんだから。――あんたが死ねば、悲しむ人たちがいる。それを忘れないでよ』

 

 

 

 

 

………あぁ、忘れちゃいねぇさ!!

 

ようやく意識がハッキリとして、体にも力が戻る。

 

「いや、いやよ!! 誰か助けて!」

 

現実に戻って一番に聞こえてきたのは、オルガ所長の悲痛な叫び。頭を上げると、ライノールの近くに次元の穴が空いており、オルガ所長がそれに吸い込まれようとしていた。

 

「だって、ただの1度も認めてくれなかったじゃない! なんで!? なんで私ばかりがこんな目に遭わなくちゃいけないのよ!? 生まれてから、誰からも褒めてもらえなかったのに――!!」

 

涙を流しながら叫ぶオルガ所長。………やれやれ。所長ともあろう人が、みっともない。子供みたいに泣きわめいて、見る人によっては見苦しいと突っぱねるだろう。

 

 

 

 

 

――だから見捨てられないんだよ!!

 

 

 

 

 

全身に強化と硬化をかけて立ち上がる。

 

「先輩! 今近づくのは危険です!」

 

それだけで何をするか理解したようで、起きたことに驚くより先に、マシュは俺を止めようと声をかけてきた。

 

「………悪い、マシュ。我慢は無理だ!!」

 

叫ぶと同時にオルガ所長の元へ全力で跳ぶ。今まさにオルガ所長の体が次元の穴へ吸い込まれようとしていたが、俺は手を掴んで引き止める。すごい力で引っ張られるな……! 止めるにしても、あまり長くはもたないか………!!

 

「な――!? なんで、あんたが――?」

 

「…………なんで? そんなの決まってる。――あんた、まだ死にたくないんだろ? なら諦めるな。泣いてもいいから希望を持て。――あんたが諦めない限り、俺は見捨てない!!」

 

「――っ!?」

 

クソッ! こうしてる間にも、どんどん引っ張られていく……! 何か策を打たなきゃ、俺もオルガ所長ごと吸い込まれる…!

 

「――ご立派なことだね。ライズくん。諦めない限り、見捨てない、か………………それが愚かなことだというのが、どうして理解できないのかね?」

 

隣にいたライノールがそう言って睨みつけてくる。俺も睨み返してこう告げた。

 

「愚かだろうと関係ない。生きたいと願う人を救うことの何が悪いんだ?」

 

「……………あぁ、そうか。生きていると思っているから、救おうとするのか。それなら教えてあげよう。――君が掴んでいるそのオルガは、ただの残留思念だ。肉体は既に消滅して、この冬木からレイシフトした時点で消えてなくなる。そんなものを救って何になると――」

 

「お前こそ愚かだな、ライノール」

 

バカにしたような笑みを浮かべ、ライノールを見る。当の本人は不機嫌そうな顔になった。

 

「なに……?」

 

「何度も言わせるな。俺は言ったはずだ。諦めない限り、見捨てないとな。死んでる? 生き返りたいと願う死者がいても、生きたいと願う死者はいねぇよ。自分の意思を持ち、生きたいと願ってるなら、そいつは確かに生きている。俺たちを愚かだと見下したいなら、それくらいわかれ」

 

「…………まったく。不愉快な存在だな、君は。しかし――」

 

突然、力がうまく入らなくなる。なぜなら、俺の片足が宙に浮いたからだ。ヤバい!

 

力いっぱい踏みつけることで、ギリギリ踏み留まった。が、オルガ所長を引っ張る力は増し続け、俺もつられて引っ張られる。

 

「そんな君とも、もうすぐお別れだ。諦めないものを見捨てないんだろう? なら、オルガと共に永遠の死を味わうがいい!」

 

ああ、クソ! どうやってこの状況から脱する!? オルガ所長は放せないから、此処から動くのは厳しい。どうする……!

 

「……………ライズ。所長命令です」

 

と、突然オルガ所長が口を開く。

 

「最後の所長命令よ。心して聞きなさい」

 

「…………わかりました」

 

最後。その言葉が示す意味を俺は理解した。だから、深くは問わない。最後の言葉を静かに聞く。

 

「あなたは生きて。そして、マシュと共にこの世界を――人理を修正して世界を救いなさい。それがあなたへの命令よ。いいわね?」

 

「……………はい」

 

俺は命令を聞き入れる。だが、その命令を果たすためには、この手を放さなければならない。でも、これは命令という名の願いだ。所長の、最後の願い。それを無視するわけにはいかない。

 

手の力を抜き、静かにオルガ所長の腕を放す。すると、オルガ所長は次元の穴へ吸い込まれていく。その様子を見てると、オルガ所長は微笑んだ。

 

「……………助けようとしてくれて、ありがとう」

 

その言葉を最後にオルガ所長は光の粒子となって穴へ吸い込まれていった。……助けれてないのに、礼を言われちまったな。情けない。

 

そう思いつつ、俺はライノールから距離をとってマシュの元へ戻る。あのまま近くにいれば、俺もオルガ所長と同じ目に遭うだろうからな。

 

「流石に下がるか。そのまま感傷に浸っていれば、オルガの元へつれて行ってあげたのに」

 

「………俺は生きろと言われた。その命令を無視したら、オルガ所長が怒るからな。――で、テメェは何者だ? 人類を滅ぼそうなんざ、正気とは思えないな」

 

「そうだね。改めて自己紹介しようか。――私はレフ・ライノール・フラウロス。貴様たち人類を処理するために遣わされた2015年担当だ。カルデアは用済みになった。お前たちはこの時点で滅んでいる」

 

そのあとは、ご丁寧な説明が続いた。曰く、未来が観測できなくなったのではなく、観測する未来そのものが焼却された。それと共に、俺たちの時代も焼却されたらしいが、カルデアはカルデアスの磁場で守られているから無事だが、外はこの特異点の冬木と同じようになっているらしい。だが、カルデアがずっと安全というわけではないようで、2015年を過ぎた時点でカルデアも消滅するそうだ。

 

「抵抗しようと無駄だ。この結末は既に決定されたもの。――しかし、君は諦めないのだろう、ライズ・アルスティ?」

 

「当たり前だ。オルガ所長の最後の命令だからな。最後まで抗ってやるよ」

 

「つくづく愚かな男だ……………まあ、いい。貴様らがどれだけ抵抗しようと、結末は変わらん。貴様らは我らが王の寵愛を失ったが故に滅びるのだ! 我らが王の前では貴様らごとき、ホコリ以下の障害だ! ――せいぜい足掻くがいい、虫けら共!! そして自分たちの愚かさ、無力さを痛感しながら消えるがいい!」

 

その直後、地震が起きる。いや、この揺れは地面だけじゃない。空間そのものが揺れているような……!?

 

「おっと。どうやらこの特異点も限界のようだ。私はここらで失礼させてもらうよ」

 

「待て。――レフ・ライノール・フラウロス」

 

ライノールが踵を返して歩こうとするが、俺はその背中に声をかけて止める。そして、奴がこちらに振り向くと同時に指を差す。

 

「テメェの名前と顔、しっかり覚えたぜ。だから、お前も忘れるな。――テメェは必ず殺してやる……!!」

 

「そうか。では、覚えておくとしよう。まあ、特異点の崩壊に巻き込まれて消える君のことなど、すぐに忘れてしまうだろうがね。なに、私も鬼じゃない。祈る時間くらいはあげよう。――それでは、さよならだ」

 

ライノールがその場から消える。…………逃げたか。

 

「ドクター! レイシフトの準備を! このままでは、特異点の崩壊に巻き込まれます!」

 

『ちょ、ちょっと待ってくれ! レイシフトには少なくとも数十秒かかる! それより先にそこが崩壊するかも………………いや、ポジティブに考えよう! 崩壊とレイシフトの擦れは数秒程度だけど、ひょっとしたら崩壊の方が遅い可能性だって――』

 

「もういいです!! それより、1秒でも早く準備を済ませてください!」

 

ロマンさんが和ませようと冗談っぽく言うが、マシュは命の瀬戸際でふざけたのが気に入らなかったようだ。

 

「先輩! こちらへ! 万が一の場合は、先輩だけでも――」

 

慌ててこちらに駆け寄ってきたマシュを黙ったまま抱き寄せる。

 

「せ、先輩――!?」

 

「落ち着け、マシュ。大丈夫だ」

 

こうなった以上は仕方ない。――奥の手を使おう。と言っても、効果があるかどうかわからないが、どうせ何もしなければ死ぬんだ。それなら、これに懸けるしかない!

 

俺は覚悟を決めて奥の手を解放しようとする。

 

「? フォウ――?」

 

が、その直前に俺たちの元へフォウが飛び込んできた。そして、それと同時に俺の視界は真っ白に染まり、意識はそこで途絶えた。

 

 

 

――――――――――

 

「フォーウ……。キュッ!」

 

「うーん。よくわからない生き物だね、君は。ま、かわいいからいいか!」

 

フォウの声と…………誰だ? 女性のようだが、聞き覚えがない。不思議に思いながらも目を開ける。最初に映ったのは見覚えのある感じの天井だった。………どうやら、カルデアに帰還できたみたいだ。

 

とか思っていると、突然視界が真っ黒になる。それと同時に顔への圧迫感、そして息苦しさまで襲ってきた。……いや、真っ黒になる直前に白いモコモコが見えたから原因はわかってるんだが。

 

「――っぷは! わかった、わかった! わかったからどいてくれ、フォウ。せっかく目覚めたのにまた眠っちまうよ」

 

「フォウ! フォーウ!」

 

顔の上に乗っかるフォウを掴んで持ち上げ、ようやく呼吸ができるようになった。フォウは何やら嬉しそうな鳴き声を上げている。心配してくれてたのか?

 

「――ようやく起きたみたいだね」

 

と、先程の聞き覚えのない声が聞こえてくる。一旦起き上がって隣を見ると、黒みがかった茶色の長髪を持つ女性がいた。その女性の背丈ほどはある杖を持ち、肩に鳥を乗せてる姿は一度見たら忘れないくらい特徴的だ。

 

――だというのに、この女性を見たのは初めてではない気がする。しかも一回や二回ではなく、今まで何回も見たことがあるような、そんな風に思ってしまう。誰なんだ、この人は?

 

「おはよう、こんにちは、ライズくん。意識は…………私を見て考えごとができるなら、しっかりしてると見ていいのかな?」

 

「あっ! す、すいません。大変失礼なことを……」

 

「いいよ、気にしないで。起きてすぐ隣に私みたいな絶世の美女がいたら、見惚れてしまうのが当然だよ」

 

……………今の言葉で、この人の性格がわかってしまった。

 

「今、この人面倒くさいタイプだと思ったでしょ?」

 

「ナニイッテルカ、ワカラナイ」

 

「まったく。――まあ、いいさ。それより、今は私よりも会うべき人がいるんじゃないかい?」

 

会うべき人…………………そうだ、マシュ!

 

「……マシュはどこにいますか? それ以前に、無事なんですか?」

 

「お、流石にわかったみたいだね。関心関心。でも、無事かどうかは私が口にすべきことじゃないね。それは君自身の目で確かめるといい。彼女は管制室にいるよ」

 

そうとわかれば、此処にいつまでも留まってる場合じゃないな。

 

「ありがとうございます。あなたが誰か聞きたいところですが、敵意は感じないですし、また後ほど会いましょう。――来い、フォウ。マシュが待ってる」

 

「フォウ!」

 

立ち上がってフォウに呼びかけると、フォウは応じて俺の肩に乗っかる。

 

「ライズくん。君は今、自分で思っている以上に重大な立場にいる。これから、君には想像もつかない困難が立ち塞がるだろう。それでも君は立ち向かえるかい?」

 

「当然。そういうのは慣れてますし、何より皆を救い、守るためなら過去の英雄相手にだろうと負けてやるつもりはありませんよ」

 

「そうか、わかった。なら、ささやかながら応援させてもらうよ。普段は此処の魔術工房にいるから、頼りたい時はいつでも来なさい」

 

「わかりました。いざという時は頼らせてもらいます。――それでは」

 

女性へ一礼し、部屋をあとにしようとする。

 

「行きなさい、少年。――君の物語は、始まったばかりだ」

 

その背中に、女性がそう声をかけてきた。…………俺の物語、か……。

 

「……そうですね。(ライズ)としての物語はここで終了。――ここからは、()()()の物語だ」

 

俺はそう残して部屋をあとにする。さて、管制室だったな? マシュのことも気になるし、急ぐか。

 

「フォウ! ちょっと走るからしっかり乗ってろよ!」

 

「フォーウ!」

 

元気のいい返事を確認し、俺は管制室へ向けて走り出した。

 

 

 

――――――――――

 

管制室へ着き、マシュの無事を確認して一安心できた。――だが、喜んでばかりもいられない現状だ。オルガ所長はおそらく死亡。

 

現代にあるものはカルデア以外は全て焼却され、今回の異変の一端を担っているであろうレフ・ライノールを取り逃がした。しかも、あいつは我らが王の寵愛と言っていた。……つまり、あいつの裏には誰かがいる。人類を滅ぼそうとするほどのイカれた考えと、それを実行できるだけの力を持つ誰かが。

 

この世界を救うためには、想像より遥かに困難な道を乗り越えなければならないことになる。俺とマシュは今回の冬木のような特異点にレイシフトして、その原因である聖杯の確保、あるいは破壊を行う。そうすれば、歴史は元通りになりカルデアスも元の輝きを取り戻すとのことだ。

 

しかし、この時代を滅ぼしてしまうほどの歴史の歪みは、普通ならば起こらない。なぜなら、世界には修正力というものがあり、多少過去のできごとを変えた程度では結末は変わらないからだ。その普通ではないことが起こるということは、それだけ人類にとって重要な歴史が狂わされたということになる。そんなことをできる奴らにたった数人で挑むのは自殺行為ともとれる。

 

――それでも、俺は諦めない。オルガ所長の最後の命令なんだ。それを簡単に諦めるわけにはいかない。

 

…………それに、カルデア以外が焼却されたということは、外にいるあいつらまで死んだことになる。それだけは絶対にダメだ。あいつらにはまだ生きていてほしい。他の人の命も大切だが、それ以上にあいつらのことは大切なんだ。あいつらを救うためなら、これくらいの困難乗り越えてやるさ。

 

ロマンさんに人類の未来を救う覚悟があるか問われたが、愚問だと答える。すると、ロマンさんとマシュは嬉しそうに笑った。

 

「――ありがとう、ライズくん。君の覚悟は伝わったよ。そして、これからの僕たちの運命も決定した。これより――」

 

「あぁ、その前にちょっといいですか?」

 

呼び止めると、ロマンさんはずっこける。かっこよく決めようとしてたのを止めたのは悪いが、これは今の内に話しておかなきゃいけないことだ。完全に信用してもらうためには少しの疑惑もあってはならないからな。

 

「すいませんね、ロマンさん。でも、あなたも疑問に思ってたでしょう? 俺が冬木に出たサーヴァントについて詳しく知っていたこと。聖杯戦争に参加した奴の話を聞いたというのも嘘ではありませんが………………正確には、話を聞いたものもある、です」

 

「………? どういうことですか?」

 

「わからないか、マシュ? 俺も、参加したことがあるのさ。――冬木の聖杯戦争にな」

 

マシュとロマンさんが驚いた表情になる。まあ、それが当たり前だな。

 

「参加したって………………いや、年齢的には不可能ではないか……? だとしても、7歳で参加したなんて――」

 

「違いますよ、ロマンさん。俺が参加した時の年齢は17です」

 

「え? でも、ライズくんって今……」

 

「えぇ。現在の年齢は18です」

 

「つ、つまり……………え?」

 

ロマンさんは頭を抱えて混乱している。これ以上掻き乱すのはかわいそうだな。さっさと結論を言うか。

 

 

 

 

 

「――俺は、前世で聖杯戦争に参加したんですよ」

 

 

 

 

 

そう口にすると、二人は驚いたまま固まる。まあ、普通に聞けば頭がおかしい奴の戯言でしかないからな。

 

「魔術師とは、根源に至るために研究を続ける。けど、そこに至るためにはとてつもない年月が必要。それこそ何十、何百という年をかけてもたどり着けるかどうかというレベルでね。そこで俺の一族――華神(かがみ)家は、まずはその長い年月を研究に費やす方法を見つけ、それを研究することにしたんです。――それが、輪廻転生による生まれ変わり。例え死んでも、生まれ変わりさえすれば、常人の何倍もの年月を生きられますからね」

 

しかも、この輪廻転生には不死とは違う利点がある。不死は年月が経ちすぎれば肉体が老いていくことが多い。だが、生まれ変わって体も変わるから、その心配は不要なのだ。

 

「だが研究が完成する前に、第四次聖杯戦闘の時に起きた災害で俺とその研究を残して全て消えた。俺もここで死ぬんだと思っていたその時、ある人が助けてくれた。その人は既に子どもを一人助けていて、嬉しそうに泣いていました。それを見て俺は思ったんです。――人はこんなに嬉しそうに泣けるものなんだ、って。そして俺も助けられて、その時の子どもと一緒にその人の養子になって……………衛宮(えみや)(たける)になった」

 

本当、あの人――切嗣さんには感謝しかない。あの人が救い出してくれたから、俺は自分という人格を形成するきっかけを手に入れた。あの人じゃなきゃ、奇跡的に生き残っていても人形のように何もすることなく朽ちていただろう。

 

「それで、それ以降は戦いもなく平和な日常を過ごせたんです。………でも、高校2年の時に第五次聖杯戦争が起きた。そして、よりによってマスターの一人に一緒に養子になった奴が選ばれちまった。そいつは、他人を殺すことを躊躇うどころか、他人が殺されそうになったら自分を犠牲にしてまで救おうとするような奴だったから、サポートとして俺も聖杯戦争に参加したんです」

 

俺も、他のマスター全員を殺せとは言わない。だが、自分の命が危ういとなれば話は別だ。それなのに、あいつは殺すことを嫌う。……………戦いで生き残るには、殺すしかないというのに…。

 

――それがあいつの欠点であり、利点でもあるが。

 

「でも、その聖杯戦争では、運よく知り合いがいました。途中ぶつかることもあったけど、結果的にそいつと俺たちは同盟を結んで協力関係になった。――その時ですね。輪廻転生の魔方陣の作成に手を貸してもらったのは」

 

「手を貸してもらったってことは………………もう輪廻転生の魔術は完成してたのかい!?」

 

「いえ。完成度は8割くらいでした。どうしても俺一人の知識じゃ限界があったので、残りの2割をそいつと一緒に作ったんです。……それで、なんとか魔方陣は聖杯戦争中に完成できたんですが……」

 

「何か問題があったんですか?」

 

「……………ああ。まあ、これはあとから気づいたことなんだがな。……結果的に言えば俺は聖杯戦争の最中で死に、その際に輪廻転生の魔術が発動した。ここまではよかった。………ここまでは、な…」

 

本当、魔方陣ができた時に確認を怠った自分を恨むぜ。

 

「……………輪廻転生の魔術はその魔術を使う対象、死んでから転生するまでの時間、そして転生時の年齢を決める必要があった。使う対象は一番初めに俺の名を書いたからよかったんだが…………………残りの2つは同盟関係の奴と作ってな。あろうことか、転生するタイミングは死後()()で、年齢は7()()になっていたんです」

 

時間関係を凛に任せたのは完全に俺の失態だ。…………というか、アーチャーから自分の召喚時に凛が時間の調整をミスしたことを聞いてたのに、なぜ任せきりだったのか……。

 

「生まれ変わるにも関わらず、肉体の年齢を7歳に指定したせいで、俺は意識不明の重体で死んだこの体――ライズ・アルスティとして生まれ変わった。…………正直、生まれ変わりというより憑依に近いと思うがな」

 

「…………それじゃあ、君の人格は――」

 

「ライズ・アルスティのものではありません。当然、ライズの記憶を受け継ぐこともなかった。周りには記憶喪失の1種として誤魔化したが…………納得していたとは思えないな。元々、ライズはおとなしい性格だったみたいだし、両親や幼なじみはとても困惑してたよ。…………言ってしまえば、俺は他人の人生を奪ってまで生き長らえたんだ。……………とんでもない悪党だよ」

 

「そ、そんな! 先輩は――」

 

「悪くない、ってか? ――悪いんだよ。こんな魔術を作ろうとした両親も、それを完成させた俺もな」

 

そう言うと、反論してきたマシュは悲しそうに表情を歪めた。

 

「…………さて、こんなことを今話したのにはもとろん理由がある。――他人の人生を自分のものにして、なんでもないように生きてる奴を、あんたらは信頼できるかということだ。もちろん、協力は惜しまない。でも、協力する相手に信頼されてないんじゃ、手を貸す意味がない。互いを信頼できない小さな綻びが、最悪の場合は全滅へ導く大きな障害になりかねないからな。――俺は皆のことは信頼してるさ。今回の件で、充分に理解できた。……………それで、そちらの意見は?」

 

しばらくの間、管制室は静かで重苦しい空気に包まれる。だが、予想よりも早くその沈黙は破られた。

 

「――私は、マスターを信頼しています」

 

そんな中、口を開いたのはマシュ。その目はいつもと違い、意思の強い目だった。

 

「先輩がマスターである以上、サーヴァントである私は指示に従います。………………いえ、違いますね。先輩、言ってたじゃないですか。――助け合おう、って。サーヴァントになって間もない私は不安ばかりでした。でも、先輩がそう言ってくれたから、信じてくれたから、私は今を生きていられるんです。だから、私は何があっても先輩を信じて、先輩だけは絶対に護ってみせます」

 

…………熱い信頼だ。今まで素性を意図的に隠してきた奴を、そこまで信じてくれるのか。

 

「僕も、君のことは信じているよ、ライズくん。だって、君はマギ☆マリを理解してくれた――」

 

「記憶にございません」

 

「うわぁい、辛辣!!」

 

どかくさに紛れて覚えのない認識をさせようとしても無駄だ。

 

「まあ、冗談はここまでにして……………当然、信頼しているよ。というか、信頼してなきゃ世界を救うなんて大役を任せるわけがないだろう? それなら僕がその役をした方がマシだよ」

 

「「…………え?」」

 

「そろそろ泣いちゃうぞ!?」

 

しまった。つい素の反応を。………………でもロマンさんのおかげで、空気が明るくなった。やっぱり、この人はムードメーカー的な存在だな。

 

「…………ありがとう、二人とも。なら、俺から言うことは1つです」

 

1つ深呼吸をして、二人を見つめる。

 

「――救おう。俺たちの未来を」

 

「――はい!」

 

「もちろんだ! ――それではカルデアの全職員で君とマシュ二人のサポートに回ろう。敵は過去の英霊たちだ。それも、一人や二人では済まないだろう。……それでも、我々は勝たなければならない。未来を取り戻すために。これより作戦名をファーストオーダーより改める。これはカルデア最後の任務にして原初の使命。――人理守護指定・G(グランド).O(オーダー)。魔術世界における最高位の使命をもって、我々は未来を取り戻す!」

 

人理の守護、か…………。なんでもいいさ。外にいただろう士郎や凛たちを救うためなら、未来だって取り戻してやるよ。

 

 

 

 

 

――それが、転生した俺の役目だ。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

残りの魔術回路数 292




衛宮 剛(えみや たける) 17歳時

身長:176cm

体重:70kg

好きなもの:信頼して話せる仲間

嫌いなもの:自己中

特技:ないと思う(本人談)

解説:ライズに生まれ変わる前、つまりは前世の人物。病的なほどに白い短髪で、目は赤い。体つきはしっかりしており、体育の成績はトップだった。基本は優しいが、明確な敵と判断した相手には容赦しない。衛宮切嗣は恩人であり、士郎と共に養子となる。士郎ほどではないが、その生き方は切嗣の影響を受けている。正義のあり方の考えは、切嗣と士郎を足して2で割ったくらい。

魔術師としての解説:ライズの解説参照



はい。というわけで、ライズは輪廻転生の魔術を使用した衛宮剛という人物の生まれ変わりでした。まあ、そんな感じだろうと予想できていた方は多かったと思いますが(笑)

ちなみに、輪廻転生の魔術は使用と同時に魔方陣が燃え尽きるため、完全な使い捨てです。資料もなくしたため、もう一度作るのは不可能に近いです。にしても、剛はなぜうっかり癖のある凛に時間関連を任せたのでしょうね(汗)

序章も終わり、次はいよいよオルレアン!――の前に、空の境界コラボの話を投稿します。エドモンの初登場だからね、仕方ないね。

それでは、この辺で。オルレアンの次回予告は、次の話のあとがきで出します。
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