艦隊これくしょん ~艦娘ノ辿ル道~   作:藺草畳

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1話

「僕は白露型駆逐艦『時雨』。今日からこの鎮守府でお世話になるよ。よろしくね」

 

二人が初めて出会った時に、彼女が放った言葉。

 

今でもしっかり覚えている。

 

お前にまた会えて嬉しく思った。

 

それと同時に、お前という存在に強く疑問を抱いてしまった。

 

時雨?何を言ってる。

 

お前にはもっとちゃんとした名前があるだろ?

 

なんなんだ、時雨って。おかしくなったのか?

 

……いや、違うか。おかしいのは俺の方だ。

 

お前は俺の知ってるあいつじゃなくて、本当に艦娘で、白露型駆逐艦の『時雨』なんだな。

 

だって、あいつは15年前に、俺の目の前で、死んだのだから。

 

 

 

 

 

 

「作戦完了のお知らせなのです!」

 

俺のいる執務室の外から声がする。

 

この声は睦月だな・・・?

 

「よし、入れ」

 

と俺が声をかけると

 

バタンっと勢いよく執務室の扉が開かれて勢いよく入ってきたのは睦月と卯月だ。

 

「おつかれっぴょん!司令官にぃ~敬礼っ!びしっ!」

 

「睦月をもっと褒めるがよいぞ~!」

 

俺の足に抱き付きながら敬礼をしてはしゃぐ卯月と後から抱き付いてきた睦月。

 

俺はお疲れと声をかけ、笑いながら頭を撫でてやっている。

 

扉の近くにはそれをムッとした表情で見ている弥生がいた。

 

「ん?どうした弥生。怒ってるのか?」

 

プイッと顔を逸らして答える。

 

「弥生、怒ってなんかないですよ」

 

いや・・・思いっきり怒ってるじゃん。

 

という言葉は言わずに胸にしまっておくとしよう。

 

「あれ、そういえば時雨はどうした」

 

旗艦である睦月に聞くと

 

「それが任務中に座礁して中破しまって・・・少し入渠しています。ごめんなさい、旗艦の私がしっかり注意していればこんなことには」

 

遠征任務で入渠だと・・・?聞いたことないぞ。

 

わかった、気にするな。と短く返答して、一人欠けた遠征部隊にこちらに注意を向けるよう促す。

 

「みんな、遠征お疲れ様!知っての通り、我が鎮守府の資材の備蓄は少ない。だから君たち駆逐艦が資材をかき集めてくれることが、深海棲艦打倒への近道となる!みんなの力が必要なんだ!縁の下の力持ちとなってくれ!では補給を済ませたら再び遠征に向かってもらうから準備をしておくように!」

 

えぇ~・・もう疲れたっぴょん・・・

 

弥生・・・いい加減怒りますよ

 

睦月は司令官さんのお力になりたいのでかまいませんよ~!

 

などと口々に発しているが俺は無視して席につく。

 

俺は一刻も早く上へと登り詰めなくてはならない。

 

時雨。そして他の艦娘たちについて知るために。

 

今の俺は・・・無力だ。

 

ただ単に軍に飼いならされた犬だ。

 

その為には上層部へ近づく必要がある。

 

 

 

 

『艦娘』という存在が発見されてから数年経つ。

 

 

二人の女の子が突如としてここ、日本近海に現れた。

 

彼女らは自らを艦娘と呼んだ。

 

二人は似たような恰好をしていたが、よく見ると異なった服装であり、髪型も異なっていた。

 

腰に浮き輪のようなものを付けており、その浮き輪の上には対になった砲台が四つ付いている。頭にはアンテナのようなものを装着しており、腰には菊の文様の入ったベルトのようなものをしていた。

 

一人は黒く、重そうで艶のある長い髪を携え、スラリと伸びた長い脚。そして鋭い眼光を放つ女であった。

 

一人は明るい茶の髪で短く切りそろえており、物腰の柔らかそうな表情を浮かべ、前者とは異なった、女らしい女であった。

 

名をそれぞれ、『長門』『陸奥』といった。

 

この二人の艦娘は現れるとすぐに、当時は無名の将校であった現海軍連合艦隊司令長官「百山重國(ももやましげくに)」の下に就いた。

 

『長門』『陸奥』が現れてからしばらく経つと、頻繁に海に異変が起こるようになった。

 

レーダーに映らない敵艦隊。

 

どこからともなく浴びせられる機銃の雨。

 

当時、傑作と謳われた零戦でも歯が立たない艦載機。

 

連日のように周辺海域を警備する巡洋艦が沈められていった。

 

この現象は「海神(わだつみ)の怒り」として瞬く間に海軍全体へ広がり、パニックとなった。

 

この異変に立ち上がったのが百山重國率いる「艦娘部隊」である。

 

長門、陸奥は立った二人で周辺海域の警備を担当、そして原因の究明、解消をした。

 

原因となったのは「深海棲艦」と呼ばれる謎の生命体だ。

 

深海棲艦と相対することが出来るのは艦娘しかいないということが証明され、2人は海軍での居場所を得たのである。

 

それから新たに艦娘がポツリポツリと増え始めた。

 

軽空母『鳳翔』

 

軽空母『龍驤』

 

軽巡『天龍』

 

駆逐艦『吹雪』

 

この頃から六隻を一艦隊とし、作戦が遂行された。

 

深海棲艦という未知の生命体の脅威がある以上、艦娘の存在は絶対的であったが、必ずしも海軍の全員がこの「艦娘部隊」に賛成しているわけではなかった。

 

兵器とはいえ、なぜ女が戦場に出ているのだ!!!引っ込んでいろ!!

 

私の指揮する艦隊と戦わせてみろ。一瞬で沈めてやろう。

 

様々な罵声を浴びせられた。

 

だがその罵声を受け止め、彼女らに海軍内で居場所を作り、戦果を挙げ続ける事が出来たのは百山重國の尽力があったからだ。

 

今では百山重國はトップに登り詰め、現場の指揮からは引退している。

 

そして艦娘部隊の指揮を受け継いだのがこの俺、「小早川一徹(こばやかわいってつ)」中佐である。

 

 

 

現在の艦娘部隊は比較的、大所帯となっており、装備や補給についてもだいぶ研究が進んでおり、効率化が図られている。

 

しかしまだまだ謎が多いのも事実だ。

 

艦娘はどこから来ているのか?どこで誕生するのか?そんな初歩的なことも詳しくはわかっていない。

 

それは敵である深海棲艦も似たような研究の進み具合であった。

 

しかしこれはハッキリしている。

 

艦娘は絶対的に(・・・・)我々の味方なのだと。

 

 

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