オラリオで自由気ままに過ごすのはダメだろうか(一時完結)   作:ダーク・シリウス

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冒険譚9

「「ご、五〇〇〇〇〇〇ヴァリス・・・・・っ!」」

 

もっと正確に言えば、三人合わせ大雑把で一五〇〇〇〇〇ヴァリス以上はある。換金した宝石樹の実と魔石、ドロップアイテムがそこまでの金額となったのだ。できるだけ均等に分け、一人五〇〇〇〇〇ヴァリスとベルとリリが見たことない亜麻袋に詰まった金貨の輝きを眩しげに、しかし真っ直ぐ見つめて感動を覚えた。

 

「うーん、今日はこんなもんで良いか」

 

少し物足りなさげに言う一誠は五つの亜麻袋をバックパックに入れて、歓喜して興奮しはしゃぐ二人に苦笑いを浮かべる。

 

「ぼ、ぼぼぼ僕。こ、こんなに一度に稼いだことは今までないよリリィッ!」

 

「リ、リリでもないですよベル様!これもイッセー様と一緒に冒険をしたからです!」

 

「「ありがとうございました!」」と二人揃って頭を下げられた一誠。ギルドの待合の空間にある座席にいる三人は一層に騒がしかった。故にギルド内で有名な一誠が二人より色々な意味で目立っていた。

 

「俺はともかく二人にとってかなり大変な思いをした結果だろう。素直に喜べ」

 

既に喜んでいるけどな、と二人の表情と言動を見ていた一誠は内心呟いた。対して―――と一誠が耳を傾ければ乱暴な怒声が聞こえてくる。

 

「たったの一二〇〇〇ヴァリス!?ふざけるなっ、あんたの目は節穴か!」

 

「馬鹿野郎、何年この仕事で食って来たと思ってるんだ!俺の目が狂ってるわけねえだろ!」

 

換金の内容をめぐる揉め事であることは明白だった。

 

「ドロップアイテムもちゃんと勘定に入れたのか!?なぁ、もう一度確かめてみろ!ほらっ、これだけの筈、これだけの筈が・・・・・っ!」

 

命を懸けてダンジョンに潜ってる冒険者。モンスターとの死闘を繰り広げて得た魔石やドロップアイテムを見て想像した金額よりも現実じゃあ取引された報酬金が低いことに割り合わないと食って掛かるのも必然的で仕方がないだろう。換金所にいる冒険者のエンブレムを見れば三日月に杯の―――【ソーマ・ファミリア】の者だと直ぐに理解できる。

 

「んー、ソーマの奴。あれだけの酒を購入してもまだ団員達に稼がせているのか?このままじゃ本当にヤバいぞ」

 

「・・・・・仕方がりませんよ。ソーマ様は自分の趣味にしか興味のない男神なのですから」

 

「それは理解しているよ。だけど、このままだと酒場にも影響が出るんだ。俺の提案で失敗作の『ソーマ(さけ)』を売り出しているからさ。今住ませてもらっている酒場に申し訳ないんだよ」

 

溜息を零す少なからず【ソーマ・ファミリア】の内情を知っている一誠に【ソーマ・ファミリア】のリリは何とも言えない気持ちとなる。

 

「くそっ、こんなんじゃ・・・・・これだけなんかじゃ・・・・・っ!?」

 

リリも慟哭に似た感情を現す同じ派閥の冒険者の気持ちは理解する。だが、考えは全く異なるがあれほどまでに大金を求める冒険者の理由は熟知している。

 

「これで神様に美味しい物を食べさせてあげれますよイッセーさん」

 

「それよりも【ステイタス】も期待できるんじゃないか?中層のモンスターを倒したことなんだし」

 

「うーん、どうでしょう。おこぼれを与ってもらってランクアップがすると思えないですよ」

 

一誠とベルが話している余所にリリは多少救われたかもしれないとソロで稼ぐ冒険者とパーティで稼ぐ自分(リリ)との違いは明らか。だが、今いる自分がいるのは皮肉にも同じ【ファミリア】の冒険者による陰謀―――。

 

「・・・・・イッセー様」

 

「ん?」

 

「本当によろしいのですか?―――しばらくこのままお二人とリリは一緒にパーティを組む件のことです」

 

後ろめたさと申し訳なさに地上に戻る前に交わした話を持ち上げたリリに一誠は呆れが含んだ溜息を吐き、ベルの白髪の頭にコンコンと叩いた。

 

「ベル坊が責任重大な事をしてくれやがりましたからなぁ~。それにお前という存在を知って用が済んで、じゃあサヨナラなんて俺はできないからな。しばらくは付き合ってやるよ。付き合えない時が突然来るかもしれないからそれは重々承知の上でな」

 

(リヴィラ)でリリの裏を知った一誠とベル。同じ派閥の仲間から稼いだ金品を奪取される余所に裏で貯め込み続けた貯金で退団をしようとしている。リリの事を少なからず知ることができた一誠とベルは他人事で片付けられなくなり、少なからず協力をしようとそれぞれの胸の内で決めた。

 

「後ちょっとなんだろう?なら、今日みたいな稼ぎをすれば一ヶ月もしない内に目標達成なんて夢じゃない」

 

「そうだよリリ。僕も一緒に協力する。だから、頑張ろう?」

 

「と、ここでベル坊は温かく優しい笑みで困っている少女に手を差し伸べ―――乙女の心を鷲掴みにするのだった。めだたしめでたし」

 

「イッセーさん!」

 

実際に一誠の発した通りにしているベルは発火する勢いで顔を深紅(ルベライト)の瞳と同じぐらい真っ赤に染まってからかう一誠に叱咤する。弟をからかう兄のようでどこかおかしくリリは思わず小さく「ぷっ」と吹き出した。

 

「仲がよろしいのですねお二人は」

 

「アルミラージみたいで可愛いからな。あと弄び甲斐がある。これ、重要」

 

「アルミラージじゃありませんし僕を弄ばないでくださいよっ!?」

 

「フハハハッ。お前は俺に弄ばれる運命なのだよ」

 

からかいの含んだ笑みを浮かべた一誠と必死に抵抗と称した突っ込みをするベル。そしてリリも苦笑いを浮かべながら頷いた。

 

「そうですね。ベル様は雰囲気的にも見た目的にもアルミラージみたいで可愛いです」

 

「だろう?」

 

「リリまで~っ!」

 

この場に自分の味方がいない!と頭を抱えそうになるベルは肩を落とし首を前に折った。落胆する勢いのベルに一誠はいやらしい笑みを浮かべてこう言った。

 

「可愛いってのは女の子に可愛がられる要素だぞベル坊?それを逆手にして女の子と接してみろ」

 

「知りたくない事実で僕にはできませんよっ!?」

 

やれやれとあからさまに飽きてた顔でベルの肩に手を置いて真っ直ぐ言った。

 

「ダメだなー。異性に免疫がないと緊張と羞恥心で誰一人とも付き合えないぞ。いいのか?」

 

「そ、そう言うイッセーさんは女の子と接する事に恥ずかしいとは思わないですかっ」

 

「実際にリリと接してるんじゃん。まあ、見た目幼女だから父親目線で接しているがな」

 

「幼女ではありません!」とリリまで飛び火が降りかかる。そんな三人は多くの金貨が詰まった亜麻袋を置いたテーブルを挟んで雑談とほのぼのとした空間を展開しているのであった。

 

「お、お前っ」

 

そこへ鑑定職員と口論していた【ソーマ・ファミリア】の冒険者が血走った目で近づいてきたは大量の金貨が詰まった亜麻袋とリリを交互に見て、引き攣った笑みを浮かべた。

 

「お前、同じ【ソーマ・ファミリア】の奴だよな?集会でお前みたいな奴は他にいねえから直ぐに分かるぜ」

 

「・・・・・どなたかと身間違いではないでしょうか?リリは―――」

 

「そんなことはどうでもいい!同じ【ソーマ・ファミリア】なんだからよ。助け合いをしようぜ!」

 

冒険者はリリの華奢な肩を力強く掴み、焦心に駆られているかのように口走る。

 

「俺達が金を集めなきゃいけないのはお前だって分かってるだろう。今日お前が稼いだ金の半分を俺にくれよ。なぁ、頼むよっ!?」

 

「い、痛いですっ。放してくださいっ」

 

「いいだろうがっ!お前みたいな役に立たないサポーター(弱者)がこんなに大金を持つなんて俺達冒険者をバカにしてるのかッ!?」

 

「―――止めてくださいッ!」

 

顔を顰め痛がるリリを見兼ねてベルが半ば強引に割り込んでリリから冒険者を引き離した。

 

「同じ【ファミリア】の冒険者同士が酷いことはしないでください!」

 

「誰だテメェッ!他所の【ファミリア】はすっ込んでやがれ!」

 

「僕はリリのパーティ、仲間なんですっ!仲間が酷いことをされているところを見て放っておけません!そんなにお金が欲しいなら、リリの代わりに―――」

 

「ああ、面倒癖ぇ。くれてやるよ」

 

ベルの必死の制止の声を遮る冷たい声と同時に一つの亜麻袋が冒険者の顔面に直撃した。

 

「~~~っ!?」

 

亜麻袋越しに感じる固い感触とともに大理石の床に倒れ込んだ冒険者と紐が緩んで口が開いて飛び出す大小様々な大量の金貨。そんな事を仕出かしたのは―――一誠であった。

 

「弱者は弱者なりに頑張って努力して生きているんだ。それを貶すお前にそんな資格があるのか?」

 

「つ、次から次へとっ・・・・・今度は誰だテメェっ!?」

 

「いいから、その辺に散らばっている金を情けない姿で拾ってさっさと消え失せろよクズ。金に貪欲な人として冒険者として三流以下のゴミが」

 

「な、なんだとっ!?」

 

腰に佩いていた得物に手を伸ばした冒険者に一誠は嘲笑する。

 

「ここで得物を抜いた瞬間。お前はギルドに(ペナルティ)を食らうがいいんだな」

 

「っ!」

 

「お前のせいでお前を含む【ソーマ・ファミリア】は謹慎処分を下されるの可能性が高い。現にお前は鑑定職員と口論したしな。しかもここで得物を抜いて俺に攻撃すれば―――お前はどうなる?」

 

奥歯を噛みしめ怒りで全身を震わせ、一誠の正論な言い分に言葉も手も出せない冒険者。静観しているギルド員も次の一誠と冒険者の動き次第では動くだろう。

 

「俺は慈悲深く心広い冒険者だ。だから金に困っているお前に少々手荒だが金を恵んでやった。お前はただ、散らばった金を拾えばそれですべてが丸く収まる。―――それでも、納得できないなら面を貸せ。ダンジョンで俺とケリをつけようか」

 

両手の指の関節をハッキリと聞こえるほど鳴らし、プレッシャーを与える一誠に戦慄した冒険者。散らばった金を必死に掻き集めて、

 

「ちくしょうっ、テメェの顔は覚えたからな!?」

 

三流の悪者のような捨て台詞を述べた最後にギルドから逃げるようにいなくなった。

 

「まったく、面倒な・・・・・」

 

リリの分け前の大量の金貨が詰まった亜麻袋を見て、何を思ったのか自前のバックパックから取り出した一枚のカードの中にリリの亜麻袋を一つだけ残し入れ込んでいく。そして入れ終えると小さな鍵でカードの表面に鎮めさせ右回しで(ロック)すれば小箱の中に収納し鍵を閉めた。

 

「ほらよ」

 

「・・・・・イッセー様」

 

「カードの中に渡す分だけの金以外入れれば仮にバックパックの中を荒らされてもただのカードだと思い込んでこれが金庫のようなものだとはバレない。んで、この鍵は絶対に無くすなよ。今日やこれからの稼ぎを自由に取り出したり仕舞うのは鍵がなくちゃできないからな」

 

開け方を説明した後に小箱と鍵を受け取ったリリは鍵をソックスの中に、小箱をバックパックの中に入れた。

 

「ベル坊、さっきのようにお前を慕って現れる女を守れよ?命を懸けてでも女を守れない男は男じゃねぇ」

 

「・・・・・」

 

意味深なことを言う一誠はベルに向かってそう言い放ったら先にギルドを後にした。

万神殿(パンテノン)の出入り口から出てまだ明るい空を―――遠い目で呟いた。

 

「ああ・・・・・どうしてこんな世界に俺は来てしまったんだ?」

 

―――○●○―――

 

「いらっしゃいいらっしゃいっ!『豊穣の女主人』の冷めても美味しいスタミナ弁当や魚料理が詰まったお弁当、ヘルシーな野菜弁当!他にも新作の朝弁当も発売中だよー!」

 

変わらぬ商売をしていた一誠に殺到する西のメインストリートに通り掛かる冒険者や無所属(フリー)の一般人。朝弁当の味はとても好評で顔馴染みの消費者との仲は良好。

 

「・・・・・おはよう、イッセー」

 

【ロキ・ファミリア】の【剣姫】ことアイズ・ヴァレンシュタインがやってくる。一人だが一誠とダンジョンに潜る為に朝早くくるアイズは何時もと変わらない表情で挨拶を交わした。

 

「おはようアイズ。毎日こんな朝早く起きて俺のところに来て眠くないか?」

 

「大丈夫、この時間に起きているイッセーも眠くないの?」

 

「俺は仕事みたいなもんだからな~」と答えつつテキパキさっさと片付け、売上金を『豊穣の女主人』に貢献しアテネから弁当を受け取ってアイズと合流する。

 

「今日は一人なんだな。ティオナは?」

 

「・・・・・今日はダンジョンじゃなくて私達の本拠(ホーム)に来て欲しいの。ロキやフィンがイッセーのこと知りたいって」

 

だから一人か。納得した一誠は肯定と頷きアイズと【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)へ向かった。

 

 

北のメインストリート、『迷宮都市』オラリオの北の目抜き通りから外れた街路沿い。周囲一帯の建物と比べて群を抜いて高い、長大な館が建っていた。高層の塔がいくつも重なりお互いを補充し合ってできている邸宅は槍衾のようでもあり、赤銅色の各塔の屋根が剣山を作っている外見もあって高さも流石にバベルの足元にも及ばないが、見上げているだけで首が痛くなってくるほど。そして燃え上がる炎から削りだされたような邸宅にも見える。塔の中でも最も高い中央塔には道化師(トリックスター)の旗が青空の下に立ち―――【ロキ・ファミリア】『本拠(ホーム)』、黄昏の館。

 

「見に来たことあるけど、デカいなー」

 

「でも、君のあのお城の方が大きいよ?」

 

「アレはあの中だから創造(つく)れたようなもんなんだよ。実際にこの外に出したら摩天楼(バベル)に続く二番目に大きい建造物となるさ」

 

アイズの客人として扱うように言い渡されているのか門を潜る際に門番から意味深な視線を送りつつ一誠を素通りさせた。他派閥の狭い敷地面積に建てられたホーム、黄昏の館は横が駄目なら上にとばかりに伸びた格好なので、当然門を潜った先にある庭園もそこまで広くは無い。門と館の間の空間を利用した本当に最小限のものだ。僅かな植栽と色とりどりの花々が風に撫でられ揺れている。敷地面積が狭い【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)に案内されれば直ぐに応接間へ案内された。橙黄色を基調とした落ち着いた感じのする部屋で、通路にそのまま面している。値がはりそうなソファーとクロスの掛かった丸テーブルがいくつも配置されていた。高級感あふれる演出はあるものの。応接間のそれというより、憩いと団欒の間、という方が似合っている。この空間を見ただけで、なんとなしに【ロキ・ファミリア】内のムードを察した。

 

「・・・・・なんか、予想より多いような?」

 

「皆、知りたがっているから」

 

ロキとフィン―――だけかと思えば『豊穣の女主人』で顔を合わせた【ロキ・ファミリア】の幹部全員がいたのであった。アイズ自身もそうなのだろうと自分も予想しなかったメンバーの同席に敢えてそんな風に改めて述べたのであった。

 

「おっ、来おったなアテネの子供」

 

「アイズしかこなかったからダンジョンで二人きりのデートかと思ったんだけど、俺を呼んでまさかの家族会議かなんかか?」

 

「ははは、家族会議か。面白いことを言うね」

 

開口一番にロキが話しかけ、続いてフィンが朗らかに笑って反応する。二つ分空いた席、アイズと一誠の分の席に二人が座ると一誠に奇異と好奇、興味が乗った視線が向けられ始める。

 

「なに?この視線は」

 

「やーすまん。やっぱりどーしてもアテネの子供が知りたくなってな。この間、アイズ達が69階層に到達したって言うからなぁ」

 

アイズ、レフィーヤ、ヒリュテ姉妹に一誠は視線を送った。お前らか、と元凶を見回して。ロキは糸目をうっすら開いては尋ねる。

 

「アテネに聞くとうちが疑惑を抱いているって思われるのは嫌やからお前に直接聞かせてもらうで?」

 

ほほーう?そーいうことですかー?一誠は意地の悪い笑みを浮かべてロキに言った。

 

「後でアテネにチクってやる!」

 

「やめぃっ!?いやっ、本当にそれだけは勘弁!お前は知らへんだろうけどアテネが怒ると本当に怖いんやで!?【天界の怒姫】と二つ名が付けられるほどに!」

 

全身を震わせるロキに溜息を吐き、リヴェリアが理由を代わりに説明し出す。

 

「お前の異常(イレギュラー)な強さをロキだけじゃなく、我々も知りたい。だからここに召喚させてもらったのだ」

 

ロキの真意を知りアイズ達を見渡す。皆、その通りだと言う雰囲気を醸し出していた。しかし、一誠の強さの理由をアイズとティオナ、リヴェリヤは知っている。『我々』と言ったのはきっと知らない振りを通すつもりで発言したのだと。

 

「アイズもそうなのか?」

 

「・・・・・うん」

 

間を置いて肯定と頷く金髪金目の女冒険者。話を合わせているのが直ぐに一誠は理解した。ならば、言うことはただ一つと真っ直ぐ隻眼の金色の瞳をロキに向けた。

 

「ノーコメント」

 

「・・・・・はっ?」

 

ロキが間抜けな顔で間の抜けた返事をした。

 

「俺の強さの秘訣を知ったところで一朝一夕で【ロキ・ファミリア】が強く成れるとは思えない。それは皆も分かっている前提で言わせてもらう。それにそういうのは【ステイタス】の漏洩同様に軽い気持ちで教えちゃいけないだろう?強さの秘密はある意味努力の結晶だ。だから言うつもりはない」

 

「それは・・・・・そうやけど、でも、気になるやん?フィン達が58階層まで苦労して到達したって言うのにアテネの子供がそれをあっさりと【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】しか到達していない階層まで進んだって言うたら。しかもそれがLv.2の、アイズたん達第一級冒険者でもない冒険者、やで?」

 

「アイズ達が話を誇張、もしくは嘘だとは?」

 

「あらへんな。嘘を吐く子でもないどころか(うち)に嘘は吐けへんで」

 

(ロキ)は断言した。

 

「俺も嘘を吐いていると直ぐに分かるものなのか?」

 

「そうやで?だからもしも嘘を吐いていると気付いたら即座に言うで」

 

「というか、言うつもりもないから嘘を吐いているかどうか以前にロキって分からないだろ。対象の心を読めるなら話は別だけどさ?」

 

「うっ!」

 

こいつ、使えねーという視線がチラホラとロキに向けられる。

 

「だいたい、階層到達数云々を言う前にさ。Lv.1でも強い冒険者、もしくは無所属(フリー)の種族がいるだろう。ガレスみたいな力自慢のドワーフ、リヴェリアみたいな知識豊富で魔法を扱えるエルフのような種族がさ」

 

「確かにのぉ・・・・・」

 

「魔法が使えると言っても小規模の魔法でしか扱えないがな」

 

同意するガレス、リヴェリア。アイズ達もそれは同感だと一誠の話に耳を傾ける。

 

神の恩恵(ファルナ)を刻まれる前に強い種族や存在がいる。俺はそう思っているぞロキ」

 

「お、仰る通りで・・・・・」

 

「俺はその類の枠に入っているだけに過ぎない。ただ愚直に修行や特訓を、様々な出会いと別れを、多くの勝敗を糧に強くなっただけなんだ。特別な修行は一切していないと俺は思っている方なんだがな」

 

―――ドラゴンと戦うこと自体が特別ではないのか?アイズとリヴェリアはそう言う気持ちを一つにしていたのを一誠は知る由もなかった。

 

「というかな。愚直に強くなってきた俺から言わせれば、神の恩恵(ファルナ)は対象の成長を具現化させるほどの促進力なんてチートそのものだろう。それは甘えだ」

 

「なんやと?」

 

甘え―――。アイズ達は神々の【ファミリア】になることで与えられる促進力の、神秘の力をただの甘えだと言い切った。

 

「アホか。神の恩恵(ファルナ)無しじゃ子はモンスターを倒せんやで?」

 

「1000年前だっけ、神々が下界に降り立ったっていうのは?その当時の太古の人間達は神の恩恵(ファルナ)無しでモンスターとの戦いを繰り広げていたんだ。自分達の力と魔法、団結力で。太古の時代と現在の現代。どっちが本当の意味で強いと思うのか考えたことがないだろう?」

 

俺は太古の時代の人間達が強く尊敬すると断言する一誠。

 

「神々が娯楽を求め、下界に降りたって下界に生きる為に神の恩恵(ファルナ)という甘さを与えて人間の、異種族の本当の強さを忘却の彼方へ消し去った、奪った」

 

「うちら神を悪者の風に言うなおんどれ。それはアテネにも言えることやで。いいのかいな?」

 

「別に悪者とは思ってないさ。現にロキ達神のおかげで『迷宮都市』オラリオという存在を生み出されたんだ。そこは素直に感嘆するよ。まぁ、俺が何を言いたいのかって言うとだな」

 

息を一つ零して、それから間を置き、告げた。

 

「神と子、どっちも必要不可欠な存在だろう。でも、俺は生まれて一度も神に救われたことはない。信じるのは己の体と己の力、そして家族と仲間だ」

 

『・・・・・』

 

「娯楽の為に本来いるべきの天界から、役目を全うするべきの超越存在(デウスデア)が軽い気持ちで下界に降りて良いはずがない。俺の知っている神々はお前らとは違う」

 

神を否定する一誠。ロキは自分達神を否定する目の前の異常(イレギュラー)に言い返そうと口を開いた瞬間だった。

 

「だからこそ下界にいる神々を天界に送還してくれ、と真面目に働いていて天界に残っていたアテネが他の神々から派遣されたんじゃないか?」

 

「うっ!?」

 

痛い、というかその事実を否定できないロキは思わず顔中に汗を流し呻き、神としての威厳を粉々に砕かれた。一誠はここぞとばかり言葉を続ける。

 

「ロキ、もしもお前が天界に戻ったら下界にいた分の仕事を天界に残っている神々からプレゼントされるのが目に浮かぶぞ。額に青筋を浮かべ、笑っていない笑みを浮かべてさ」

 

「こ、怖いこと言うなや!?そんなこと言われたらますます戻りたくなくなる!」

 

腕で体を抱きしめて震えるロキに嘲笑の表情でトドメを刺した。

 

「元々戻る気もないくせに何言っているんだ?確定だなコレ。はい、おつーw」

 

「おつーw言うなぁああああああああっ!?」

 

何時しか一誠に口負けているロキを見る羽目となったアイズ達。

 

「えっと、結局は・・・・・」

 

「彼は教えてくれないことだけは分かったね。秘密も」

 

「けっ、別に知ったところでなんになるってんだよ。結局はこうなるってのは俺は最初(ハナ)っから分かってたぜ」

 

「だったらここにいないでよーベート。さっきからイッセーを睨んでばかりだったし正直ウザいよー」

 

「ロキ、すっかり口で負けちゃってるわね。しかも冒険者に」

 

「がははっ、真っ直ぐ言う奴よ。ますます儂は気に入ったぞ」

 

「ガレス。だからと言ってあまり褒められるべき内容の話ではないぞ」

 

「・・・・・だからこそ、イッセーは強くなったと思う」

 

ギャーギャーと喚くロキと愉快に笑う一誠を見つめるアイズ。

 

「うち、おんどれのこと嫌いやー!」

 

「別にいいぞ。アテネに泣きついて嫌われたーって言ってやるから」

 

「それズルいやんっ!?すまんっ、好きや、愛してるっ!」

 

「俺、酒好きで女好きの親父女神は好きじゃないからゴメンナサイ(ドヤ顔)」

 

「―――アイズたん。こいつをどうにかしてくれやっ!?神を敬いなんてしていないどころかうちを虐めるぅーっ!」

 

「事実です(キッパリ)」

 

『うんうん』

 

アイズ達までそんな反応と態度で返された。ついにロキはガーンッ!!!!!とショッキングを受けて、ついに泣いてどこかへ行ってしまった。

 

「神を泣かすとは・・・・・お前ら」

 

「いつものことだ、気にするな」

 

「いつも泣かしてるのかお前ら!?」

 

なんて奴らだと一誠は愕然する。ある意味俺より凄いぞとばかりに驚いている一誠に苦笑いを浮かべていたフィンが話しかける。

 

「まぁ、君の話はよく分かったよ。僕達が甘えていたことに関しては否定しない。でも、必要な神の力だから僕達も甘えて成長しているんだ。それは、悪いことかな?」

 

「・・・・・いや別に。俺も強くなるのに甘えている部分もあったから強く否定はしない。だが、俺の強くなった過程の話を知ればきっと甘えていると自覚するだろうな。―――教えないが」

 

「それは残念だね。君のこと興味があるんだけど」

 

「俺の秘密はアテネにしか教えないことにしているんでな。悪いが信用と信頼があっても教える気はない」

 

立ち上がり「また会おう」とフィン達に別れを告げてこの場から去ろうとする一誠を追おうとアイズも立ち上がって行く。

 

「アイズ、すっかりイッセーと一緒にいたがるようになっちゃったわね。―――まるで私と団長みたいじゃない」

 

「いや、ティオネ?僕と彼もそうでもないし同じじゃないからね?」

 

「いいことではないか。のぉ、リヴェリア・・・・・?」

 

「フィン、私も行かせてもらうぞ」

 

「あたしも行くね!今日こそは一人であのモンスターを倒したい!」

 

リヴェリアとティオナも立ち上がり、二人の後に続いた。

 

「やれやれ・・・・・まさかあのリヴェリアもとは驚いたよ」

 

「どういうことじゃフィンよ?」

 

「ンー、確定とは言い切れないから言えないけれど、少なからずリヴェリアも彼と一緒にいることに楽しさを覚えている節があるってことかな」

 

「ほほう・・・・・つまり、春到来か?これはお主も―――いや、なんでもない」

 

「うん、言わない方が賢明だよガレス」

 

一瞬だけ、フィンの親指がブルリと震えたのを見てガレスは口を閉ざした。フィン自身もその警告に肝を冷やす。

口にしたら最後、襲われると確信して。

 

 

 

 

余談。

 

「アテネ、天界では【天界の怒髪天姫】って二つ名付けられていたって本当?」

 

「ど、どこでそれを!?」

 

「んー、ロキ」

 

「―――イッセー、先に寝ていてちょうだい。今すぐ会いたい女神のところに行きたいから。いいわね。付いてきちゃダメよ」

 

「早く戻って来いよ?」

 

「ええ、分かってるわ。あなたの傍は誰にも譲れないから」

 

その日の夜、『黄昏の館に』幻ではなく本物の落雷が発生して、女性の怒声が絶えなかったのを北部にいた冒険者達が聞こえた。―――地の底からやってきた鬼のような声だったと証言も加えて。

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