オラリオで自由気ままに過ごすのはダメだろうか(一時完結)   作:ダーク・シリウス

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冒険譚12

報告ー!『豊穣の女主人』に上玉の美女が二人も働くようになったぞー!

 

ナ、ナンダッテー!?

 

こいつは見に行かないと損という奴だ!

 

行こう!俺達の快楽の楽園(パライダイス)へッ!

 

オオオオオオオオオオオオオオッ!人魚族(マーメイド)ちゃーんっ!

 

 

西のメインストリート沿いにある酒場はオラリオ中に存在する酒場の群を抜くほど知名度が高くなった。もっとも美女、美少女達が増えた理由だからでもあるが、オラリオでは中々お目に掛かれない種族故に鼻の下を伸ばす男どもは今日も酒場に働く美しい女性の姿を拝みに行くのであった。

 

「本当に【アテネ・ファミリア】に入りたいのね。それはあなた達も冒険者になるってことになるのだけれど」

 

「お願いします。私もイッセー君の力になりたいんです」

 

「十億というお金で仲間や私達を救ってくれた。そのお金を返すぐらいは私も、ウィルと一緒に恩を返したい。人魚族(マーメイド)は水の精霊の加護を受けている。でも、海から離れるとその力が激減してしまうけれど、神の恩恵(ファルナ)を受ければイッセーの力になれるかもしれない」

 

二人の人魚族(マーメイド)がアテネに懇願していた。【アテネ・ファミリア】の自室にて一誠、春姫、アイシャが見守っている中で。アテネも事前に一誠から言われていることもあって拒みはしなかった。

 

「じゃあ、これだけは約束して。【アテネ・ファミリア】の規則(ルール)よ」

 

―――あれ、そんなのあったんだねぇ?―――いや、俺も今初めて知った。―――そ、そうなのでございますか?

 

アテネと付き合いが長い一誠ですら【アテネ・ファミリア】に規則(ルール)という概念があったとは思いもしなかったらしく、春姫とアイシャに尋ねられても不思議だと首を傾げる。

 

「イッセーを何がなんでも絶対に裏切ってはいけないこと。そして、全身全霊を以って愛しなさい」

 

「「―――」」

 

「「「・・・・・」」」

 

「【アテネ・ファミリア】はなんかイッセーのことが好きな女の子ばかりに集まっていくからね。他の派閥の女の子もイッセーを気になっていたり仲が良かったり・・・・・もう、イッセーのスキルの影響だからって」

 

何故か一誠のスキルを複雑にぶつぶつと呟き始め、当の本人は居た堪れない気持ちでいっぱいになりそうだった。

 

「だけど、だからこそなのかもしれない。誰彼構わず壁を作らず隔てず接することができるイッセーは心身ともに強く、魅力的なんだって」

 

一誠という存在を自分なりの自論で語る。アテネは何時も傍にいた唯一無二の眷属だった一誠を視界に入れる。

 

「この一ヶ月頑張って貯め続けたお金を躊躇なくあなた達人魚族(マーメイド)を助けるために、彼は行動に出た。理不尽な運命、身勝手な子供達の思惑に許せなかったから助けた」

 

「女の子だから助けたんじゃないわよ?」と付け加えたアテネの言葉は止まらない。

 

「イッセーも同じ理不尽な経験をしていてね、それが許せなくて、抗えることができない理不尽な運命からあなた達を助けたかっただけ。力のない子供が強いられる最悪な運命に生かされる姿を見ていられなくなるほどにね」

 

ウィルとレリィーは一誠に振り返れば春姫とアイシャにも「そうなんだ」と風に見つめられて気恥しそうに頬を掻いていた。

 

「二人とも、いや、春姫とアイシャもそうだ。イッセーを絶対に裏切っちゃならない。どうか誓って欲しい」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

直接、間接的に一誠の言動で今いる春姫達。女神アテネの込められた真摯な言葉に揃って頷いた。絶対に一誠を裏切らないとアテネと一誠に誓いを立てた。そんな四人に満足したアテネはキラリと針を持った。

 

「それじゃ、話はここまでにして神の恩恵(ファルナム)を与えるから、男の子のイッセー君は部屋の外で待機」

 

「え?今更なようにも思えるんだけど」

 

人魚族(マーメイド)の姿は下半身は魚、上半身は女体。女体の上半身に服は一切身につけない海に棲息する人魚族(マーメイド)の姿を見ていたので至極当然のように疑問をぶつけたのだが、アテネは首を横に振った。

 

「ダーメ。人魚族(マーメイド)だからってそう易々乙女の肌を見させちゃいけないの」

 

「・・・・・じゃあ、アテネと一緒に風呂を入ることも今日からできないか」

 

意味深な言葉を残して部屋から出る一誠に、はっ!ととんでもない失態を犯したことを気付き、焦心に駆られて弁解しようとしたが既に部屋からいなくなっていた一誠にガクリと肩を落とした。が、諦めていなかった。

 

「アイシャ!直ぐにイッセーを連れ戻してきて!二人の神の恩恵(ファルナ)を与える瞬間を見させたい!」

 

「それ、一緒にお風呂を入りたい欲望から来ているんじゃないの神アテネ?」

 

「そ、そんなことないよっ!?ほら、これから家族に成る二人の瞬間をともに見たいからで!」

 

思いっきり図星なアテネを見抜いているアイシャは溜息を吐いた。だったらあんなことを言うなと。

 

 

ウィル

 

 

Lv・1

 

力 :I0

 

耐久:I0

 

器用:I0

 

敏捷:I0

 

魔力:I0

 

 

《魔法》

 

人魚族の歌(マーメイド・ソング)

 

能力(ステイタス)補助効果魔法。

 

・歌によって自身を含む対象の【ステイタス】補助効果が一定時間付加。

 

・懸想が続く限り効果持続。

 

・同種族の数に比例して魔法の効果持続が上昇する。

 

 

《スキル》

 

【水精霊の加護】

 

・適した環境によって効果は変化。

 

・同人魚族(マーメイド)のみ効果を発揮。

 

・水魔法発動可

 

 

人魚族の涙(マーメイド・ティア)

 

・条件を満たした涙の恩恵を得ることで水魔法が発現。

 

 

人魚族の血(マーメイド・ブラッド)

 

・治癒。

 

・副作用により一時的な判断力低下。

 

 

 

 

レリィー

 

 

Lv・1

 

力 :I0

 

耐久:I0

 

器用:I0

 

敏捷:I0

 

魔力:I0

 

 

《魔法》

 

人魚族の歌(マーメイド・ソング)

 

能力(ステイタス)補助効果魔法。

 

・歌によって自身や対象の【ステイタス】補助効果が一定時間付加。

 

・懸想が続く限り効果持続。

 

・同種族の数に比例して魔法の効果は上昇、持続する。

 

 

《スキル》

 

【水精霊の加護】

 

・適した環境によって効果は変化。

 

・同人魚族(マーメイド)のみ効果を発揮。

 

・水魔法発動可

 

 

人魚族の涙(マーメイド・ティア)

 

・条件を満たした涙の恩恵を得ることで水魔法が発現。

 

 

人魚族の血(マーメイド・ブラッド)

 

・治癒。

 

・副作用により使用者は一時的な判断力と精神の低下。

 

 

「「「「・・・・・」」」」

 

一誠を含む四人がウィルとレリィーの人魚族(マーメイド)としての超越魔法(レアマジック)とレアスキルを目の当たりにした。

 

「春姫の魔法並みに凄い効果じゃないか。【ステイタス】の補助効果―――。諸能力を上昇させたり耐異常の効果も与えることができるとはね」

 

「スキルも凄いでございますッ。条件を満たせば誰でも魔法を発現できるなんて」

 

「間違いなく他の神や子供達にバレたら確実に誘拐してでも欲しい魔法とスキルよ」

 

興味深く黙ってアテネの自筆によって記された羊皮紙を見つめる一誠以外感嘆と驚嘆の声が上がる。ウィルとレリィーも己の魔法とスキルを見て安心した顔を浮かべていた。

 

「イッセー。黙って見ているけど何か気になるところある?」

 

「ん、そうだな。二人の血の副作用がちょっと」

 

「ああ、判断力と精神の低下かい?確かに気になるね」

 

アイシャも同感し「試したらどうだ」とも指摘した。

 

「今後のダンジョン攻略に知った方が良いだろう。もしも最悪なほどの低下だったら極力使用しないようにすればいい」

 

「うーん、確かにその通りかもしれないわね。私達自身も確かめたいわ」

 

「そうね。もしも私達の血で迷惑を掛けてしまうぐらいならいっそのこと封印する」

 

人魚族(マーメイド)の二人も自身のスキルの副作用を知りたいと―――全員が一斉に一誠へ視線を向けた。

 

「・・・・・俺が実験体に成れってことか」

 

「が、頑張ってくださいイッセー様」

 

応援されるがどうも素直に喜べない一誠だった。渋々ながらも仲間の為だと思い引き受けたことでウィルが針で指先を刺して滲み出る血を突き出した。その血を見てふとある疑問が浮かび上がる。

 

人魚族(マーメイド)の血ってさ。今思えば対象の傷の深さによって血の必要な量は変わるのか?」

 

ウィルとレリィーはお互い顔を見合わせて、悩んだ表情を浮かべたまま一誠に振り返った。

 

「かもしれない。でも実際に今の、現代の私達人魚族(マーメイド)が地上の人間にそんなことした事は一度もないから断言はできないわ」

 

「この血でどこまで判断力と精神が低下するのか、私自身も分からない」

 

と、ますます不安を抱く一誠は。ウィルの指先に滲む出る血を―――いざ決心してペロリと舐め取った。

 

「・・・・・」

 

「「「「「・・・・・」」」」」

 

静かに一誠の変化の訪れを待つ。しかし、何時まで経ってもその変化の兆候すら窺えない。「あの量じゃ、問題ない・・・・・?」とレリィーが漏らした次の瞬間。突然一誠の体が縮まって、小さな子供と化した一誠にアテネ達は目を丸くした。そして事態が動き出す。

 

「おねーちゃん大好きー!」

 

そう言って精神が低下した一誠はアテネの胸に飛び込んで抱きついた。

 

「えっ、えええええええええええええええええええええ!?」

 

抱きつかれたアテネとその光景を目の当たりにした四人も驚愕。

 

「よ、幼児退行・・・・・?」

 

「こ、こんな血の一滴でここまで低下させちゃうの・・・・・?」

 

レリィーと血を与えたウィルは唖然とアテネに甘える一誠を見つめる。太古の人魚族(マーメイド)から血を与えられ傷が癒えた地上の人間も子供のようになってしまったのかと思わずにはいられなかった。

 

「イ、イッセー?私達のこと分かる?」

 

「うん?アテネおねーちゃんと狐の春姫おねーちゃん、アマゾネスのアイシャおねーちゃんに人魚族(マーメイド)のウィルおねーちゃんとレリィーおねーちゃんでしょ?」

 

「・・・・・記憶はあるのね」

 

「精神だけ低下したのは正直安心していいのかわからないな・・・・・」

 

だが、問題は生じた。誰かが一誠を世話しなければいかなくなったのだ。

 

「ど、どうしようっ?ミアさんに説明すれば許してくれるかもしれないけれど」

 

「と、取り敢えず行きましょうっ」

 

春姫の言葉に賛同して一同は騒がしく離れの二階から真っ直ぐ恰幅の良いおかみがいる厨房へ駆けつけた。

 

「ミ、ミアさん!」

 

「よーやく来たねぇ。これ以上遅かったらこっちが怒鳴りこんでやろうかと思った・・・・・」

 

そこで不自然に言葉を止めたミアの視界に「ミアお母ちゃんだぁー」と顔を明るくする小さな一誠がアテネの腕の中に抱えられている姿が飛び込んだ。

 

「・・・・・ボウズに何が遭ったんだい」

 

今までの経緯を包み隠さず教えた。事実を知ったミアは呆れ顔で額に手を当てた。

 

「何やってんだいあんた達。気持ちと理解はするが、明らかに面倒な事をしてくれたよ」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「だからと言って仕事を休ませるわけにはいかないよ。誰かに世話させとけばその内正常に戻るだろうさ」

 

と、住み込みで働かせることを了承しているミアの決定にアテネが特に渋った。

 

「できれば、この子を他の子供達や神に知られたくないのだけれど」

 

「部屋に閉じ込めるなんて可哀想だろう。ボウズと仲の良い神や冒険者にでも預けてもらえばそれでいいだろうさ」

 

心当たりがあり過ぎるアテネ。それは問題ないが、問題なのは今の一誠に魅了してしまう恐れだ。

―――もう、今の一誠は可愛くて仕方がないのだ!もう、このまま仕事を休んで構ってあげたいほどに!しかし、ミアに逆らうのは避けたいのでアテネは心底残念がって肩を落とす。

 

―――○●○―――

 

「あれー、イッセーが出てこないね?」

 

酒場の表にアイズ達が時間通りにやってきた。だが、しばらく経っても一誠が現れないことにティオナは首を捻った。

 

「アイズー、どうしたんだろうねー?」

 

「うん・・・・・」

 

二人だけこの場にやって来て一誠とダンジョンに潜ろうとしていたが、肝心の当の本人が現れず。アイズ自身も気に成り始め、

 

「女神様に聞いてみよっか?」

 

「うん・・・・・」

 

【アテネ・ファミリア】の主神、女神アテネに直接話を窺うことを決めた。

 

「すいませーん!女神様いますかー!」

 

ティオナの無遠慮で大きな声が酒場の店内に響き渡った。テーブルを動かしていたり、床を水で濡らした布で拭いている女性店員達が二人の存在に気付く。猫人(キャットピープル)のクロエが対応しに二人へ近づいた。

 

「ニャニャッ!【剣姫】!まだ店は始まってもいないから改めて来るニャ」

 

「あの、イッセーは?」

 

「イッセー?さぁ、今日は見掛けニャいけどなんだか女神様達が慌ててミア母ちゃんのところに」

 

「―――あん?【剣姫】が来てるのかい?」

 

厨房から恰幅の良い体とともに顔を出したミア。出入り口にいるアイズとティオナを見て「丁度良いじゃないか」と意味深な言葉を口にした。

 

「お前達、頼みがあるんだがいいかね」

 

その言葉と共に手を招くように振るミアを何だろうと思いつつ近づいた。厨房からアテネが現れる。

 

「こいつらに任せておきな」

 

「うう・・・・・」

 

何だか物凄く渋っているアテネ。アイズとティオナはそんな女神に対して不思議な気持ちを抱き、腕の中にいる子供を見つめた。どこか、誰かに似ているような気もしない。特に眼帯が特徴過ぎて二人の脳裏に浮かぶ真紅の長髪の少年を。

 

「女神様。その子は誰なんですかー?」

 

問われたアテネは渋々と答えた。

 

「・・・・・事情があって、この子は小さくなっちゃったイッセーなのよ」

 

「へっ?イッセー・・・・・?」

 

「おはようー、アイズおねーちゃんとティオナおねーちゃん!」

 

子供が二人に挨拶をした。初めて会ったはずなのに真っ直ぐ目を向けて名前を呼んでくることから、本当に一誠なのだと理解された。

 

「事情ってなんですか?」

 

「それは言えない。だけど、しばらくしたら元に戻るから・・・・・預かってくれるかしら」

 

最後に感情が籠ってない言葉を発するアテネ。自分の【ファミリア】の団員なのに他派閥に預けてもらうなどよっぽどのことではない限り頼みもしないだろう。

 

「この女神も含んで他の連中も仕事を休ませるわけにはいかないからね。そこで仲の良いお前達なら、安心して預けられるって話なんだよ。何時元に戻るかは分からないけれどね」

 

「えっと、本当に子供になっちゃっているんですか?」

 

「一時的な精神の低下、口調は子供でも今までの記憶はそのまま残っている。―――本当にしばらくの間完全に子供なのよ」

 

「・・・・・子供」

 

うん?と可愛く首を傾げる一誠は今の自分に置かれている立場と状況を気付いていない様子だ。あの底が知れないほど強く、逞しく、優しい一誠が今では体が小さくなって幼い言動しかできない可愛い子供に・・・・・。

 

「・・・・・イッセー」

 

「なーに?アイズおねーちゃん」

 

「アイズ、おねーちゃん」

 

ポツリとオウム返しをするアイズ。お姉ちゃん、おねーちゃん・・・・・・イイ、凄くイイ。

心の奥では幼いアイズが円らな金目をキラキラと嬉しそうに輝かして―――『姉』としての威厳を見せようと小さな胸を張っていた。

 

「イッセー・・・・・今日一日だけ私とティオナおねーちゃんと一緒に遊ばない?」

 

「え?でも、ダンジョンに行かなくても大丈夫なの?」

 

子供なのにダンジョンに行こうとする。信じられないと一誠の気が知れない。だが、アイズは懐かしみを覚えた。今の一誠の姿を見るとあの時の自分を思い出す。強さなどのぐらいなのかは気になるが頼まれている以上、安全に過ごすことを最優先。

 

「うん、大丈夫。今日は一緒に遊ぼう・・・・・」

 

一緒に遊ぶ。目の前の金髪金目の少女がそう言ってくれた。一誠は隻眼の金色の瞳を輝かせて満面の笑みを浮かべて頷いた。

 

「決まりだね。ほら、さっさと放してやんな」

 

「ううう・・・・・」

 

駄々をこねる子供のようになるアテネ。本当なら一誠の相手は自分(わたし)だったのにっ、と恨めしそうにアイズを睨んでいたアテネに一誠が振り向いてきた。

 

「アテネおねーちゃん」

 

「イッセー?」

 

チュッ。

 

頬に小振りな唇が押し付けられた。

 

「帰ったら一緒にご飯食べたりお風呂入ったり寝ようねー」

 

硬直状態のアテネの腕の中からスルリと抜け出してアイズとティオナと一緒に店からいなくなった。何をされたのか分からず頭が真っ白な状態のアテネは次第に顔が朱に染まり、

 

「言質は取ったわよイッセーッ!」

 

「現金な女神だねぇ・・・・・」

 

片や興奮、片や呆れで仕事の準備に取り掛かった。

 

 

 

「アイズー。これからどうすんの?」

 

「・・・・・本拠(ホーム)に戻ってフィン達に説明する」

 

「やっぱり安全な場所って言えばそこかぁー。でも、ベートがうるさく言いそうだよ?」

 

「大丈夫、私が守るから」

 

アイズおねーちゃんが守ってあげる。意気込むアイズは初めてできた臨時の(いっせい)と繋げている手を若干強めた。二人に挟まれる形でトコトコと歩く一誠は握られる握力が増したことに金髪金目の少女に上目遣いで「?」と疑問符を浮かべた。

 

「イッセー。どんな遊びをしたいー?」

 

ティオナからの質問にアイズから視線を外して「んーと、んーと」と悩み考え始める。だが、思い付かず

 

「おねーちゃん達はどんな遊びが好きなのー?」

 

「「・・・・・」」

 

二人を参考にしようと逆に尋ねられてしまい、好きな遊び―――と困り顔となってしまった。

 

「遊びって・・・・・」

 

「遊び・・・・・」

 

冒険者として遊びとは無縁に等しい人生を送ってきた。精々書物を読書する程度だ。体を動かすなど修行や特訓ダンジョンに潜ってモンスターを狩る以外ない。

 

「水遊びなら18階層に行けばできるんだけど、そこに連れて行くと後で誰かにうるさく言われそうだよねぇ」

 

「・・・・・子供の世話って意外と大変?」

 

子供の世話など経験したことがない二人はどうしたらいいのか悩んだ末・・・・・この手の経験が豊富そうな仲間の姿を思い浮かべながら尋ねることに決めた。

 

「―――ママ(リヴェリア)ー。そう言うことだから何か面白い遊びとか知らないー?」

 

「・・・・・教えて、ください」

 

「お前達・・・・・」

 

執務室に真っ直ぐ赴いて団長のフィンと雑務に追われているであろうリヴェリアに教えを乞うた。一誠は執務室を興味津々に見渡している。魔石らしき結晶が内蔵されている大型時計(オールクロック)。一誠はそこから本棚の向かい側、暖炉の頭上の壁に掛けられた絵画風織物(タペストリー)に目を向けた。金糸や銀糸を多く用いたその壁かけには、一柱の女神の絵柄が織られていた。小人族(パルゥム)の間で深く信仰されていた架空の女神、『ファイナ』だ。彼女は『古代』にまで遡るとある騎士団が擬神化された存在である。彼の騎士団が小人族(パルゥム)の最初で最後の栄光―――。しかし、本物『神々』の降臨を境に彼女(ファイナ)の信仰は一気に廃れ、小人族(パルゥム)は心の拠り所を失い、そして加速度的に落ちぶれていった。

 

 

『と、言うわけなんだよー』

 

『あの子供が、彼だと・・・・・本当なのか?』

 

『うん・・・・・間違いないよ』

 

 

夢中にその壁掛けを見ている一誠の後ろではアイズ達が説明していた。話の折が付いたのか会話が聞こえなくなり、一誠の背後からリヴェリアが近づいてきた。

 

「・・・・・イッセー」

 

「うん?」

 

「私のことは分かるのか?」

 

どうしてそんな事を聞くのだろうと不思議に思いながら肯定と頷き、

 

「リヴェリアおねーちゃんでしょ?」

 

と真っ直ぐ純粋無垢な光を隻眼の金色の瞳に孕ませながらリヴェリアにも姉として接したのであった。

 

「ね、イッセーでしょ?」

 

「・・・・・ああ、確かにそうみたいだな」

 

何がそうみたいなのかこの際触れずに一誠と視線が合うように跪く。

 

「すまないな。私もお前が好みそうな遊びはあまり知らないんだ」

 

「えー」

 

「だが、お前が知っている遊びならこの二人は付き合ってくれるはずだ」

 

最初は不満げに漏らした一誠だが、リヴェリアの自分の知っている遊びならと言うことで

 

「じゃあ・・・・・達磨さんが転んだ!」

 

「「・・・・・えっ?」」

 

 

「だーるーまーさーんがーこーろーんーだっ!」

 

ピタッ

 

「「・・・っ」」

 

三人は中庭で遊びを始めた。丁度いいところに庭木があったので一誠はその気の目の前に立って歌うように言葉を発して最後まで言い切った瞬間に振り向くと遠くから近づいてくるアイズとティオナが違った緊張感を感じ、覚えながら振り向いた一誠に動いた瞬間を見せない為に石像の様に立ち止まる。

 

「これ、意外としんどいっ」

 

「気配を消しても・・・・・ダメなんて」

 

一誠に触れれば終わりだと言うのに、中々前進できないことに二人はじれったさを覚える。

 

「だるまさんがころんだっ!」

 

「「っ!?」」

 

しかも、動いていい時間(インターバル)はいきなり短くなったり思うように動けない二人。一誠との距離は半分も進んだが、二人はこの遊びはあまり好きになれそうになかった。

 

「―――なにやってんのあんた達?」

 

「ティオネ?」

 

ホームの空中回廊。塔と塔を繋ぐ石造りの廊下から中庭を眼下に見下ろしている姿のティオネが話しかけてきた。アイズも彼女の声に反応して顔を動かした瞬間―――。

 

「二人とも動いた!」

 

「「あっ」」

 

必然的に一誠の遊びに気を緩んでしまって二人は、しまったと失敗した顔をする。

 

「その子は誰なの?」

 

中庭に飛び降りて尋ねてくる姉に妹のティオナは簡略な説明をした。

 

「イッセーの女神様から頼まれちゃってさー。しばらくイッセーを預かることになっちゃったんだよ」

 

「・・・・・あの子供が、イッセー?」

 

「うん・・・・・リヴェリアにも説明したから、ホームで預かうことを許してもらっている」

 

三人に近づいてくる子供が一誠。何も知らないティオネは疑惑の目で子供を見る。

 

「ねぇ、あなたは本当にイッセーなの?」

 

「そうだよティオネおねーちゃん」

 

「・・・・・なんでおねーちゃんなの?」

 

「わかんない。リヴェリアにもおねーちゃんって呼んだし、もしかしたら女の子全員におねーちゃんって呼ぶかもしれないよ」

 

見上げて見つめてくる一誠に「そう」と短くティオナの考えに相槌を打つだけで話を変えた。

 

「で、さっき何をしていたのよ?」

 

「達磨さんが転んだ。っていう遊び」とティオナが告げた。アイズもその通りだと頷くがそれだけでティオネは分かるはずもなく再度問いだたす。

 

「・・・・・具体的に教えてちょうだい」

 

「えっと、イッセーが達磨さんが転んだって歌っている間に動いてイッセーに触れればそれでお終いって感じの遊びだよ」

 

「なによ。意外と簡単そうな遊びじゃない」

 

「・・・・・そうじゃないよティオネ」

 

アイズが否定する。うんうんとティオナも頷く。

 

「ティオネおーちゃんもやってみる?」

 

「そうね。じゃあ、ちょっとだけ付きあってあげるわ」

 

新たに遊び相手が増えたことで顔を輝かせ庭木に戻って遊びの準備を整えた。

 

「ティオネ、こっちこっち」

 

「え、そんなに離れるの?」

 

「うん」

 

ホームの壁際まで後退する三人。

 

「あ、そうそう。イッセーが歌い終わってあたし達に振り向いたその瞬間は動いちゃいけないからね」

 

「わかったわ。私に任せなさい」

 

「なにか、考えがあるの?」

 

期待に満ちたアイズの金目に向けられるティオネは自信満々に不敵の笑みを浮かべた。そして、遊びが再び始まった。

 

「だーるーまーさーんが―――」

 

「ふっ!」

 

一誠が歌い始めた次の瞬間。ティオナはスタート地点から第一級冒険者としての跳躍力をして見せた。一気に庭木の前に立って歌っている一誠に向かって行くその様を「「おおーっ」」とその手があったかと感嘆と感心する―――。

 

「ころんだっ!」

 

「ちょっ!?」

 

歌が極端に短く終えて振り返られた。未だに宙にいる状態のティオネは必然的に、

 

「ティオネおねーちゃん。それは反則と動いたから失格」

 

「「・・・・・」」

 

二人にぬか喜びを抱かせただけで失敗に終えた。

 

「やっぱり、地道に進むしかないみたいだね」

 

「・・・・・うん、でも、攻略方法は見つけた」

 

腰を低く落として走る体勢を構えるアイズ。

 

「だーるーまーさーんがーこー」

 

シュバッ!とアイズが駈け出し、一誠が振り向きそうな気配を全力で敏感に感じ取り、焦らずその場で立ち止まって佇んで制止した。その結果、振り返っても最初から動いていないアイズの姿を見ても何も言わず歌い始める。そしてそれを何度かしていく内に一誠との距離が後一歩のところまで縮まった。

 

「・・・・・」

 

焦る気持ちを殺し、次で触れようと意気込むアイズは、

 

「だーるー」

 

槍のごとく腕を突き出し、手を一誠に伸ばした。

 

「まさんがころん―――!」

 

迫る手の気配を感じ取ったのか、一気に歌い終えようとする一誠だった、が、遅かった。ポンとアイズの手が一誠の頭に触れたほうが早く遊びは終わった。

 

「あう、終わちゃった」

 

「・・・・・」

 

むんっ!とようやく勝った喜びを胸の内で噛みしめるアイズ。

 

「さっすがーアイズー!」

 

ぴょーんとアイズに飛び付くティオナ。ティオネも近づき労いの言葉を掛けた。

 

「アイズおねーちゃん、早過ぎるよー」

 

「・・・・・そうしないと勝てなかった」

 

「だよねー」と特に負けたことに大していじけず一誠は「次はティオネおねーちゃんの番っ!」と指名した。

 

「え、私?」

 

「反則負け」

 

「・・・・・分かったわよ」

 

遊びの続きをしたいと一誠からお願いされ渋々と庭木の前に立ったティオネ。一誠達もスタート地点まで下がって遊びの合図を待った。

 

「だーるーまーさーんが―――」

 

 

 

「うん、これで全部終わったね」

 

「団長となると雑務の処理も大変だなフィン」

 

「副団長も似たようなものだよ?」

 

執務室にいるフィンとリヴェリア。テーブルの片隅に置かれた羊皮紙や紙の束を見て一息を零す。

 

「それにしても彼が子供になってしまったなんて【アテネ・ファミリア】に何が起きたんだろうね」

 

「他派閥のことはわからんものさ。アイズ達に任せればあの子も不満もなく過ごせるだろう」

 

今頃中庭辺りで遊んでいるだろうと予想しながら、楽しく過ごしている一誠のことを思い浮かべながらリヴェリアはフィンに返答した。

 

「ああ、そうかもしれないね。しかし・・・・・ふふっ」

 

小さく笑いだすフィンに不思議と疑問が湧いたリヴェリアの心情を察してフィンは答えた。

 

「いやー、周りから母親扱いされて来た君がとうとう姉として接せられる日が来るとは思いもしなくてね。笑いをかみ殺していたよあの時は」

 

精神が低下した一誠は別に悪気で言ったわけではないことを理解しているのだが、お互い付き合いの長い仲ならば周囲からの扱いも把握し、軽くからかわれる。リヴェリアは口を閉ざし、からかってくるフィンから顔ごと視線を逸らした。

 

「これからも彼にそう呼ばれてみたらどうだい?」

 

「なら・・・・・彼にお前達二人を結んで貰うように頼んでみようか」

 

「すまない。からかってすまなかったからそれだけはやめてくれっ」

 

本気でしかねない、執務室から出ようとするリヴェリアを制止するフィン。だが、気にも留めないリヴェリアは真っ直ぐ中庭に赴くにつれ、鈍い打撃音が聞こえるようになった。

 

「なんだ?」

 

「わからない。取り敢えず行ってみよう」

 

音が聞こえる発生源へ足を運ぶ。徐々に近づくと何故か賑やかな声までもが聞こえてきた。そして―――中庭に辿り着くと。

 

「ぬんどりゃああああああっ!」

 

ガゴンッ!

 

「てりゃあああああああああっ!」

 

ドゴンッ!

 

「「・・・・・」」

 

中庭に多く集まる【ロキ・ファミリア】の冒険者が野次馬のごとく集まっていて。巨大な木の円盤状の塊を積み上げた上に何故か乗っている楽しげな主神(ロキ)と緊張と不安をこれでもかと醸し出してる額を大きく晒している黒髪のツンツン頭のヒューマンとその二人も下で大きな木鎚を振るって、木の塊を一つずつ打ち抜いていく筋骨隆々のドワーフとヒューマンの子供がいた。

 

―――なにやってんだあいつらは?

 

小人族(パルゥム)とエルフの内心が一致した瞬間だった。もっと近くまで行こうと歩み始め、一誠の世話を任せたアイズとティオナに尋ねる。

 

「お前達」

 

「あ、リヴェリアとフィン」

 

「アレは何をしているのだ」

 

「えーと達磨落としだって。遊び方は見れば分かるよね」

 

「積み重ねた木の塊を下から打ち抜いていく感じなのはわかる。だが、何故この騒ぎになるまで発展した?」

 

説明を求められ、今までの経緯を素直に答えるティオナ。

 

「最初は私とアイズ、ティオネとイッセーがこれを順番で遊んでいたらロキが―――」

 

ティオネの説明はリヴェリアの「いや、もう分かった」と遮られてしまった。大方、暇を持て余したロキが「これは面白そうやなー!」と【ファミリア】まで巻き込んでこの騒ぎになったんだろう。

 

「アレはどこから用意したんだい?」

 

「えっと、イッセーが」

 

「彼が?」

 

アイズも説明に加わり、一誠が用意したと告げる。しかし、一体どうやってという疑問が直ぐに浮かび上がる。直ぐ傍から続く打撃音が「ああああっ!」と悲鳴に乗って、ガラガラと崩れる音ともに変わった。

 

「あっ、終わったみたいだね」

 

「ロキが落ちたみたいだけど大丈夫?」

 

「大丈夫っしょ。ベートに受けてもらえるようにアイズから頼んでもらったし」

 

あっけらかんと主神の安否を気にしてないと風に述べたティオナ。崩れた木の塊とまだ残っている木の塊が独りでに勝手に高さ十Mまで積み上がった。

 

「ん?おお、二人も来ておったか」

 

「ガレス、お前も何をしていたのだ」

 

止めるべきだろうと言いたげなリヴェリアにガレスはただ笑う。

 

「がはははっ。主神の命に逆らえぬだろうて。それにあれはあれで楽しい遊びじゃ。力の扱い方や加減一つで崩れ落ちてしまうから思いっきり振らんといかんからな」

 

「君もすっかりはまっちゃってるようだね」

 

「小僧の遊びは実に面白い。フィン、お主もやってみろ。最後まで打ち抜いた者はまだおらんぞ?勇者(ブレイバー)として見事やってのけてみろぃ」

 

団長まで誘う最古の【ロキ・ファミリア】の古参のドワーフに苦笑を浮かべてしまうフィン。

 

「そこまで言われたら、やるしかないじゃないかガレス?」

 

乗り気になって達磨落としを参加を示したフィン。二つ名まで出され挑発されては団長としてやらないわけにはいかない。積み重なった木の塊の傍に近づくと団員達が湧く。

 

「団長がするの!?だったら私を乗せなさいイッセー!わざと崩して団長に向かって落ちる為に!」

 

「・・・・・頼む、ティオナを乗せて欲しい」

 

思いっきり問題発言をした第一級女冒険者に大して厳しい指示を下した。その指示に従ってティオナを木の塊の天辺まで魔力で浮かせて乗せた。

 

「もう一人は―――アイズおねーちゃんっと」

 

「テメェクソガキッ!?アイズを危ないことさせんじゃねーぞゴラッ!」

 

「じゃあ、おにーちゃんが下まで安全に打ち抜けばいいじゃん!」

 

「だ、そうだぞベート。落ちたらお前が受け止めればいいだけの話しだ」

 

「っ・・・・・!ちっ、くだらね遊びだが乗ってやるよっ」

 

ズンズンと巨大な木の円盤状の塊が積み重なれた、達磨落としある場所まで近づく狼人(ウェアウルフ)に一誠の感想は。

 

「素直じゃないねー」

 

「お前もそう思うか」

 

「うん、ああいうのってツンデレって言うんだよ?」

 

ツンデレ、やはり分からない言葉だとリヴェリアは思うが、共感する者が現れる。

 

「おおー、お前もベートのことが分かってんのやなー。しかもその言葉を知ってて言ってんやろうな?」

 

「ツンデレのこと?うん。ツンツンと厳しい言動をして接するけど実際は甘くて優しいんだよねー?」

 

「―――そうや!お前も神語を分かるとは知らんかったでー!」

 

いきなりロキが嬉しそうに一誠を絡み始めた。やはり分からないとリヴェリアは理解に苦しむ。

 

「じゃあ、このリヴェリアのことどう思うんや?」

 

「え?んーと、クールデレ?」

 

「そうやな!」

 

こっち(リヴェリア)まで意味不明な言葉で例えられ、不快に思ってそれはなんだと聞けば―――。

 

「冷静沈着で厳しく接してるけど、それはその人の為に思って厳しくつつも優しいってことだよ?」

 

理由がそうであると知ってリヴェリアは思わず面食らった。興味深そうに一誠を見つめるガレスとニヤニヤといやらしい笑みを浮かべるロキ。

 

「リヴェリアの本質というものを見抜く才能があるようじゃな」

 

「だからリヴェリアはママと呼ばれるんやで?」

 

「・・・・・うるさい」

 

主に己をからかう主神に向かって言う。子供にリヴェリア・リヨス・アールヴの本質というものを見抜かれるとは思いもしなく―――。

 

「あ、危ないッ!?」

 

突然の悲鳴。何事かと意識と視線を悲鳴が聞こえた方へ振り返ったその瞬間。木の塊が物凄い勢いで飛来してきた。丁度リヴェリアがいる方へだ。

 

ドンッ!

 

「っ―――!?」

 

判断が一瞬遅れ、傍にいたガレスも出遅れた。しかし、誰よりも早くガレスとロキ同様に近くにいた一誠がリヴェリアに飛び付き強く押し倒して、「ふぎゃっ!」と身代りに成る形で木の塊と直撃して吹っ飛んでそのまま城壁と挟まれてしまった。

 

「うおぉっ!?アテネの子供がぁっ!ヤバい、もしものことがあったら天界に送還されるゥッ!?」

 

朱色の頭を両手で抱えながら絶叫する顔が青ざめたロキは一誠に駆け寄って安否を確かめる。

 

 

『この馬鹿狼ぃっ!どーして鎚じゃなくて蹴りですんのーっ!?』

 

『ああっ!?結果的にやることは同じだからいいだろうが!』

 

『思いっきりイッセーにぶつかってるし!やるにしても方向があるんだよー!』

 

『知るかっ!そんなこと教えなかったあのガキが悪いだろう!』

 

『・・・・・ベートさん』

 

『ア、アイズ・・・・・?』

 

『・・・・・最低です』

 

『ッッッ!?』

 

 

「衛生兵、衛生兵!はよう、アテネの子供を治療すんやっ!頭からかなりの血ィ流しとるぅっー!?万能薬(エリクサー)を持って来いぃっ!」

 

一気にロキを中心に中庭は騒々しくなり、遊戯は予想だにしなかった事故によって終わった。

 

―――○●○―――

 

「ううう・・・・・ううう・・・・・」

 

「ロキ、さっきから唸り声を上げてうるさいんだけど」

 

「唸り声なんかちゃう!?このまま起きんかったら、うちマジでヤバいんやでっ!?」

 

静かな寝息を立てる一誠を囲むように座ったり佇んだりして見守る【ロキ・ファミリア】の幹部達とロキ。アレから一時間も経過しているが一向に意識が戻る気配はない。

 

「命に別状はないから安心してくれロキ」

 

「ほ、本当やな?」

 

「ああ、ただ頭を強く打った程度だ。―――脳に損傷がないと良いんだけどね」

 

「一気に不安な事を言うなフィン!?」

 

結局、煩いのでロキは強制退場された。

 

「すまんリヴェリア」

 

「お前が謝ることじゃないガレス。アレは事故だったのだからな」

 

「その事故の発端は縛って空中回廊に吊り下げられているんだけどねー」

 

情けない姿を今現在も晒され中のベートのことを差して言うティオナ。

 

「借りができてしまったねリヴェリア」

 

「借りをいつか返すまでさ。・・・・・すまないがこの子と二人きりにしてくれまいか。意識が戻ったら呼びに行く」

 

リヴェリアの懇願にアイズ達は互いに顔を見合わせ、王族(ハイエルフ)からの願いを聞き受け、静かに立ち去って二人きりにした。

 

「・・・・・」

 

気を聞かせてくれたアイズ達に感謝の念を抱くリヴェリアはゆっくりと静かに手を伸ばし、一誠の頬を添えた。どんな理由で子供に戻ってしまったのか、今でも分からないがあの一瞬で自分(リヴェリア)を守る即断と一瞬の躊躇もなかった動きに驚かされた。逆に守る立場だったはずなのに守られてしまった。

 

「まったく・・・・・子供に戻ってしまっても私を驚かせるのだなお前は」

 

翡翠の双眸が細まり、頬を添えている手をやんわりと擦りつつ触れるリヴェリアの手が突然寝返った一誠がその手を両手で握り締めた。

 

「・・・・・だいじょう、ぶ」

 

「・・・・・?」

 

寝言か?リヴェリアは自分の手を包む幼い子供の寝顔を見つつエルフ特有の細長い耳を傾けた。

 

「僕が・・・・・俺が・・・・・皆を、守る、から・・・・・・」

 

「――――――」

 

この小さな体に宿している強い決意と秘めた想い。一誠の過去に何が遭ったのか分からないが、あの時の行動は例え子供になってしまっても一誠は一誠だと、思い知らされた。  

 

「守る、か・・・・・」

 

リヴェリアはこの瞬間。微笑んだ。慈愛に満ちた翡翠の双眸。自分の手をしっかりと包みこむ一誠に話しかけた。

 

「―――イッセー。それが、お前の本当の強さの理由なのか・・・・・?」

 

 

 

「・・・・・んん・・・・・?」

 

心地の良い温もりと柔らかい感触が目覚めた一誠に伝わらせる。左眼にだけ飛び込む膨らんだ緑色の服の生地、頭の後ろに回されている腕が誰かに抱き絞められていることを実感して顔を、視線を上に向けると

 

「・・・・・リヴェリア?」

 

何故か瞑目して寝息を立てている、この場にいるはずのない麗しいエルフの女性が自分(イッセー)を抱き絞めていることを疑問に浮かんだ。

 

―――あれ、俺・・・・・あの血を飲んでから全然覚えてないんだけど。

 

妙に小さな頭痛もする、もしかして二日酔い?なんて見当違いな考えを浮かべている一誠は副作用の効果が無くなっていた。

 

「・・・・・」

 

リヴェリアの寝顔をジッと見つめる。翡翠の瞳は閉じ切って、一誠を腕の中に抱える睡眠中のエルフ。

同じエルフ、リューの寝顔も見たことがある一誠はやはりエルフの寝顔は綺麗だなと少し見惚れていた。

 

「・・・・・って、何で俺体が小さくなってんの?」

 

今更ながら自分の状態に気付き、眠るリヴェリアの人知れずに元の体に戻ってお返しとリヴェリアを抱き締めだした。

 

「もっかい寝よ」

 

眠っていた状態、リヴェリアの胸に顔を押し付けそのまま意識を落とす一誠。

―――その数十分後。気になって顔を出してきたアイズ達が元の大きさに戻っていた一誠と抱き合っているリヴェリアを見て驚き、滅多に見ない朱に染まった王族(ハイエルフ)と意識を取り戻した一誠に安堵で思わず抱きついたティオナ、土下座して何度も謝罪するロキに困惑。

 

「リヴェリアにも聞かれたんだけど俺、記憶が全然ないからさ何に対して謝られているのかさっぱりわからん」

 

と、そう言う一誠に物凄く助かったとそんな表情を浮かべるロキは何時もの調子に戻るのは早かった。

 

「ねぇ、どうしてリヴェリアと抱き合っていたの?」

 

「ん?お詫びに何でもしてくれるって言うから、じゃあ抱き絞めて良いかなーって流れで」

 

「そ、それだけですかっ?」

 

「うん、それだけ。リヴェリア、ありがとうな。抱き心地良かったよ」

 

「・・・・・言うな」

 

「えー、綺麗を通り越して可愛かったのに」

 

「―――っ」

 

『(あ、リヴェリア(様)の顔が赤くなった)』

 

本当に滅多に見られないリヴェリアの反応にフィンとガレスですら面白い物が見れたとロキみたいにいやらしい笑みを浮かべていた。

 

「・・・・・本当に、記憶がないの?」

 

純粋な眼差しで今まで過ごした楽しい時間を忘れているのかと問うアイズに肯定と頷く一誠。

 

「全くもって無い。思い出そうにも全然綺麗さっぱりで・・・・・俺、何かしたか?」

 

「ううん。すっごく楽しい思いをさせてくれたよ。可愛かったなーティオナおねーちゃんって言ってくれた時はさ」

 

「・・・・・俺、そんなこと言ってたのか?」

 

「うん・・・・・アイズおねーちゃんって」

 

「私にはティオネおねーちゃんだったわね」

 

―――ぐおおっ!と頭を抱えて体を丸めて恥ずかしげに唸る一誠にアイズが話しかけた。

 

「イッセー、可愛かったよ?」

 

「言うなっ!?子供に戻っていたとは言え恥ずかしいことには変わらないんだ!」

 

「・・・・・イッセー、もう一度、アイズおねーちゃんって言って?」

 

「嫌だ!この姿で言ったら恥ずかしすぎて悶絶するわっ!」

 

顔が発火する勢いで真っ赤になる一誠。本当に恥ずかしいのだと誰かの目で見ても明らかだった。

 

「ぐふふっ、からかいのある奴になったなぁ~?」

 

「うっさい堕女神!」

 

「堕女神言うなっ!?」

 

ロキと一誠が額を押し付け合いながら言い合うようになる。【ロキ・ファミリア】の馴染みある光景となってアイズ達は微笑みや呆れ、純粋に笑む。

 

「イッセーって【ロキ・ファミリア】になっても直ぐに馴染んじゃうよね」

 

「ロキを敬っていない時点で、ね」

 

「まるでベートみたいなやつじゃのー」

 

「あの狼よりは百万倍マシよ」

 

「・・・・・イッセー、【ファミリア】に来てくれないかな」

 

「ア、アイズさんが求めるなんてっ・・・!?」

 

「それほど気に入っているのさ。冒険者としても異性としても、な」

 

薄く笑むリヴェリアも私もそうかもしれない、と誰にも聞かれない心の声で漏らした。その後、一度酒場に戻って正常になった姿を見せると、何故かアテネが心底ガッカリされたことに動揺する一誠であった。

 

 

 

―――お願いイッセー。子供に戻ってアテネおねーちゃんって言って。―――絶対に嫌だっ!?

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