オラリオで自由気ままに過ごすのはダメだろうか(一時完結)   作:ダーク・シリウス

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冒険譚16

「・・・・・イッセー、あなた」

 

「ん?」

 

「三つ目のスキルが発現してるわよ」

 

 

【ステイタス】

 

Lv.1

 

力 :SSS2001⇒SSS2002

 

耐久:S912⇒S917

 

器用:SS1100⇒SS1101

 

敏捷:SSS2009⇒SSS2010

 

魔力:SSSS3000⇒SSS3005

 

《魔法》

 

【シン・ベル・ワン・バオウ・ザケルガ】

 

・広域攻撃魔法

 

・雷属性

 

 

《スキル》

 

【恋愛一途】

 

・早熟する。

 

・懸想が続く限り効果維持。

 

・懸想の丈と異性との相思相愛の情を続けることで効果向上。

 

【魅了成就】

 

・魅了する。

 

・異性と同性、特定の者と交流し続ける限り効果維持。

 

・老若男女問わず関係が良好、異性と触れ合い魅了し続けることで効果上昇。

 

【運命協同体】

 

・同恩恵を持つ者のみ効果を発揮。

 

・懸想の丈の度合いによって【経験値(エクセリア)】の分配が変動する。

 

・【運命協同体】の副次効果―――懸想の丈の度合いによって良好の他者と共同することで【経験値(エクセリア)】の分配が変動する。

 

任意発動(アクティブトリガー)

 

 

「「「「「・・・・・」」」」」

 

羊皮紙に記された一誠の【ステイタス】の新たなる『スキル』―――『レアスキル』を見て固まる五人にアテネがピッと人差し指を立てて己の眷属達に話しかけた。

 

「私の推測が正しければ、いえ、見ての通りね。もしもイッセーとあなた達が一緒に戦えば、戦闘で得られるイッセーの【経験値(エクセリア)】があなた達にも何%か分配されるスキルね。それはどのぐらいなのかはイッセーが四人に向けられる好意と愛情によって変わるようだし一緒に戦わないとスキルの効果が発揮しない」

 

春姫とウィルは顔を真っ赤にしてレリィーは嬉しそうに笑みを浮かべ、アイシャはニヤニヤと一誠に小突く。

 

「正直、嫉妬する思いだわ。何このレアスキル・・・・・他の子供達にも影響するなんてどういうこと?」

 

「アイズ達と一緒にドラゴンと戦い続けたからじゃないかなー」

 

「【ロキ・ファミリア】、潰そうかしら」

 

ロキを天界に送還する意味が含んだ物騒な言葉をロキが聞いたら泡を吹くだろう。

 

「五人とも、ダンジョンに行ってみたら?」

 

アテネの提案に五人は顔を見合わせる。

 

「俺の経験値が四人分に分けられると・・・・・それでも少なくはないか?」

 

「非力な春姫達からすれば十分な【経験値(エクセリア)】を得られるからいいじゃないか」

 

「が、頑張りますっ!」

 

「イッセーと一緒に戦えば・・・・・」

 

「なんだか楽にステイタスが上がりそうだわね、ちょっと複雑」

 

その数日後、【アテネ・ファミリア】はダンジョンに行くことが決定した。初のダンジョンにウィルとレリィーは春姫やアイシャにダンジョンはどんな所なのかと質問攻めしている間に一誠は立ち上がった。

 

「アテネ。少し出掛けてくる」

 

「酒場に行くの?」

 

「いんや、客が来た。誰だか知らないけど応対しないとな」

 

一誠しか感じられない気配にアテネは訝しい表情で【ロキ・ファミリア】か【ヘルメス・ファミリア】の誰かがまたやってきたのかと勘繰る。この場所の出入りを知っている者は限られている。アテネの中で二つの【ファミリア】の誰かが―――。

 

「知らない人?」

 

「アイズ達でもヘルメス達でもない誰かが、直ぐそこにまでやって来ている」

 

侵入者―――。と暗に発する一誠はスタスタとホームの玄関に向かう。窓から見える夜のオラリオは常闇に包まれている。何者かが【アテネ・ファミリア】の本拠(ホーム)に入ろうとする気配はないが侵入してきた気配を感じて玄関に赴く一誠にアテネもついてきた。

 

「イッセー。今度隔離する柵を設置してちょうだい」

 

「わかってる」

 

湖を泳いでこのホームに繋がる入口に侵入してきたに違いない。安易に敷地やホームまで入られては困り果てると二人の思いは一致した時には玄関に辿りついて開け放つ。月光で輝く黄金の大鐘楼(グランドベル)。高所の建造物に吹く風、肩を並べ合ってある程度の距離を進むと一誠の隻眼が細まる。

 

「誰だ?」

 

虚空に話しかける。この場に二人以外いない空間に―――影が蠢いた。

 

『気付かれるとは・・・・・お見逸れする』

 

黄金の大鐘楼(グランドベル)の影から姿を現す黒衣の人物―――。全身を黒いローブで肌を完全に隠し男か女も分からない人物は一誠とアテネの前に対峙する。

 

「・・・・・」

 

アテネのその神の瞳で、闇で塞がれた相手のフードの奥を見つめた。

 

「あなたは、本当に・・・・・人間なの?その感じは・・・・・」

 

「・・・・・やれやれ。全く。神の前ではどんな変装も形無しだ」

 

驚愕するアテネに対し、相手は心底苦笑するように、ローブを揺らめかせた。

 

「何をしに私達の前に現れた?」

 

龍族(ドラゴン)のイッセーと神アテネ。私と一緒に来てもらいたい場所がある。二人と話をしたい者の前に」

 

黒衣の人物は悠然と話しかけてくるのでアテネは神威を解放する。

 

「―――その理由を今ここで聞かせてもらいましょうか」

 

不気味な謎の人物の要求に警戒し情報を聞き出すつもりのアテネ。相手は、アテネの神威の前にしても平然と佇んでいる。それが逆に女神の警戒心をさらに抱かせる。

 

「・・・・・分かった」

 

「イッセーっ!?」

 

一誠が要求を呑んだ。それが信じられないと隣に立つ少年へ動揺の色が浮かんだ双眸を向けた。

 

「大丈夫だアテネ。アイツの情報はもう知った」

 

「・・・・・知った?情報、を?」

 

「ああ、取り敢えず俺を信じてくれないか?アイツの背後にいる奴はアテネに関係する奴みたいだし」

 

目で誰?と訴えるアテネから黒衣の人物へ視線を向け直すと二人の足元に突如として金色の雲が具現化しだした。

雲に乗る二人はそのまま黒衣の人物に近づく。

 

「乗れ」

 

「・・・・・特殊な魔道具(マジックアイテム)かな?」

 

「んー、そう思っても構わないかな」

 

黒衣の人物を乗せると一誠は魔法で分身体を一人作って、ホームを後にし夜空へ飛行する。

 

「イッセー・・・・・信用できるの?」

 

「情報を吐き出させても良いが、俺達に会いたい奴がいるならそいつの前に行った方が早いと思う」

 

金色の雲はオラリオ上空に飛び続けていくと、黒衣の人物が指をある方角へ差した。

 

「―――あの場所に下ろしてくれ」

 

背後からそう言われ、雲を指定された場所に留まらせると黒衣の人物が先に降り、一誠達も降り立ったことで金色の雲は役目を終えたとばかり消失した。

 

「ここって・・・・・」

 

「ああ、ギルド本部だ」

 

先に歩きだす黒衣の人物の背は「付いてきて欲しい」とばかり醸し出している。一誠とアテネは黙って従い、先導する目の前の黒衣の人物に続く。

 

「さて・・・・・俺達に待ち受けるのはなんだろうな?」

 

 

 

 

四炬の松明が据えられた祭壇に、暗闇が包まれる空間に男神は目の前にやってくるであろう神物と冒険者を待っていた。蒼色の瞳をジッと暗い空間の向こうへ眺めてその時を待っていた。あの映像を見て、男神は賭けに出た。微かな可能性という希望に。瞑目した男神の耳に鈍い音が聞こえる。

 

「おおー、隠し扉っ。というか、ヒラケゴマなんて言わなかったか?」

 

暗闇の地下神殿に弾んだ男の声が聞こえてくる。

 

「―――ウラノス」

 

巨大な石の王座―――神座の祭壇の正面に現れた黒衣の人物が発する。連れて来たと雰囲気でこの場に案内した一誠とアテネに蒼色の双眸を真っ直ぐ向けた。

 

「久しぶりだな、アテネ」

 

「ええ、久し振りウラノス。前に会ってから千年ぶりかしら?」

 

「・・・・・やっぱり、神っておじいちゃんと―――」

 

「それ以上は言わせないわよー!?」

 

己の眷属の頬を摘まんで横に引っ張り、言葉を遮らす女神に何とも言えなくなる。じゃれ合っているようにも見える光景はすぐに終わり、

 

「ウラノス・・・・・」

 

意味深に隻眼の真紅の長髪のアテネの眷属がウラノスを見つめる。口の端を吊り上げ、

 

「―――原初の神々の王であり、天空の神でもあり、クロノスとティターン神族の生みの親か」

 

と、有り得ない言葉を口にしたのであった。アテネは灰色と青色の目を極限なまでに開き、ウラノスは静かに目を細めた。そんな二柱を余所に肩を竦めた一誠。

 

「でも、この世界の神々は俺が知っている神々と異なっているみたいだし実際はどうなんだろうな?」

 

興味深いと隻眼の瞳をウラノスに向け続ける。対しウラノスは問うた。

 

「クロノスを知っているのか?」

 

「名前程度なら知ってる。それとガイアという女神の女性も」

 

蒼色の瞳を一誠に向け凝視する。神の間でしか知られていない女神の名前を出した。アテネが教えた節もあるが、ここでウラノスを問わせた一誠に色々と聞きたいことができた。

 

「アテネの子よ。お前は何者だ?」

 

「知ってどうする?俺の情報は知らないはずがないだろう」

 

「三つ首のドラゴン、アジ・ダハーカと言ったか」

 

それは、【アテネ・ファミリア】と極一部の【ファミリア】の者しか知られていない一誠の秘密。

どうしてそれを、一誠は金色の瞳を丸くし、ウラノスの言い続ける言葉を耳にする。

 

「あのドラゴンは何なのだ?『深層』のモンスターではあるまい」

 

「・・・・・どこでどうやって知ったんだ」

 

「【アテネ・ファミリア】。特に君を私達は注目していたのさ」

 

黒衣の人物が横から話しかけてきた。

 

「Lv.に見合わず『下層』、『深層』をたった一人で踏破する冒険者はギルド内でも知れ渡っている。一人のギルドの者が君にダンジョンへ連れられ、目の前で自分の力を示させたという話も窺ってるよ」

 

「ああ、あれか。だって、信用してくれないなら証明するしかないじゃん。まあ、そのおかげか信じてくれるようになったけどな」

 

「そうだろう。だからこそ、君を常に見張っていたと過言じゃないほど私達は注目していた。その間、手も出せなかった密輸品を売買する闇のオークションをやっとのことで潰せた」

 

人魚族(マーメイド)を助けたついで、だったけどな」

 

苦笑いするようにアレは偶然だったと語る一誠に黒衣の人物、フェルズは問う。

 

「君は、人を襲う人魚族(マーメイド)はモンスターであることを知った上で接しているのだな?」

 

「当然だ。彼女達とは一度関わったし、俺の目の前で理不尽な運命に生かされるなんて許せないからな」

 

ただそれだけで一つの【ファミリア】を潰したと過言ではない一誠の意志。アテネは一誠の気持ちを汲んで行った。神の送還を―――。

 

「では・・・・・君はモンスターとの共存はできると馬鹿げた理想が現実に出来ると信じているのかな?」

 

「・・・・・?」

 

フェルズの発した言葉にキョトンとした表情で黒衣の人物を見つめる。共存・・・・・?

 

「んー・・・・・難しいかな?できなくはないと思うけど」

 

「できる、と君は信じるのか?」

 

「互いが怖がらず意志疎通ができるなら希望はある。ウィルとレリィー、【アテネ・ファミリア】にいる人魚族(マーメイド)のようにな」

 

まあ、殆ど人の形をしているから怖がられないでいるけどなと付け加える。

 

「・・・・・ウラノス」

 

石造りの神座にいる己の主にフードの奥から意味深な視線を向ける。モンスターとの共存は不可能じゃないと述べる一誠をウラノスも見つめている。そして、沈黙を貫いていたウラノスは口を開く。

 

「アテネの子供よ。お前はヒューマンでも亜人(デミ・ヒューマン)でもないなら、お前という存在は一体何なのか私に教えて欲しい」

 

「知って、どうするきだ?」

 

「私の信用と信頼に値する者かどうか、その是か非か確かめたい」

 

信用と信頼と値する・・・・・一誠を試すウラノスにアテネはギルドの真の王の神威を計りしれないでいる。

一誠もウラノスに訝しい表情を浮かべるが、アジ・ダハーカを知られている以上、他にも色んな手段で知られているだろうと悟り、明かした。

 

「俺はドラゴン、モンスターだよ」

 

腰から、背中からドラゴンの尻尾とニ対の翼。頭部に鋭利な角が生え出し、肌に真紅のドラゴンの鱗が浮かび上がって姿を変貌させた。そして、これが本当の姿だとばかり、地下神殿の中で―――人型の姿を巨大な真紅のドラゴンへと変化した。

 

『これで満足したか?』

 

ウラノスに顔を近づける一誠。形容し難いプレッシャーを放つ目の前の真紅のドラゴンに神座からゆっくりとウラノスは立ち上がり、一誠の鼻先をその手で触れて撫で始める。

 

「モンスターが冒険者の真似事をしているなどと、誰も思いはしないであろう」

 

『極一部の奴は知ってるがな。で、俺はあんたに信用と信頼をされるに値するか?』

 

「―――無論だ」

 

元の姿に戻る少年を目の当たりにし、フェルズに蒼色の瞳を向ける。

 

「フェルズ、アテネの子供にあの場所を」

 

「・・・・・ああ、分かったよ。リド達も喜ぶだろう」

 

誰のことだ?と首を傾げるが、教えてもらえず「20階層に向かえ」とウラノスに言われる。

 

「明日、18階層で落ち合おう。その際【ファミリア】全団員を引き連れて来て欲しい」

 

「んー、分かった。でも、やりたいことがあるからゆっくり向かうぞ?」

 

「構わない。何時までも待つさ」

 

一誠とアテネが神殿から後にするとフェルズとウラノスしかいない空間に戻る。

 

「ウラノス、彼自身がドラゴンだとは驚いたが、ダンジョンに生まれたと思うべきかな」

 

「・・・・・モンスターと子供の間に生まれた、という考えも否定できないが。ダンジョンに生まれたモンスターとは思わない方がいいだろう」

 

「では、彼は一体・・・・・」

 

「フェルズ、改めてアテネの子供に聞き出してくれ」

 

「わかった。良い報告を待っててくれ」

 

―――○●○―――

 

翌日。一誠はとある【ファミリア】に赴いていた。

 

「いらっしゃいませ」

 

一誠を出迎えたヒューマンは精緻な人形、という言葉が真っ先に浮かぶ。一五〇Cに届かない小柄な体がその印象に拍車を掛けていた。下げられた頭からさらりと零れる細い長髪は白銀の色で、大きな双眸には儚げな長い睫毛がかかっている。服装は白を基調とした、どこか治療師を思わせる【ファミリア】の制服だ。アミッド・テアサナーレ。【ディアンケヒト・ファミリア】に所属する団員と久し振りに会った。

 

「久し振り、アミッド」

 

「お久しぶりでございます。今日はどのようなご用件で?」

 

精神力回復薬(マジック・ポーション)六十個と万能薬(エリクサー)を十個をくれ」

 

「かしこまりました」

 

光玉と薬草のエンブレムが飾られた清潔な白一色の建物内。周囲に存在するカウンターの一つで一誠の注文に応えるアミッドは背後の棚にずらりと並べられた色とりどりの(ボトル)を集めようとし、木製の脚立で一番上の棚にある箱を取ろうと―――。

 

プルプルプルッ

 

危なげに片足だけ立って全身を小刻みに震わせ両手と両腕を必死に棚の上の箱へ伸ばす女性の姿は微笑ましく見つめる一誠。小柄な体故に高い場所にある物を取る為には台が必要不可欠なのである。

 

「可愛いな」

 

「っ!?」

 

つい、漏らしてしまった一誠の呟きはアミッドの乙女心に刺激を与えた。その結果、つま先立ちの体勢が大きく崩れてしまって、箱の重さに逆らえず台から小柄な体が床に沈んでいくように倒れる。次の衝撃と痛みに目を閉じてしまったアミッドは―――鈍痛の痛みとは異なる、鈍い衝撃と同時に温もりが全身に伝わってくることで不思議に思い、目を開けて状況を把握する。

 

「大丈夫か?」

 

片手は箱を持って、全身で、片腕で抱えアミッドを守った一誠が声を掛けてきた。自分(アミッド)が一誠に抱き絞められているのだと知ると顔が発火する勢いで真っ赤に染め、俯きながら感謝の言葉を発する。

 

「あ・・・・・ありがとうございます」

 

「急に声を掛けた俺も悪かったな。大事な商品を無化に壊したら怒られるだろうしさ」

 

上半身を起こし、アミッドの背中をポンポンと慰めるように触れる。営業中であるのにこの他派閥の団員同士は桃色の雰囲気と空間を発生させる二人。カウンターの影に隠れるように二人は抱き合ってお互いの温もりを感じ合う。

 

「今日はダンジョンに行かれるのですか?」

 

「ああ、ようやく【ファミリア】らしく団員も増えてな。仲間とダンジョンに行こうとしているんだ」

 

「そうですか。唯一の団員はあなたしかおりませんでしたのに増えたんですね。おめでとうございます」

 

「ありがとー。俺のホームは西の一番大きい建造物だ。もしよかったら遊びに来てくれ。後日入り方を教えるからさ」

 

白銀の髪を揺らしつつ頷くアミッドに、何か思いついたのか一誠は尋ねた。

 

「アミッド治療師(ヒーラー)として一緒にダンジョンに来てくれないか?その代わりにアミッドが欲しがるドロップアイテムを提供するからさ」

 

「・・・・・少々お待ちを。ディアンケヒト様とご相談をして参ります。―――良い報告をお待ち下さい」

 

最後に熱意が籠った言葉であったのを一誠は感じ取った。

 

―――○●○―――

 

地下迷宮(ダンジョン)入口魔天楼施設(バベル)前の中央広場(セントラルパーク)に冒険者達がやってくると一際目立つ美女美少女達が固まって誰かと待っている雰囲気を醸し出している。ソロやパーティでダンジョンに行こうとする冒険者達は下心丸出しで一緒に行かないかという誘いを持ち掛けるが女性達のまとめ役なのか、アマゾネスが一蹴する度に冒険者達が次は俺の番だとばかりに誘いの話をしてくる。既に十回目の誘いを断ったアマゾネスも億劫の表情が浮かんでいる。

 

「なあ、俺達と一緒に行こうぜ?俺達はLv.2ばかりの冒険者だ。中層に行きたいなら俺達が―――」

 

「私はLv.3だ。それに強い男にしか興味ないんだよ」

 

あっち行けとばかり手を払うアマゾネス。守られているばかりの狐人(ルナール)人魚族(マーメイド)は待ち人を早く来てくれないかと願うばかりだ。

 

「だったらLv.3同士、一緒に中層へ行こうじゃねーか」

 

虎人(ワータイガー)の冒険者がズイと名乗り出た。

 

「俺なら文句はないよな?」

 

「・・・・・悪いけど、私らは【ファミリア】でダンジョンに行くんだ。他の派閥の奴とは行く気ないよ」

 

「かてぇーこと言うなって。同じ冒険者だ。仲良く冒険をしに行こうじゃないか」

 

手を伸ばし方に触れようとする亜人(デミ・ヒューマン)の手を「待て」と横から第三者が掴み止めた。

 

「俺の団員に気安く触れられると困る」

 

「ああ?誰だテメェ」

 

「【アテネ・ファミリア】のイッセー。この四人は俺と同じ派閥の冒険者だ」

 

白銀の小柄の少女を引き連れた真紅の長髪の隻眼の少年が自己紹介をするが、まだ諦めない虎人(ワータイガー)は掴まれる手を振り払い牙を剥く。

 

「ひょろくせぇヒューマンが、俺に指図するんじゃ―――」

 

眼帯を外したヒューマンの濡羽色の瞳を見た途端、虎人(ワータイガー)が顔中に脂汗を流し始め、何かに怯えているかのように震え始めた。

 

「―――ここで、死にたいか?」

 

「ッッッ!?」

 

見てはいけない物を見てしまった。とばかりヒューマンから逃げるように街の方へ走って行った。その情けない姿に順番待ちしていた冒険者もヒューマンの瞳を見た途端、不気味さを感じ取ったのか、散らばり始める。

 

「まったく・・・・・悪かったな。遅くなった」

 

「本当だよ。しかも、女も連れてくるなんてどういうことだ?」

 

「この女性は治療師(ヒーラー)として俺達のパーティに加わって貰うよう冒険者依頼(クエスト)したんだ。ダンジョンで何か起こるか分からないから重要な職業の冒険者だと思うだろう?」

 

「人選の目に狂いはない奴だな、イッセーお前って奴は」

 

はっはっは、と朗らかに笑う一誠は後にアマゾネス達、アイシャ達に問うた。

 

「ギルドの方で何か冒険者依頼(クエスト)を請け負ったか?」

 

「適当なもんでいいって言われたからね。素材集めや採取などの依頼を中心に請け負ったよ」

 

「ん、問題ないな。それじゃ、アミッド。紹介するよ。この四人が俺の新しい仲間だ」

 

アマゾネスのアイシャ、狐人(ルナール)のサンジョウノ・春姫、人魚族(マーメイド)のウィルとレリィー。

 

「で、この女性はアミッド・テアサナーレ。【デイアンケヒト・ファミリア】の団員だ。さっきも言ったように治療師(ヒーラー)として俺達のパーティに加わってもらった」

 

「どうぞよろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします」

 

お互い軽く挨拶を交わし合ったところで、一誠達パーティはダンジョンに進行するのだった。

 

人魚族(マーメイド)を眷属にしたとは驚きです。噂では人魚族(マーメイド)の涙や血は回復アイテムにもなるとお聞きします」

 

「ああ、血の方は直接俺が試したんだけど・・・・・封印だあれは」

 

「・・・・・何が遭ったんですか?」

 

アミッドが問うと、

 

「記憶が吹っ飛ぶ。その間、俺は恥ずかしい思いをしていた」

 

苦渋に満ちた一誠に純粋とからかいの声が。

 

「か、可愛かったですっ。イッセー様が小さく成られてですね?おねーちゃんと言ってくれました」

 

「「うんうん」」

 

「そうだねぇ?」

 

周りから恥ずかしい一件を暴露されて「言うなっ!?」と赤面する一誠にアミッドはちょっぴり羨ましがった。

 

「あの、人魚族(マーメイド)の涙と血を提供してもらえないでしょうか?」

 

「すまん、仲間の体の一部でも道具にしたくないんだ」

 

この瞬間、ウィルとレリィーは自分の中の一誠に対する好感度がぐぐんとアップした。アミッドは断われる前提で言ったのか、あっさり退いた。六人がダンジョンに繋ぐ大穴へと突き進む。高さはおよそ一〇M。直径の長さもほぼ同等で、太い円筒形が作られている。通称『始まりの道』。円周に沿うように穏やかな階段が設けられていて、大きな螺旋を描いていた。ソロや数組の冒険者パーティがその銀色の階段を降りていくように、一誠達もそれを倣う。

 

「アミッド様はLv.はおいくつなのでございますか?」

 

「Lv.2です。これでも私は中層にも行ったことがございます。が、戦闘は少々期待なされないでください」

 

「戦闘は俺とアイシャに任せてくれ」

 

「今回の目的はこの三人に戦い方と、サポートを教えたりして貰う為だからね」

 

「まあ、今日中に20階層まで進むつもりだ」

 

 

同時刻『バベル』地下一階。ダンジョンに通じる大広間で、床の中央では唯一である地下迷宮の出入り口『始まりの道』がある場所の他には円形の広間には長く太い柱が等間隔で並んでおり、頭上には本物と見紛うような美しい蒼穹の天井画が広がっていた。この場所は地下迷宮と地上を区切る境界線だ。地中深くに続く壮大なダンジョンを冒険する為、日夜冒険者達が出入りを繰り返している(一人除き)。今も数え切れない亜人(デミ・ヒューマン)で溢れ返っており、サポーターを引き連れて『大穴』の中へと入っていく。常時解放されているこの迷宮の入り口に数人の少女と女性と一緒に赤髪隻眼のヒューマンが塔の階段を下って現れる。大勢の冒険者達を抜き去りながら、一誠は五人と『大穴』へと向かった。そんな中、きらり、と。蒼穹の天井画に埋め込まれた極小の青玉が、密かな輝きと共に彼等の姿を追った。

 

「―――来たか」

 

暗闇に閉ざされた室内。台座の上に置かれた水晶を見下ろし、黒衣の人物―――フェルズは呟いた。『バベル』地下一階天井画の青玉と同じ輝きを放つ水晶には、『大穴』に設けられた螺旋階段を下る一誠達の姿が映し出されている。ダンジョンにパーティで侵入する少年の姿を凝視し、フェルズは動く。

 

「行くよ、ウラノス」

 

翻った黒衣が、闇の奥へと消えた。

 

 

 

「さて、三人にはこの弓を使ってもらおうかな」

 

ごそごそと1階層と地上に上がる為の階段のすぐ脇で他の冒険者が降りていく余所に春姫とウィル、レリィーにバックパックから赤い弓と水色の弓を取り出して手渡した。

 

「弓、ですか?」

 

「私達、弓なんて使ったことないわよ?」

 

「それは俺が作ったんだ。ある意味では弓型の『魔剣』だ。ただし本物の『魔剣』じゃないけどな?」

 

魔剣―――。魔法が宿っている武器の事を差す。しかし、魔導師が放つ魔法より威力は低く、使用制限もあって越えれば使い手を残し砕け散る。

 

「どういうこと?」

 

「三人とも魔法のスキルが発現してるからな。その弓は使用者の魔力で弓を具現化する矢いらずの弓だ。ただ、魔力がなければただの弓と成り下がるから効果的に使ってくれ」

 

「それって凄いじゃないか」

 

「そうでもない。イメージ次第で、矢に込める魔力の量次第で結果が違ってくる」

 

一誠も黒い矢を取り出してバックパックを背負い直せば前衛は一誠、中衛は春姫とウィル、レリィー、アミッド、後方はアイシャという組み合わせで移動すると

 

『ギギィッ!』

 

1階層に主に出現するゴブリンが現れた。

 

「三人とも俺のやり方を見てくれ」

 

弓の弦を引っ張れば一誠から吸い取るように魔力が弓と化した。狙いを定めて放つと、矢が五本も分裂してゴブリンの体に狙い違わず命中した。魔石も破壊されたようで灰と化した。

 

「すごっ!」

 

「俺がイメージしたのは矢が五本も増やしてモンスターを倒すことだ。こんな風にイメージ次第で魔力で具現化する矢自体も攻撃、速さ、量、他にも貫通と衝撃、威力など調整ができる」

 

「「「おおー・・・・・」」」

 

感嘆する春姫達でも簡単にモンスターを倒せれる事だった。

 

「でも、自分達も動かないといけなくなるから気をつけろよ。モンスターは黙って当たってくれはしないんだからな」

 

春姫達に弓での戦闘の経験と増やし、戦い方を覚えさせる一誠。1階層のモンスターをあらかた倒させれば2階層、3階層と順調に進んで6階層まで辿り着いた。

 

「今!」

 

「「「はっ!」」」

 

一六〇Cほどの身長と手足の先から頭の天辺まで黒一色に染まっている十字の形を描く頭部に顔面と思しき手鏡のような真円状のパーツが嵌め込まれている影と彷彿させる異形の怪物。6階層出現モンスター『ウォーシャドウ』達と戦い、囮として紙一重でかわし続ける一誠の合図で春姫達は矢を放つ。矢は数本に分裂しウォーシャドウ達の体を貫き、絶命に追い詰める。

 

「ん、徐々に扱い方が慣れてきたようだな。よし、少し休憩するか。ほら精神力回復薬(マジック・ポーション)

 

魔力を回復させ、三人の体力を回復するまで待機する。

 

「あ、イッセー。傷が」

 

「ん?」

 

「ほら、ここです」

 

アミッドが一誠の腕に掠り傷を見つけた。治療師(ヒーラー)としてどんな傷でも見逃さない。直ぐに小振りのバックパックから清潔な付帯と消毒液などの治療道具を取り出して傷の手当てをする。

 

「そのぐらいの傷平気なんじゃないか?」

 

「ダメです。掠り傷でも後に厄介な傷となり得るんです。大袈裟だと思われても仕方ないですが、【ディアンケヒト・ファミリア】の団員として傷の手当てをしないのでは治療師(ヒーラー)として失格なんです」

 

アイシャの言葉に真正面から言い放つアミッドは一誠の腕に包帯を巻き付け、きゅっと縛った。

 

「これで大丈夫です」

 

「さすが手際が良い。俺達の派閥に怪我や病気を治してくれる治療師(ヒーラー)がいないから助かる」

 

「当然のことをしたまでです。それに、私は戦うことができないのでこんなことぐらいしか」

 

自虐的な事を発するアミッドに一拍して溜息を吐いた一誠はデコピンした。

 

「あうっ!?」

 

「アミッドはアミッドしかできないことをすればいい。それを誇りに思えばいいんだよ。逆に戦闘しかできない俺達は傷付いた人を癒す術なんて知らないんだからアミッドを頼りにしているんだぞ」

 

「「え、私達は?」」

 

「血で治すのは言語道断!」

 

人魚族(マーメイド)の血の効果を体験した一誠だからこそ極力使用は避けたいスキルの一つ。

 

「俺たちはそれぞれできる分野があって出来ない分野がある。アミッドは俺達にない物があるように俺達はアミッドにない物がある。だからお互い協力し合って前へ進む必要があるんだよ。それが冒険者で有りパーティ、仲間だ。だからなアミッド、あんまり自分を蔑むなよ」

 

白銀の頭に手を置いてポンポンと優しく触れる一誠にほんのりと白磁の肌に朱を散ばせるアミッド。

 

「なんだか女慣れしてないかい?」

 

「男慣れしているアイシャにだけは言われたくねェ」

 

「当然だろう?私はアマゾネス。気に入った男を喰らうのが生き甲斐なのさ。お前もその一人だよ?」

 

艶めかしく自身の唇を舌で舐めて獲物を狙う目で視線を向けてくるアイシャに溜息しか出ない一誠。

 

「顔は美人なのに性格が台無しだなんて・・・・・」

 

「ふふふ、褒め言葉として受け止めるよ」

 

いや、褒めてねーしと心の中で突っ込みを入れる。やはりアマゾネスという種族を好きになれそうになく好きに成ったとしても複雑極まりない一誠である。

 

「後少ししたら移動開始だ」

 

と、一誠達は行動の準備をする。そして出発したその後の道のりは作業的であった。前衛の一誠がモンスター達を引き寄せ、後衛のアイシャが襲いかかるモンスターを一蹴しつつ春姫達に狙撃させ、時には三人だけで戦わせて危なっかしい動きをしモンスターに攻撃の隙を与えると二人がカバーする。

 

 

ドッ!

 

 

『ヴオオオオオオオオオオオオオオッ!?』

 

三本の矢が下の階層から上がってきたと思しき一匹の牛の怪物『ミノタウロス』の頭部や胸部を貫き、巨体が地面に倒れ伏す。弓を構えている春姫達は自分達の手で倒せた喜びを噛みしめ分かち合う様を一誠とアイシャが視界に入れて口にする。

 

「んー、Lv.1の冒険者が一人でミノタウロスを倒すなんて誰も信じられないだろうな。殆ど強力な武器の特性のおかげだろうけども」

 

「ああ、強過ぎる武器は持ち主の強さを狂わせる。長距離からの攻撃だからこそ安全と安心でいられるが、実際に接近戦を強いられたら春姫達は一撃でやられる」

 

「だな。今度―――接近戦でもして躱す技術を身に付けさせるか」

 

それを聞いた春姫達は青褪め、涙目になったのは別の話。15階層も進んだ一誠達は順調に足を前に運び、下の階層へと突き進む中、

 

「アミッド、18階層で待ち合わせしている奴がいるからそいつとも合流して用事を済ませたいんだがいいか?」

 

「わかりました」

 

素直に従うアミッドに感謝しつつ、破竹の勢いで下へ下へと進む一誠達は―――ようやく18階層に到達したのだった。

 

「さて、待ち合わせは特に決めてないから・・・・・19階層に繋がる中央樹、それともこの辺りにいるかな」

 

誰かを探すように顔を忙しなく動かして歩き始める一誠の横、森から怪しい人物が木の影から現れた。

 

「待っていた」

 

「あっ、いた」

 

全身を黒衣のローブで身に包むフェルズと合流を果たす。一誠以外、フェルズの事を知らないアイシャ達は警戒心を抱く。

 

「イッセー、そいつは誰なんだ?」

 

「俺をある場所へ案内してくれるフェルズって、魔術師だ」

 

「ある・・・・・場所?」

 

「詳しくは俺も知らん。だが、危険のないだろう」

 

何を根拠にそんな自信を持って言えるのだろうかと思うが、一誠が信じるなら信用するしかないだろうとアイシャ達はフェルズを受け入れた。

 

「それじゃ、20階層に―――」

 

「いや、それは待って欲しい。君達にやって欲しいことがこの階層で起きた」

 

「・・・・・なに?」

 

どういうことだと視線で訴えれば、フェルズはフードの奥から視線を明後日の方へ向け出す。

 

(リヴィラ)で人殺しが発生している。犯人は未だに捕まっておらず、リヴィラは少し混乱に陥っている」

 

「人殺しって・・・・・マジで?」

 

「以前、私が依頼した冒険者が殺されたようだ。他にも依頼した冒険者がいるだろう、安否が気になる。既に【ロキ・ファミリア】の幹部達が動いているからな」

 

「―――アイズ達、ここにいるのかよっ!?」

 

しかも事件解決に労力を費やしているらしく、双子水晶広場にならず者達を集結させているところだとフェルズから伝えられる。

 

「何でまた依頼した奴が殺されるんだよ」

 

「ハシャーナという冒険者にある物を回収する依頼を託した。それを狙った輩がハシャーナに近づいて殺したのだろう。依頼した者から無事に回収はできたが・・・・・」

 

「それってなんだ?」

 

フェルズはしばらく無言を貫いた。しかし、状況が状況なのか。

 

「君に頼みがある」

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