オラリオで自由気ままに過ごすのはダメだろうか(一時完結) 作:ダーク・シリウス
役者が揃い、残すは開始宣言が告げられるのみ。五Mの感覚の距離で対峙する二人は己の勝利を疑わず目の前の対戦相手を見据える。
『えー、【ソーマ・ファミリア】のザニス・ルストラはLv.2の三級級冒険者でありますが、対する【アテネ・ファミリア】のイッセーの情報は・・・・・何故かギルド側が公式の情報を公開してくれませんでしたので不明です』
なんだそれは、と誰もが不思議がった。どんな冒険者でもLv.ぐらいは公式として情報が公開されるものだ。しかし一誠と言う冒険者の情報が明るみにされていない。それはギルドが直接そうしているからなのだ。
「まー、そうだろうなー」
一誠は大して気にせず、頭の後ろでてを組んで何かを知っているような口振りで発する。
「まっ、Lv.ぐらいは教えてもいいだろう。俺は下級冒険者の冒険者。つまりLv.1ってことだ」
「下級冒険者が【ファミリア】の団長とは、よほど零細の派閥なのだな」
ザニスから嘲笑の声が発せられたものの、一誠は肯定と頷いた。
「まだ五人しかいないんだよ」
「その程度の構成員の数しかいない【ファミリア】が我ら【ソーマ・ファミリア】に
嘲笑うザニスに肩を竦める一誠。
「これからゆっくりと集めるさ。さて、勝負しようか三級冒険者?」
「下級冒険者など、私の敵ではない事を教えねばならないとは」
戦意を燃やし、相手を打破する思いを胸に秘める両者が待つ開始宣言は―――。
『それでは、
北部北端。目の前に映し出される
「絶対にイッセーが勝つよこれ」
「見てもしょうがないって程にね」
ティオナとティオネが結果が見えていると、それでも見守る姿勢を崩さないのはどんな勝ち方をするのか興味が尽きない。
「イッセー、頑張って・・・・・」
西の酒場では。
「全財産をイッセーに賭けているニャ!負けたら承知しニャいぞぉー!?」
「同じく!」
「あなた達は・・・・・」
同僚に賭ける同僚へどうしてくれようかと頭の中で考えるエルフにヒューマンの店員達は苦笑いを浮かべる。
「ま、私達は仕事に専念しようか。イッセーは笑って勝つだろうしね」
「帰ってきたらウィーネ達と一緒にイッセー様のお祝いをしましょう」
「私達の新しい歌を聞かせてね」
「うん、そうしましょう」
【アテネ・ファミリア】のアイシャ達も一誠の戦いを見守りながら、戦い始める二人を見守っている客達に酒や料理を振る舞う。
「素手で、私に敵うと思うなど百年早い!」
武器の種類、性能もあってかザニスの手数の方が多い。片手剣を振り下ろしては斬り上げる。下級冒険者には真似できない速い攻撃に一誠はあっさりと手の平で受け止め、もう片方の手でザニスの額にデコピンを食らわし、軽くふっ飛ばした。
「何か言ったか?」
「っっっ!?」
額に感じる鈍痛と眼前の相手に目を疑う。たったあれだけの動作で一誠から数Mまで吹っ飛ばされた。Lv.1の所業ではない。得物を握る手に力を籠め、爆走する勢いで踏み込んだ。一歩も動かず、相手を待っているかのような雰囲気を醸し出す一誠が、
「我が女神に華やかな勝利を貢献しないといけないんでな」
眩い閃光に包まれだす一誠の姿が一変する。
「こんな茶番劇でも派手に勝利の幕を閉ざさないとダメなんだよ」
六対十二枚の青白い翼に、真紅だった長髪は翼を同じ青白い髪となっている他、頭上に浮かぶ青白い輪っかの出で立ちの一誠がザニスを見つめながら、亜空間から封龍剣を取り出して構える。
「いくぞ?精々足掻け、三級冒険者」
「な、なんやあいつー!?」
バベルの塔、三十階のルームでは、ヒューマンや
「ふふっ・・・・・」
唯一、一誠の主神であり一誠の秘密を知っている女神が微笑む。一誠の秘密の一部を明かした結果、誰もが目の前の映像に目を疑い、異様な物を見る目で一誠を凝視する。
「・・・・・アテネ、彼は一体」
「あの子はあの子。私の愛しい子供、それだけで十分じゃない」
「それで納得できるほど、私達は馬鹿ではないのだけれど?」
「教える気はないと暗に言っているのだけれどね?」
ヘルメスですら天使のような姿になった一誠に驚き、ヘファイストスは隻眼の紅い目でアテネを見つめる。
アテネは真っ直ぐ青白い天使化した一誠を熱い視線で送る。
「羽ばたきなさい―――蒼穹の彼方までに―――」
「・・・・・なんて美しいっ」
バベルの塔最上階、【フレイヤ・ファミリア】の主神が、女神が、フレイヤが白磁の肌の頬に両手を添えるように押さえ、一誠の姿を見て恍惚を浮かべた。
「魂が・・・・・空が、見える・・・・・っ!」
『鏡』を通してフレイヤの銀の双眸が一誠の魂を捉えている。フレイヤ自身の先天的な能力、それは下界の子供達の魂を色として強さを見分ける。だが、今まで見たことのない魂を二つ見てきた女神は今、有り得ない魂を見て媚薬に近い昂りを覚えていた。変わることのない魂が発揮する力に呼応して、一誠の感情に呼応して純粋な子供のようにコロコロと変わる。今回は『空』になった。どこまでも青く、永遠に縛られることのない風を見つめる、そんな風を見守るような空となった。
「はぁ・・・・・っ!」
ダメだ―――こんな魂を魅せられては『鏡』で見るのは間違いなく勿体ない気がする。もっと近くでみたい、もっと近く―――。
「オッタル・・・・・あの子のところへ行くわ」
「はっ」
銀髪を揺らしながら
「あなたを触れさせてちょうだい?」
一方、
「この、化け物風情がぁぁっ!?」
荒々しい無法者の顔となってザニスが得物を振り下ろした直後。
「今の俺は天使なんだがな?。―――『
と発した一誠を守るように巨大な二本の大剣が地面から突き出てザニスを阻む。
『な、なんだあれはー!?』
「なんだ、これはー!?」
実況のイブリと揃って地面から突き出した武器に驚愕するザニスを他所に、さらなる数多の得物が続々と地面から生え出してザニスを一誠から遠ざけられてしまう。大剣を地面に突き刺して、地面から生える一振りの剣を手にしてあさっての方向へ振るったその直後、剣から火炎球が飛び出して壁に直撃、爆発した。
『地面から生えるように突き出てきた武器が、なんと、魔剣だったー!?まさか、あの武器全部が魔剣なのかー!しかも、強力だぞー!』
興奮気味に実況するイブリが波紋を呼び起こすように二人の戦いを見守っている全ての者が目を疑い、驚かざるを得ないが「似て異なる魔剣だかな」と誰にも聞こえないほどの声を殺して漏らす一誠は見据える。
「力の差はもう歴然とした。それでもまだ、戦うか?その気力と意力があるかな?」
一誠の質問に対して自分の得物を腰の鞘に仕舞って、強力な魔剣へいやらしい笑みを浮かべて手にするザニスがそう答えた。
「お前を倒した暁にこの武器を貰い受ける!」
「別にいいぞ」
ヒュンッ!と青い軌跡を残してザニスの背後へ回って大剣を振り下ろしたら、背後にいる敵を察知して振り返る際に横薙ぎで魔剣を振り払うと二つの剣がぶつかって火花を散らす、
「俺の武器は大剣だけじゃないぞ?」
十二枚の翼がギラリと刃状と化し、ザニスへ大きく降り注ぐ。
「バカめ、どこを狙っている!?」
ザニスが軽くかわし続けることで一誠の攻撃を回避する。姿が変わろうが、やはり下級冒険者であると心に余裕が生まれる。
「食らえッ!」
魔剣を振った―――。魔剣は一誠が放った火炎球より一回り大きかった。人を丸呑みにするほど、太陽と彷彿させる火炎球が地面を抉りながら一誠に襲いかかる。
『デカイッ!こんな魔剣は私は見たことないぃーっ!?』
イブリが激しく声を上げる。観戦客も神々も冒険者も目を張って―――。
―――イッセー、いきなさい。
どこか、アテネの声が聞こえたような気がした一誠は不敵に薄く笑った直後、火炎球に呑みこまれた―――。
一誠がいた場所に火柱が立ち上がっていて、誰もが骨も残さず消失し、死んだのだと思っている。だがしかし―――。勢いよく左右に大きく広がった青白い十二枚の翼と同時に火炎球を打ち払った。
「・・・・・はっ?」
服が燃えているわけでも重傷とも言える火傷すら無い一誠にザニスは間抜けな顔を晒した。あの業火の炎から生き延びる術は今の一誠には無かったはずだ。なのに、なのにどうしてそんな余裕の立ち姿をしていられる?
「どうした。もう終わりか?だとしたらもう降参しろ」
「~~~っ!?」
発火しそうな思いで顔を真っ赤に、顔を歪めるザニス。
「おい!こいつはモンスターだぞ!?ヒューマンでも
実況者のイブリに不正を申し立てるザニスだったが、
『え?えーと、そう言われましてもねぇ?派閥同士の、神の代理戦争ですので相手が誰であれ【ファミリア】に所属している冒険者ならば何とも言えませんよ』
困惑しつつも【ファミリア】同士の戦いなのだから、不正以前に一誠の情報を公開しないギルドに情報が明るみにされないのでイブリが言った通り何とも言えないのだ。
「神ガネーシャ!あんたもこの戦いを、このモンスターが戦って勝つことを認めるつもりか!?モンスターが冒険者の真似事をして不正な戦いに勝とうとしている!」
話にならないと神に懇願する。腕を組んでいたガネーシャが立ち上がって口を開いた。
『―――俺がガネーシャだからだ!』
『『『『『そうじゃねーだろっ!』』』』』
周りから突っ込まれる。しかし、ガネーシャは言い続ける。
『俺は【群衆の主】ガネーシャであるぞ。ソーマの子供よ、アテネの子供がモンスターであろうがなかろうが、一人の冒険者としてこのオラリオにいるのだ。翼に目を瞑ってやればどこでもいるヒューマンとは何ら変わりようのない姿で過ごしている。俺の大好きな市民、子供達に危害を及ぼした報告も一切無い。ならば、彼はヒューマンではなく、本当にモンスターであれば優しい心を持つモンスターではないのか?』
「馬鹿な、モンスターは人類の敵だっ!それはあんたら神も承知のはずだ!」
『重々承知をしている。だが、話はこの試合が不正であるか否だ。他の神々を代表として俺が言えば―――不正ではない!戦いを続けろ、ソーマの子供よ、アテネの子供よ!』
試合続行と神ガネーシャの発言で観客から歓声が湧く。
「だ、そうだが?見苦しい茶番劇を見させてくれてどうもありがとうよ」
「なんだと・・・・・っ!?」
「自分が格下のLv.の冒険者に負けそうだからって抗議するなって」
「黙れ!相手がモンスターならば冒険者ではない!お前の主神は何を思ってお前みたいなヒューマンの皮を被った化け物を眷属にしたんだか、理解が不能だっ!」
「それ、俺の主神の前でも言えるか?まあ、その本人も教えたら驚いたけどなー」
ハッハッハッと懐かしみながら朗らかに笑う一誠に対して、
「お前みたいな化け物がこのオラリオにいてはならないっ!人の姿でいるモンスターが、我々人類を欺いてのうのうと生きているなんてな!いや、だからギルドも化け物の情報を公開しなかったのだな!」
狂喜に歪む笑みザニスが
「お前の主神は悪趣味だなモンスター!モンスターを眷属するなど神の考えていることは理解できない!どうで甘い囁きで唆されて身も心も堕とされたに違いない!女神とはいえ所詮は女だ、人類の敵に身体を捧げる卑しい女神に違いない!」
罵声、罵倒する。考えうる限りの悪意に満ちた言葉を言い切って周囲にも同感だと気持ちを抱かせようとする。
神がダメなら、住民達からこの試合は無効だと言わせて自分に勝利をもたらせようとしている。
「お前達も愚かな女神とは思えないか!?人類の敵を神の眷属にするとは異端の烙印が押されるだろう!オラリオにいる全ての神々と【ファミリア】に非難され、オラリオから永久追放されるに決まっている!」
観客達に向かって両腕を広げ、自説を投げると観戦客達からざわめきと肯定、否定の言葉がちらほらと出てくる。
「この試合は無効だ!そうだろうっ!?」
同意を求める言葉をオラリオの住民達に掛けるザニスの背後で―――。
「言いたいことはそれだけか?」
全身に青白い放電を迸らせる一誠がいた。
「さっきから黙って聞けば、アテネを愚弄する事ばかり言いやがって・・・・・これはあれだな。ソーマを天界に送還してもらうしかないかな?それとも目の前の馬鹿をどうにかする方が先かな・・・・・」
不気味にブツブツと呟き始め、顔が俯いてどんな表情でいるのか『鏡』越しからでは分からない。
そして不意に、一誠が顔を上げたかと思えば、
「お前、もう負けて良いよ」
「―――っ!?」
「アテネの代理・・・・・なら、この技の名前で終わらせてやる」
宙に浮きだす。そして青白い閃光が一誠を中心に迸り、柱を彷彿させる光が
「―――
オラリオ全体に響き渡る轟音と衝撃、地震が発生したのだった。
「さて・・・・・ソーマ。見ての通り決着はついたわ。私の子供の完全勝利としてね」
「あなたの子供がさんざん私の事を愚弄してくれたわ。酷く心に傷付いちゃった」
ニコリと口元を緩ますが、目が怒りの炎を孕んでいて笑っていなかった。遠巻きで見てソーマの運命にニヤニヤと心面白そうに見るはずだった神々が顔を真っ青に染めた。アテネの怒髪天が衝くほどの怒りを受けた殆どの神々がここにいるのだからそのトラウマが再び呼び起こされたのである。初対面だったソーマも真っ青な顔で身体を震わせている。
「天界送還。これ、決定ね」
ガシッ!とソーマのローブの襟を掴んで壁と硝子が一体化した窓へ近づいては
「落し前をつけてもらうわよ。文字通り、ここから落ちてね」
アテネの冷酷な天界送還に
『ヤベェーッ!?』
『ソーマ君がダイビングジャンプする!?』
『『『俺、急いで下に行って落ちる瞬間を見てくる!』』』
神々がソーマの運命の末路に心底面白がる反応をしている他所に立った一柱だけ周りの神とは違った反応を示した。
「ちょ、待てアテネ!?いくらなんでもやりすぎとちゃうかっ!?というか、ソーマの送還は勘弁してぇー!?」
何故かソーマの肩を持つロキが懇願する。
「・・・・・どうしてあなたがでしゃばるの?これは私とソーマの問題なのに」
「え、えっとぉ・・・・・天界に送還されたら
「・・・・・」
「な、なんちゃって」
両の人差し指を自分の頬に添えて舌をペロリと出すロキに対して絶対零度の眼差しを視線と共に向けるアテネ。
本当に久々に、虫けらを見るような視線も込めて。
「あなた、飲めれば酒なんて何でもよかったじゃない」
「よくあらへん!?うち、ソーマの酒が今一番のオキニなんやで!出来るなら毎日飲みたいほどに好きなんや!?」
「どちらにしろ。ロキ、あなたの願いは聞き受けないわ。正式な
「いややいややぁー!ソーマの酒が飲めなくなるのいややぁー!」
ついには駄々をこね始め出すロキ。この面倒くさい女神をどうしてくれようかと溜息を吐くアテネと同時刻、
『戦闘終了~~~~~~~っ!?、Lv.を覆し我々を驚かせた【アテネ・ファミリア】のイッセーの勝利で
戦いは幕を閉じた。あれほどの攻撃だというのに
「さてと、アテネを迎えに行くとしようか」
翼を大きく伸ばしては広げ、今にでも空へ飛びだとうとした一誠の背後から声が掛けられた。
「待って?」
「うん?」
黒の薄いナイトドレスに包まれた、細身でありながら豊満な体つき。腰まで届こうかという銀の長髪は、太陽光を浴びて美しく幻想的に輝いていた。その行き過ぎた己の美貌を誇る彼女―――フレイヤは銀の双眸を真っ直ぐ姿が変わっている一誠を凝視した。背後に
ふと、一誠は敏感に感じた。
「こうして直接言葉を交わすのは初めてね」
「そうだな。美の女神フレイヤ―――で合ってるな?」
「ええ、合ってるわ。アテネの子供、イッセー」
黒い手袋に包まれた手を、腕を伸ばして一誠の頬を包みこむように添え出すフレイヤ。
「えっと・・・・・?」
身じろぎしようとした一誠に動くなとばかり一瞬で羽交い締めをする獣人の従者。フレイヤはこれを好機として満足するまで触れ始めるのである。
「ねえ、私の【ファミリア】に入ってくれない?」
「いや、入らない」
あの美の女神からの誘惑とも捉える誘いに即答で断わった一誠を一拍して、
『―――断ったぁあああああああああああああああっ!?』
「ふふっ、残念。でも、あなたが欲しいわ。欲しいの」
「んー、そんなこと言われてもなー。【アテネ・ファミリア】の眷属だし、アテネを裏切る真似は死んでもしたくないんだよ」
「そう・・・・・なら、ちょっとだけ賭けをしない?」
「賭け?」と首を傾げた一誠にフレイヤは獣人の従者に目を向けた。
「私の愛おしい
「―――」
フレイヤからの誘いに、眼を張った金目が歓喜と戦意の炎が孕み始めた。
「面白いな。いいぞ」
「好きよ?あなたのそういうところ。―――オッタル」
オラリオ最強の冒険者が動いた。羽交い締めを解いて
「こうも早くお前と戦えるなんて嬉しい誤算だ」
横に伸ばした手に一人で勝手に動いた一誠の大剣が動いて使い手の手の中に収まった。
一誠もまた天使化を解き、大剣を構えてオッタルに対して戦意を醸し出す。
『黄昏の館』
「ちょ―――、イッセーとオッタルが戦うってどういうことぉーっ!?」
「これは・・・・・どちらが勝つか、予想ができないや」
「確かに。じゃが、これは見物に違いない」
「Lv.最弱の冒険者とLv.最強の冒険者の戦いか・・・・・・」
「ど、どうなってしまうんでしょうか・・・・・?」
「勝つか負けるかどっちかしかねぇだろうが」
「・・・・・・あれ、アイズがいないわ」
「「「「「「「はっ?」」」」」」」
『バベルの塔』
「あ、あんのぉ色ボケ女神ぃ~!?私のいないところで、イッセーもイッセーで何勝手に決めちゃっているのよー!」
「いや~でもアテネ?流石に負けないんじゃないかなーなんて思ってはいるんだけど」
「当然よ!私のイッセーは強いんだから!こうしちゃいられない、イッセーのところに行かないと!」
―――○●○―――
大剣と大剣、一騎打ち。初撃が互いの武器を弾き合い、戦闘の幕が開けた。オッタルは表情を変えず、大剣を振り下ろして、オラリオ最強の冒険者と戦える喜びを顔に出して大剣を下から振り上げ、二つの大剣はぶつかり合って周囲へ衝撃波を生じさせた。それが初撃である。
「・・・・・Lv.1とは思えない力量だ」
「自覚してる」
次の刹那。知覚を許さない神速の剣戟が一誠とオッタルの手で行われた。どちらも右手一本でして見せているのだ。激しく響き渡る甲高い音と観客席からでも聞こえる空ぶる音。
「―――これはどうだ」
一瞬の間でオッタルから数M離れた距離で一誠は爆発的な脚力で鎌風を放った。
「嵐脚!」
振るった足から真空刃が、可視化するほどの斬撃がオッタルに向かう。飛ぶ斬撃を真正面から大剣で受け止めたオッタルは地面を深く削り続け、
「オオオオオオオオオオオオオオッ!」
怪物の咆哮と聞き紛う猛り声が炸裂し、斬撃を打ち破った。後退させられた距離、目の前に広がる彼我の間合いに錆色の瞳が細まる。防御したにもかかわらず、五M以上もの距離を飛ばされた。足技で。
「来いよ最強。本当の戦いって奴を俺が教えてやるよ」
片手でクイクイと招くように動かしオッタルを挑発する。地面に力強く踏み込んで―――ドンッ!と音が聞こえるほど走りだして一誠の懐に飛び込む。同時に一誠も物凄い勢いで駆けだし、二つの大剣が振り下ろしたと同時に二人は擦れ違ったと思えば、二人の姿がブレて消えだし、虚空から激しい衝撃と衝突、金属同士がぶつかる甲高い音が聞こえるようになる。第一級冒険者の目でも捉えることができない強さの壁を越えた武の達人の領域に踏み込んだ者同士しか分からないほどの神速の戦い。
「・・・・・」
ホームからいなくなったアイズは
アイズの金眼からでも一誠とオッタルの戦いは捉えることができないでいる。
―――なんて、凄い戦いなんだろうか。
一度一誠と戦ったことがあるアイズでも、あそこまでオッタルと同等に戦える一誠と渡り合ったことがない。アレが本当の強さであれば、Lv.に合わせて戦っていたのかもしれない。だとすれば・・・・・。
「私は・・・・・弱い」
ガキィンッ!と甲高い音が耳朶を刺激する。アイズは金眼を闘技場へ向けることに集中する。
二人の姿がようやく見つけ、オッタルの大剣が真っ二つに折られていた。―――それでもなお、オッタルは
「今度は拳でか?いいぞ!」
武器を破壊されたオッタルは己の肉体を武器にして戦いを続行する。一誠も大剣を亜空間に仕舞っては嬉々としてオッタルと肉弾戦をおっぱじめた。突き出される拳、繰り出される拳に混じって足の猛威が振られる。直接本当の意味で零距離での攻撃はどちらもダメージを食らっては負う。
「このっ、いてぇーなっ!?」
「本当に下級冒険者か?」
オッタルの胸中で疑惑が膨れるばかりであった。自分との戦いを同等以上に渡れ、食らった打撃の威力は下級冒険者、Lv.1の冒険者では有り得ないほどの鈍痛を感じる。
「ああそうだよ。全然Lv.が上がらず【ステイタス】だけが伸びる冒険者だよ!」
互いは、二人は一つ一つの拳砲を紙一重でかわし、途方もない『技』と『駆け引き』を惜しみになく披露する。
一誠と同等に戦うオッタルの感想は、―――底が見えない。の一言に尽きるだろう。まだ、何か、力を隠しているように思えてしょうがない。振るられた細い足を脚で受け止め、突き出された拳を難なく手首を掴んで受け止め―――。
「掛かったな?」
固く握られた拳が花のように開き、手の平に集束する眩い光を見た瞬間、オッタルは極太の光の砲撃に呑みこまれた。掴んでいた手首を手放してしまい、
「ぬぅううううううううううううううううううんっ!」
地面を深く削りながら、両腕を前にクロスして防御の態勢で受け止め続ける。
「おいおい・・・・・なんて奴だよ」
唖然としてオッタルと十M以上距離を開けたところで攻撃を止めた。二本の電車道みたいな削り跡が動きを止めた獣人まで続いている。両腕に装着していた手甲がボロボロと砕け落ち、防具としての機能はもう役に立たないほど耐久度が限界に陥った。
「本当に、お前は何者なのだ?」
錆色の瞳はギラリとした鋭さが増して一誠を見据える。ただのどこにでもいる冒険者―――ではない。オッタルは一誠を異形として見るようになる。自問する獣人は返ってこない言葉を気にせず、まるで挑戦するかのように爆発的な脚力で肉薄する。愚直にそんなオッタルに真正面から飛びかかり、
「「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」
二つの拳が交わし、二人の顔に突き刺さる―――!
「その戦いを止めなさいっ!」
闘技場に響き渡る女性の制止と凄まじい神威。顔に突き刺さる二つの拳が直前で停止して、隻眼の瞳と錆色の瞳だけが視線をぶつけあっていた。
「・・・・・アテネ?」
先に拳を下げて戦いを止めた女性こと女神アテネが聞こえた声の方へ顔を向けた。ずんずんと自分は怒っているんだとばかりそんな雰囲気を醸し出しているアテネが一誠に近づく。
「イッセー、どうして勝手にこんなことしてるの」
「オッタルと戦いたかったからだが?」
「貴方が負けるとは微塵も思ってないけれど、フレイヤの口車に乗っては絶対にダメよ」
「・・・・・別に乗ったつもりはないんだけどな個人的に」
頭をガリガリと掻いて再戦ができない雰囲気だと悟った。
「これ以上の戦闘は私が認めないわ。さっさとホームに帰るわよ」
「えぇ~」
「ダ・メッ!」
せっかく楽しい戦いが中途半端、不完全燃焼の形で終わらされてしまうことに不満を零すものの、アテネは灰色と青色の双眸に覗ける固く強い意志は一誠が説得しても揺るがないだろう。
「それとフレイヤ!」
闘技場の隅にいる銀髪の女神にも声を掛けた。
「私のイッセーが欲しいなら、堂々と私に
「・・・・・だ、そうだ。悪いなオッタル。この勝負の続きはまたいつかしよう」
再び青白い天使化となり、アテネのくびれた腰に腕を回して宙に浮きだす。そして、青白い軌跡を残して闘技場からいなくなった。静かに一誠達を見送ったオッタルは、
「オッタル」
「はっ」
「全く、貴方はどうして私のいないところで勝手な事をしているの!」
「いや、オッタルと戦いたかったんだし、アイツを真正面から打ち勝てばLv.もようやく上がるかと思ったほど強かったんだ」
「Lv.なんて上がらなくても貴方は強いでしょうが!」
「それはそうだけど・・・・・もう怒るなよアテネ」
こっ酷く叱られている一誠をアイシャ達はただ見守るしかできないでいる。リド達も「こえぇー」と遠巻きで見ている。ガミガミと初めてアテネに怒られる一誠は
「フレイヤに魅了されていないでしょうね?」
「触れられた程度だから別に魅了されていないし即答で否定したぞ。というか見てただろ?」
「ええ、見てたわよ。そりゃイッセーはフレイヤやイシュタルみたいな美の女神の『魅了』を打ち勝つけど」
「うん、アテネが好きだからな」
「―――っ」
真正面からストレートに愛の言葉を告げられ思わずと赤面するアテネ。
「勝手な事をして悪かったと思うけど、俺もやってみたい、してみたいことだってあるんだ。そこを目を瞑ってくれないと俺の自由が束縛されている感じで嫌だぞアテネ」
「自由を束縛だなんて・・・・・私はそんなこと・・・・・」
若干の戸惑いを顔に浮かべるアテネに言い続ける。
「俺がオッタルに負けないと信じているアテネが止めただろう?俺はオッタルとの戦いを臨んでいたんだ心底から。それをアテネが止めた」
「・・・・・」
「今度から一言言ってから行動する。だからアテネ、俺を信じて邪魔はしないでくれ。アテネの眷属になる際にもそういう約束をしたよな?」
【ファミリア】加入の際に二人が決めた約束がある。それはアイシャ達は知らない。アテネは二人で決め合った約束を、はっと思い出して、次に申し訳なさそうに顔を暗くする。
「ごめん、なさい・・・・・」
「ん、俺もごめんな」
仲直りと二人は抱き絞め合う。銀髪を優しく触れてアテネに心地好さを与える。
「・・・・・意外とすんなりと収まったねぇ」
「でも、直ぐに仲直りできて安心しました」
「女神アテネって怒ると怖いのね・・・・・」
「怒らせないように気を付けよう・・・・・」
アテネの怒りの矛を収めた一誠と抱き絞められている女神に安堵の心情のアイシャ達。この日をもって【アテネ・ファミリア】の知名度が上がるのである。
後日―――。
「リリルカ・アーデと申します。この度【ヘスティア・ファミリア】の入団を受け入れを申し込みに来ました」
一人の
さらに別の話。
「しょうがないから、ロキ」
「な、なんや・・・・・?」
「【ロキ・ファミリア】が【ソーマ・ファミリア】の運営管理、監視を一任してもらうわよ。もしも【ソーマ・ファミリア】が問題を起こしたら貴方達【ファミリア】が全部対処、処罰すること。いいわね」
「―――それってあれか、ソーマの酒を何時でも飲んでもいいっちゅうあれかっ!?」
「馬鹿じゃないの?有料に決まっているじゃない。酒場の為にソーマの酒を
購入している私達が馬鹿みたいじゃない」
「えー!そこは親分として顔を立てておいてくれやー!」
「だ・れ・がっ、親分よ!」