オラリオで自由気ままに過ごすのはダメだろうか(一時完結)   作:ダーク・シリウス

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冒険譚24

とある日の夜の『豊饒の女主人』。

 

「24階層でモンスターが大量発生?」

 

ウエイトレス姿の女神アテネは一組の冒険者から気になる情報を告げられていた。

 

「そうだぜ女神様!ギルドも全然対処してくれねぇから役にも立ちやしねぇよ!」

 

仲間(つれ)が死んでしまったってのに!とギルドの対応に嘆く冒険者に何とも言えないアテネ。

神に愚痴を零すなど、どう派閥の者であればともかく他派閥の冒険者がしていいわけではないが、ダンジョンで一瞬の油断もできない命懸けをしている身としては慌てるだろう。今日その体験をしてきた冒険者の一組は項垂れて溜息を零す始末。

 

「女神様、何とかなりませんかねぇ・・・・・第一級冒険者でもねぇ俺らがまたあの階層に行ったら今度こそ全滅でさぁ」

 

「そうね・・・ギルドが【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】に対して強制任務(ミッション)を発令すれば問題は解決するのだと思うけれど」

 

ギルドは問題となっている24階層の状況や把握はしているだろうが、まだ日が浅い上に問題視と重要視していないのであればどうすることもできないだろう。それが今のギルドの現在でもあった。

 

「(イッセー達に頼んでみようかしら)」

 

心の中でそう考えていたアテネ。

 

酒場の隅で女性眷族と一緒に食事をしていた気品溢れている男神が意味深に見ていたことをアテネは気付かない。

 

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)でオッタルと戦って最弱のLv.で同等以上の戦いを繰り広げた、それなりに経った日のことであった。

 

 

「モンスターの大量発生?」

 

西と北西の区画の間に挟まれている、百Mの石壁に覆われ、自然豊かな巨大な森に囲まれている白亜の巨塔魔天楼『バベル』の二番目に高い断崖絶壁の頂上に白亜の城、『天地の城』のリビングキッチンで【アテネ・ファミリア】の会議が行われている。

 

「それって24階層のことですか?その階層にモンスターが大量にいるって」

 

「ええ、そうよ。他の皆も多分小耳に挟んでいるとは思うのだけれど」

 

「はい。私も、似たようなことをちょっとお聞きしました」

 

「私は聞いてないねぇー」

 

「以下同文。裏で働いていたし聞こえない」

 

アイシャと一誠は聞いていないと発する。小さな円型テーブルを挟んで六人は会話を飛ばし合い、気になる情報を明るみにしているのだ。アテネの指令で会議が行われ、24階層の件を思案する。

 

「24階層と言えば『中層』だな。俺は一気に『深層』に行ってしまうから『中層』は採取用の原料(アイテム)を取りに行くこと以外行かないから把握はしていないが」

 

「そう・・・・・。なら、リド達ならば知っているんじゃないかしら?」

 

「そのリド達はダンジョンに行っているから聞くことはできない」

 

同胞探しの旅団と化している『異端児(ゼノス)』は今日もダンジョンに赴いている。

 

「アテネ、俺達にその話を聞かせて24階層に行って欲しいと考えているのか?」

 

「それは自由にして。わざわざイッセー達が行かなくても他の冒険者、【ロキ・ファミリア】か他の派閥の誰かがこの件を聞きつけて対処しに行く可能性もあるから」

 

「ふーん。そうか」

 

しかし、24階層の件を一番身近で知ることができる者がやって来て冒険者依頼(クエスト)として頼んできそうだなぁーと全身黒いローブで覆われた謎の黒衣の人物を思い浮かべる。

 

「なら、試しに24階層へ行ってみるとすっか。どうせ俺は何時も通りダンジョンに行くだけだったし」

 

「だったら私も行かせてもらうよ。今日は非番だからね」

 

アイシャも乗り気で同伴すると言えば、春姫達三人も一緒に行くと意志を示す。

 

「行くなら気をつけなさい?何か訳ありかもしれないから」

 

「ダンジョンに異変が生じている前提で調べに行ってみるよ」

 

主神の警告を受け入れ、五人はダンジョンに行く為の準備をする。

 

 

同時刻。ダンジョンに行くことを決めた一誠達を知らず―――。

 

「もぉー、どうしてベートまでくんのさー。イッセーが迷惑するよー」

 

「んだとっ!誰が迷惑なんて掛けるかよ!」

 

「あっ。じゃあ忠誠心が高い犬のように大人しくするんだ?それなら偉い偉い」

 

「誰が犬だっ!俺は狼だ!」

 

一行は【アテネ・ファミリア】の本拠(ホーム)に向かっていた。今回はベート・ローガが何が何でもついていくと風に同行をしていた。ティオナと騒がしく言い合いをして歩き続ける他所でティオネ、レフィーヤ、アイズが歩いていた。

 

「朝からうるさいわね・・・・・」

 

「ア、アイズさん・・・・・大丈夫なんでしょうか?」

 

「・・・・・多分」

 

ギルドにバレては問題だらけの女神(アテネ)の派閥。本神は【ファミリア】の運営管理の意識は強くなく、神々の天界送還の為に精を出すほうなのだ。【ファミリア】解散をギルドから指令を出されれば即座に自由に送還する為に動きだすだろう。レフィーヤが述べた不安のある言葉の第一の思いはリド達の存在だ。一誠に釘を刺されている手前、ロキやフィンとガレスには黙っているが、ベートはどうなのか分からない。好戦的な狼人(ウェアウルフ)が『異端児(ゼノス)』を見たら、どんな言動を起こすのかアイズもちょっと心配でいる。

 

「・・・・・記憶から抹消する?」

 

「あんた、さらっととんでもないことを言っているわよ」

 

方法は鞘による頭に強い衝撃を与え続けること―――とベートの銀の頭を見つつ考えていたアイズの声を拾ったティオネは呆れている風に返し、突然の悪寒に身震い、狼の尻尾もブルルッ!と呼応するように震わせるベートは「な、なんだ?」と冷や汗を浮かばせて、ティオナに怪訝な視線を向けられながら周囲へ顔を向ける忙しい挙動不審をした。

 

六人の男女が西と北西のメインストリートに挟まれている区画へ向かうことどれぐらいの時間が掛かっただろうか。百Mの囲いの石壁が見えるようになり、そして―――デジャブを感じさせた。

 

「えっと・・・・・今度は誰?」

 

明らかに中にいる者達と接触したいが、この石壁の向こうへどうやって行けばいいのだろうかと悩んでいる様子を窺わせている一組の男女がいた。背中から分かる出で立ちは濡羽色の長髪を腰まで伸ばし、神の隙間から覗ける耳はレフィーヤと同じ種族のエルフだろうか。

 

纏う戦闘衣(バトル・クロス)は司祭服にも似た作りで、純白を主としている。長い襟で首筋まで隠す程の肌の露出を控えており、エルフの潔癖性を表しているようだ。もう一人は男だった。金髪で気品溢れている服装を身に包んでいる。服装と金髪だけ例えると異国の王子然としていた。前回、囲いがなく容易く中に入れたヘルメスとアスフィではない、別の二人組が当惑している立ち姿に、アイズは声を掛けた。

 

「・・・・・あの?」

 

「うん?」

 

男が振り返った。綺麗な顔の容姿と硝子のような瞳がアイズ達を捉えた。

 

「おや・・・・・【ロキ・ファミリア】の、ロキの子供達か。おはよう」

 

男神だった―――。となれば隣の濡羽長髪、振り返って分かった赤緋の双眸のエルフの少女は眷族であるとアイズ達は悟った。

 

「私はディオニュソス。この子はフィルヴィス・シャリア。【ディオニュソス・ファミリア】の団長だ」

 

「は、初めましてっ」

 

礼儀正しく山吹色のポニーテールを揺らしながら頭を垂らすレフィーヤに続き、アイズも頭を下げたが他の三人、アマゾネスの二人と狼人(ウェアウルフ)の態度は礼儀正しくなかったとディオニュソスの眷族のエルフは内心良い感情ではなかったと後に語る。

 

「君達も【アテネ・ファミリア】に用があるのかな?」

 

「というと、ディオニュソス様もそうなのですか?」

 

「ああ、アテネと少しばかり話をしたいんだが・・・・・見ての通り、この壁を越えられなくてね。どうやってアテネと会えばいいのか分からないでいるんだ。奇妙なことに、鍵穴らしき小さな穴だけはあるのだが・・・・・」

 

困った顔で肩を竦める男神に、アイズは胸に下げていた紐に吊るしていた鍵を取り出しては、その鍵穴に鍵を差し込もうとしたその時だった。石壁が鈍い音を鳴らしながら両開きで勝手に開き始めた。人一人分の空間まで石壁が開き―――。

 

「うん?アイズ達と・・・・・誰だ?」

 

準備万端な【アテネ・ファミリア】の団員達が壁の間から出てきた。アイズ達の他に見知らぬ神とその眷属に首を傾げると、

 

「イッセー、おっはよーう!」

 

ティオナが元気一杯に挨拶をした。一誠も挨拶を返して、状況を把握する。

 

「もしかして、遊びに来ちゃったって感じか?」

 

「うん、あの修行をしたくて・・・・・どこか行くの?」

 

「ああ、ちょいっと24階層に」

 

行き先を告げた一誠に「24階層?」とティオネが不思議そうに口にした。

 

「何で?『深層』じゃないの?」

 

「何でも24階層でモンスターの大量発生がしているそうなんだよ。その真相を調べに行こうって思ってこれからダンジョンに行くんだ」

 

「へー、そんなことが起きているんだー。アイズ、どうする?」

 

【ロキ・ファミリア】が知らないダンジョンの情報に率先としてこの場にきたアイズにティオナは尋ねる。

 

「で、そこの神とエルフは誰だ?」

 

「そうだね。自己紹介をしよう。私はディオニュソスという。こちらは私の眷族のフィルヴィルス・シャリアだ」

 

一誠に軽く自己紹介をした男神は自分達の用件も告げる。

 

「アテネの子供よ。お願いがあるのだが、アテネと話をさせてくれないかい?」

 

「どんな話をするんだ?」

 

「それは後にアテネから聞いてほしいのだが・・・・・」

 

この場では言えないとディオニュソスは暗に言う。内密な事なのかと「んー」と考える仕草をする一誠は背後に振り返った。

 

「だってさ、アテネ。どうする?」

 

アイシャ達のさらに背後、アテネが一誠の肩を並ばせるように現れた。

 

「私、これから酒場に行かないといけないのだけれど」

 

「少しの間だけでも時間は取れないかな?」

 

「というか、私と接点がない男神が何の話を持ち出すのか理解できないわ」

 

疑わしい、と目を細めるアテネに苦笑いを浮かべるディオニュソス。天界での付き合いはあまり大してなく、アテネ自信も話をすることすら必要性を感じていないで気真面目に生きていた女神でもあった。

 

「確かに天界では接点は無いけれど、とある事件の共通点を持っていることは確かだ」

 

「・・・・・事件?」

 

「それ以上は君達の子供の前では言えない。どうか君の時間を少しばかり私にくれないか?」

 

胸に手を当て、もう片方の手をアテネに差し伸ばすその仕草ときざったらしい台詞に、億劫そうな面持ちで溜息を吐いた。断わってもまた後日訪れてきそうな予感を覚え、渋々と了承した。

 

「条件を呑んでくれたら、まぁ、話を聞いてあげるわ」

 

「それはありがたい。で、条件とはなんだい?」

 

「ついてきて」とアテネに従うディオニュソスに連れ沿う濡羽色の髪のエルフだったが、

 

「貴女は付いてきてはダメよ。イッセーと一緒にダンジョンでも行きなさい」

 

「しかし、私は―――」

 

「だ、そうだフィルヴィス。俺達と交友を深める為にも、一緒にダンジョンに行こうじゃないか」

 

他派閥の女神の同行の許可を許してもらえず、一誠の金色の翼にぐるりとフィルヴィスの体を包みこんで動きを封じられた。

 

「は、放せっ!?」

 

「フハハハハッ!だが、断るっ!ディオニュソス、しばらく彼女を借りるぞー」

 

「あ、ああ・・・・・でも、手荒な扱いだけは止してくれ」

 

「問題ない、帰ってきた頃には仲良しになっている」

 

アイシャ達を引き連れ、フィルヴィスを翼で捕まえたまま魔天楼施設『バベル』へ向かい始める一誠。

 

「・・・・・私達も行こう」

 

「そうこなくっちゃ!ベート、帰るなら帰っていいよー」

 

「あの野郎を調子に乗せられるか!」

 

「三つの派閥の混合パーティなんて初めてね」

 

「だ、大丈夫なんでしょうか・・・・・?」

 

アイズ達も一誠の後を続き、ダンジョンに向かっていくのを二柱の男女の神が見送った。

 

「それで、アテネ。条件とは?」

 

「直ぐに分かるわ」

 

 

―――もう一人、連れて行こうかな。―――え、誰?―――皆が知っている他派閥の団員だ。

 

 

―――『豊饒の女主人』―――

 

「ミアさーん。臨時の店員となってくれる神を連れてきたわー」

 

「おー、そうかい。それだったら馬車馬の如く働いてもらおうじゃないか」

 

ついてくれば、そこは酒場だった。アテネと言葉を交わす恰幅の良い女性女将。この場に来てしまったディオニュソスは茫然として立ちつくすと、アテネから布を渡された。

 

「はい、一緒に働いてもらうわよディオニュソス」

 

「・・・・・条件ってこのことなのかな?」

 

「それ以外何があるのよ?どうせ、貴方は働かず暇を持て余しているのだから丁度良いでしょう。貴方の眷族が戻ってくるまで働きましょうか」

 

天界でも真面目に生きていたアテネは下界に降り立っても性格は変わらない。ディオニュソスは慣れない仕事で疲弊し切った表情を浮かべながら改めて知ったのである。しかし、酒場にやってくる女性の客には大絶賛だったのは別の話。

 

―――○●○―――

 

アイズの腰に括りつけられている青玉がきらり、と輝いている。それは台座の上に置かれた水晶を見下ろしている黒衣の人物が魔法の水晶のようにアイズ達の行動を見守ることができるものであった。

 

「ウラノス、イッセー達がダンジョンに向かった。どうやら件の階層に向かうらしい」

 

「情報が早いな。だが、好都合だ」

 

真のギルドの王に告げ、ウラノスは蒼色の双眸を隠すように閉じた。古代神殿の最深部を思わせる石造りの広間に立った二人と四炬の松明が深い闇を切り裂いている空間しかない地下神殿。

 

「リド達には前回、30階層の件でやってもらったが、大きな被害が出た。彼等にこれ以上の負担を掛けさせるわけにはいかない」

 

「事情も知らないアテネの子供達は知らずに異常事態(イレギュラー)を進んで片付けてもらうのか」

 

「教えに行こうかい?」

 

そうすれば納得出来るだろう彼等は、とウラノスに尋ねる黒衣の人物フェルズの問いは首を重々しく横に振られた。

 

「いい。既にヘルメスにも動いてもらっている」

 

「わかった。前回は番人はいなかったが、30階層の件で相手も神経質になっているに違いない。あらゆる事態に備え、彼等彼女等には申し訳ないが・・・・・これ以上好き勝手にやらせるわけにはいかない」

 

 

 

 

「・・・・・」

 

「怒るなってフィルヴィス」

 

「あの、イッセーさん。それは無理があるのではないかと・・・・・」

 

「肩に担いで強引に連行するよりはまだマシな方だと思ったんだけどなー」

 

「いえ、あの、それ以前に、ですね?」

 

一誠と肩を並んでむすっと無言で歩くフィルヴィスと同じエルフのレフィーヤが濡羽色の髪を背中まで伸ばしている彼女を追うように歩いて一誠にエルフの知識を教授する。

 

「へぇー、エルフにそんな習慣があるんだ・・・・・うん、実に興味深いな。他にも何かエルフに関する知識や情報とかないか?」

 

「え、えっとですね・・・・・」

 

知識欲旺盛なヒューマン・・・・・?であるとレフィーヤは改めて知る。多種族のことを知りたがる冒険者がいるとは不思議よりも驚きが勝って、自分が知る限りの情報を懐かしみつつ一誠に語って教えるその姿に、

 

「・・・・・」

 

「アイズがなんだか、寂しそうな表情をしているよティオネ」

 

「お気に入りの物を奪われたそんな感じよね」

 

アイズが興味津々でレフィーヤの言葉に耳を傾け、逆に質問され、様々な反応と言葉で返事をするレフィーヤはどこか楽しそうにしていた。

 

「あ、あのぉ・・・・・」

 

声を掛けられ、首だけ後ろへ向けば、春姫がアイズを真っ直ぐ見ながら頷いた。

 

「分かります、その気持ち・・・・・」

 

「・・・・・?」

 

何のことだろう、と春姫の言葉の意図が分からないアイズは首を傾げた。―――一行は18階層に辿り着いたばかりだった。

 

「イッセー、24階層で溢れ返っているモンスターってさ。実際どんな状況なの?」

 

「俺はここしばらく『中層』なんて行ってないから実際、直接行ってみないと分からん」

 

「どうして行かないの?」

 

「―――お前ら、自分の胸に手を当ててみろ」

 

そう言われて五人、ベートとフィルヴィスを除いたアイズ達は言われた通りにして、頭上に「?」と疑問符を浮かべた。自覚、ないのかこいつらは、と呆れ返る一誠。

 

「まあ、そういうことだ。このまま24階層に行く」

 

(リヴィラ)で必要な道具(アイテム)を買わないの?」

 

「要らない。大量発生している程度なら、ただ狩るだけだ」

 

自信に満ちた言葉―――というより作業的な感じに発する一誠におずおずとレフィーヤは尋ねた。

 

「あの、Lv.はいくつなんですか?」

 

「まだ、1だ」

 

「・・・・・」

 

「聞いて何愕然としているんだお前」

 

これでも気にしているんだぞ、と拗ねる一誠に慌ててペコペコと謝りだすレフィーヤが躓いて前に倒れかけたが、自然とした動きでレフィーヤを支えた。

 

「しっかり歩け。怪我するぞ」

 

「す、すいません」

 

前を向いて歩く一誠を見つめる山吹色のエルフの背後からアイシャが声を掛けてきた。

 

「そういうことだ。イッセーは器の昇華ができないことに残念がっているんだよ」

 

「だけど、強いよねーイッセーって」

 

「逆に言えば、強過ぎると次の一歩が遠いんだ。それこそ相手が【猛者(おうじゃ)】みたいな相手じゃないとイッセーの奴はあっさり倒しちまう。Lv.アップがしない原因はそれでもある」

 

「強いって案外、不便なのかしらねぇ」

 

そうかもしれないねぇーとティオネの発言に相槌を打つアイシャ。アイズがLv.6に成れたのも長い年月を掛けた結果でもあり、一人で階層主を倒した実力は器の昇華に相応しいからだろう。しかし、一誠は最初から強い状態で恩恵を刻まれた。各階層の階層主をたった一人でも倒しうる実力を有している。アイズと一誠の違いは似て異なっているかもしれない。だからこそ、アイズは同じ年ごろであろう強い一誠がいる頂点を目標としているのだ。

 

「イッセー、オッタルと戦って勝つ自信はある?」

 

「ああ、勝つ自信はある。アイズ達に見せたことがない力も隠し持っているし」

 

「うわー、まだ凄いのできるんだ・・・・・」

 

感嘆と漏らす。今まで見てきた一誠の力はまだ一部なのかもしれないと。

 

「・・・・・イッセー、24階層の大量のモンスターを調べるって今すぐじゃないとダメ?」

 

「今日中に終わらせたいかなー。俺達の主神を一人だけにさせるわけにはいかないから」

 

「そっか、イッセー達ってまだ五人なんだね」

 

「ああ、その分、俺達は色々と凄いからな」

 

口の端を吊り上げて自慢げにアイシャ達を一瞥する。

 

「【ロキ・ファミリア】には全て劣るが、負けていないところもあるさ」

 

「例えば?」と問われ、うーんとと楽しそうに発する。

 

「料理?」

 

「冒険するのに関係ないじゃん」

 

「何言ってんだ。遠征に必要なことの一つだろう。一週間も飲まず食わず、ダンジョンの中にいられるのか?」

 

ティオネの突っ込みに言い返す一誠。そう言われティオネはぐうの音も出なくなる。

 

「実力と魔法、武器や防具なんて比べても全然つまらん。そんなこと以外の他に自分が自慢できること、誇りに思えることを競う方が楽しい」

 

頭の後ろに両手を組んで水晶群の天井を見上げる。左眼は眩しげに細め、遠い目をする。

 

「もしかして、戦うこと自体つまらないの?」

 

「いんや、別にそうでもない。まあ、退屈はしているがな。少し刺激が欲しくなる」

 

「―――ほほう、刺激ねぇ?」

 

徐に一誠の背後からアイシャが艶めかしく唇を舐めて近づいた。

 

「だったら、快楽という刺激を味わってみないかい?丁度まだまだ青いアマゾネスの娘どもがいる。お前でアマゾネス流の男を堕とす特技を披露してやろうじゃないか」

 

「―――っ!」

 

落雷に似た衝撃がティオネを襲った。数多の男を堕としてきた経験豊富な人生の先輩が披露してくれる自身の魅力で男を虜にする特技。フィンに熱烈なまでの片思い(ぞっこん)中のティオネにとっては―――とっても知りたいお手本。

 

「・・・・・イッセー?」

 

「なんだ?・・・っておい、なんか怖いぞお前」

 

頭を垂らして近づくティオネから形容し難いプレッシャーを感じる。

 

「―――私と団長が結ばれる為にも、アイシャさんに襲われてくれないかしら?」

 

有り得ないお願いに頬を引き攣らせ「なに、そのお願いはっ?」とティオネに両肩を掴まれている一誠だった。

 

「おー、なんだい。好きな雄がいるのか」

 

「はい、どうすれば男を堕ちるんですか?」

 

「そうだねぇ?やっぱり手っ取り早いのは―――精力剤を片手に夜這いするか、料理に媚薬を混ぜて昂らせて襲って魅了させるかだね」

 

「それは最後の手段として既に考えていますっ。もっと他にないのですか?」

 

「だったら雄に密着して艶やかに誘惑しな。それでも駄目ならば―――」

 

同じアマゾネス同士、会話の花が咲き誇り意気投合をし始める。

 

「おい、お前ら。あのアマゾネスをどうにかしてくれよな。同じ仲間なんだからな」

 

「えーと、ゴメン」

 

「・・・・・私達じゃ、止まらない」

 

「す、すいませんっ」

 

「大人しく喰われろ」

 

頼れない【ロキ・ファミリア】に絶望し、今日中に24階の異変の真相を確かめてやる、と固く決意した。地上ではとある小人族(パルゥム)が全身を震えて突然の悪寒を感じた様子をドワーフと王族(ハイエルフ)の二人に心配されていたのを一誠達は知らない。

 

 

 

 

「つ、疲れる・・・・・」

 

「だらしないわね。それでも神?」

 

「き、君は疲れないのかい?」

 

「慣れたわ」

 

一時の休憩を二柱の神は酒場の隅の一角に座って賄い料理を食べる。それぞれ態度が違い、男神は疲れ切った表情を浮かべているに対して女神は涼しげにだらしない男神を見つめる。

 

「ロキも貴方みたいな態度や表情をしていたわね」

 

「ロキにも仕事をさせたのか。なんて言う女神だ君って奴は」

 

「働かざる者食うべからず。今度はヘルメス辺りにも体験させましょうかしら」

 

腹黒く、飄々としている男神もさせられるのかとディオニュソスは同情の念を抱かずにはいられない。

 

「それで、話って何よ?とある事件が共通点だとか言ったし」

 

「・・・・・ああ、そうだね」

 

ようやく本題に入れると息を一つ零して硝子のような瞳を灰色と青色の双眸を持つ女神に向ける。

 

「随分前に怪物祭(モンスターフィリア)で騒動が起きたね」

 

「・・・・・ええ、そうね」

 

あの時の話を挙げてきた。ディオニュソスの意図を探る為に相槌を打つ。

 

「その時、アテネとアテネの子供が奇妙なモンスターと戦った。―――食人花と」

 

「・・・・・」

 

「私はあの食人モンスター達のことを探っている。いや、探っていた」

 

「―――一ヶ月前、私の団員が殺された」

 

「!」

 

驚くアテネに、ギルドに裏を取れば分かる、とディオニュソスは続ける。

 

「殺した手口は単純だ。正面から近づいて、首を掴み、折った。死亡した三人の団員は即死したようだった」

 

「その子達のLv.は?」

 

「二人はLv.1でそして一人はLv.2だ」

 

ディオニュソスの話が真実ならば、上級冒険者を無造作に殺害できるほどの実力者が凶行に及んだということになる。アテネは頭を回しつつ、話しの続きに耳を傾けた。

 

「子供を殺され黙っていられなかった私は、独自にこの事件の調査を始めた。そして調べていく内に、私の団員は何かを見てしまった為に消されたのではないか、という推理材料を見つけた」

 

「それは?」

 

懐から取り出されディオニュソスの手に嵌めている白い手袋の中には、極彩色の小さく、砕けたような欠片の魔石だった。ソレを見てアテネは綺麗な銀の眉根を寄せた。アテネと一誠しか知らない食人花から採取した魔石と同じと認知したからだ。

 

「これはどこで?」

 

「子供達の遺体とこの魔石があったのは都市東の寂れた街路。そしてあの辺りでは近日中に迫っていた大きなイベントがあった」

 

怪物際(モンスターフィリア)、ね・・・・・」

 

「ああ。偶然かもしれなかったが、因果関係があるのではないかと思ってね。祭りの当日に何かが起きるんじゃないかと、網を張っていたんだ」

 

そして、実際にことは起きた。

 

「・・・・・それが貴方と共通点がある事件、そう言いたかったのね」

 

眷族を殺された男神が奇妙な魔石を発見し、極彩色の魔石を持つモンスターと一戦交えた【ファミリア】だからと納得し、さらに疑問を浮かんでぶつけた。

 

「それを言ったら、あの場にロキの子供達もいたわ。この話をロキにもしないわけ?」

 

「勿論するさ。ただ、最近活躍している君達と接触して繋がりを得ようと思ったんだよ」

 

繋がり・・・・・何も知らず自ら墓穴を掘るような真似をする眼前の男神におかしく思い、くすりと笑う。

 

「やめときなさい私と繋がりを持つのは。私の【ファミリア】は爆弾を抱えているわ」

 

「莫大な借金を抱えているのか?」

 

「それよりももっと複雑で厄介極まりなく、他の神々や子供達に非難されかねない真っ黒なものを抱えているの。最悪、他の【ファミリア】にギルドから討伐の命が出てもおかしくないほどにね」

 

 

 

「ようやく目的地の24階層に来た」

 

「この階層の異変の調査・・・・・・なんだかタダ働きをさせられている気分でしょうがない」

 

「ですが、これ以上の騒ぎが起きれば、他の冒険者様が大変です」

 

「ウィーネ達もどこかにいるのかしらね」

 

「うーん、気付いているかもしれない。でも、私達だけで解決しましょ」

 

【アテネ・ファミリア】。難なく24階層に辿り着いた。

 

 

 

「さーて、何が出てくるんだろうなぁー?」

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