オラリオで自由気ままに過ごすのはダメだろうか(一時完結) 作:ダーク・シリウス
24階層の事件から翌日の―――夜。一誠とアテネは
「何も知らなかったとはいえ、【ヘルメス・ファミリア】と24階層の事件を内密に解決してくれたことを感謝する」
「偶然みたいな感じだったけれど、俺も俺なりに楽しんだから気にしないでくれ。それよりもあの二人みたいな存在がダンジョンにいるなんて驚いたぞ。俺とは異なるモンスターの力を有した人間をさ」
「モンスターの魔石を死者の体に埋め込むことで甦る・・・・・まさに悪魔のやることだ」
全身を覆う黒衣のフェルズから深い息が漏れる。顎に手をやって考える仕草のアテネも己の疑念を漏らした
「ダンジョンの深層・・・・・さらにその奥、『深淵』に何かが潜んでいると思った方がいいのかしら」
「二つの最大派閥ですら踏破したことがない90階層以上にか。リド達もそこまで行ったことがないんだろう?」
「深層へ行けば行くほどモンスターも強くなる。彼等はあくまで『同胞』を探し、共に生きることだけが目的だ」
フェルズの肯定に「だな」と一誠は相槌を打つ。
「59階層も何か異変が起きてるか・・・・・。アイズの様子もおかしかったし、【ロキ・ファミリア】は遠征に行くだろうな」
「貴方はどうする?ロキから貴方の力を借りたいって頼まれているけれど」
「別に断る理由は無いけれど、俺が行くと作業的みたいになるんだよなー」
「そうね。私のイッセーは強いのだからどんな相手にだって負けないもの」
笑みを浮かべ自分のことのように誇りに思うアテネを笑みで返す一誠。
「アテネの子供よ」
ウラノスが口を開き言葉を発する。
「現代の下界の者達でも足を踏み入れたことのないダンジョンの『深層』より更に深い階層に赴き、その目で確かめてほしい」
「
肯定も否定もしないギルドの真の王。ただただ一誠の言葉を真摯に待つだけの老神。素直にそうだと言えばいいのにと心中苦笑いを浮かべて首を縦に振った。
「了解。時間は掛かるだろうがそれでもいいよな?」
「構わない。それ相応の働きをすれば報酬を与えることも約束する」
「ははっ、そうか」
「それと、今回の24階層の件に関して。偶然とはいえ事件に巻き込んでしまった上に解決してくれた【アテネ・ファミリア】にも報酬を出す予定だったんだ」
フェルズから何かの鍵を三つ受け取った。
「ん、三つ?」
「ルルネ・ルーイとアイズ・ヴァレンシュタインの分もある。東区画の
納得しポケットに入れたところで一誠は、ふと思いついたように人差し指を立てながらフェルズに懇願した。
「もう一つ報酬を要求して良いか?金銭的ではなくお願い的なものだけど」
「願い?内容にもよるが・・・・・君の願いはなんだい?」
「
意外な要求にフェルズは言葉を呑んだ。それは今でも現存している者か、それとも既にこの世からいなくなっている者なのか。一誠の願いの意図を掴めないでいるフェルズは問うた。
「どうしてそんな願いを?」
「相手の理解ができるからだ。重罪を起こした理由とその気持ちを純粋に」
「どんな理由であれ、事実が消えないのは理解した上で?」
「ああ、そうだ。一人だけでいいんだ。なんとかできないか?」
両手を合わせて頭まで下げる一誠にとうとうウラノスの意見を仰ぐフェルズ。ジッと一誠を見つめいた蒼色の瞳を瞑目して思考の海に潜ったような姿勢を窺わせる老神は再び蒼色の双眸を開けた。
「
「それでも構わない。ありがとう、ウラノス」
嬉しそうに感謝の言葉と消して欲しいとある【ファミリア】所属していた人物の名前を述べた後、石の神殿から転移魔方陣でアテネと一緒にいなくなった。
「いいのかい?彼のお願いを引き受けて」
「我々に協力してくれる数少ない味方だ。アテネの子供も無理を承知で頼んでいることを分かってはいた」
「ウラノスに直接お願いをする冒険者は初めて見た。異世界のから来たイッセーは色々と驚かせてくれる」
―――さらに翌日。
「・・・・・」
意識がぼんやりと浮上していく。ぼやけた視界の中に映るのは、見慣れた殺風景な自室だったうっすらと瞼が開いていき、アイズは二度三度瞬きを繰り返す。しばらくそのままでいた彼女は、ゆっくりと手を付き、ベッドから身を起こした。未だ覚醒し切っていない頭で周囲を見回す。薄闇は姿を消し部屋は明るい。白いカーテンの隙間からは日の光が滲んで―――真紅の髪の少年が今丁度入ってきた。
「・・・・・え?」
「おっ、丁度良いな。おはよう」
「お、おはよう・・・・・?」
他派閥の
「東区画の
「え、えっと・・・・・?」
「暇があればそこに開けに行くといい。んじゃ、俺はもう一人鍵を渡しに行くから」
そう言ってアイズの部屋から出ていこうとする一誠に制止の声を掛けた。
「一緒に行ってもいい?」
「別に構わないが、まだ朝が早いぞ?」
「大丈夫」
なら、いいぞ。と一誠の了承にアイズは顔を綻ばした。良かったと、安心と嬉しさで口元が緩んだ。
「―――俺が気にするほどでもないか」
「え?」
「いや、何でもない。門の前で待っているからな」
それだけ言い残してアイズの部屋から通路へと姿を消した。扉を閉める一誠を目で追いかけ―――。
―――あれ、どうして外じゃなくて中に?
ふとした疑問だったが、アイズの頭の中から直ぐに消え去って
一誠と出かけをする為、支度するのだった。―――一時間後、とある
自室からアマゾネス姉妹の部屋に何時の間にか寝ている間に移動させられていて、(巨乳)アマゾネスの抱擁されている中で目が覚め、驚きで碧眼を丸くし、(巨乳)アマゾネスまで目を覚まし―――夜這ならぬ朝這しに来てくれたと(勘違い)狂喜して肉体的な意味で襲われる寸前で逃げ出した
「・・・・・待った?」
「いや、それほど待ってもない」
待ち合わせ場所に集い合う二人。歳の近い少年少女はデートの待ち合わせをしているみたいに顔を合わせた。
「さて、行くか」
「うん。それと、お願いがある」
「なんだ?」
「―――私の弟に成って」
「・・・・・呼ばれて来てみれば、その小さな子供は誰なんだ【剣姫】?」
「私の弟」
「・・・・・イッセーだよっ」
【ヘルメス・ファミリア】のホーム前で、呼びだすことができたルルネに用件を言う。
「24階層の件で報酬を貰えるそうなんだ。一緒に行くだろう?」
「ああ、そういうことなんだ。それだったら勿論行くよ。でも、どうして小さくなっているんだ?」
「俺の能力の一つだよ。自分だけじゃなく相手にもできるけど、アイズが俺のこの姿に凄く気に入ってしまって・・・・・年上としての尊厳がっ・・・・・・」
後に一誠は17だと歳を教えるとルルネは18歳だと教えられ、
「なんだ、意外と1つ歳下なんだな。―――私にとっては弟のようなもんじゃん」
「むーっ!」
小さな頬を精一杯不満げに膨らませ、アイズを喜ばす。起こる顔が可愛いと一誠に視線を落とす金目を輝かせて凝視し出す。
「【剣姫】、私にも抱かせてくれないか?」
「・・・・・ちょっとだけ」
物凄く不満そうな顔をするな、と苦笑いを浮かべるルルネの腕の中に一誠が収まった。
「へぇ・・・・・子供を抱きかかえるってこんな感じか。何だか新鮮さを感じるよ」
「・・・・・」
すると、一誠の頭や腰辺りに狐の耳や尻尾が生え出して、嬉しそうに九つの尾が揺れ始める。
「って、へっ?
「こんな姿にもなれるんだよ」
「・・・・・もう、何でもありかよお前って。でも、可愛いなー♪」
それじゃ行こうか、とルルネが一誠を抱きかかえたまま歩きだすので「返して」とせがむアイズ。まるで姉からお気に入りの人形を奪われたような妹の構図であったと遠くから見ていたヘルメスが微笑ましく見ていたのを三人は知らないでいる。
「それにしても、イッセーって強かったんだな。あのオッタルとやりあえるなんてさ」
「元々強いから当然だ。いや、正確に言えば。強い状態で冒険者になったんだ」
「へぇー、そういう奴もいるもんなんだな知らなかったよ」
「―――だからだよ。何時まで経ってもLv.が2にならない原因がさ」
二人に手を繋がれている状態で歩く一誠が暗く落ち込む。誰よりも軽々と『深層』に行けれて、どんな冒険者でもできないことをやってのけて、
「正直、Lv.6になったアイズが羨ましい限りだ。また強くなった証でもあるんだからな」
「・・・・・私はイッセーが羨ましいと思う時があるよ?」
「ほう、どんな時だ?」
「んと・・・・・・」
①物凄く強い ②何時でも強いモンスターと戦える ③弟になってくれるから可愛い※これ大事
「―――アイズの中の俺はどんな評価なのかなんとなーく解ったぞ」
何かを考える仕草のアイズにさめざめと涙を流す一誠。―――自分は脳筋みたいな冒険者だと。その横でルルネは苦笑いを浮かべることしかできない。
「だけど、冒険者にとって強くなるのは当然だよ」
「んなことは解ってるよ。だけど、どうしようのない壁に阻まれて越えられなくなる日はいつか絶対に訪れてくる。今の俺はそんな感じなんだ。あー、オッタルと戦いてぇー・・・・・」
最強の冒険者と戦いたがる冒険者は初めて見る、
ルルネは呆れ混じりで小さくなった一誠を横目で見下ろす。
緩慢的に九つの尾を振り、時折ぴこぴこと動く狐耳を見ていると自然と笑みが浮かんだ。
三人は東区画の
「「「おおっ・・・・・」」」
中にぎっしり詰まっていたのは、赤青緑紫に輝く貴石に、金銀の指輪、装飾された
「
「す、凄い・・・・・」
「すげー、こんな報酬私は初めてだよ」
一誠の開けた金庫には三冊の
「じゃーなぁーっ!」
大量の報酬を抱えて尻尾も振って別れの言葉を投げる
「イッセー、君はこれからどうするの?」
「取り敢えずこれをホームに置いておくのは当然として―――」
―――一人の女性が大通りに歩いていた。三つ編みに結んだ黒髪を揺らしながら擦れ違うヒューマンや
「さてと、どこにいるのやら」
あれも違うこれも違う。人に尋ねたり朝から下心丸出しの中年冒険者に軽くあしらって探すと、人通りが多くなってきた大通りに足を運んでいた。
「うーん、中々見つからないものですね。お酒もなくなってきてしまいましたし」
酒瓶を見つめ、困ったように眉根を寄せては手で腰に括りつけてある亜麻袋越しに金銭を確かめ、これもまたどうしたものかと唸る。何とかオラリオに辿り着いたものの、これから先どうすればいいか、どんな神の派閥に加わろうかと思う
「―――私を買ってくれたあの少年、どこにいるかしら」
危ないところを助けてくれた少年はある意味有名になっている。西辺りでよく見かけるという情報も得て訪れても見つからない。ふと、
「いらっしゃいませー!」
―――○●○―――
【アテネ・ファミリア】のホームに戻っていた一誠は一人自室で
「・・・・・」
一誠は考えている。この世界の魔法で異世界に戻れる魔法を得られないか。それは憧憬以上の想いだった。生き別れになってから、元の世界から異世界に来てしまってから既に一ヶ月以上経過した。帰る手立ても方法も、情報すら無い。
「―――お前ら、どう思う」
虚空に呟くその言葉はテーブルに様々な色の光を発する魔方陣が小さく展開し、巨大だった体が手の平サイズまで縮んだドラゴン達が魔方陣の上に佇む感じで姿を現す。
『何とも言えません。この世界の魔法は転移魔法を知らないとならば、魔法と魔術に関する知識は我々より劣っているかもしれません』
『仮に、元の世界に戻れる魔法を得れたとしても、望んだとおりの世界に戻れるのかすら分からないぞ。現に月日が流れ、過ぎている』
『最悪、こっちの一ヶ月があっちの世界じゃ10年、100年って過ぎてるかもしれねぇーしな』
『君を知る人間達が死んでいるかもしれないしねー』
とある二匹のドラゴンが、一誠の手の中でもみくちゃされて酔ってしまった。
『馬鹿が・・・・・。だが、否定はできんぞ我が主。―――覚悟が必要かもしれん』
「・・・・・ああ、失う覚悟と失っている覚悟ともどもな」
『世知辛いですねぇー』
『魔法は先天系と後天系の二つに大別することができる。先天系は言わずもがな対象の素質、種族の根底に関わるものを指す。古より
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『後天系は『
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『魔法とは興味である。後天系にこと限って言えばこの要素は肝要だ。何事にも関心を抱き、認め、憎み、憧れ、崇め、誓い、渇望するか。引き鉄は常に己の中に介在する。『
【絵】が現れた。顔がある。目がある。鼻がある。口がある。耳がある。人の顔だ。真っ黒の筆跡で編まれ描写された、瞼の閉じた人の顔。紋章の絵。
『欲するなら問え。欲するなら砕け。欲するなら刮目せよ。虚偽を許さない醜悪な鏡はここに用意した』
―――違う。【兵藤一誠の顔】だ。額から上が存在しない一誠の顔面体、
―――違う。【仮面】だ。一誠のもう一つの顔。一誠の知らない、もう一人の
『じゃあ、始めようか』
瞼が開いた。自分自身の声が聞こえた。文字で綴られた隻眼の瞳が
『俺にとって魔法って何だ?』
一握りの人間が持つ奇跡と偶然の神秘だろうな。
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『俺にとって魔法は?』
力だ。強い力。森羅万象、天変地異ですら起こすことが可能な絶対的な力であり奇跡でもあるし天災でもある。
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『俺にとって魔法はどんなものだ?』
決まってる―――。奇跡と人では予想できない
『魔法に何を求める?』
俺が会いたい、俺を会いたい人のもとへ。
俺を待つ家族、待たせている家族のもとへ。
互いが想い焦がれる程の憧憬の如く、その気持ちを応える繋がりを欲しい。
どんな遠い場所でも皆が顔を笑みで浮かべて、出迎えてくれることができる。
皆の前で。皆の隣で。
俺と一緒に今まで生きてきた皆とまた―――。
『それは過去?それとも現在か?』
―――――両方に決まってる。
どっちも俺にとっては大切な時を刻んできた。かけがえのない大切な現実をどっちか一つに選べと言われても俺は両方だと両腕を広げて言い切り、両腕で抱えて大事だと言い張る。
『我儘だなぁ』
・・・・・そうだな。
『だが、それがお前だ』
本の中の
店員が気を利かせてくれたようで、元々隅っこの席に座っていたことが幸いに後から続々とやってくる客達と半ば隔離されたような感じで特に問題は起こらず寝ていられたのだが、起きてすぐ、酒場から出て安い宿にでも止まって一夜過ごそうとした考えを頭の隅で薄鈍色の髪のウエイトレスから発する勘定の額に―――。
―――やばい、全然足らない。
手持ちの所持金の三倍は超えていた。どうやら酒の飲み過ぎで歯止めが利かなくなり、何時の間にか払えない額にまで膨らんでいた。
「どうしました?」
「えーと、ですね。ここのお酒はとても美味しかったですわ」
「はい、当店がお勧めする美味しいお酒ですから。お口に合って何よりです」
実際、この店で美味しいお酒を頂戴と言った手前だ。そして本当に美味しくてしょうがなかった。だから、どんどん口の中に美酒が大蛇のごとく入ってしまった。
「ところで、一つお聞きしたいのですが」
「何でしょうか?」
訪ねつつ、この場からどうやって逃げようかと食い逃げを図る
「赤髪に眼帯を付けた少年―――その少年に会いたいのですけれど、どこに行けば会えるか知ってます?」
そう言われて薄鈍色の髪のウエイトレスのシルは薄らと警戒心が孕んだ薄鈍色の瞳を向けるようになる。
「会ってどうなされるんですか?」
「お礼、を言いたいんですの」
お礼・・・・・?助けられた人なのかな?とシルは心中首を捻って自分が思っているような
「私を買ってくれてとても感謝していると、そう言いたいんですの」
「すみません。私には分かりません」
シルの中で一誠の株が下がった時だった。店内に新たな客がやってきた。
「やべ、寝過ごした」
真紅の髪を掻きながら若干眠たそうな目をした眼帯を付けた少年が入ってきた。
「ミアさん、こんばんわー」
「遅いよ。何遅刻してんだい」
「何時の間にか寝てて気付いたら今の時間帯だったんだよ。遅れた分働くからそれでいいでしょ」
「当然だよ。しっかり働いてもらわないとね」
『豊饒の女主人』の女将と交わす少年は
「見つけましたわ」
「え―――?」
「ようやく会えましたわ。私を買ってくださった主殿」
酒場の店内のど真ん中で少年は
「・・・・・堂々と私のイッセーと抱きつく雌猫には躾が必要のようね・・・・・・?」
灰色と青色の瞳から光がないアテネの感情が籠ってない声と異様なプレッシャーに。神威まで発動するものだから恐れを成した客達が我先へと逃げて行ってしまった為―――。
「オイ」
腕を組んで目に炎を孕ます女将の怒りが目が身に炸裂するのは時間の問題だった。(後で一誠が全代金の二倍を支払ったことで一先ず怒りを治めた)
「・・・・・アテネ。頼むからこれっきりにしてくれよ」
「ううう・・・・・私は何も悪くないのに」
ミアの激怒を食らったアテネが落ち込み、一誠達は
「で、あなたはどこの誰なのかしら?」
ホームに戻り、リド達にも同席してもらった中で尋問が始まる。人類の敵であるモンスターまでいるこの光景はとても異様で神直々による尋問では嘘など付けれない。
「見ての通り、種族は
カルラと名乗る
「カルラ、ね。どうしてイッセーに抱きついたのかしら?」
「私は彼の所有物だからですわ」
「所有物?」
「そのままの意味ですわよ。私という女を買ってくれた殿方に全てを捧げるのは当然ですもの」
自分を買った。それはつまり、人身売買でカルラという人生を違法な方法で己の物にした。一誠に数多の意味深な視線が向けられる。
「イッセー、何時の間に新しい女を買ったんだい?」
「わ、私達だけではダメなんですか?」
「・・・・・ちょっと、軽蔑しました」
「そうね」
間違った認識の仲間達に一誠は狼狽する。身に覚えのない事実に弁解を―――と口を開いた矢先。
「イッセー」
「アテネ」
主神であり女神でもあるアテネが口を開いた。きっと自分を信じるという言葉を発してくれるはずだと期待に胸を膨らませていたのだが、
「そんな最低な子に育てた覚えはないわよ」
ジーザス、お前もかっ!リド達は何のことだかわからないと言った風で首を傾げる。しかし、アテネ達は完全に誤解をしていて―――。
「・・・・・ううう」
物凄くショックを受け、その場で膝を抱えて体を丸くした。
「・・・・・いいですの?落ち込んでしまいましたけれど」
「後であの子からきっちりと訊くからいいわ。今は貴女よ。どうしてイッセーに会いに来たのかその理由を説明しなさい」
二の次だとはっきり述べたアテネにカルラは肩を竦ませた。
「貴女とはこれで二度目なんですけれど。私のことをすっかり忘れているようですわね」
「え?」
「まあ、理由を言えば私はあの子にお礼を言ってなかったものですから。こうしてまたオラリオに来たまでですわ」
アテネとは面識があると言うカルラ。嘘を言っているのではないと悟ったからこそ疑問が浮かぶ。一体どこで、何時であった?と。顎に手をやって記憶の糸口を探ってはみるものの・・・・・思い出せない自分がいる。
「・・・・・ごめんなさい。どうやら本当に貴方のことを忘れているみたいだわ。もしよければどこで出会ったのか教えてくれない?」
―――後悔した。アテネだけではなく、ウィルやレリィー。春姫も一誠を疑ってしまったことを、カルラから発せられた言葉はこうだった。
「私は一度、このオラリオで人身売買に遭っていたんですの。残りの余生は抗えない理不尽な運命に強いられる中で生きていくしかないと他の人達も絶望をしていたところを、あの子、イッセーが私達を買って自由にしてくれましたわ」
「「「「「―――っ!?」」」」」
そしてアテネは思い出した。ロキにしばらく預かってほしいと人身売買に遭った者達の中にカルラがいたことを。
アテネ達の反応に微笑み「思い出したようですわね」と発した。
「理解していただけました?私があの子に合う理由を」
「え、ええ・・・・・疑ってしまって申し訳ないわ」
「別に構いませんの。誤解してしまうことを言ってしまいましたしね」
「誤解・・・・・ああっ!」
バッとアテネは立ち上がってた。そうだ、イッセーがショックを受けた!信用しなかった私達に、イッセーは悲しそうな顔で落ち込んでしまったではないか。
「(どうして、どうして私は疑ってしまった!?あの子が絶対そうするわけがないというのに!)」
直ぐに謝ろうと落ち込んで、「俺は最低な男じゃない・・・・・」といじけてもいる一誠の背中から申し訳なさそうに声を掛けた。
「え、えっと・・・イッセー?」
「・・・・・どうせ俺は人身売買で女を買うほど女が好きな最低の男だよ」
顔すら向けようとしない完全にすねている一誠に当惑するアテネだった。すると黒い
「この状態になった主はちょっとやそっとでは機嫌を直さない。しばらく話しかけるなよ。今更謝ろうとしても今の主は聞く耳を持たない」
青年は苦笑いを浮かべながら一誠の頭をポンポンと優しく触れた。
「困ったものだ。主の機嫌を直せる者などこの世界にはいない。これは自然に時間を掛けて直るのを待つしかないだろう」
「・・・・・私じゃダメだって言うの?」
「我が主を疑った女神が、虫の良い考えをするじゃないか。―――無駄だな」
嘲笑う青年は女神を見下すような視線を送る。アテネだけではない、アイシャ達にもその視線で見回し口を開いた。
「愚か者どもめ」