オラリオで自由気ままに過ごすのはダメだろうか(一時完結)   作:ダーク・シリウス

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英雄譚46

―――冒険者にとって二人の戦い方は異様に見えるだろう。冒険者にとって二人の戦いは手に汗を握るだろう。

 

冒険者にとって対人戦でここまで本気で、全力で戦うことは滅多にない。

 

二人の戦いは冒険者同士の戦いの常識を遥かに凌駕し、逸脱していた。

 

これが―――――戦いなのかと目を疑うほどに。

 

「・・・・・」

 

一誠と川神百代は拳と足、気による技で既に五分も苛烈で怒涛の戦闘を繰り広げていた。

アイズや椿が見たことないほどの激しい戦いぶり。あの一誠と本気で渡り合えている川神百代も、本当に強いと感じる。

 

「はははっ!はははははっ!強くなっているじゃないか一誠!力も速さも前より段違いだっ!」

 

「どうやらお互い様のようだがな!ああ、久し振りだ。全力で戦うのってのは!」

 

衝突し合うだけで破裂音が轟き、衝撃波も半端ではない。どちらも相手の戦い方を熟知しているせいか、戦闘が終わる気配は微塵も感じない。

 

「「嵐脚」」

 

上空と地上から、一誠と川神百代が爆発的な脚力で足を振るった。

 

「龍崩!」

 

「天虎!」

 

鎌風を起こし、飛ぶ斬撃がそれぞれ龍と虎となり、直撃して相殺された。だが、二人は笑みを浮かべて拳を突き出し合い、嵐のような攻防を続ける。

 

「(私でも・・・・・あそこまでイッセーに本気を出すことができなかった)」

 

一誠の家族だからか、それとも一誠と一緒に修行をしたのだからか・・・・・。どうしたら自分もあんな風になれるのか、強さの違いを見せ付けられ、アイズは強さの頂を求める貪欲な憧憬と川神百代に対する嫉妬、自分(アイズ)の弱さに怒りと悲しみを覚えた時。

 

「イッセェエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!!」

 

誰かが、女性の声が聞こえ出し、キィイイイインッと甲高いと五月蠅い音が聞こえ出す。川神百代と戦っていた一誠は目を丸くし、まさか、と―――空の向こうから落ちてくる、いや、飛んでくる影に意識を向けた直後。

 

「会いたかったデエエエエエエエエエエエエエエスッッッ!!!!!」

 

「こ、金剛ぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」

 

アイズの知識にある極東の服装を着た少女が満面の笑みを浮かべたまま素っ頓狂な声を発し驚く一誠の鳩尾へ頭から突っ込んで抱きつき、地面と激突し土煙が生じる。突然のことでアイズや椿は目をまん丸くしてただ呆然と立ち尽くす。土煙がやがて晴れ、一誠と空から降って来た少女の様子が―――。

 

「イッセー!イッセー!久し振りデース!会いたかったデスヨー!もう離しまセーン!」

 

「ちょっ、ま、って、今の、マジ、効いた・・・・・というか、おもっ・・・・・・」

 

一誠にまたがるように抱きつく、何やら体に大きな鉄の塊を身に付けている少女が全身で喜びを露わにしているではないか。逆に一誠は重苦しそうな表情でとても嬉しい感動の再会の光景とは思えない。

 

「おい金剛!私と一誠の再会の戦いを邪魔するな!」

 

戦闘を邪魔され、ご機嫌が斜めな川神百代は金剛と呼んだ少女に文句を飛ばすが金剛はそれには異議があると言い返した。

 

「百代ばかりズルイデース!皆だって、イッセーと会いたがっているんデス。何時までも独占は許せませんヨッ!」

 

「いや、今の一誠は敵だぞ?倒さないと都市の侵攻が達成できじゃないか」

 

「それはついでのはずデース!イッセーを見つけたら皆に教えると決めたことじゃないデスカー!」

 

ぷりぷりと怒る金剛と正論のようで言い返す言葉が見つからない川神百代。その間、アイズは一誠を救出。

 

「大丈夫・・・・・?」

 

「た、助かった・・・・・しかし、本当に来ていたなんて。あの二人・・・・・大丈夫か」

 

捕まった神と冒険者の救出を任されているアスフィとリューの身の安全を心配する。本陣にいるかもしれない他の家族達に悟られず作戦を実行するのは至難の業と。

 

 

 

遥か上空から飛翔靴(タラリア)でリューを抱え飛んでいるアスフィも―――空中戦に強いられていた。

 

「金剛お姉さまを追いかけていたら、まさか空に敵がいたとは!」

 

「榛名、全力で倒します!」

 

「待てぇー!」

 

体に鉄の塊を背負って飛翔する三人の少女達に追い回されていた。どういう原理であんなことができるのかと理解できない稀代の魔道具作製者(アイテムメイカー)は必死に逃げ回っていた。砲門から飛び出す鉄の塊が二人のマントを打ち抜いたことで当たれば重症という危険を覚え、逃げ惑っている最中だ。

 

「見たことがない武装を・・・・・何なんですか彼女達はっ!」

 

「【―――今は遠き森の空。無窮の夜天に(ちりば)む無限の星々】」

 

信じられない現実を目の当たりにしながらも飛翔を続けるアスフィの腕の中で起死回生の魔法を奏でていくリュー。

 

「【愚かな我が声に応じ、今一度星火の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を】」

 

高速で接近してくる少女達に対し、不規則な動きで照射を定めさせないと必死にリューの詠唱が終わるまで飛ぶ味方に信頼して冷静に謡い続ける。

 

「【来たれ、さすらう風、流浪の旅人(ともがら)】」

 

「歌・・・・・?」

 

少女達はリューの口から聞こえる言葉に怪訝な気持ちを抱く。

 

「【空を渡り荒野を駆け、何者よりも()く走れ―――】」

 

「―――まさかっ」

 

一人の少女がリューの紡ぐ言葉の意図を

 

「【―――星屑の光を宿し敵を討て】!」

 

間もなく詠唱が歓声を遂げる。アスフィは逃げ回るのを止め、リューを三人に向けて横薙ぎに投げ飛ばした。

 

「榛名、比叡!退避――――!」

 

「「えっ?」」

 

気付いた時はもう遅かった。動きを止めてしまった相手は動かない的にも等しい。澄んだ空色の双眸は三人を見据える。

 

「【ルミノス・ウィンド】!!」

 

緑風を纏った無数の大光玉。リューの周囲から生まれ、一斉放火された星屑の魔法が三人の少女達に次々と叩きこまれる。少女達の悲鳴が上がり、体に纏う鉄の塊も原型を崩し地に落ちていく。

 

「(このまま・・・・・!)」

 

魔力が尽きない限り星屑の魔法は消えない。自由落下をし王国(ラキア)軍の本陣にも魔法の脅威が襲う。

 

「て、敵襲ーっ!?」

 

奇襲に悲鳴染みた叫びを発する兵士。継続している魔法の攻撃は天幕や物資、兵士に直撃して阿鼻叫喚に包まれるのはもはや時間の問題だった。リューに続いて落ちてくるアスフィも(ホルスター)から瓶を取り出し、周囲へ大きくばら撒きつつ―――爆撃を行う。辺りは瞬く間に火の海と化する。

 

「・・・・・当初の作戦とは大きく異なって、やり過ぎてしまった」

 

魔力を精神薬(ポーション)で回復し、捕えられている神と冒険者の解放をと、傍に降り立つアスフィと探そうと動き始める―――その直後。

 

「やってくれたな」

 

凛とした声が炎の海から聞こえる。敵―――と察し声がした方へ振り返り警戒した。

 

「まさか、イッセーではなく、名も知らぬお前達二人だけで本陣の奇襲とは思いもしなかった」

 

現れるのは赤い帽子とマント、金髪の長髪に涼やかな青色の双眸、白いミニスカートを除いて緑を基調とした肘まである手袋やブーツ、豊満な胸を覆う緑の着物以外に健康的な肌を、ヘソを覗かせる・・・・・潔癖性のエルフとは思えない出で立ちで現れた―――耳の先が尖った象徴の種族、女性エルフが片手に杖を持って現れた。

 

「期待し、奇襲を許してしまった自分に七十点の減点だな。戒めよう」

 

「エルフ・・・・・」

 

「いま、イッセーと?」

 

イッセーとどんな関係、繋がりがあるのか・・・・・。しかし、相手は敵として現れたようだ。

 

「お前達の狙いは・・・・・・捕虜の解放か?」

 

「だとしたら、どうすると?」

 

「お前達を捕縛するだけだ」

 

エルフが二人に向かって飛び出す。同じエルフとしてリューが応戦しにかかる。杖と木刀が、ぶつかり合う。

 

「―――――っ」

 

たった一合で相手の力を把握してしまった。

 

「(Lv.4、いや、5―――!?)この者は私がやります。その隙に」

 

アスフィに捕虜の解放を任せながらLv.4たる己の力にも負けない力強さを感じる。任された彼女は黒い兜を被って姿を暗ます。

 

「ふっ!」

 

杖を手足のごとく振るい、拳と蹴りも織り交ぜたその洪水のような攻撃を難なく繰り出すエルフは、今までリューが相手をしてきた冒険者達よりも桁違いな強さだった。気を張り詰め、木刀から一対の小太刀に持ち替え撃破を望む。

 

縦横無尽、鋭く駆け回りながら一撃離脱(ヒットアンドウェー)を繰り返すリューの動きを完璧に捉え、一歩もその場から動かず杖で防いだり体を反らし、かわし、受け流したりと冷静な防御は鉄壁であった。

 

「貴女は、イッセーのなんですか」

 

堅い守りを崩せず、鍔迫り合いをしたところで問いの言葉を投げる。エルフは表情を変えず、リューを押し飛ばして距離を置き答えた。その時、近くで爆発音が聞こえた。

 

「家族だ」

 

「家族・・・・・?」

 

「―――私は、私達はイッセーと同じ世界から、異世界から来た者だと言えば理解できるか」

 

エルフが答え直後。周囲から人の気配を感じ始めた。そして異世界から来た者だと告げられ、驚愕の色を顔に浮かべる。

 

「イッセーの、家族・・・・・」

 

「どうやら、お前はイッセーと関わりある者だな」

 

猫耳と尻尾を生やす二人の女性、小さな体の二人の少女がリューを囲みだす。

 

「これは・・・・・・っ」

 

「ほい、お仲間さんでしょ?」

 

猫人(キャットピープル)が何かをリューへ放り投げた。それが何なのか分かれば澄んだ空色の目が大きく見張った。外傷はないが、姿を消していたはずのアスフィがリューの足元に蹲っていた。

 

「駄目駄目、姿を消そうとも気でどこにいるかすぐに分かっちゃうにゃん。イッセーに教えてもらわなかった?」

 

「・・・・・さっきの爆発は、貴女達との戦闘だったのですか」

 

「んー、ちょっと違うにゃん。まあ、もうここにはいられなくなったから一緒に来てもらうにゃん」

 

意味深なことを言う獣人の女性にこの場から脱することができない事を悟りつつ、「・・・・・どういうことですか」と問うたところ、猫人(キャットピープル)は朗らかに答える。

 

「だって、捕虜を閉じ込めていた檻が爆発で吹っ飛んじゃったにゃん。だから、捕虜が逃げちゃったら私達大変だからねー」

 

「そこかーっ!」

 

「ヒャハハハッ!オレっちをとっ捕まえようなんてまだまだだぜぃっ!」

 

この場にまたしても現れる一組。燃え盛る陣地の中でアマゾネスと少女が追いかけ、追いかけられ、リュー達のところに通りかかったのだ。

 

「あれ、黒歌達。まーだこんなところにいたのかよ?他の連中はイッセーのところに行ってしまったぜぃ?」

 

「あー!【ヘルメス・ファミリア】の人と・・・・・誰だっけ?」

 

アマゾネス、ティオナが見覚えのある冒険者と見知らぬ冒険者を見つけ、「もしかしてあたし達を助けに来てくれたのー?」と問いを掛けた。リューは首肯する。

 

「ええ、そうなんですが大丈夫ですか?」

 

「すっごく熱かったよー!でも、おかげで檻から脱出できたんだけどねー。ところで、イッセーは?アイズとリヴェリアも一緒?」

 

「イッセー達はここにはいません。敵と戦っているはずです」

 

「そっかー!嬉しいなー!」と天真爛漫にティオナは満面の笑みを浮かべた。

 

「よーし、武器ないけどあたしも戦うよ!」

 

「助かります。ですが、気を付けて。かなりの強者です」

 

第一級冒険者の介入により少しばかり心に余裕ができたリュー。武器がなくとも戦力となるティオナは心強いのだ。小太刀を構えるリューに各党で挑もうとするティオナの二人に対し、

 

「いや、もう戦う理由は無くなった」

 

エルフの女性が戦意を収め踵返しだす。

 

「我々の本当の目的は、家族との再会。お前達と戦闘することなどついでなのだ」

 

とても聞き捨てにならない言葉を放つエルフに「んなっ!?」と目を丸くするティオナ。リューも厳しい目つきで警戒し、戦闘の意志を身体で表現する。

 

「まだ戦いの決着はついていません」

 

「言ったはずだ。我々はイッセーとの再会を優先にしていると。ラキアの王はお前達の自由にしろ」

 

「にゃはは、この世界の概念と情報を調べるのに必要だったから協力しただけだけど、イッセーが目の前にいるなら脳筋バカな神なんてどうでもいいにゃん」

 

「そーいうこった。それでも納得できなきゃ、また今度相手してやるぜぃ」

 

戦争など一誠の家族にとっては最初からどうでもよく興味もない。優先すべき事は一誠、家族との再会。エルフの女性を始め、美猴達も踵返して火の海の向こうへ姿を消す。

 

「・・・・・イッセーの家族って、凄い人達が一杯だね」

 

「・・・・・そうですね。ですが、あちらも優先があるようにこちらも優先すべき事があります。他の捕虜の解放をしましょう」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・煙が上がっている」

 

「成功したのか・・・・・?」

 

「分からないな。取り敢えず、俺達は俺達で、目の前の敵を倒そう」

 

空に立ち昇る黒煙が見えるようになってから数分。言い合いをしていた川神百代と金剛も本陣に奇襲されたのだと察したようだが、意識は一誠の方へ向けられていて慌てた様子を窺わせない。

 

「二人ともいいのか?本陣がヤバい状態だぞ」

 

問うと、二人は顔を見合わせ問題ないと首肯した。

 

「ああ、もうどうでもいいんだ。ラキアの兵達は皆逃げたし、本陣にいる連中も私達がやられたと思っているだろうな」

 

「そもそも、イッセーを見つけたら私達はイッセーと合流して、後は好き勝手にやらせる考えだったのデース」

 

そう言う手はずだったのか、皆らしいなーと一誠は家族達の考えに少々苦笑いを浮かべると、

 

「・・・・・イッセー」

 

アイズの視線は一誠に、一誠の肩に何時の間にか太股を乗せ、真紅の頭を抱え込むように両腕を回している四肢を覗かせる濡羽色の長髪と同じ色の瞳、黒いゴスロリの服を着ている幼女に向けられた。第一級冒険者の二人に気付かれず肩車の状態で乗っていた幼女はただただ濡羽色の双眸を真紅の頭、一誠に視線を注ぎこむ。

 

「イッセー・・・・・久しい」

 

「い、何時の間に・・・・・」

 

第一級冒険者に気付かれず、アイズと椿より強い一誠の肩を難なく乗る幼女。彼ですら気付かなかったようで目を張っていた。川神百代と金剛、一誠達三人が対峙していると、この場に魔方陣が現れる。皆―――。

 

「お久しぶりでございます、一誠様・・・・・・」

 

「いっくん!やっと、やっと会えたよ!」

 

「久し振りだな」

 

「変わりないようで何よりです」

 

一誠に話しかけ集う少女、女性、少年、青年達。揃いも揃って一誠だけが知っている人物達が雁首揃えていることに動揺と当惑、歓喜の気持ちが混ざった。

 

「・・・・・よもや、あいつら全員・・・・・異世界から来たイッセーの家族と言う奴らか?」

 

「ああ。全員が全員、強い訳でも戦える訳でもないが、強いぞ。第一級冒険者と同等の力、それ以上の力を持っている」

 

「・・・・・」

 

流石に分が悪すぎる。と悟るアイズ。見る限り、一誠の家族はただ者ではない様子。エルフもいて、猫人(キャットピープル)がいて・・・・・。

 

「イッセーの世界にも、エルフと猫人(キャットピープル)がいるんだね」

 

「ん?違うぞ、異世界じゃあ猫魈って種族なんだ」

 

「変わった名前じゃの。見た目は同じなのに」

 

そんな悠長なことはもう言ってられないのだが、一誠の家族は敵になっている時点で勝ち目がなくとも戦わなくてはいけない。

 

「オーフィス、俺の敵になってしまうのか?」

 

「我、戦わない。イッセーを探しに来た。皆もそう」

 

「じゃあ、オラリオという都市に侵攻する気はないんだな?」

 

「・・・・・」

 

おい、と一番重要なところを答え辛そうに幼女、オーフィスは口を閉ざす。

 

「・・・・・リーラ」

 

「はい」

 

家政婦(メイド)服を身に包み、銀の長髪、琥珀の双眸の女性が一誠の呼び掛けに応じる。

 

「俺の敵になるつもりがないなら、オラリオに侵攻はしないでくれるか?」

 

「・・・・・」

 

逡巡するリーラ。家族と戦ってしまうことになるのか・・・・・と、少し残念そうに体の力を抜いてオラリオに住むものとして守らなければならない意志の炎を宿し、戦意を体で示す。

 

「しょうがない。負ける戦いでも、やるぞ」

 

「そうでなくてはな。イッセーの家族の力、手前は興味あるぞ」

 

「うん・・・・・」

 

覚悟を決めた一誠、そして譲れない戦いに負けられないと武器を構えるアイズと椿。一誠の家族も少々残念そうに戦う姿勢に構えた。

 

「待って下さい」

 

リーラが両者に待ったをかけた。彼女の顔の傍に小型の魔方陣が展開していて、何かを伝えられているのか耳を傾けていた。

 

「・・・・・一誠様。我々の敗北のようです」

 

「ああ・・・・・そうか。あの二人、やってくれたようだな」

 

突然の敗北宣言に一誠は安堵で息を洩らす。『あの二人』と言う単語にアイズと椿は理解し、作戦が達成できたのだろうと悟った。

 

「リーラさん、どういうこと?」

 

「捕虜が何者かにより解放。そして本陣で大暴れされてアレス様が捕まってしまいました。二手に分かれての作戦を考えていたのでしょう一誠様?」

 

背後にいる少女の問いかけにリーラは事情を説明し、本陣に捉えていた最大派閥の冒険者達の解放を許してしまった結果、一誠の家族でしかまともに戦えない相手をラキアの軍隊はあっという間に蹂躙され、主神のアレスはあっさり捕まえられたことで戦争は終わった。

 

「あー・・・・・全員で行かない方が良かったのかもね」

 

「もしもの為、一誠と戦うことになれば私達しか相手にできないもんな」

 

「一誠の作戦勝ちってところね」

 

「でも、戦わずに済んで良かったです・・・・・」

 

一誠の家族は苦笑いを浮かべ、嬉しそうに笑い、一誠に近づく。一誠も戦いが終わったことで気を緩め、再会の喜びを噛み締める。

 

「皆・・・・・久し振り。皆とまた会えて本当に良か―――」

 

「一誠君~!」

 

「一誠っ!」

 

「一誠様!」

 

一斉に一誠へ抱きつく少女達。流石にこの大人数で抱き付かれれば―――案の定、一誠は押し倒された。

 

「もう、絶対に離れないからね!」

 

「大好きだよ一誠君!」

 

「これだけ私達を心配させたんだ。絶対に許さないからな!」

 

多くの女性に起こされ、全身に抱きつかれ、喜びを体と言葉で表現してくる彼女達に一誠は心から受け入れ笑う。

 

「これは・・・・・喜ぶべきかの」

 

「うん、きっと・・・・・」

 

「しかし、これはまたイッセーに恋する者達が一気に増えたわけだが【剣姫】。負けておれんぞ?独占は覚悟した方がいい」

 

「・・・・・負けない」

 

温かく見守るも、独占されることをアイズは良しとしなかった。しかし、長年離れ離れになっていたしたいい家族達との再会の会合を邪魔する気はしない。

 

「よかったね・・・・・」

 

大切なものがまた触れられて。今度は・・・・・自分の番だ、と心中強い決意をする少女を椿は知る由もない。

 

―――○●○―――

 

一誠とアイズ、椿、アスフィとリューがオラリオに帰還した後、王国(ラキア)軍との戦争は速やかに終結した。迂闊にオラリオ近辺に侵入し、最大派閥の冒険者、特に第一級冒険者を解放されたアレス達は、成す術もなくあっという間に大暴れを許して引っ捕えられたのである。一誠の家族、異世界からやって来た者達も抵抗もなく捕まってはあっさりと【アテネ・ファミリア】に引き取られた。そして軍神の異名を持つ男神はギルド本部の前庭へと連行された。

 

「ロキ、ロキ達を助けたのは俺達だからアレスの処罰は俺に任せてくれて構わないよな?」

 

「ぐっ・・・・・好きにしたらええっ」

 

最大派閥の神々と冒険者達、そしてギルドは【アテネ・ファミリア】に多大な恩と借りを作ったので一誠に頭が上がらない。一誠はアレスを見つめ、処罰を下した。

 

「俺の家族が世話になったから天界送還はしないよ。だけど、六度もオラリオに侵攻するぐらいなら―――ラキア王国は『迷宮都市』オラリオに属しろ。そうすれば眷族も成長するだろうからアレスにとっては悪くない話しだろう?」

 

「な、何を言っておるのだ貴様!?」

 

「ああー、嫌なら別にいいぞ?今度は俺からお前の王国を襲撃して滅ぼすだけだから」

 

数Mの龍と化してアレスを脅す。彼のドラゴンに逆らう力は王国(ラキア)に存在しない。絶対的な力の前に屈する軍神は血の涙を流し受け入れた。

 

 

後日。西方にあるはずの王国(ラキア)が丸ごとオラリオの隣に接する形で移動していて、都市と王国が隣接する前代未聞な事件が起きたのは遠くない未来だった。当然のように混乱は起きたがただ一人、とある副官だけは念願だった望みが叶うことができて大層嬉しそうであったのは別の話。

 

 

「―――皆紹介するよ。俺の主神、女神アテネだ」

 

「よろしくね皆。イッセーを好きな者同士、仲良くしたいわ。いえ、しましょう」

 

秘密裏に交わされた強制任務(ミッション)の報酬を思うがままに要求し、【ファミリア】の再結成を果たすことができた。アテネは喜び、春姫達も安心した。一誠の家族達を受け入れたことで旅は中止になったが、それでも満足であった。

 

「さあ、もう一度やり直すぞ。【アテネ・ファミリア】の活動を!」

 

「ええ、イッセー!」

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