オラリオで自由気ままに過ごすのはダメだろうか(一時完結)   作:ダーク・シリウス

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冒険譚5

翌朝。アイズとリヴェリア、今度はティオナも加わって『豊饒の女主人』の酒場の前に現れた。

 

「いらっしゃいいらっしゃーい!今回の朝弁当は肉たっぷりの弁当と野菜たっぷりのお弁当、肉と野菜が詰まった弁当に加わって『ソーマ』の酒付きだ!それぞれ同じ三百二十ヴァリス!」

 

三つの弁当と酒瓶を販売している一誠をまた見掛け、買い求める客達が殺到する光景を目の当たりにする。

 

「すごっ・・・・・」

 

「ああ、昨日もこんな風だったぞ」

 

「・・・・・商売上手」

 

何気に朱色の髪の女性も交じっていたなんて事実は無視する。というかいてたまるかという話だった。

 

「おはよう、三人とも」

 

弁当が完売し終えたことで一息つけた一誠は待っていた三人に挨拶の言葉を送る。

 

「おはよー!イッセーって朝早くからこんなことしているんだ?」

 

「週に三日ぐらい毎朝こんな感じでしてるぞ」

 

「へぇー、じゃあ、あたしも今度買いに行こうかなー。お酒はロキに上げるけど」

 

「そのロキらしい女性がいたんだが。まぁ、他人の空似だろう」

 

出来ればそうあって欲しいと切に願うリヴェリアだった。居ても悪くは無いのだが、主神としての貫禄が表でまでなくなってほしくはないのだった。

 

「む?まだ一つ残っているがどうしてだ?」

 

ポツンと残っている弁当箱。中身は何なのか分からないが、あれだけの客がいて一つだけ残っているなど逆に違和感を感じる。

 

「ああ、これは懇意的な意味で残しているんだ。と、話している間に来たな」

 

誰が?と思ったら一誠は顔を明後日の方へ向けて手を振り始めた。三人はその方角へ視線を向けると白い髪に赤い双眸の若い冒険者が近づいてきた。

 

「ほい、今日も頑張れよ」

 

「あ、はい、ありがとうございます。で、ではぁー!」

 

脱兎のごとく、若い冒険者はアイズを見やるやこの場から逃げるようにして白亜の摩天楼へと駈け出した。

 

「あの子・・・・・」

 

「兎みたいだからつい構いたくなるんだよな。まぁ、それはさておき。情報の共有、だっけ?」

 

本題に入る一誠。肯定と頷くリヴェリア、それからアイズとティオナにも視界に入れ手招きする。

 

「ここじゃなんだから、俺とアテネの部屋で話そうか」

 

「それは・・・・・いいのか?」

 

「本当ならそっちの主神ロキも連れて来てくれれば話はスムーズに進めれそうなんだがな」

 

いない者はしょうがないと、三人を店内へ招き入れ二階の借りている一室へ案内する。

中に入ればテーブルに肘を突いて羊皮紙を見つめているアテネが席に座っていた。酒場の中とは思えない整った部屋でアイズとティオナは好奇心で周囲を見渡す。

 

「アテネ」

 

「ええ、いらっしゃい。ロキの子供達。イッセーから聞いているわよ。お互いの情報を共有したいって?」

 

「はい、その通りです。こちらも我ら【ロキ・ファミリア】幹部の【ステイタス】が記された羊皮紙も持参しております」

 

アイズの肩に下げている鞄に一瞥するとアイズは鞄から数枚分の羊皮紙を取り出してリヴェリアに手渡す。

 

「先に御拝見を」

 

「わかったわ」

 

【ロキ・ファミリア】の幹部の【ステイタス】が記された羊皮紙を受け取り、ふむふむとアテネの隣で一誠も覗きこんだ。

 

「あなた達の【ステイタス】を見ると、イッセーはやっぱり異常ね。イッセー、今更新しちゃいましょう」

 

「大して上がっていないと思うけどな」

 

主神の意向に従い、一誠は徐に上着を脱いで上半身だけ裸になった。その時、アイズがすすす、と【ステイタス】更新の瞬間を逃さないとアテネと一誠の傍に寄ろうとしたが。

 

「不謹慎よ。見ちゃダメ」

 

「だそうだ」

 

「・・・・・」

 

「あはは、アイズが物凄く落ち込んでる」

 

他【ファミリア】の更新の光景を見れずに、気になる異性の強さの秘訣を知ることができず、シュンと落ち込む。

アテネが一誠の腰辺りに跨り、【神の血(イコル)】で隠蔽していた【ステイタス】の『(ロック)』を解除し『神の恩恵(ファルナ)』を与えられた同時に刻まれる【神聖文字(ヒエログリフ)】、【ステイタス】に一誠が今まで経験してきた結果を成長の糧へと変える。

 

「・・・・・うーん、全然増えてないわね」

 

「だろうな」

 

 

イッセー

 

【ステイタス】

 

Lv・1

 

力 :SSS2001     

 

耐久:S912

 

器用:SS1100

 

敏捷:SSS2009

 

魔力:SSSS3000

 

《魔法》

 

【シン・ベル・ワン・バオウ・ザケルガ】

 

・広域攻撃魔法

 

・雷属性

 

 

《スキル》

 

【恋愛一途】

 

・早熟する。

 

・懸想が続く限り効果維持。

 

・懸想の丈と異性との相思相愛の情を続けることで効果向上。

 

【魅了成就】

 

・魅了する。

 

・異性と同性、特定の者と交流し続ける限り効果維持。

 

・老若男女問わず関係が良好、異性と触れ合い魅了し続けることで効果上昇。

 

 

「「「・・・・・っ!?」」」

 

・・・・・限界、突破・・・・・。とアイズは漏らした。示されたさらなる高みへの可能性を一誠は見出させた。

それはアイズが最も目指していたという領域に等しい。

 

「Lv.1でここまで全能力値(アビリティ)を昇華させることができていたのか・・・・・」

 

「うわー!うわー!すごーい!」

 

感嘆と驚嘆が混じった言葉がリヴェリアとティオナの口から発する。そして初めて見聞するレアスキルによる全能力値(アビリティ)限界突破だろう。それに加えてどんな方法でここまで昇華したのかアイズは新たに貪欲に知りたくなった。

 

「・・・・・教えて」

 

「うん?」

 

「どうやったら、ここまで限界を超えられるのかを・・・・・」

 

「あたしも!あたしも知りたい!」

 

「気にならないと言うのは嘘になるな」

 

アイズの渇望に同感とティオナとリヴェリアも強さの秘訣を懇願した。対して一誠は・・・・・。

 

「普通に鍛練や修行をしていただけだが」

 

と、あっさり答えた。三人は「え、それだけ?」とキョトンとした顔で一誠を見つめる。

 

「え、それでここまでオールとオーバーSになれるもんなの?というか、イッセーは冒険者になってどのぐらい?」

 

「えっと・・・・・半月?」

 

「違うわ。一ヶ月よ」

 

一ヶ月―――。立った一ヶ月でアビリティの限界突破を超えていた。とてもダンジョンのモンスターで評価S異常は成れるものではない。もっと別の何か、常識を超えるようなことでもない限り―――。三人は―――当然知りたいに決まっている。

 

「イッセー、どんな修行してるの?」

 

「気になるのか?」

 

「うん、できれば体験してみたい」

 

アイズの金の双眸がキラーンと怪しく煌めいた。そんなアイズを知ってか知らずか、ティオナが挙手して参加を求めた。

 

「じゃあじゃあ、あたしも一緒にしていい?」

 

「は?」

 

「私も見させてもらうぞ」

 

アイズやリヴェリアまでも。三者三様。一誠の強さの秘密を知りたいと心が一つになった。最初は唖然こそしたが、一誠は何時になく真剣な面持ちで問うた。

 

「・・・・・本気で言っているのか?」

 

「本気も本気!オーバーSなんて聞いたこともないんだもん!いったいどうやったら能力値(アビリティ)オールとオーバーSに出来るのか知りたい!」 

 

両手を胸の前でぐっと握りしめ興奮を醸し出させるティオナ。アイズに至っては一誠の横に移動して、金目をジーと見つめてくる始末。隻眼の金目を王族(ハイエルフ)にも向け、重大さを伝える。

 

「【アテネ・ファミリア】しか知られちゃならない結構企業秘密もいいところなんだけど」

 

「なら、私達だけでも構わないからその企業秘密とやらを教えてくれ。ロキやフィン達にも秘密にする。もしも秘密が漏洩した場合、この二人の責任も含めて私はお前に絶対の服従を誓おう」

 

「・・・・・」

 

責任感はある。いや、元々持ち合せているだろう。翡翠の瞳の奥は興味と好奇心の光が宿っていた。ティオナの天真爛漫と興奮、アイズの知りたいと渇望と貪欲とは違う。

 

「絶対服従って、仮にもそうなったら私達の【ファミリア】に転属することも受け入れるってことかしら?」

 

アテネがリヴェリアに問うた。

 

「イッセーの秘密は【ステイタス】の漏洩よりもよっぽど重大。オラリオにいられなくなるほどの秘密でもあるのよ?あなたの言う責任はとても軽くは無いわ」

 

リヴェリアの真意を図ろうとしているのか、真っ直ぐ灰色と青色の双眸を翡翠の瞳を覗き込むように向ける。

アイズとティオナは息を殺し、二人の会話のやり取りを見守る。

 

「・・・・・神アテネに誓います」

 

たったそれだけでリヴェリアの気持ちを汲んだアテネ。上目遣いで心地の良い温もりを今でも感じさせてくれる己の眷属に言う。

 

「イッセー、あなたの秘密を彼女達に打ち明けなさい。取り敢えず、信用はできるから」

 

「・・・・・わかったよ」

 

手を明後日の方へ伸ばしたと思えば、一誠の手の中にどこからともなく飛来したスノーグローブが収まった。

 

「それは・・・・・?」

 

アイズの質問に答えず床にソレを置くとスノーグローブを中心にして魔方陣が展開した。

 

「中に入れば分かるさ。さて、行くぞ」

 

スノーグローブから迸る光に呑みこまれ、視界はあっという間に白く塗り潰された―――。

 

―――○●○―――

 

ザザーン・・・・・ザザーン・・・・・。

 

潮の香り、穏やかな波打ちを立てる海、白い砂浜に青い空、自然豊かな森に囲まれる白い巨城と離れて繋がっている巨塔に一誠達五人が佇んでいた。目をパチクリと瞬き、周囲を忙しなく動かすティオナが疑問を漏らす。

 

「え?え?ここって?」

 

「あの玉の中だ」

 

「あの玉の中って、どうやって玉の中に入ったの?」

 

「特殊な魔法の結界と時空間の応用で作製した魔道具(マジックアイテム)とでも思ってくれ」

 

既にどこかの気苦労人の女性冒険者を超えているような魔道具(マジックアイテム)ではないか?とリヴェリアは思わずにはいられなかった。塔の中から出て白い巨城と繋がっている通路に出る一誠とアテネの後を追うと、アイズ達三人の視界に映り込む景色が感嘆させる程だった。

 

「とても玉の中にいるとは思えないなー」

 

「自然豊かな森があるのだな。行ってみたいものだ」

 

「すごい」

 

通路を歩いていると途中に壁がない異なる円状の足場の場所で一誠とアテネが立ち止まった。

 

「この辺りでいいか」

 

「え、なにが?」

 

問うた矢先、アイズ達の足元に小さな魔方陣が展開した。一誠は三人に振り返り、

 

「お前らを砂浜まで吹っ飛ばす位置だよ」

 

そう言った直後。ドンッ!と三人を魔方陣が砂浜まで吹き飛ばしたのだった。

 

「ええええええええええええええええええええええええっ!?」

 

「・・・・・やはり、あいつには常識など通用しないな」

 

「跳んでる・・・・・」

 

ヒューとあっという間に白い砂浜が見えだし、アイズとティオナ、リヴェリアは着地態勢に入る。

そして、華麗に砂浜を少し滑りながらでの着地を成功した同時に拍手が聞こえてくる。

 

「おー、駄目だったら助けようとは思ったけど、中々どうして」

 

「い、何時の間に!?」

 

アイズ達の目の前にアテネと拍手する一誠が立っていた。白い巨塔から5Kは距離があるかもしれないところから吹っ飛ばされた自分達より早く移動して待っていたティオネがその事実に驚いているのだ。

 

「俺の修行の、強さの秘訣を知りたいとお前らは願い、秘密を共有にするとも誓った。間違いないな?」

 

肯定と頷くアイズ達。アイズはようやく知ることができると全身から早く教えてという気配を伝わせてくるほど。

 

「お前らにとっては『冒険』をするようなもんだろうな」

 

「どういう、こと?」

 

首を傾げる金髪金目の少女に意味深で深い笑みを浮かべ出す一誠。

 

「―――こういうことだ」

 

次の瞬間。一誠達を取り囲むように様々な色を発する巨大な魔方陣が一つ、二つ、三つと発現し、光がより一層輝きを増し、最高潮に達して光が弾けたその時―――。優に十Mは超えている巨大なドラゴン達が雄叫び、咆哮を獣のような鳴き声を高々に上げながらその全貌を晒したのだった。神聖なドラゴンもいれば邪悪そうなドラゴンもいる。

 

「「「―――っ!?」」」

 

迷宮の孤王(モンスターレックス)』、階層主より全長はあり、なによりプレッシャーが異なっていた。

ここにきて、アイズ達は戦慄した。

 

「あれ、アポプス。今日は人間の形態じゃないんだな」

 

《貴君の秘密を告げるのであれば、本来の姿でいるべきかと思ったまでだ》

 

禍々しいオーラを滲みだすアポプスと呼ばれたドラゴンは淡々と述べた。人語―――。言葉を発することができるモンスターなど今まで見聞したことがない。

 

「イ、イッセー!?こ、このモンスター達は・・・・・!?」

 

「モンスターじゃない、ドラゴンだ。これで分かっただろう、俺はこいつらの相手をしてオールとオーバーSという限界突破をしてみせたんだ」

 

「どこから、このドラゴン達は出てきたのだ」

 

「ん」と、一誠は自分の胸に親指で突き刺すように示す。

 

「こいつらは俺の中に封印している」

 

「ふう、いん・・・・・?」

 

「こんなダンジョンのモンスターより危険極まりないドラゴンが地上で大暴れでもさせてみろ。世界はあっという間にこいつらによって蹂躙される。アテネのような神じゃないと対抗できないんじゃないか?」

 

そう言いつつアテネへ視線を尋ねるように向けると「多分、そうね」と返ってきた。

 

「封印って、どういうこと?どうやってドラゴンを封印できるの?」

 

「ほら、あの大剣だよ。アイズと模擬戦で使ったあの大剣だ」

 

18階層でアイズとの剣戟を繰り広げた大剣のことをティオナは「あれ?」と思い出す。

 

「あの大剣はドラゴンを封印することができる封龍剣っていう名前の大剣だ。それを使って俺の中に封印したドラゴン達はこの中にいる。それ以外は俺の家族となってくれたドラゴンだな」

 

「ドラゴンと家族・・・・・有り得ない」

 

「ははは、お前らからすれば有り得ないだろうな。だが、俺自身も有り得ないんだ」

 

その証明と・・・・・一誠自身が突如として発する真紅の光に包まれながら人の形を崩し、全長百Mは有にある真紅のドラゴンと変貌したのだった。

 

『俺自身もドラゴンだからなぁ』

 

「「なっ!?」」

 

「―――っ!?」

 

『これで理解しただろう。俺の常識はずれな言動と異常の強さの秘密を』

 

元の姿に、人型に戻った一誠に愕然とアイズ達はただ立ち尽くすだけだった。

 

「さて、これで運命共同体ともいえるようになった三人。このことをロキ達やギルドに告げるか?」

 

試すように告げる一誠。アテネも静かに待って三人の言葉を待つ。最初に口にしたのは―――。

 

「あたしは言わないよ」

 

ティオナだった。

 

「イッセーの強さの秘密はそう言うことなんだね。うんっ、凄く分かったよ!アイズが負けそうになったも分かる!」

 

「ティオナ・・・・・」

 

親友の言葉にアイズは何か言いたげに金目を向けるがティオナは気にせずに言葉を紡ぐ。

 

「アイズがこれからダンジョンに行かず、イッセーのところにでも行ってくれればあたしは良いかな?ね、リヴェリア」

 

「・・・・・そうだな」

 

肯定と漏らすリヴェリア。

 

「ダンジョン以外にも興味を示してくれれば少なからず安心はできる。―――確かにこれは、【ステイタス】よりも重要な秘密だな」

 

「だろう?『深層』でもなければこいつらを暴れさせられん」

 

『それ以前にテメェは俺を出させねぇだろうがっ!』

 

浅黒い肌の鱗に覆われ、ギラギラと悪意や殺意、敵の光を宿す銀の双眸を向ける巨人型のドラゴンが悪態を吐く。

 

「はいはい、また今度行ったら出してやるから。それまで楽しんで待っていろ」

 

『待てるかっ!せっかく表に出たんだ、今ここで殺し合おうぜぇっ!』

 

他のドラゴン達が止めもしない気配の中、巨人型のドラゴンが拳を振り下ろしてきた。目を見開くアイズ達を余所に、一誠は溜息を吐き「しょうがない」と呟き―――。迫る巨人型のドラゴンの拳を殴り飛ばし、弾いた。

 

「いや、丁度良いか。三人とも、こいつと一緒に戦うぞ」

 

「「え?」」

 

「いいのか・・・・・?」

 

「問題ない。こいつも、グレンデルも殺し合いを望んでいる。―――こいつを倒しでもすればランクアップするかもしれないぞ?」

 

『グハハハハッ!そうだぜ、俺と一緒に殺し合いをしようぜぇっ!?』

 

他のドラゴン達が魔方陣の光に包まれ姿を消し、グレンデルという巨人型のドラゴンだけが残された。

 

「これが俺の強さの秘訣―――ドラゴンと死闘を繰り広げることだ」

 

「か、階層主より強い・・・・・?」

 

「ああ、一蹴するんじゃないか?それと俺や家族のドラゴン達には魔石なんてない。だから一撃必殺の弱点は無いから本気で殺すつもりで戦え。じゃないと死ぬのはお前らだ」

 

「・・・・・殺して、大丈夫なの?」

 

「というか、こいつは結構しぶとい。首だけになっても意識があるほどだ」

 

うわ・・・・・と、嫌そうにティオナは顔を引き攣らせた。そして魔石もないモンスターで階層主より強いドラゴン。アイズを横目で見れば―――戦う気満々で《デスペレート》を勢いよく抜いてた。

 

「グレンデルと戦えば、『力』と『耐久』が上昇する。リヴェリア、立ち止まって魔法を放つなら止めておけ。潰されるのがオチだ」

 

「・・・・・分かった」

 

良い的になると言われ、そうならないように心掛けるリヴェリアはグレンデルを見る。

とても大きい。Lv.も能力も階層主よりも群を抜いているだろう。そんなモンスターを一誠はこの一ヶ月間の間、気軽に相手をしていたことを考えると、強さの秘密は頷けれる。代わりないのは敵意と殺意を向けてくることだけ。そして冒険者としてモンスターを倒し高みへ目指す。

 

「最初は三人だけで戦ってみろ。状況に応じて俺も参戦する。グレンデル、構わないな」

 

『殺し合いができるってんなら何でもいいぜっ!早く、俺に傷を負わせてみろ!俺に生きているという実感を覚えさせやがれぇっ!』

 

「とまぁ、グレンデルは狂っているドラゴンだから、気兼ねなく倒せ」という一誠に。

 

「うん、わかったっ!」

 

「・・・・・うん」

 

「こんな所でドラゴンと戦う羽目になるとは、な」

 

三人はそれぞれ戦闘態勢の構えに成り―――両者、アイズとティオナ、グレンデルが同時に砂を蹴って肉薄する。

 

『グハハハッ!いっくぜー!チビ共ぉっー!』

 

「チビ言うなぁー!?」

 

「勝つ・・・・・っ!」

 

―――○●○―――

 

「し、死ぬぅ・・・・・」

 

「倒せなかった・・・・・」

 

「っ・・・・・」

 

三人ともボロボロの姿で砂浜に寝転がっていた。あれから数時間。グレンデルの硬い鱗に武器が通らず、ダメージは微々たるもので強烈な一撃を食らう羽目となるアイズとティオナ。魔法を詠唱しているところでドラゴンらしく巨大な火炎球を放たれ、砂に足を取られながら回避の移動せざるを得なかったリヴェリア。結局は一誠がグレンデルを相手にして少しばかり満足させた。

 

「ティオネやレフィーヤ達がいれば倒せたかもー!」

 

悔しげに両腕を挙げて両足をばたつかせるティオナ。

 

「どうだかな。お前らの武器や魔法は、ダメージこそは与えられても倒すことができる感じじゃなかったぞ」

 

「あんなドラゴンがダンジョンにいると思うと、今のLv.では太刀打ちできないか・・・・・」

 

「いや、ダンジョンのモンスターと俺の家族のドラゴンを一緒にするなって。寧ろ、あれだけ初見で戦えるお前達はよく頑張ったなって称賛に値するほどだ」

 

自嘲気味に漏らすリヴェリア。

 

「今度は、負けないっ」

 

「それって、また挑戦しにくるってことか?」

 

負けん気なアイズが愛剣を握りしめて再挑戦を望む意志を示す。

 

「さて、これから三人はどうする?」

 

一誠の強さの秘訣を体験し、満足しただろうと暗に込めて尋ねる。仰向けになって倒れる三人の口から―――。

 

「・・・・・もう一度、やりたい」

 

「お腹空いたー」

 

「あの城に浴場はあるか?」

 

バラバラな返事が返ってきた。一誠は一つ息を零し、「わかった」と告げる。

 

「浴場ならある。飯は俺が作っておくから入っていろ。その後別のドラゴンと戦わせてやる。いいな?」

 

異は無く、三人は肯定とそれぞれ了承の言葉を口にすると、一誠の魔方陣が白い巨城の中へアイズ達と一緒に一瞬で転移した。

 

「アテネ、浴場の案内を頼んでいいか?俺は飯を用意する。まぁ、浴場に摘まみとなる物はあるがな」

 

「わかったわ」

 

アテネ達から離れる一誠。残された女性メンバーは、アテネの案内で浴場へと向かう。

 

「彼の魔法は凄まじいですね。魔方陣で我々を別の場所に移動させるとは」

 

「私も彼のことを全て知っているわけじゃないのだけれどね」

 

「じゃあじゃあ、イッセーと出会いってどんな感じだったのか教えてくれませんか?」

 

「・・・・・お願い、します」

 

アイズ達から一誠のまつわる話をせがまれ、アテネは思わず笑みを浮かべ「どうしようかしらねー?」と楽しんで自分だけの秘密を明かそうか考えながら歩く。

 

「―――ここが、彼の別荘もとい、この修行空間の浴場よ」

 

「「おおーっ」」

 

二人の少女が感嘆の言葉を漏らす。壁がない浴場。覗きこめば森林や海、空などが一望できる。浴場はぶくぶくと泡が絶えなく湧く泡風呂や水風呂、扉を開けばサウナ。それ以外にものんびりと寛ぐ為か背もたれの長い椅子とソファ、テーブルの上にフルーツの盛り合わせがあった。

 

「これはなんですか?」

 

リヴェリアが見つけた。腰を下ろせる席の直ぐ傍にシャワーと見慣れない二つのボトル。

アテネは説明する。

 

「ああ、それは髪を洗う液体とこっちは体を洗う液体よ。洗えば髪と体は良い匂いがするの。それと洗う時は目と口に入らないようにしなさい?染みるから」

 

一通り説明するアテネにアイズは疑問をぶつけた。

 

「・・・・・ここにロキはいませんよね?」

 

「いるわけないわよ。あの親父は」

 

「天界でもロキは親父だったんですかー?」

 

「ええ、私達―――一部の女神を除いて変態なことをしょっちゅうしていたわ。『コミュニケーションやー!』とか胸を触りまくりながらほざいてね」

 

絶望するぐらいないくせに皮肉な事をして、と漏らしながら三人を率いて来たアテネは、服を脱ぐ空間にとんぼ返りした。

 

「私はイッセーのところに戻るけれど、しばらくしたらここにくるわ。それまでのんびりと寛いでいなさい」

 

三人を残し、アテネは一誠のところへ赴く。

 

「だそうだ。ロキが出没しないなら気兼ねなく入ろう」

 

「ここまで現れたら神出鬼没過ぎるよロキってー」

 

「うん・・・・・」

 

徐に服を脱ぎだして、タオルを持って再び浴場へと入る。

 

「ふはーっ、泡を吹くお風呂なんて初めて入るよー」

 

「そうだね」

 

「後の者を考えずに入るのは何時以来だろうか・・・・・」

 

【ロキ・ファミリア】の浴場は一つしかなく、長居をすれば後がつっかえてしまうのだ。

だから心から満足に入ることはできず、体の汚れを洗い流すだけして出て行かねばならない。

こうして特殊な魔道具(マジックアイテム)の中で入浴できるとは思いもしなかった三人なのだ。

 

「リヴェリアー、イッセーって凄いねー。皆に秘密だけどドラゴンだなんてさ」

 

「ああ・・・・・亜人(デミ・ヒューマン)とは違う者だったな。彼一人でも『深層』に到達できるのも頷ける」

 

「イッセーがあたし達の【ファミリア】に入っていたら絶対ベートがイッセーに食って掛かっていそうだよ。主にアイズ関連で」

 

「私・・・・・?」とどうしてそうなるのか不思議で首を傾げるアイズであった。そんな彼女にティオナは問うた。

 

「アイズ、これからもアイズはダンジョンに行く?」

 

これからもダンジョンに行く?とはどういうことなのだろうか。『遠征』なら当然行かねばならない。個人的だったらそれも当然行く―――。

 

「身近にとっても凄い冒険者もといドラゴンがいて、ダンジョンでモンスターを狩るよりもイッセーと一緒にいた方が何倍にも楽しいよきっと?今日みたいに凄い冒険もしたしさ」

 

「・・・・・」

 

親友の言いたいことは理解した。イッセーという異常(イレギュラー)の塊が想像を遥かに上回り、超えることをしてくれる。そして、冒険者となって以来久し振りの敗北―――。ダンジョンのモンスターとは根本的に異なるモンスター、ドラゴンを宿す冒険者・・・・・。

 

「ティオナ。お前は今後とも彼と付き合う気でいるのか?」

 

「うんっ!イッセーといるとなんだか楽しくなるよ!それに他のドラゴンと戦ってみたい!」

 

「・・・・・私も」

 

すっかり、一誠のことを気に入ってしまった二人に「そうか」と相槌を打つリヴェリア。

 

「次の『遠征』・・・・・彼も招いてみるか。色々と物事がはかどりそうだ」

 

「それいいねー!」

 

「直ぐに『深層』行ける・・・・・」

 

一誠の転移魔方陣のことを言うアイズに肯定とリヴェリアも頷く。そしてあの強さ。『砲竜(ヴァルガング・ドラゴン)』の砲撃を容易く防ぐ防壁は欲しい。

 

「―――三人とも料理できたけれどここで食べる?」

 

アテネが浴場に入って来ながら尋ねに来た。

 

「え、もうできたんですか?」

 

「酒場で働いているのよ?料理なんて簡単にできてしまうわ」

 

「うーん、まだ髪とか体とか洗ってないんで・・・・・リヴェリア、ここで食べちゃう?」

 

「行儀が悪いぞ、と本来は言うべきだろうがな・・・・・。ああ、そうしよう」

 

「お願いします・・・・・」

 

「湯冷めには気をつけなさい?」とどこからともなく取り出したベルを鳴らした直後に、アテネの目の前で魔方陣が出現し、出来た手で手作りの様々な料理が移動できる台に乗せられた状態で魔方陣から出てきた。

 

「・・・・・本当に彼の魔法は便利だな」

 

「すごっ。どうやったらできるの?」

 

「・・・・・じゃが丸君小豆クリーム味(じゅるり)」

 

体にタオルを巻いて、女神によって数々の料理を置かれるテーブルに近づく。三人分の席は無かった為、背もたれの長い椅子やソファなどで代用して座ることにする三人だった。

 

「そういえば、イッセーは?」

 

「女性の入浴中に来るわけ無いじゃない。彼は魔道具(マジックアイテム)の作製に入っちゃってるわよ。何でも、『魔道具作製者(アイテムメイカー)』の先輩を驚かせる物を作るんだーって張り切っちゃって」

 

「『魔道具作製者(アイテムメイカー)』の先輩・・・・・もしや、【万能者(ペルセウス)】のことですか?」

 

リヴェリアの問いかけに首を無言で頷くアテネ。オラリオで五人ともいない稀代の『魔道具作製者(アイテムメイカー)』。その数少ない中で挙げた人物が【ヘルメス・ファミリア】の団長、アスフィ・アル・アンドロメダ。Lv.4の冒険者。二つ名は【万能者(ペルセウス)】。

 

「そうよ」

 

一体どんなアイテムを作るのか本人次第。一誠の見習い魔道具作製者(アイテムメイカー)として作る作品は自分達の常識や予想を上回る物を作るだろうか。

 

「できたー!」

 

「はやっ!?」

 

浴場に現れる一誠。腕の中には色んな物を抱えていたのだった。体をタオルで巻いた状態のアイズ達になんて目もくれず、アテネに報告をしに来た。

 

「出来たぞアテネ。第一号の魔道具(マジックアイテム)が!」

 

「そ、そう。それは良かったわね」

 

「早速だけどアスフィのところに行ってくるな。俺の代わりに分身を置いておくから」

 

一誠の姿がブレだしたと思うと、もう一人の一誠がオリジナルの一誠の肩と並ぶように現れた。

アイズ達はギョッと目を見開いて驚き、オリジナルの一誠は「じゃ!」と浴場を後にしてどこかへ行ってしまった。

 

「・・・・・イッセー?」

 

「いんや、俺はオリジナルの分身だ。悪いが俺はオリジナルじゃないからドラゴンは召喚できない。代わりに俺が相手をしてやるよアイズ」

 

「分身体って、できることとできないことがあるの?」

 

「そうだな。オリジナルの力より何割か弱いが、それでも俺はお前らより強い方だ」

 

「アイズより強いイッセーの分身体が一人増えた・・・・・なにそれ!?」

 

どっちみちイッセーがもう一人増えたようなもんじゃん!とティオナが驚愕するも、

 

「ああ、(ぶんしん)は軽く百人くらい増やすことができる。まぁ、どっちみち俺には勝てんよ」

 

「「「・・・・・」」」

 

もう、愕然とするしかなかったアイズ達であった。―――その頃、一誠は

 

「アスフィー!」

 

「なっ、イッセー?」

 

「見て見て、新しい作品ができたぞ。罠道具(トラップアイテム)だ!」

 

子供のように明るい顔で執務室に現れる一誠に驚きながらも、アスフィは作製したアイテムを鑑定し始めるのだった。

 

「これは・・・・・なんですか?」

 

「『深層』のモンスター、『デフォルミス・スパイダー』の大糸を利用した罠道具(トラップアイテム)。これは引き金を引くと凄まじい粘着性の網が飛び出して対象に張り付き、動きを封じることができるんだ。で、これも同じなんだけど階層主以下の巨大なモンスターが引っ掛かると―――」

 

嬉々として作製した道具を説明する一誠に感心するアスフィ。

 

「これは使えますね。ええ、主に腹黒の主神を捕まえる際には便利な道具です」

 

「じゃあ、この連発で放たれる連続罠(マシンガントラップ)がいいな。そんでこれは『デフォルミス・スパイダー』の大糸が入っている玉ね。これを装着して―――」

 

ふむふむ、と使い方を学び―――。

 

「やぁ、アスフィ。仕事は捗って―――(パンッ)どわっ!?」

 

「・・・・・ふっ、ふふふっ。いいです、ええ・・・・・これは面白い罠道具(トラップアイテム)ですイッセー」

 

軽装の旅人を着こなし、羽付きの鍔広帽子の下は橙黄色の瞳と同じ髪を窺わす優神男ことアスフィ達の主神ヘルメスが粘着性のある網に包まれて身動きが取れなくなった様を見て、手の中にある銃を撃った姿勢で黒い笑みを浮かべるアスフィは、一誠に申した。

 

「イッセー。【ヘルメス・ファミリア】にコレと作製方法を売って下さい。それと材料となる素材も買い取りますので定期的に集めて欲しいです。『深層』ではまだまだ私達は到達できませんので」

 

「お、おう・・・・・分かったよ」と、冷や汗を流す一誠に「あ、あのー?俺のこと、忘れてないかな二人とも?」と忘れられかけているヘルメス。

 

「さて、ヘルメス様。たまにはご自身で仕事をして貰いましょうか。どうせ、追加の仕事を持ってきたのでしょう?ソレを、主神として消化してください」

 

「えっと、アスフィ?何だか何時ものアスフィじゃないような・・・・・」

 

そう言うヘルメスに一誠と作製した爆炸薬改(ボンバー・オイル)をホルスターから取り出して「爆発してみますか?」主神に対して脅しを掛けた。

 

「イエ、ヨロコンデシゴトヲサセテモライマス」

 

「良き主神で私は誇りに思いますよヘルメス様」

 

なに、この主神と眷属の会話のやり取り・・・・・。一誠はどっちが主神で眷属なのか分からなくなった光景を目の当たりにしたのだった。

 

「あっ、そうだ。イッセー君がいるなら丁度良いや」

 

「ん?」

 

「ほら、君が以前依頼した物を手に入れたんだ。いやー、君も浪漫を求める男の子だったなんて俺は嬉しいね!」

 

「ヘルメス様と一緒にしないでください」と吐くアスフィを余所にヘルメスに近づき、神を拘束していた網を素手で引き千切って解放する。

 

「それはどこにある?」

 

「ほら、これだよ」

 

追加の書類かと思えば、肩に下げていた鞄から数冊の本が取り出され一誠の手の中に。

 

「要望通りの本を見つけてきたよ?これでいいかな?」

 

「おおー、ありがとう。これで友達も喜ぶよ」

 

「ふふっ、喜んでくれると嬉しいね。ところで、君のお友達とは一体どんな子供なんだね?」

 

「ああ、極東の出身の獣人だ」

 

微笑みを浮かべながら一誠は友人のことを語る。その後、酒場に戻ってアイズ達と交流を深めて自分達の本拠(ホーム)へ戻るアイズ達を見送った。

 

 

「ア、アイズたん・・・・・」

 

「・・・・・なんですか?」

 

「なんや、このステイタスの伸び・・・・・」

 

 

アイズ・ヴァレンシュタイン

 

Lv.5

 

力 :D555→565

 

耐久:D547→C609

 

器用:A825→835

 

敏捷:A822→832

 

魔力:A899→909

 

狩人:G

 

耐異常:G

 

剣士I→H

 

熟練度トータル上昇値が100を超えていたことでロキは信じられないと、アイズの【ステイタス】を記した羊皮紙を糸目な目が開くほど驚きだった。そして、アイズ自身も―――。

 

「(・・・・・イッセーのドラゴンと戦ったから・・・・・!)」

 

久しく伸びなかった全能力値(アビリティ)の熟練度に喜びに似た感動は震える体で覚え、心の中の幼いアイズも歓喜で小躍りするほど体で表現した。

 

「アイズたん・・・・・ダンジョンで一体何があったん?」

 

「・・・・・秘密、です」

 

「なんやそれ!?アイズたん、ダンジョンに行ったんやろ!?」

 

「秘密です」

 

今日【ステイタス】の伸びは絶対におかしい!と追求するロキだが、「しつこいです」と一蹴された。その上、

 

「ティオナとリヴェリアの【ステイタス】もなんやこの異常の伸びはー!?」

 

例外なくティオナとリヴェリアの【ステイタス】にも変化があった。そのことで三人は意味深に笑みを浮かべた。

 

「誰かの異常さが移ったかもしれないな」

 

「そうだねー」

 

「うん・・・・・」

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