オラリオで自由気ままに過ごすのはダメだろうか(一時完結)   作:ダーク・シリウス

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冒険譚6

その日の夜。

 

「イッセー、今夜私、神の宴に行くから夜は遅くなるかもしれない」

 

「んー?神の宴?」

 

「神々だけが集まる宴のことらしいわね。私も初めて行くのだけれど他の神に会うのは悪くないと思って」

 

「久し振りに会う神もいるだろう。今夜だけ俺のこと気にせず楽しんでくればいいさ」

 

「ありがとう。イッセーも休みだからってたまにはダンジョンに行かずのんびりとしてなさい?」

 

「んー、じゃあ、友達のところにでも行くよ。約束していた本も手に入ったからそれを届けに行きたい」

 

 

南のメインストリート―――繁華街。大劇場(シアター)賭博場(カジノ)、高級酒場。巨大かつ派手な建物が並ぶ大通りは、身なりの良い商人や冒険者、更に紙が身でごった返している。その大通りに一際目立つ者があるいていた。長い金髪に金目、そして特徴を挙げるとすれば腰から生やす九本の狐の尻尾だろう。

 

―――狐人(ルナール)―――。

 

ここ『迷宮都市』オラリオでは最も珍しい種族の一つ。滅多にお目に掛かれない種族は老若男女、冒険者でも一般人でも神々でも見慣れない種族を見つければ振り向いて見てしまうかもしれない。実際、亜人(デミ・ヒューマン)でも腰に種族の証ともいえる尻尾を九本も生やしているのだから早くも目立っていた。奇異な視線と絡んでくる者を完全に無視して―――一誠はある場所へと赴く。

 

「ここ、好きじゃないんだよなー」

 

なら、来なければいいではないかと言う言葉を漏らす一誠はそれでも足を踏み入らなければならない場所へ辿り着く。

 

「あーっ!男の狐人(ルナール)!」

 

「早速かよっ!」

 

鉢合わせした全身褐色肌、踊り子の衣装を身に付けたアマゾネスが声を張り上げられた一誠は『前回』のことを思い出した。

 

「皆!」

 

「逃げるが勝ちってばよっ!」

 

目的のために逃走する一誠。捕まったら面倒なことになるのは明らかで、

 

「どこっ!?」

 

「こっちだよっー!」

 

「今日こそは捕まえる!」

 

続出するアマゾネス達。どうしてピンポイントに狙ってくるのか不思議であるが一誠はこの状況を楽しんでいる。

 

「ふはははっ!俺は捕まらんよビッチども!」

 

「何を言っているのか分からないけどムカつくっ!」

 

「囲め囲めー!捕まえろー!」

 

「こっちまでおいでー!」

 

屋根の上で逃げたり、路地に逃げたりと――地の利は向こうが上でも、一誠に触れることすらできないでいる。

 

「くそっ、逃げ足の早いっ」

 

悪態吐くアマゾネスの目は一誠が忽然と姿を眩ました。

路地裏にいたぞー!と仲間の声が聞こえてくる。その周辺を待ち伏せして探し回ると・・・・・。

 

「うふふ、可愛いぼーやを見つけちゃった。ねぇ、おねーさんと一緒におねんねしない?」

 

「僕、お友達のおねーちゃんのところに行きたいの」

 

「あら、娼婦の女の子にお友達がいるの?可愛い顔をしていけない子とお友達を作るなんて駄目なぼくね?」

 

「うー、ぼくってだめな子なのー?(うるうる)」

 

「あああぁ・・・・・可愛いッ!」

 

美しい肌白の女性―――まるで色欲の虜になったかのような深いスリットが入った白の衣装で身を包むエルフの娼婦が、腕の中に小さな真紅の髪の幼い男の子を抱えて歩いていた。幼い男の子にメロメロで心を奪われているのか、行きたい場所まで連れていく様をアマゾネスは見ていたが、探している人種とは異なり対象外として意識を外す。

 

「ちくしょー!また逃げられたー!」

 

悔しい!とどこからか同僚の叫びが聞こえてくる。今回も獲物を逃げられた、と嘆息するアマゾネス達。

 

「おねーちゃん、ありがとー」

 

「今度来たらおねーさんと一緒におねんねしましょうねー?」

 

「うんっ!わかった!ありがとー!」

 

男の子はエルフの女性の頬に子供らしくチュッと小さな唇を押し付け「はうっ!」とトドメを刺した。目的の建物に入り、

 

「あら、可愛いぼーやね。でも、まだここに来るのは―――」

 

「通してもらうよ。春姫と言う娼婦を指名する」

 

「・・・・・わかったわ」

 

店員があっさりと子供を招き入れて五階の一室に案内した。

 

「連れてきたら、仕事場に戻り、俺の存在を忘れろ」

 

「・・・・・わかりました」

 

子供―――一誠を一人にして店員のアマゾネスはいなくなった。そして元の姿に戻って一息を吐く。

ようやく辿り着いたとばかり、窓から覗く景色を何時までも無心で見つめている一誠の耳に扉が開く音が聞こえてきた。振り返り、現れた娼婦を見て笑みを浮かべた。翠の瞳ときらやかな金の長髪に、同じ毛並みの耳と尻尾を生やす獣人が纏う紅の着物のその姿は一誠を懐かしませる。

 

「久し振りだな」

 

「はい、お会いしたかったです」

 

少女も嬉しそうに微笑んで、太い狐の尻尾をゆらゆらと振るう。戸を閉めて一誠の前に座りこむ。

 

「夜は短い。だが、何時ものように過ごそうじゃないか。今日はとある神に頼んで手に入れた色んな英雄譚の本を持って来たんだ」

 

「わあ!懐かしいです!」

 

どこからともなく一誠が取り出した数冊の本を見て娼婦の少女は翠の双眸を爛々と輝かせた。

一誠がヘルメスから受け取ったのはお伽噺や童話に関する書物だったのだ。

 

「今回も前回のように聞かせてくれ」

 

「はいっ。あ、あのそれでは・・・・・」

 

「ああ、おいで―――春姫」

 

壁に背を預け、胡坐掻く一誠の腰辺りから九本の狐の尾と狐耳が生え出したのを見て、春姫という狐人(ルナール)はいそいそと足が掻く胡坐の上に小振りの臀部を乗せ、尻尾を九本の内の一本にしゅるっと巻きつかせて紅の着物越しの背中を同族にもなれる異性の胸に預けて、脇の下から伸ばされた腕は動かれないように春姫の腹部に回される。背中全体で感じる一誠の温もりや、久しく見なかった同族の尻尾の感触が春姫の気持ちを落ち着かせ、心を穏やかにし渡された一冊の書物を手にして、楽しげに口を開いた。

 

「むかーしむかーし、あることろに・・・・・・」

 

―――○●○―――

 

その頃、アテネは【群衆の神】ガネーシャの主催の宴に参加していた。自分以外にも男神や女神など大勢参加していて、きらびやかなドレスを身に包む女神や個性的溢れる正装を着込んでいる男神を見回して―――。

 

「天界にいる神々がこの光景を見たら、呪いの言葉を呟くか発狂しかねないわね」

 

宴に相応しくない言葉を漏らすのだった。さて、これだけの数の神々を纏めて天界に送還するとしたらこの瞬間だろう。天界にいる神々が両手を挙げて万々歳!と歓喜し、遊びまくった下界に降り立った神々に顎を使い、遊んだ分こき使うだろう。

 

「―――あら、アテネ?」

 

背に流れる髪はふわふわとした蜂蜜色で、浅く曲がっている目尻は柔和、その見た目通り纏う雰囲気も優しい豊満な体付きをした女神がアテネに気付き歩み寄る。

 

「お久し振り。あなたも下界に降りていたのね」

 

「久し振りね豊穣の女神デメテル。下界に降りても元気そうで何よりだわ」

 

「もう、堅苦しい挨拶はよして?あなたも相変わらず堅いわね」

 

「そうかしら?これでも素敵な眷属のことで出会って柔らかく成った方よ?それに私は降りてきた理由もあるしね」

 

意味深に言い、笑みを浮かべるアテネにあらあらとデメテルは柔和に微笑む。その理由を問われても言うつもりは無いアテネ。

 

「あなたの【ファミリア】が生産している野菜。中々美味しいわよ」

 

「そう言ってくれると頑張ってくれている子供を誇りに思うわ。―――そうそう、アテネ。あなたは知らない?変わった子供がたまに遊びに来て豊穣の関する知識を提供しては滅多に手に入らない野菜や果物の種をくれる紅い髪の冒険者がいるのよ。ヘファイストスみたいに眼帯を付けている子だけど」

 

・・・・・物凄く身近にいるわね。アテネは直ぐに誰なのか理解して、敢えて知らない振りをして首を横に振った。

 

「そう。なら見掛けたなら感謝の言葉とまた遊びに来てねと伝えてくれるかしら?」

 

「ええ、見掛けたら、ね」

 

帰ったら問い詰めないといけなくなったとアテネは溜息を内心で零す。離れるデメテルから視線を逸らし、

 

「おー、アテネじゃないか」

 

「タケミカヅチ」

 

「そうだ。聞きたいことがある。紅い髪に眼帯をつけた若い冒険者を知らないか?俺のホームに風呂を作ってくれたり故郷の食料を提供してくれたんだ。是非とも改めて感謝したいのだが」

 

「・・・・・知らないわ」

 

気さくさに話しかけてくる男神からも同じ質問をされて同じ答えで返すと、

 

「アテネか、丁度良い。私の唯一の眷属に感謝してもし足りないことをしてくれた。紅い髪に眼帯を付けた子供なのだが・・・・・」

 

「ミアハ、見掛けたら教えるわ」

 

「―――良く来てくれたなアテネ!ここで一つ紅い髪の冒険者を知らないか!?あの者から―――」

 

ええい・・・・・イッセー。あなたはダンジョン以外にどこで一体何をしていると言うの!?

いくらレアスキルの影響だからって誰彼構わずに接触し過ぎたり魅了してるんじゃない!

知神や友神に挨拶を交わされると次に一誠の話題となることに思わず頭を抱えたくなるアテネだった。

 

「アテネ。頭を抱えそうになる雰囲気を醸し出してどうしたの?」

 

「ヘファイストス、久し振り。それとなんでもないわ・・・・・」

 

「なんでもないって顔じゃないわよ絶対」

 

燃えるような紅い髪と真紅のドレスを身に包んだ女神が呆れ顔でアテネの傍に立っていた。線が細くありながら鋭角的である顔立ちは秘めた意志の強さを表していた。耳に付けた貴金属のイヤリングはむしをその炎のような美貌に力負けしている。そしてそんな美貌の中でも目を引くのが、顔半分を覆い隠してしまっている黒色の皮布だ。右目に大きな眼帯をした麗人が、鍛冶の女神ヘファイストスが、呆れた色をした左眼でアテネを見つめていた。

 

「それで、聞きたいことがあるけれど―――」

 

「ジーザス、お前もかっ!」

 

「・・・・・どうしたのよ本当に」

 

もううんざりだと顔に疲れの色を浮かばせ、宴だと言うのに疲労困憊な女神が一人いた。

 

「イッセーのことは知らないわ。ええ、私は見掛けていないしイッセーという冒険者は知らないわ」

 

「・・・・・まぁ、あの子に関することを聞こうとしていたけれど調子はどうなの?」

 

「今知ったばっかりだけど・・・・・私に内緒で色んな神々と接触しているそうだわ」

 

「あら、そうだったの?私にはあなたの眷属だって教えてくれたのだけれど。ヘスティア繋がりで」

 

そうだったのかぁ・・・・・と、もう、一誠の行動力には呆れを通り越して疲れる思いだった。

 

「そのヘスティアは?」

 

「あそこでタダ飯を食いあさっているわよ」

 

「ヘスティアぁ・・・・・・」

 

周りの視線や意味深な表情をする神々を余所に、逞しい姿を晒している同じ処女神の女神の一柱。

アテネは久しく見ない女神に可哀想な目で見るのだった。

 

「話をしに行く?」

 

「・・・・・そうね。あの堕女神がどんな生活をしているのか気になるし」

 

「あれを見れば物語っているとは思うけれど」

 

二柱の女神は近づく。

 

「あれ、フレイヤじゃない」

 

その際、銀髪に女神と出くわす。新雪を思わせるきめ細かな白皙の肌。細長い肢体は宙を浮いただけで見る者を魅惑するような色かを漂わせており、小振りで柔らかい臀部とその上に乗るくびれた腰は、直視することが理性に危うい。金の刺繍が施されているドレスは胸元が開いており、生地一枚に閉じ込められた十分な容量を誇る形のよい胸は、熱いのか、谷間が桜色に染まっている。黄金律という概念がここから摘出されたかのような、完璧なプロモーション。睫毛は儚く長く瞳は切れ目で涼しく、相貌は後光を発する如く凛々しく。もはや超越していると形容しても良いほどの比類ない美貌。美に魅入られた神、フレイヤが、長い銀髪を揺らしているところをヘファイストスとアテネがばったりと合った。

 

「お久しぶりねヘファイストス。それに本当に久し振りね、アテネ?」

 

「久し振り。相変わらず綺麗ね。流石は他の女神から嫉妬されている美の女神フレイヤだわ」

 

「あら、あなたは嫉妬しないの?」

 

小さく口元を緩ませ、同じ女神の相手に問うフレイヤに首を横に振ったアテネ。

 

「醜くてつまらないことはしない主義よ。それに私を心底愛してくれる子供もいるしね」

 

惚気る女神に「ごちそうさま」とヘファイストス。「そうね」とフレイヤも頷いた。

 

「―――彼、欲しいのだけれど貰っていいかしら?」

 

「ダメよ!?」

 

ここで最大に危機感を覚えたアテネ。どこかで出会った口振りで、フレイヤに見初められたのだろう。

フレイヤの『美』に魅了されるとたちまち骨の髄まで、魂まで酔わされて虜になる。

一誠の様子を見ればフレイヤに魅了されている感じは無かった。一先ず安心しても良いだろうと目の前にいる美の女神に警戒しつつ悟る。

 

「フレイヤ?あの子とどこで出会ったの」

 

「魔天楼の最上階よ。街を眺めていたら下から天使の翼を羽ばたかして飛んできたの」

 

当時の記憶の糸を探って「驚いたわ」と漏らす美の女神は微笑みだす。

 

「すぐにいなくなってしまって最初はどこの誰だったか分からないから、直接ギルドに調査をしたの。そしたらあなたの眷属だってことぐらいは分かったのだけれど・・・・・Lv.1で階層の到達数が30階層以上って本当なの?」

 

「・・・・・フレイヤ。残念だけどその情報は古い。今は67階層まで到達しているわよあの子」

 

異なる情報を持つフレイヤに指摘し訂正するアテネは、厄介な女神に目を付けられたと嘆息する。

 

「・・・・・そうね」

 

「ヘファイストス?」

 

「次の神会・・・・・アテネ。彼の二つ名を決めるとしたら私は異常の冒険者(イレギュラー)正体不明(アンノウン)真紅(あか)い冒険者と与えたいわね」

 

一誠の言動を考慮して相応しい二つ名を挙げたヘファイストスだが、アテネは不満げに食って掛かった。誰よりも接して誰よりも知っている女神としてアテネにとって一誠の相応しい二つ名を挙げたのだ。

 

「違うわヘファイストス!私はそのままの意味で覇王龍(ラスボスドラゴン)、もしくは不動赤龍王(ファイナル・レッド・ドラゴン)!」

 

(ひと)が無難な二つ名を考えたと言うのに・・・・・。しかもそれ、あの子が泣くわよ。相変わらずセンスのない名前を付けるのね」

 

「・・・・・綺麗な名前で熾天使(セラフ)がいいわ」

 

何気にフレイヤも交じって二つ名の話題が花を咲く。その間、ツインテールのロリ巨乳女神と朱色の無乳女神が『こんのぉドチビがぁー!?』『なにをぉー!?』と言い始めていたのを耳にし、本来の目的を思い出して歩みを再び始めた。そんな神の宴を知らない一誠は―――。

 

ドッゴオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

「見つけたよぉ~っ!」

 

二人っきりの時間が潰された。邪魔する者を見ては睨み、口を開く。

 

「『また』人の時間を潰しやがってこのアマゾネスもどきっ!」

 

「ゲゲゲゲッ!春姫を見張ってればいつか必ず現れると思っていたからね~!」

 

二Mを超える巨躯。野太く短い手足に獲物を狙うギョロギョロと大きな目は九本の狐の尾を生やす一誠しか入っておらず、震える春姫の耳元で何かを囁き窓から脱出した直後、

 

「ちっ、本当に見張られていたようだな」

 

一誠がいた館の周囲には武装したアマゾネス達―――戦闘娼婦(バーベラ)が待ち構えていた。路面に降り立つ一誠に溜息を吐きながら話しかける一人のアマゾネス。

 

「あんたも分かっていただろうに。そんなに春姫と会いたかったのかい?」

 

「お前らと彼女は根本的に違うからな」

 

「それは当然さ。私達はアマゾネスだ。活きの良い男を食って生き甲斐にする種族だからね」

 

ドンッ!と後から聞こえる鈍い轟音を聞こえつつも首を傾げる。

 

「俺は客なんだが?お前らに襲われる理由も作った覚えもなければ営業妨害もした覚えもない」

 

「私達の主神がお前のこと大層欲しいようでね。現れたら手段は選ばず連れて来いって命令なのさ。まあ、私達もお前みたいな男が私達の領域(テリトリー)にこられちゃあ、襲わずにはいられないわけさ」

 

「嘆かわしいアマゾネスの性だなぁ・・・・・」と呆れるように首を横に振りだす一誠は人差し指を立てて眼前のアマゾネスに問う。

 

「聞きたいんだが何でまた俺を欲しがる?俺は既に【ファミリア】に入っている身なんだがな」

 

「【ファミリア】に入っていようが、主神様は関係ないのさ。だから、今度こそは逃がしはしないよ」

 

「あー、そうかい。『前回』は俺から逃げて諦めてもらおうと思ったんだが・・・・・骨の髄まで分からせるしかないんだな」

 

光とともに金の宝玉が埋め込まれている真紅の籠手は一誠の左手に装着する様を戦闘娼婦(バーベラ)達は怪訝に視認した。

 

「なんだい、その籠手は。どうやって装着したんだい」

 

「お前らには関係ないことだ」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!』

 

『transfer!!!!!』

 

籠手の宝玉から音声が発し一誠の【ステイタス】が何倍にも倍加して戦闘娼婦(バーベラ)達でも分かるほどの力量とプレッシャーを纏う一誠が放つ真紅のオーラは猛り、周囲のアマゾネス達を一歩だけ遠ざけた。

 

「ゲゲゲゲッ!それが一体、何だって言うんだよぉっ!」

 

巨女が両手を突き出して一誠を捕まえようと巨躯のアマゾネスを見た初見の者達からすれば、ある種ミノタウロスに襲われ掛けるイメージとダブるだろう。それが合図として他のアマゾネス達が一斉に動き出して捕えようとする。

 

「馬鹿だな・・・・・」

 

ユラリと九尾が揺らめく。

 

「いや、無知というのは罪でもあるか」

 

刹那―――。遥か上空から、轟く稲妻が繁華街に落雷。さらには取り囲む戦闘娼婦(バーベラ)に直撃して女体を焦がし、意識を感電しながら奪い、誰も一誠に触れずにその場で倒れ伏したのだった。

 

「このオラリオで、この俺に勝てる奴なんて・・・・・本来の力を封印してない神ぐらいかもな」

 

まぁ、その神もこの地にいる限り俺に勝てそうにもないがな?と気絶したアマゾネス達に関わらず独白する。

そして、運良く一誠に飛びかからなかったアマゾネスが全身を震わせ、唇も震わせて言葉を口にする。

 

「な、なんだよお前・・・・・!」

 

「ただの狐人(ルナール)だが?まあ―――」

 

真紅の籠手を見せびらかす一誠。

 

「この籠手の、俺の能力を気前よく教えるとだな。複数の対象の力を何倍にも倍加する。つまりは【ステイタス】の能力値(アビリティ)を何倍も激上させることができるってわけさ」

 

「なっ・・・・・!?」

 

「分かったか?お前らが束になっても、俺の【ステイタス】が何倍にも倍加して例えLv.5の第一級冒険者でも、この能力を使う度に俺は軽く超えることができるんだよ」

 

「俺は、な」と仮に下級冒険者に倍加の能力を使っても格上の冒険者に届くとは限らないと暗に付け足す。

 

「警告だ。また俺に襲いかかってくるならお前らの主神の【ファミリア】ごと潰す。俺の邪魔をしないならそれでいい」

 

元の姿、真紅の髪に隻眼の少年はそれだけ言い残し、春姫がいる部屋へ窓から侵入して畳の床に腰を下ろしたところで心配そうに春姫が話しかける。

 

「だ、大丈夫でございましたか?あ、後・・・アイシャさん達は大丈夫でしょうか・・・・・」

 

「大丈夫なんじゃない?まあ、それはさておき。また聞かせてくれよ?今度は邪魔者を片付けたから誰も来ないしさ」

 

「あ、はい。わかりました」

 

 

再びお伽噺や童話の書物を広げて一誠に聞かせる春姫。その後、神の宴から戻ってきたアテネに―――。

 

 

「さーて、イッセー。あなた・・・・・ダンジョン以外でも色んな神々と出会っているそうじゃない?」

 

「・・・・・そうだけど、それが?」

 

「開き、直るのね?」

 

「え?どんな神々とか天界でどう過ごしていたのか、他【ファミリア】と友好的な関係を築こうとしていただけなのにアテネ・・・・・何で怒っているの?」

 

「怒ってるように見えるのかしらあなたの目から見て」

 

「というか、物凄く怒っている」

 

「―――正解よ。私以外の女神に魅了させちゃダメでしょうがー!?男神も駄目ぇっー!」

 

「ええええええええええええええええええええええっ!というか、男神ってなに!?俺はアテネが大好きなのにぃっ!?」

 

「―――っ、そ、そんなこと言っても許さないんだからねっ!?」

 

でも、物凄く内心は嬉しかったアテネだった。

 

 

 

 

「【ステイタス】を何倍も上昇させるぅ?それは本当かい?」

 

「ほ、本当だよ!アイシャどころかフリュネまで空から降ってきた雷にやられたんだ!まるで魔法みたいに!」

 

一誠に聞かされた件の話を必死に告げるアマゾネスにふぅーと煙管から口を離して煙を吐く女性。

 

「ああ・・・・・それは知ってるよ。雷が落ちたのはそういうことだったのか」

 

とある建物内にて主神と眷属のアマゾネスが件の話を交わしていた。主神は顎を上げ、今回も失敗した眷属に

 

「で、今回もおめおめと逃げられたわけか。春姫と同じで九つの尾を生やす狐人(ルナール)を」

 

「す、すみません・・・・・。でも、顔は覚えてるよっ。直ぐに似顔絵を書いて色んな奴に調べ回ってもらえば直ぐに発見できるよイシュタル様」

 

イシュタル―――夜の繁華街を牛耳っていると過言じゃないフレイヤと同じ美の女神は唇をうっすらと吊り上げた。

報告を進言するアマゾネスと下がらせた後、イシュタルは愉悦と笑みを浮かべる。

 

「春姫の魔法と【ステイタス】を何倍にも上昇させる超越魔法(レアマジック)を持つ狐人(ルナール)。ククク・・・・・ッ。この二つが揃えば、間違いなく【イシュタル・ファミリア】はオラリオ一、最強派閥と成りあがって忌々しいフレイヤを地のどん底まで陥れることができるじゃないかっ」

 

その笑みは黒く、美の女神とは思えない思想を抱いていた―――。

 

―――○●○―――

 

神の宴から早三日目の朝。ギルド主催、【ガネーシャ・ファミリア】協力の『怪物祭(モンスターフィリア)』という催しが行われる日の当日。 

 

「それじゃ、色んなお土産を買ってくるからね」

 

「シル、行ってらっしゃい」

 

シルが休暇を得て祭りに向かって行く。一誠達は何時も通り仕事に身を削るのだった。

 

「さてと、俺も久々にしてやろうかね」

 

設置されたテーブルや店内の中央の空間に闘技場の様子を見れる立体的な映像を発現した一誠。

 

「ニャニャッ!ニャんだこれ!?」

 

「俺しかできない遠く離れた場所を映しだすことができる魔法だ。これで怪物祭(モンスターフィリア)をここでも見れる寸法さ」

 

「おおー!イッセー、ニャー達の気持ちを分かってるニャ!」

 

「これは凄い・・・・・。こんなこともできるのですね」

 

「私達も休みの間に見れそうだわっ。イッセー、ありがとう」

 

同僚達も好評価。ミアも「これで客がじゃんじゃん入ってきそうだねぇ」と称賛する。しかし、『豊穣の女主人』が開店する直前にある物を発見した。

 

「ニャッ!これ、シルの財布ニャ!」

 

「まーたシルのおっちょこちょいが発動したニャ」

 

アーニャの手の中にある口金のついたがま口財布。それはシルの物だと一誠も記憶に残っていた。そしてアーニャが当然のように一誠へ押し付けた。

 

「イッセー、これをシルに渡してくるのニャ」

 

「オミャーの魔法の分身で空いた穴を防いだり増やせばミア母ちゃんも文句は言わニャいだろうからニャ」

 

クロエも賛同とシルに忘れ物を届けて来いと言いはばからない。二人の猫人(キャットピープル)

 

「だろうと思ったよ。んじゃ、アテネ。一緒に行こう」

 

「ええ」

 

イッセーはアテネ、アテネはイッセーとダンジョン以外で行動することを許されている二人は当然のように手を繋いでデート気分でシルを探し始める。

 

「(ふふっ。シルには感謝ね。店から抜け出れたもの。これを口実イッセーと・・・・・)」

 

キャーッ!と一人勝手に興奮と期待で朱を散ばす頬を両手で押さえるように触れてはしゃぎ出す女神に「?」と頭上に疑問符を浮かべる一誠。だが、アテネの考えを凌駕するほど予想を遥かに上回っていた。一誠はすぐにシルの居場所を特定して足を運んで赴くと、

 

「あっ、イッセーさん!」

 

とても困っているような態度ではない同僚のシルが挙げた手を振って、意識を向けさせる行動する。

 

「来てくれると信じていました!」

 

「は?」

 

「実は、一人で大量の荷物を持つのは大変でして。イッセーさんにお手伝いをしてほしいかなーって思いまして」

 

アテネは気づいた。この女は一誠を酒場から誘き出すためにわざと財布を置いては届けに来させてそのまま・・・・・。まさか、自分と同じ考えをしていたとは!アテネはフレイヤとは違う危機感を覚えた。

 

「俺を誘き出す為にわざと財布を置いたなシル?」

 

「何のことでしょうか?」

 

しらじらしい、いけしゃしゃあと・・・・・。一誠もシルの思惑に察しがついた様で、疑惑の言葉を送ることにアテネはうんうんと内心同感だと頷いた。

 

「私、男の子にエスコートされるの初めてなんですっ」

 

「コラー!誰も、一度も、少しもあなたと行動するとは言ってないわよ!」

 

「良いじゃないですか女神様。わ・た・し、のおかげでお店からイッセーさんと一緒に出られたのですし、私を探す大義名分を大いに活用し、大いにこの瞬間を楽しみましょうよ」

 

シルはアテネの耳に口を寄せて囁いた。

 

「―――私と同じ考えですよね?そういうところは」

 

うぐっ、とぐうの音も出ないアテネは悔しそうに余裕の表情を浮かべるシルに対し奥歯を噛みしめる。

女神の考えなどお見通しだとばかりにハッキリ面と向かって言う酒場の店員は―――アテネしか見せない黒い笑みを浮かべていたのだった。

 

 

「この赤髪の隻眼の男と狐人(ルナール)を探せ。見つけたらすぐに知らせろ。仮に捕まえることができたら賞金をくれてやる」

 

「へへっ、気前の良い姉ちゃん達だ。ああ、任せてくれ」

 

「抜かるなよ?悟られたら報酬は無しだ」

 

「分かってるって。おう、行くぞ野郎どもっ」

 

『おおっ!』

 

 

知らないところで黒い影が一誠達に迫ろうとしていた。

 

 

「イッセー!クレープ、クレープが食べたいわ!」

 

「そうですね。私も食べたくなりました」

 

両手に花。薄鈍色の女性と太陽の光で美しい銀色の髪の女神達は一人の少年の腕に絡みながらメインストリートを歩いていた。若干の嫉妬と羨望の視線を感じつつ慕ってくれる女性達の願いを受け入れそれぞれ違う種類のクレープを購入した。しかし、二つしか購入しなかった少年に、一誠に不思議に二人は首を傾げた。

 

「あなたのは?」

 

「俺はまだ空いてないからな。それに片手が塞がったら二人とも守れないだろう?」

 

華奢な体、くびれた曲線の腰に腕を回して引き寄せ歩き始める。

 

『チィッ・・・・・!』

 

独身男性達が視線で呪い殺せそうなほど睨み一誠の言動に舌打ちする。対してアテネとシルは「なんか、女慣れしているような」「でも、格好良いじゃない」とまんざらではない反応を示していた。

 

「じゃあ、はい」

 

「は?」

 

「ダメ?」

 

可愛く首を傾げ上目遣いで尋ねるアテネと突き出されるクレープ。俗に言うアレであった。

クレープとアテネを交互に、見比べ「いいのか?」と視線で訴えれば言葉ではなく笑みで答えたアテネに遠慮気味で口を開け、パクリと甘いクリームとフルーツの味が口の中で広がり、その美味しさを表すかのように隻眼の金色の瞳を顔と一緒に輝かし狐の耳と九つの尻尾が生え出してぴこぴことふるふると動く。

 

「か、可愛いっ」

 

「え、イッセーさんは狐人(ルナール)だったんですか?」

 

「にもなれる、って言った方が合理的だシル。うん、甘くて美味しいな」

 

なら、もっと食べて!ああっ、私のも食べて欲しいですっ、と買った意味がなくなるようなことをする二人の女性も、結局は買い直しをしてもらい程なくしてクレープを堪能した。

 

「あの、尻尾を触っても良いですか・・・・・?」

 

「ああ、構わないぞ」

 

一本の尾をシルに伸ばす。触れると金色の毛並みから心地いい温もりが感じる。本物であるという証明だ。

両手で抱えるとふわふわのもこもこ・・・・・。抱き枕に適した感触。部屋だったら思わず抱きしめながら寝ていただろうそれぐらいの心地よさの感触と温もりがシルに与えた。

 

「イッセーさん。折り入ってお願いがあります。―――今日、私と一緒に寝てくれませんか?」

 

抱きしめながら人によって勘違いをさせる言葉を告げるシルを、一誠を自分のものだと言ってはばからない抱き絞めるアテネが「ダメ!」と抗議する。

 

「いいじゃないですか。毎日一夜を過ごしている女神様とは違い、通って働く私はイッセーさんとは寝ていないのですよ?」

 

「これ以上私とイッセーの夜の時間を減らされたくないわよ!」

 

「リュー達と一緒に寝ているならもう一人ぐらい増えたっていいでしょう?心が深く広い寛大なところを見せないとイッセーさんに嫌われますよアテネ様」

 

うるさいっ!ダメなものはダメなんだ!えー?いいじゃないですかー、と取り合いの痴話喧嘩をする主神と同僚と小さく溜息を吐く一誠。

 

 

『おい、あれじゃね?』

 

『ああ、俺達は運が良いぜ』

 

『どーする。女神様もいるぜ。あのねーちゃん達に知らせた方がいいんじゃね?』

 

『だな、いくぞ』

 

 

怪物祭、モンスターフィリアが開催されている闘技場には行かず、闘技場から離れた広場に小休憩。

一誠を真ん中にしてベンチに腰を下ろす女性二人に囲まれつつ雑談を交わす。

 

「見に行かなくても良いの?」

 

「ふっふっふ・・・・・。俺しかできない事をこれからするんだ」

 

不敵に漏らす一誠は眼前に大型の魔方陣を展開した。アテネとシルが見ている前で立体的な映像がどこかの風景と光景を映し始める。

 

「これは・・・・・」

 

「場所が分かっていればこんな風に遠くでやっている様子を見れるわけだ」

 

五万人も収容できる闘技場にモンスターと冒険者が対峙している光景が映像として映し出される。

アテネは目を丸くして魔方陣をマジマジと見詰める。

 

「・・・・・本当、まるで『神の鏡』みたいなことをするのね」

 

「『神の鏡』?」

 

「天界から下界を見る時は千里眼みたいな神の力。下界いる神は『神の力(アルカナム)』を使っていけないことを覚えているでしょう?あなたが今していることはある意味神の力なのよ」

 

「ふーん、これは魔法を介してやっているだけなんだがな。しかし、モンスターを調教している見世物なんて見ても楽しいもんかね」

 

娯楽の一つかもしれないが、一誠にとっては少々物足りない楽しさ。

寧ろ、いま考えついている娯楽の方がこの百倍は楽しんでもらえるだろうと断言する一誠を余所に

アテネとシルはジーッと今現在絶賛中行われているイベントを凝視して楽しんでいる。

そんな二人、特に自分の主神の綺麗な容姿を―――ポツリと呟いた。

 

「しかし、神って見掛けによらないな」

 

「えっ?」

 

いきなり自分達のことを言われた。見掛けによらないとは一体何のことだろうか?

真っ直ぐ真面目な顔をしている一誠の口から出る言葉を耳に傾ける。

 

「だって何千年経っても不変しないんだろう?見た目で判断したら絶対に―――」

 

ムニッ

 

「絶対に・・・・・なにかな?」

 

一誠の頬を摘まんでニコニコと笑むが怒気が孕んでいるアテネ。この後、とんでもなく失礼な事を言うであろう自分の眷属にお仕置きをする必要があると―――。

 

「神は全員お爺ちゃんとおば―――」

 

「それ以上は言わさないからねーっ!?」

 

「―――っ!?―――っ!?」

 

神の天罰が下った。他者から見れば主神と眷属の冒険者がじゃれ合っている様子だと微笑ましく見ていただろう。

そんな光景に悪意の塊が近づいてきた。

 

「―――ゲゲゲッ。みぃーつけぇーたぁーよぉー!」

 

上から降ってくる巨大な影。その声を聞いた一誠は隻眼の瞳を丸くしてアテネ達の腰に腕を回してベンチから離れると轟音とベンチが壊れる破砕音が同時に発生した。間一髪逃れ、鋭く眼前の敵を睨み、唖然と目を丸くするアテネとシル。

 

「なに?なに!?」

 

「なんですか・・・・・!?」

 

土煙の向こうから二Mのシルエットが浮かび、鈍い足音を立たせて姿を現す。

 

「狐ぇー。この前はよくもやってくれたじゃないかぁ~?」

 

「・・・・・逃げるっ!」

 

ダッ!と会話することもないとばかり逃走する一誠。脇で抱えられているアテネ達からすれば一体どういうことなのか説明して欲しいぐらいだが、「逃げるんじゃないよーっ!」とモンスターの雄叫びにも聞こえる汚い女の声にその気は失っていく。

 

「ちくしょうっ!やっぱりあの程度じゃダメだったか!」

 

「イッセー!?この前ってあなた、どこでなにをしていたの!?」

 

「話しは後!それと、アテネが好きなのは本当だからなぁっ!」

 

「この状況で何を言っているんですか!って、モンスターが爆走してきますよっ!?」

 

一般人や冒険者など目もくれず、巨女が蹴散らして一誠を追いかけ始める。

 

「くそ、アマゾネスなんて嫌いだっ!」

 

「あれはアマゾネスなんかありませんよ!?」

 

「わ、私もそう思う!」

 

逃走する三人の悲鳴は無関係な者達まで巻き込むのは御法度だと建物の屋根や屋上で逃げようと跳躍し飛び乗ったその時だった。一誠達を既に準備万端であると屋根の上には多くのアマゾネス達が配置していたのだ。これには相手も本気で来ているのだと察し派手な攻撃は出来ない。一誠はただ逃げるしか他ないこの状況下置かれた―――。

 

 

「うわー、やっぱりお祭りだから賑やかだね!」

 

「そうですね。アイズさん、早く闘技場に行きましょう。始まっちゃいます」

 

「・・・・・うん」

 

「まったく、少しは楽しそうにしなさいよアイズ」

 

「そうやでアイズたん。だから―――うちを完全無視しないでやぁー!?」

 

同じ頃、【ロキ・ファミリア】の主神ロキを始めアイズ、ティオナ、ティオネ、レフィーヤも祭りに足を運んでいた。情けなくアイズにロキが無視される理由は、あまり他の【ファミリア】の仮本拠(ホーム)に行ってはいけないと言われたからだ。団長のフィンも苦笑いを浮かべながらもロキの意見に賛同され、『神の宴』以降、戻ってきたロキが何か遭ったのか酒に溺れ仕舞には『アイズたん!しばらくはアテネの子供と接触禁止!そんで怪物祭(モンスターフィリア)の時はうちとデートやぁあああっ!』『・・・・・っ!?』と厳命を下されたこの三日間。一誠と接触していないのである。故に、【アテネ・ファミリア】との接触をしばし禁じた元凶でもあるロキを目も合わさずにロキの思惑とは違う生活を送っていたのだ。

 

「ロキー。宴で何か遭ったのか知らないけど、アイズに八つ当たりはしないでよー」

 

「違うもん!うちはあのドチビに口で負かされてそれが悔しくてアイズたんに慰められたいから二人きりの時間を増やしたかったなんて思って八つ当たりしたちゃう!」

 

「思いっきり本音を出してるわよ」

 

「ハ、ハハハ・・・・・」

 

呆れと苦笑でしか反応がでなかった。五人の主神と少女達は大通りを歩き、闘技場へ向かって行く。

 

「うん?」

 

ピクリとレフィーヤの尖った耳がピクリと微細な動きをした。不意に周囲へキョロキョロと山吹色のポニテールを揺らしながら目や顔を見回し始めるエルフの少女に「どうしたの?」と問われた。

 

「えっと・・・・・悲鳴が聞こえたような気がしまして」

 

「悲鳴?うーん・・・・・全然そんな気配すら感じないんだけど?」

 

「せやでレフィーヤ。こんな祭りにバカな事をする奴はおらん―――」

 

周囲は騒然としているが、悲鳴や異常事態(イレギュラー)など発生していない。ロキは気のせいやろ、とレフィーヤに続けて言おうとした矢先。

 

『きゃー!?』『モ、モンスターだぁっ!?』

 

悲鳴が大通りに飛び込んできた。第一級冒険者達が目を丸くし、どこにモンスターがいるのか肉眼で探したその時。

 

「え・・・・・?」

 

建物の屋根の上で駆ける真紅の長髪を揺らしながら行く一誠が金目に飛び込んできた。脇に二人の女性を抱えていることもすぐに把握した。そして、一誠を追うようにアマゾネス達が追いかけて行った。その光景はティオナ達も見ていた。

 

「今のってイッセーだよね?しかもあのアマゾネス達って・・・・・」

 

「多分戦闘娼婦(バーベラ)ね」

 

「はぁ?イシュタルんとこの子供かいな?で、どうしてまた追いかけられているんやろうな」

 

「分かりませんが・・・・・モ、モンスターが迫って来ていますよぉっ!?」

 

悲鳴染みた声を上げるレフィーヤ。彼女が見つけたモンスターは、

 

「ゲゲゲゲゲゲッ!お前ら、逃がすんじゃないよぉー!」

 

大きな鼻穴から息を吐きながら二Mを超える、巨漢ならぬ巨女が筋肉の塊と彷彿させる短い腕と短い足をフルに動かし、身の丈もさることながら横幅も太いずんぐりとした体型とは有り得ない猪突猛進で物凄い俊敏の移動で大通りにいる者達や屋台すら蹴散らし、吹き飛ばしながら爆走していた。黒髪のおかっぱ頭を激しく揺らし、ギョロギョロと蠢く目玉と横に裂けた唇からは獲物を見つけた際の歓喜と狂喜を感じさせた。

 

「うわっ!?」

 

「あ、あいつって!?」

 

同じアマゾネス。知らない訳がないほど有名な冒険者であり娼婦。―――どうしてここにいて、どうして一誠を追いかけているのか疑問が尽きない。ロキは「ふむ」と漏らし興味深そうに遠ざかっていく面々を見つめる。

 

「本気で狙われておるようやな・・・・・しかし、なんでアテネ達を追い掛けていたんやろうな」

 

「どーするの?イッセーなら大丈夫だと思うんだけど」

 

「・・・・・私は行く」

 

「ア、アイズさんっ!?」

 

スカートを翻し、肉付きの良い太股を晒し、金髪を横に靡かせてロキ達から離れだし一誠を追うアイズ。まるで解っていたかのようにティオネは肩を竦める。

 

「まっ、そうすると思ったわ。ロキ、私もアイズに付いていくわよ」

 

「あたしもー!あのアマゾネス達のおかげであたし達まで嫌われるなんて嫌だしー」

 

「お、お二人まで!?」

 

ヒリュテ姉妹も行ってしまい、慌てふためくレフィーヤ。

 

「んー、しゃーないな。レフィーヤ、うち等も行くでー」

 

「は、はいっ!」

 

残されたロキ達も追いかける。そんなアイズ達を露知らない一誠は逃げ惑っていた。正確には逃げ切れるのだが、どこか人気のない場所で沈黙させることを考えていた。しかし、どこもかしこも人だらけでそんな場所を見つけるのは逆に困難を強いられていた。

 

「イッセーさん!私達をどこか置いて―――!」

 

「逆にお前らを人質にされたら流石の俺も迂闊に攻撃や動きができなくなる!」

 

そうした場合、最悪の場合を想定してしまったシルはハッと自分の言葉の先の未来を浮かべた。狙いは一誠だ。関わりある自分達を捕まえて脅迫、脅しもしないとは限らない。

 

「なら、私の神威で―――!」

 

神の威圧を放とうとアテネ。一誠が次の屋根へ飛び越えようとした下の路地裏から何かがバッ!と飛び出してきた。白い網だ。

 

「んなっ!?」

 

一誠はそれが何なのか気付いた時には足が網に絡みつかれ、体勢を崩して屋根から落ちてしまった。

 

「策士、策に落ちるってわけじゃないんだけど・・・・・まさか、俺が作製した道具に引っ掛かるなんてなぁ」

 

両足で空を蹴り、体勢を立て直して大通りに着地した同時に周囲から白い網が飛び出て来て一誠達の動きを封じた。

 

「うっ・・・・・」

 

「なにこれ、ねばねばするっ」

 

「そういう罠道具(トラップアイテム)だからしょうがない」

 

大勢のヒューマンと亜人(デミ・ヒューマン)が野次馬で遠巻きで落ちてきた三人の様子を見守る最中、

アマゾネス達がどこからともなく姿を現し、巨女も一誠達の前に現れた。

 

「ゲゲゲゲッ!これで捕獲完了だぁ~。さっさとアタイらと来てもらおうじゃないか。ああ、網を切ろうなんて抵抗をしてみな?それとそこの女神も神威を解放したら無関係な奴までつい、手を出してしまうよぉ~?」

 

「・・・・・」

 

周囲の者達を人質にしてまで求められる理由が見当もつかない。巨女は無抵抗の気配を感じさせる一誠達に気分が良さそうに極限まで口の端を吊り上げた。肉塊の腕を伸ばし、アテネやシルも纏めて一誠を掴み上げた。

 

「よぉ~し、いい子じゃないか。帰ったらたっぷりアタイが可愛がってやるから安心しなぁ~?」

 

「ひぅっ!?」

 

まさかの肉体関係を迫られることになるとは思いもしなかったので、久々に悲鳴を上げてしまった。

こんな巨女に体を自由にされたら廃人もなりかねない―――!

 

「ちょーっとまったー!」

 

この場に第三者の声が待ったを掛けた同時に巨女の腕を二つの足が蹴って衝撃を与え、大きな手から零れ石畳に落ちる一誠達を包んでいる網は金髪金目の剣技で斬り捨て解放された。

 

「大丈夫・・・・・?」

 

「危なかったねー?もう大丈夫だよ!」

 

「貸し一つよ?私達に三人にね」

 

【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者達が一誠達を救出した。一誠やアテネも予想だしにしなかった援軍に唖然としたが正直に感謝した。

 

「【ロキ・ファミリア】!?」

 

「バカな、どうしてあいつらを助ける!?」

 

「フリュネだけじゃ【剣姫】やヒリュテ姉妹はキツイ!」

 

アマゾネス達が巨女の傍までやってきて警戒と戦意、敵意を隠さずに醸し出す。中には一誠が作製した罠道具(トラップアイテム)を構えていて巨女、フリュネは大きな顔を苛立ちと共に歪ませた。

 

「人形と青臭いガキどもがぁっ!アタイらの邪魔をするんじゃないよぉ!」

 

「ヒキガエル。どうしてあなた達がこの場にいて彼を追い掛けていたのか正直興味は無いんだけど」

 

「イッセーは友達だから助けない理由は無い!」

 

「・・・・・うん」

 

一誠を守るように前に立ちはだかって攻撃態勢の構えをする。

 

「三人とも・・・・・」

 

だが、それを良しとしない一誠は三人の前に立つ。

 

「正直助かったが、アテネ達を守ってくれないか?」

 

「え、でも・・・・・」

 

「―――今の俺は物凄く怒っているから、だから頼む」

 

全身から可視化するほどの真紅の魔力のオーラが滲みだす。一誠が立つ石畳がビシリッ!と悲鳴を上げ亀裂が生じる。

 

「あの程度で済ませてやったのに・・・・・まだ懲りずに来るか。今度は大切な家族まで巻き込んで」

 

真紅から濡羽色に代わり、一誠を包みこむ。

 

「今度は、許しを乞うても許さないからな」

 

やがて背中に紋様状の三対六枚の翼を生やし、漆黒の龍の尾。露出している肌には入れ墨のような紋様状が浮かんでいて、両腕には人の手ではない黒い手と染まった。

 

「「「「「―――っ!?」」」」」

 

アイズ達どころか、アテネですら見たことのない一誠の黒い変貌。アマゾネス達も知っていた情報とは異なる姿の一誠に驚きを隠せなかった。

 

「何やってんだよォッ!さっさと捕えちまいなっ!こっちには人質がいるんだからさぁっ!」

 

フリュネの疾呼の催促にアマゾネス達は引き金を引い―――。

 

ビッシャアアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

晴天の空から漆黒の雷が大通りに落雷し、罠道具(トラップアイテム)を構えていたアマゾネス達だけに直撃した。

 

「何か、しようとしたか?」

 

「う、動くなよォ!?」

 

遠巻きにいたアマゾネス達が無関係な一般人に凶器を突き付けた。これで相手は迂闊に動くことはできないと一誠を制止した―――つもりでいた。

 

「あ・・・・・れ・・・・・・」

 

石畳に一人、また一人と人質を取っていたアマゾネス達だけが口から泡を吹いて倒れ始め、最後に残った武装したアマゾネスとフリュネへ悠然と歩き向かいだす一誠。

 

「フ、フリュネ!?」

 

「相手は一人だよぉ!一斉に襲えば何とでもないだろうがっ!」

 

「ああ、そうだ。俺は一人で戦う。何も怖がることは無いぞ?何せ俺はLv.1だからな」

 

自分の情報を自ら漏洩する。自分より格下の冒険者だと分かり、怯えと緊張していた残存のアマゾネス達は心の余裕を取り戻し、武器を構えて襲いかかった。

 

「後悔しろ」

 

黒い姿がブレ、迫るアマゾネス達の腕や腹部をただ触れるだけで石畳の地面にひれ伏させ、黒雷の電撃を与えた。

悲鳴が発せようが許しを乞おうが一誠は無視してフリュネを睨む。

 

「来い、デカブツ。最期の晩餐は昨日で済ませたか?」

 

「こ、こんのぉ・・・・・っ!」

 

巨大な手を握り、拳を作って一誠に「調子に乗るんじゃないよぉっ!?」と突き出す。それを片手で受け止めた直後にフリュネも全身の力が抜けたように一誠の前で倒れ伏した。

 

「お前は火刑だ」

 

突如としてフリュネの全身に黒い炎が発生して包みこむ。そのダメージは壮絶極まりなかった。

誰もが目を逸らし、耳を塞ぎたくなる悲鳴を上げるフリュネ。

 

「Lv.5のあのフリュネをあんな、あっさり・・・・・っ」

 

「というか、今のイッセー・・・・・怖すぎるよ」

 

「・・・・・」

 

グラグラグラ・・・・・ッ

 

その時―――地面が揺らぎ、地震?とこの場の大通りにいる面々が不意に感じた。そしてその直後に何かが爆発したような轟音がこの場で発生した。

 

「「っ!?」」

 

膨大な土煙が立ち込める。ただ事ではないと一誠は元の姿に戻ってはアテネとシルを建物の屋根まで運んで、大通りの様子を見守る。

 

「なんだ、これ」

 

呆然と一誠が見詰める先に、響き渡る女性の金切り声と耳にしながら揺らめきを作り煙の奥からあらわになるのは、石畳を押しのけて地中から出現した、蛇に酷似する長大なモンスターだった。

 

「あれも、ガネーシャの?」

 

「いや、違う。こんな所にモンスターが出てくるはずがない。地中から、地下から出てきた感だ」

 

細長い胴体に滑らかな皮膚組織。頭部―――身体の先端部分には眼を始めとした器官は何も備わっておらず、若干の膨らみを帯びたその形状は向日葵の種を彷彿させた。全身の色は淡い黄緑色で、顔の無い蛇、と形容するのが最も相応しいだろう。すると、モンスターが細長い胴体を動かし、物凄い勢いで逃げ遅れている一般人に迫った。

 

「アテネとシルはここにいてくれ」

 

「ちょっ―――!」

 

アテネを屋根に置いたまま一誠は瞬時でモンスターに打撃を叩きこんで石畳に大きなクレーターを作った。

 

「ん、ちょっと硬いな」

 

殴った感想を呑気に述べていれば、

 

『――――――!!』

 

モンスターは、怒りを表すように寄り苛烈に攻め立ててきた。氾濫した川の激流のような勢いで身体を蛇行させ、押し潰すあるいは蹴散らそうとしてくる。

 

「なら、凍らしたほうが早いか」

 

バッと腕を怒涛に迫ってくるモンスターに突き出して魔方陣を展開した。モンスターは魔方陣に介せず迫って―――。

 

「凍れ」

 

魔方陣から吹雪く絶対零度の冷気にたちまち全身が凍りつき、モンスターは完全に氷の牢獄に閉じ込められ停止した。その光景を眺める暇も惜しまず、腕を横薙ぎに振るった一誠。一拍遅れて蛇型のモンスターの胴体は二つに崩れ落ちて地面に落下すると粉々に砕けた。

 

「よし、駆除終了。・・・・・うん?」

 

アテネ達の方へ戻ろうと振り返ると再び微細な地面の揺れが。その足を引き止めた直ぐにその揺れは大きな鳴動に変わった。

 

「ちょ、ちょっとっ」

 

「まだ来るの!?」

 

ティオナトティオネの二人の悲鳴を皮切りに、黄緑色の身体が地面から突き出した。

 

「やることは変わりない―――」

 

そう呟いた次の瞬間。一誠は眼を丸くする事態を目の当たりにする。地面から生えた謎の触手は不気味に蠕動し、一方で蛇型のモンスター達にも変化が現れる。まるで空を仰ぐように身体の先端部分をもたげたかと思うと、ピッ、ピッ、と幾筋もの線をその頭部に走らせ―――次には、咲いた。

 

『『『オオオオオオオオオオオオオオオッ!』』』

 

破鐘の咆哮が轟き渡る。開かれた何枚もの花びら。毒々しく染まるその色彩は極彩色。中央には牙の並んだ巨大な口が存在し、粘液を滴らせている。生々しい口腔の奥、薄紅色の体内で瞬くのは、陽光を反射させる魔石の光。

 

「蛇じゃなくて・・・・・花!?」

 

正体を現したモンスターに一誠が驚愕する。その形状から蛇と思いこんでいた細長い体は茎であり、顔の無い頭部は蕾だったのだ。花開きその醜悪な相貌を晒す食人花のモンスターは、一誠へ向ける意志を明確にする。更には地面から伸びる、数多の黄緑の突起物。

 

「次から次へと・・・・・」

 

全身から真紅のオーラが迸り、一誠を包みこむ。それがモンスターは過敏に反応して夥しい触手の鞭も同時に大きく口を開けて迫る。その瞬間、全身が真紅の鎧に包まれる一誠。その姿はドラゴンを模した金色の宝玉が身体の各部分にある頭部に鋭利な角が威圧を放つ全身鎧であった。

 

食人花は鎧を纏った一誠を介せず食らわんと押し迫る。しかし、

 

「ふはははっ、あたらん、あたらんのだよっ!」

 

その場にいる一誠の残像を残すほどの瞬動で完全に食人花を弄んでいる。食人花は執拗に追いかけていくも、触手で貫こうとしても全て空振り。

 

ガシッ!と触手の一本を掴む。何をするかと思いきや、食人花をグルッ!と回り始めて茎を一つに纏め、器用に結び始めて動きを封じこめた。

 

「雑草は土から根っこまで抜くことで処理したことになる」

 

一誠の手が真紅のオーラに包まれ、野太い丸太のように膨らむとソレは巨大な人の手と成った。

茎の部分を無造作に巨大な真紅の手で掴んだ時、身の丈を何倍にも超える巨大な真紅の翼を

羽ばたかす一誠によって、上空に飛ぶドラゴンによって食人花は地面から

引きずり出されそうになる。

 

抵抗は無意味だった。大通りの石畳が徐々に盛り上がり、微細な揺れを生じさせ―――轟音と共に

ソレは、出てきた。食人花の全貌が明らかになった。ソレは食人花のモンスターの尾に

当たる部分は丸く膨らんだ球根状になっていた。木の根のような何本もの根毛と一緒に、

触手の根元の辺りから生えている。あの球根はダンジョンに埋まると養分でも吸うんかな、と

一誠が憶測を立てていると・・・・・球根状からまた新たな黄緑色の茎を流動させ

醜悪な双眸を晒す食人花が口を大きく開けて迫って来ていた。

 

「ふんっ!」

 

ある程度の高さで食人花を横薙ぎに振り回す。駒のように。凄まじい遠心力に逆らえず、食人花は振り回される。

そして遥か空へと振り上げ、食人花より先回りして球根状の尾へ勢いが付いた飛び蹴りで地面に強く叩きつけた。すかさず一誠は真紅の軌跡を残す程の物凄い速さで食人花に迫り、自ら口の中に飛び込んで魔石を掴み取った時には口内から突き破って外に、それを他の食人花にも繰り返すこと数秒。

 

色彩を失って灰と化した食人花モンスターを背後にし、手に入れた魔石を手の中で弄ぶ一誠が立っていた。

 

「うーん?この魔石・・・・・あの時のモンスターと同じだな」

 

一誠の手の中にある魔石は、中心が極彩色、残る部分は紫紺色と見たことのない輝きを放っている。まあいいや、と片手に発現した金色の杖をトンと地面に付いた瞬間には食人花と戦った戦場は光を帯びて一人で勝手に修復し始め、何時しか戦場の爪跡がなくなった。

 

「アテネ!」

 

「は、はいっ!」

 

「このアマゾネス達の主神のところに行くぞ。―――報復だ」

 

今の一誠には逆らえないとどこか察するアテネ。しかし、思うところもあってアマゾネス達の主神を天界に送還する意志は固く決めていた。

 

「わかったわ」

 

シルと一緒に屋根から下ろす一誠。

 

「シル、悪いがここから別行動だ」

 

「は、はい・・・・・」

 

ポンと薄鈍色の髪に手を置いて撫で始める。それからアテネ傍に来させ、足元に展開した魔方陣の光が弾けた瞬間に二人の姿は死屍累々、阿鼻叫喚の大通りと化した場所からいなくなった。

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