デート・ア・クウガ   作:千藤 光

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14:02 陸上自衛隊天宮駐屯地格納庫


「ハァ…ハァ…」


香美の息は荒れていた。

それはクウガとの戦闘のためだと、香美は自分に言い聞かせた。


(負けた……)


先刻の戦いの様子が脳を過ぎる。

(おりゃぁあああああああああ!)

頬を掠めた紫色の大剣。その風の感触がいまでも頬に残っている。

「……」

手先が震えていた。

彼女が身に纏っているバトルスーツ、着用型接続装置(リアライザー)をフル稼働させた反動で、脳に多大な負担をかけたためでない。

「このままじゃ……」

震えを無理矢理押さえ込むように掌をぎゅっと閉めた。


「乾香美三尉。準備整いました!」

整備士の声が聞こえ、我に返る。

香美は専用ドッグに腰掛け、全装備を外した。

「ッ……ぐうぅぅっ!」

その瞬間、先刻まで感じていなかった疲労感と全身への激痛が体を襲った。

CR-ユニット。30年前の大規模な空間震の後、人類が手に入れた奇跡の装置。自分が思い描いた自称を、制限付きではあるが実現させてしまう奇跡のバトルスーツである。

その代償として、使用後しばらくは脳をはじめ全身に多大な負荷がかかり行動不能になる。

大体の場合は極度の倦怠感を覚える程度しかないのだが、香美の場合装備が最新型で他のCR-ユニットと仕様が異なるため、身体へのダメージは倍になる。

「やっぱ香美さんは一流だなぁ~」

香美は声をする方へ視線だけを向けた。そこにはツインテールで軍服姿の少女の姿があった。彼女が、先程の戦闘中に香美を救った隊員、剣崎一恵である。

手には赤と黄色のラベルのビタミンドリンクの瓶が2本握られてた。

「……」

香美も返事を返そうとしたが、身体への負荷が大きすぎて声を発することさえままならない。

「天宮駐屯地で1番の装備をここまでフルで使いこなせる人はそんなにいませんよ」

一恵はにかっと笑ってそういった。

「……」

だが、香美はくやしそうに唇を噛んだ。

「そんなに気を落とさないでくださいよぉ」

彼女は、返事を聞かなくても大体のことは察していた。

「たしかに、最強の装備で戦って4号に負けたけど、あれは4号が強すぎるだけで精霊にまで負けると決まったわけじゃ……」

「そう……じゃ……ない」

「え?」

香美の身体が多少回復したのか、上半身をゆっくりと起こして、口をひらいた。

「4号に……まけてしまうようじゃ、わたしは……」

そして香美は一恵が栓を抜いた瓶を受け取り、中の液体を一気に口の中へ流し込んだ。

「ぷは」

そして、口を拭い、誰に向けるでもなく呟いた。

「あいつを、超えることは、できない……」



Ep3‥宵闇

14:38 南関東医大病院

 

 

 

 

「しかし上条。コイツは一体どんなやつにやられたんだ。外傷が特殊すぎる。火傷の跡とも何かで切られた跡とも言えん。」

 

白衣を着た若い医師がカルテをぽんと叩きながら言った。

 

病室に三人の男がいた。

 

一人はASTとの激戦の末、気絶して運び込まれた沢村雄介。

 

もう一人は上条薫刑事。元は長野県警警備課に所属していたが、未確認生命体による一連の事件のため、今は警視庁に設置された未確認生命体合同捜査本部に所属している。

 

そしてもう一人は大室秀一医師。クウガこと雄介のかかりつけ医であり、上条の友人でもある。

 

 

「そのことは沢村が目を覚ましてから話そう。」

 

上条はベッドで眠っている雄介を見た。

 

上着は脱がされていて、頭や身体を所々包帯で巻いていた。

 

「うわああああ!」

 

「「うわっ!」」

 

雄介がいきなり飛び起きたことに二人は驚き、今まで出したことないような声を出してしまった。

 

「大室さん……俺……アイドルとの交際が発覚したら殺されちゃう……」

 

「いいから落ち着け。お前はどんな夢を見ていたんだ……」

 

大室は訳の分からないことをわめいてる雄介をなだめた。

 

「大丈夫らしいな」

 

上条はあきれ顔で二人を眺めていた。

 

 

 

 

 

「で話しておきたいことって?」

 

3人は大室の医務室に移動していた。

 

「大室は雄介が何にやられたか知りたいだろ」

 

「ああ、まぁ」

 

「そして、沢村は空間震の後何が起こったのか知りたいだろ?」

 

「はい」

 

そこまで話すと、上条は1枚の写真を取り出した。

 

 

「これは……」

 

 

「俺が戦ってるとこですね」

 

 

写真に写っていたのは、クウガが白髪の少女と夜色の少女を止めに入っているシーンであった。

 

 

「黒髪の少女。彼女は精霊と呼ばれている」

 

「精霊?」

 

雄介は写真と上条を交互に見た。

 

「空間震が起こる前後に出現し、辺りを吹き飛ばすんだ。空間震の原因とも言える存在だ」

 

「この子が、空間震を?」

 

雄介はまた写真を見た。雄介は一条の言葉が信じられなかった。この少女にそんな力があるとは思えなかったのである。だが、雄介があの場で見たことは紛れの無い事実だった。

 

「そしてこの白い髪の少女が自衛隊アンチ・スピリット・チーム。通称AST。その名の通り、精霊を殲滅することを目的とした部隊だ」

 

上条は、写真に写っているASTの少女を指差しながら言った。

 

「なるほど。彼女らの剣なら沢村にこんな傷を負わせることも可能だな…」

 

大室は顎を撫でながら写真を覗き込んだ。

 

 

「……」

 

「どうした?」

 

雄介は写真を見てからずっと黙っていた。

 

「信じられないのか?」

 

上条が写真をしまいながら言った。

 

「信じられないというより、信じたくないです。」

 

「え?」

 

「だって、俺が見た時あの子とても悲しそうな顔してたんです。そんな子が空間震を起こして街をメチャクチャにしてるなんて、俺、信じたくない」

 

そう言ってる雄介の目も、悲しみの色をしていた。

 

「そんな子をいきなりあんな武器を持って襲いかかるなんて、かわいそうですよ……」

 

医務室が沈黙に包まれた。

 

「救いたいと思ったか?」

 

沈黙を破ったのは、一条だった。

 

「当たり前です!」

 

雄介はそういいながら勢いよく立ち上がった。

 

「でも、俺らじゃ手出しはできない。」

 

だが、それを遮るように一条は言った。

 

「何でですか!? 未確認だって俺たちで……」

 

「そうじゃない」

 

そして上条も立ち上がった。

 

「未確認の場合、人が殺されてるから殺人事件として扱われる。そのため我々警察が動く。だが精霊の場合、災害派遣として扱われる。だから自衛隊の出番になる。我々の出る幕じゃないんだ」

 

「はあ……」

 

雄介は納得がいってなさそうな様子だった。

 

「それに、余計な戦いでお前にこれ以上危険な目に遭ってほしくないんだ。」

 

上条は雄介の肩を強く掴んだ。

 

上条は、責任を感じていた。

 

彼はまだ16歳の高校生である。偶然とはいえ、未確認生命体を倒す力を手に入れ、闘う宿命を背負ってしまった。そして、いつ終わるか分からない戦いに、これから輝かしい未来が待っている少年を巻き込んでしまった。

 

ただでさえ辛い思いをさせているのに、これ以上敵が増えると、雄介を崩壊させてしまう。上条は、一人の大人として、それが一番怖かった。

 

「それなら心配いりませんよ!」

 

「どういうことだ?」

 

上条の考えていることなど全く気にせず、雄介はお決まりの笑顔でこう言った。

 

「だって俺クウガだし、大丈夫です。俺、精霊も救ってみせます!」

 

「はぁ……」

 

上条は頭を掻きながらため息をついた。

 

(本当に大丈夫だと思ってしまう……)

 

本当は止めなくてはいけなにのに、雄介のその笑顔を見ていると、その言葉を信じてしまいたくなる。上条は、自分の甘さに呆れてしまった。

 

 

 

ヴーッ ヴーッ

 

 

そんなことを考えていたら、上条のケータイが鳴った。

 

 

「もしもし……はい。すぐ行きます。」

 

 

「どうしたんです?」

 

「壊れたトライチェイサーの修理が終わったと科警研から連絡があった。行くぞ」

 

「はい」

 

そして2人は大室に礼を言い、病院を後にした。

 

 

15:10 常磐自動車道

 

 

「変身が解けた?」

 

科警研のある千葉へ向かう車内で、雄介は未確認との戦闘のあとのことについて話していた。

 

「はい。空間震が起こる前だったかな? 相手の攻撃にやっとついて来れたってときに空間震の予兆? みたいなのが起こって、そうしたら急に身体が元に戻っちゃって」

 

「で、その後変身はできたのか?」

 

「はい。あの精霊の近くに友達がいて、そいつを助けようと思って走っていったときには変身できました」

 

「そうか。あとお前が言うイメージっていうのは?」

 

「あれは、九朗ヶ岳遺跡で見たのとか、クウガに初めて変身したときに見たのと同じ感じのやつでした」

 

「ますます謎だな」

 

「だから、精霊とクウガって全く関係ないってわけじゃないと思うんです」

 

「でも、空間震が初めて発生したのは30年前だぞ?」

 

そこで、車内に沈黙が漂う。

 

「う~ん……そうだ! 昔クウガと一緒に未確認と戦った女剣士の霊が精霊とか!」

 

「そんなバカみたいな話あるか」

 

上条はがっくりとため息をついた。

 

車は科警研へと走って行った。

 

 

 

 

**

 

 

 

 

 

とある路地裏

 

 

 

 

「ガドラ、しくじったようだな。」

 

あまり太陽の陽が差さないそこには2人の人間がいた。

 

正確に言うと、人に化けた生物が。

 

「うるさい! もっと人間が集まれば!」

 

激高してる毛むくじゃらの青年が1体

 

「だが、まだ全然リントを殺せてないぞ。」

 

美麗なドレスを着たバラのタトゥーの女が一体

 

「ふん!まだ時間はある。2日で576人だろ。余裕だ。」

 

ガドラと呼ばれたそいつはフッと笑ってみせた。

 

「このゲゲルを成功させる為にこの傷が残っているのだ……」

 

「それは頼もしいな。」

 

ピュウーーー

 

 

路地裏に風が吹き着込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー。はーくたびれた」

 

雄介が帰ったのは5時を過ぎてからだった。

 

「遅いぞ雄介~」

 

カウンターからおやっさんが顔をだした。

 

「士っちカンカンだぞ」

 

「へ?」

 

おやっさんが指を差した方を見ると、足を組んで不機嫌そうにコーヒーを飲んでいる雄介と、気まずい顔で座っているメガネの少女がいた。

 

客は閉店間際だったので2人だけだった。

 

「人を勝手に手伝いに行かせた挙げ句、こんな時間まで待たせるとはどういったご了見だ」

 

士は鋭い目だけを雄介に向けた。

 

「だって緊急事態だったし……バイクも壊れちゃったから……」

 

雄介は全く反省してない様子で答えた。このような事は今日が初めてではない。士は何度も、雄介の代わりとして働かされてたのだ。

 

「そ、それにお礼も貰ってるからいいだろ?」

 

開き直る雄介。

 

「コーヒーとプリンがそのお礼とはねぇ」

 

士は、一口も食べてないプリンをスプーンでつんつんとつついた。

 

「士っちそれどういう意味?」

 

不満そうな顔のおやっさん。

 

「そんなことはどうでもいい。ほら、いいのか?」

 

「どうでもいいってそりゃないでしょ……」

 

おやっさんの声を聞き流しながら、士は同じテーブルに座っている少女のほうに向き直った。

 

「あれ? 確か君は」

 

「『逢魔ヶ時 茜』です。あの、これ」

 

茜は、自分の隣の椅子に乗っていたカバンを雄介に差し出した。

 

「カバンを置いて出て行ったからな、それに気づいて持って来てくれたらしい」

 

「え? ごめーん! わざわざありがとう」

 

「ただ忘れ物を届けにきただけなら、わざわざこんな時間まで雄介を待っている必要はないんだけどな」

 

士は立ち上がりながら、茜を一瞥した。雄介もそれにつられて茜のほうを向いたら、茜の顔はほんのり赤くなっていた。

 

「どうしたの?」

 

雄介は首をかしげた。

 

「雄介やるなぁ~新学期早々。こんなかわいこちゃんから愛の告白だなんて」

 

「いやっ……そそそんなわけ」

 

おやっさんのその言葉を聞いて、茜の顔はますます赤くなった。

 

「もう、おやっさん。ちゃかさないの」

 

雄介は軽くため息をついた。

 

「ははっ悪い悪い」

 

「茜お前に話があるみたいだぞ。じゃ、俺は帰るからな。」

 

士はその言葉を残して、店を出た。プリンは結局残ったままだった。

 

「もう、せっかく作ったのに。このいけず。じゃ、このプリンはおやっさんがじ~っくりいただきまーす。じゃあね」

 

おやっさんは大袈裟に言いながら、厨房の奥に下がった。

 

「で、話って?」

 

おやっさんが見えなくなったことを確認してから、雄介は士が座っていた椅子に腰掛けた。手にはお冷やのグラスが一つ握られていた。

 

「……」

 

雄介が茜の様子をうかがうと、表情を見られないように俯いていて、話し始めるのをためらっているように見えた。

 

 

 

「あ、あの」

 

茜が口を開いたのは、グラスの氷が溶けて、コロン、と涼しげな音を立てたからだった。

 

「沢村さんが、未確認生命体4号っていうのは、本当ですか?」

 

「へ?」

 

ほぼ初対面の少女から突然そんなことを言われ、雄介はきょとんとなった。

 

「どうしてそれを?」

 

「沢村さんが電話に出たとき、25号が出たって聞こえてきたので、もしかしたらと思って、士さんに聞いたら、教えてくれました」

 

茜は、俯きながらも、少しずつ言葉を絞り出した。

 

「確かに、士の言うように俺はクウガだけど……でも何でそんなことを?」

 

少し間を置いてから、茜は口を開いた。

 

「実は、お願いがあるんです」

 

茜は、言葉を続けた。胸元を手で押さえつけて、苦しみに耐えているように見えた。

 

「私は、この時間になると……」

 

そこまで言った時だった。

 

茜は突然立ち上がり、全速力で店を飛び出したのである。

 

「茜ちゃん!?」

 

椅子が大きな音を立てて倒れた。

 

雄介が茜を追いかけたのは、その音が鳴るのと同時だった。

 

慌てて店を出て周りを見回したが、茜の姿は見当たらなかった。

 

「一体、どうなってんだ?」

 

雄介は首を傾げた。

 

てんで分からないことだらけだ。

 

精霊、AST、夜色のクウガ、今の出来事。

 

今日1日でどれだけの出来事があっただろう。

 

もう疲れた。今日はもう明日まで寝よう。そう思った瞬間だった。

 

 

 

 

「うわあぁ!」

 

 

頭上に何かの気配を感じ上を見上げたら何者かが空から攻撃を加えてきて雄介はそれを寸前で避けた。

 

 

 

 

一瞬という言葉はこの時のことを言うんだ。雄介はそう感じた。それくらい、あっという間で、一瞬の出来事だった。

 

雄介がさっきまで立っていたところはクレーターのように抉れていて、土煙が舞っていた。

 

風が吹き土煙が晴れ、雄介を襲ったものの正体が見えた。

 

「え? どうして……」

 

そこには、逢魔ヶ時茜の姿があった。

 

しかし、先程までの面影は全く無かった。

 

丈の短い橙色の袴に、肩だけ露出した形の白衣。髪も先程より伸び、クウガの角のような冠を被っていて、手には、光の刃を司った薙刀が握られていた。

 

その姿はまるで……

 

「精霊?」

 

もう訳がわからなかった。一体なにがどうなっているんだ? そういう疑問すら浮かばないくらい混乱が一層激しくなり、整理がつかない。

 

「ハッ!」

 

雄介が全ての状況を飲み込まないうちに、茜が薙刀を持っていないほうの手から黒い球体を放ってきた。

 

その球体は、空間震で空間が圧縮される際に見られるものとほぼ同じものだった。

 

「え? わあああああ!?」

 

雄介あっけなく吹き飛ばされた。

 

「グフッ! ああぁ……っ」

 

地面を数メートル転がり、雄介は気を失った。茜が立っているところには、もう誰もいなかった。

 

 

**

 

 

 

22:00 ???

 

 

「うぅ~ん……一体ここは?」

 

本日二回目の気絶から目を覚ますと、雄介は見知らぬ場所にいた。

 

そこで雄介は改めて周りを見渡してみた。

 

どこかの医務室なのか、部屋には自分が寝ていたのとあわせて6個ベッドがあり、奥の方には医療器具や薬などの入った棚などがあった。

 

近くの壁には、雄介が着ていた制服が掛けられていた。

 

雄介がパーカーの上からブレザーに袖を通したとき、入り口の扉が開き一人の女性が入って来た。

 

やけに眠そうな目をした20代の女性だった。

 

「よく眠れたかい? 沢村雄介くん。いや……」

 

 

 

「仮面ライダークウガ」

 

 

「はい?」

 

 

 

 

 

雄介は女性に連れられ、廊下を歩いていた。

 

「仮面ライダー、ですか」

 

「君は、どこでその呼称を」

 

「昔、学校の先生に教えてもらったんです。昔、人間の平和を守る、仮面のヒーローがいたって」

 

雄介はいつもの笑顔でそう応えた。

 

「『仮面ライダー』の伝説は、人々の心に生き続けているのだな」

 

白衣の女性は、眠たそうな顔のままで呟いた。

 

「あの、ところでお名前は?」

 

雄介はとりあえず成り行きでここまでついてきたのだが、まだ彼女の名前を聞かされてなかった。

 

「私は『村雨 令音』。ここで解析官をしている」

 

「解析官?」

 

雄介は首をかしげた。

 

「私は説明下手でね、詳しいことは今から行く先で聞けばいい」

 

令音はふらふらと歩きながら続けた。

 

「ただ、その前に言っておくことがある」

 

かつかつと無機質な廊下を歩きながら話を聞く。

 

「見ての通り、この世界の敵は、未確認生命体だけではない」

 

「はあ。」

 

「もちろん。精霊だって例外ではない。」

 

雄介は今日の事を思い出した。全てを破壊する空間震から出現し、ASTと激しい戦いを見せた精霊。だが……

 

 

「でも、精霊は未確認生命体とは違う。よく分からないけど、彼女は敵じゃない!」

 

それが雄介の本心だった。

 

ASTは、精霊は人類の敵だと言っていた。だが、クウガの目には悲しい表情をしている精霊の姿が映っていた。

 

本当に人類の敵ならそんな顔はしない筈だ。それに、『みんなの笑顔の為に戦う』のなら、精霊だって救わなければならない。ASTのやってる事は間違ってる。

 

そう思うと、精霊を敵視することなんて、クウガにはできなかった。

 

「君は、精霊を救いたいと思ってるんだね?」

 

「当たり前です」

 

答えはそれだけで十分だった。精霊が、意味の無い暴力によって倒される姿を、黙って見てるなんてできなかった。

 

「その言葉が聞けて嬉しいよ。」

 

さっきまで眠たそうに無表情を貫いていた女性はふわっと微笑んだ。

 

「着いた。入りたまえ。」

 

気づくと雄介と令音は大きな自動扉の前に立っていた。

 

令音が横に備え付けられている機材にカードをスキャンすると、扉が開いた。

 

開いたその先を見て、雄介は絶句した。

 

 

「連れてまいりました、指令。」

 

 

 

「………え?」

 

 

 

「『ラタトスク』へようこそ。歓迎するわ、仮面ライダー」

 

 

視線の先には、軍服を身に纏った五河琴里の姿があった。

 

 

大きく違うのは、可愛らしいツインテールが白いリボンではなく、黒と赤のツートンカラーのリボンで纏められてて、さらにいつもの弱々しくも愛嬌のある表情ではなく、勝ち気で相手を見下すような表情になっていたことである。

 

 

「し、しれい……? なんで?」

 

 

 

 

つづく




どうもお久しぶりです。絶賛修羅場中の千藤です。
ガワコス制作も佳境に入ってきて、尚且つWIXOSSの方も2週間後のCSが待ち構えていてそのことについて考えたり、そして学校のほうの用事もあったりともう大変でした。
そんな状況で、逢魔ヶ時茜のキャラ作りと、その後のストーリー展開も考えていたので、前回よりけっこう間が空いてしまいました。すみません。
令音さんと五河琴里指令バージョン、やっと登場です。ここから雄介ことクウガを巻き込んだ戦争(デート)が始まろうとしています。
おそらく前の使い回しは次回まででしょう。今回のお話も、2つのお話の断片を繋いで、そこに新に書き加えて完成させたのでそろそろストックが尽きようかというところです。
というわけで次回をお楽しみに。感想などお待ちしておりますので遠慮なく。
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