「おお! お〜〜」「これもいいよな」「あ、このケツなんか最高じゃないですか?」
小松基地の設けられたMS社・自衛隊共同の休憩室でMS社の社員と自衛隊が1冊の本を囲み、印刷された画を指差しながら何かを言い合っているのを壁越しに顔を半分だけ覗かせて睨み付ける様に見る眼が4つ存在した。
「なんか……その……」
遠慮気味に呟いたのは赤い目の持ち主はロシアから亡命して自衛隊に保護され、とある作戦中のMIAをでっち上げてMS社へと逃亡し、新入社員としてこの地に帰って来た特異な経歴のを持つ絹の様な白髪にスピネルの様な赤い目の美少女、ベルクトだった。
「なんか会話が下賤です」「多いに不愉快にさせますね」
ベルクトの上から覗くのは敵だった筈が今の部隊の隊長に拾われ、異性としても、人間としても惚れたからこそこの場所にいる濡羽色の髪と目を持った大和撫子、片宮姉妹が苛立つげに呟く。
「女性がいると言うのを考えて頂きたいですね」
片宮姉妹の上からは緑のおかっぱ髪に琥珀色の目を持った一見すれば何処かのお嬢様を思わせる風貌の少女、ファントムがその額に青筋を浮かべながら握り拳を握っていた。
「あ、このファントムいいな」
「アレですね。エッチィって奴です」
いや、その感性はどうなの? と総スカンを喰らう自衛隊員を叩いた内の1人、PMCのエースパイロットであり、睨み付ける少女4人の中から最もヘイトを稼ぐ人間が放った言葉に片宮姉妹の堪忍袋の緒が切れた。
「こんな所で何を見てるんですか!」
詩鞍が素早く雑誌を引っ手繰ると詩苑へと投げ渡して、取り替えされない様にしつつ、中身を受け取った詩苑が改め様とするとやはり気になるのかベルクトと妙に顔が赤いファントムも覗き込む。
「……戦闘機雑誌?」
ベルクトの第一声にファントムが続く。
「カタログですね。額が可笑しいですが」
どれもドルやユーロなどの外国通貨でとんでもない価格が表示されている。
まあ、買う側がPMC。それもこのカタログは改造機専門であるが故にエース向けであり、その額はパーセンテージに戻せば、一般人が新車や中古車を買う様な価格帯だ。
「こんな車を売るかの様に気安いんですか?」
「どうなんでしょう? Fー2Xは隠れディーラーからの仕入れですが」
片宮姉妹の言葉も仕方ないだろう。
今までは鹵獲機体やディーラーとの暗号の様な言葉ややり取りでの購入。最近ではバトラの高い買い物でベトナムの地で行ったキャスパーとの1on1での商談など、こう言った雑誌を使った売り込みが有るとは思えなかった。
そんな事を含めた姉妹の言葉にバトラは頷いて答える。
「ディーラーとの縁が強い場合は要らない。ただ、そう言うのがしっかりしていない新生エース向けだよ」
「ならどうしてバトラさんがこんな雑誌を?」
ベルクトが首を傾げる。
その光景を見た自衛隊の1人が倒れると周りの隊員が『傷は深いぞ! 生きろ!』『落ち着いて耐G呼吸をするんだ!』『このままだと尊死するぞ!』『担架だ、担架持ってこい!』『ついでにAEDもだ!』
後ろの阿鼻叫喚を尻目にバトラが適当な椅子に座る様に進めると何処からかホワイトボードを持って来ると黒ペンで日本語の文字を書く。
その字は『PMCパイロットの収入源』と書かれていた。
「教導ですか?」
「なんで、ファントムも座ってんのか知らねーけどこのまま進めんぞ。俺たちの収入源はなんだ?」
「会社の基本給ですね」
「詩鞍の通りだ。俺たちも会社員だ。少ないながらにそれも有るがそれで武器を買うのは難しい」
「それと戦果報酬ですか」
「詩苑も正解だ。パーセンテージではこれが一番デカイ。高給取りは総じてエースだな。武器の購入もこれから捻出される」
「派遣報酬でしたっけ?」
「ベルクトも分かってきたな。俺たちを派遣して基地に残留させるにも金を取る。まぁ、売約されてその間の仕事ができなくなるから拘束期間や任務難易度によって金出せって奴だ」
バトラは言われた3つを丸で囲む。
「それらを含めて三大報酬だ」
「それを教える為にこんな事しないでしょう? 本題に入っては?」
バトラの説明にファントムが先を促すと先程の雑誌をバトラは開く。
「此処で副業での報酬も加わるが、お前らは此奴を作るのに掛かる人がどれだけ要るかわかるか?」
そう言われて開かれたのは電子戦機部門のページでそこにはEAー18Gの改造機の画像が何枚か添付され、日本語と日本語の文字が並べられている。
この画像のEAー18Gだが、まずは機首の延長と3つ膨らみの追加、機首に合わせてバランサーと機動性向上の小型カナード翼の追加にストレーキの延長、更にストレーキが発生される空気の渦から尾翼を守りながらブレンデットウィングボディを意識した形状になる様にデザインなコンフォーエルタンクの追加。
固定装備では主翼の端に搭載された電子機器を尾翼の頂上に移動してミサイル搭載量を回復しつつも機首部の3つの膨らみの内機首横の2つは固定武装として12.7mm機関銃を2基2門を基本搭載とし、一番大きい機首下の膨らみには二連装型12.7mm機関銃か螺旋弾倉対応スリム型20mmリヴォルバーカノンないし電子装備の追加搭載が行える。
正しく原型レイプを受けたEAー18Gを見て全員が首を傾げる。
「まあ、此処に掲載される奴は飛行機の各部門の有識者が最低で3人、有識者の意見を現実的にする技術者が各所で最低3人に現実的な案を形にする職人が最低でも1人、そして現実的で有るが常軌を逸脱せず、常識に囚われない狂人が1人だ」
「あ、成る程。つまりはバトラさん見たいな狂人はアイデア料でも稼げると」
合点が行ったと話したファントムの言葉で残りの全員がバトラが雑誌を読んでいた事が分かった。
つまりは自分の案が採用されていたならそれで金を請求出来るからだ。そして雑誌の文章にも武装やコンフォーエルタンクの案がバトラからのアイデアである事が掲載されていた。
「正解だ。要らないと思うけど、ご褒美は欲しい?」
「部屋の鍵を開けておいて下さい」
「罠仕掛けておくわ」
ご褒美とは言えない言葉にファントムは内心で罠さえ突破すれば何してもいいよと判断したのかやってやると雄叫びを上げるが表では面白くないですねと仏頂面を浮かべている。
「それなら普通に通達来ませんか?」
「来るよ。こういうのはトラブル回避で本社経由で社内同士でしかしないから」
ならどうして雑誌を開いているのかベルクトが再び問い掛けるとバトラは苦笑いを浮かべながら企業が作る正規改造品のページを見せる。
この雑誌には所謂プライベーター達の機体と改造機を商品として扱う企業、車で言うゲンバラの様な企業が出展するプロフェッショナル達の機体が同時に掲載されている。
「何か買うんですか?」
「本社が戦力強化で新しい武装を与えるからその武装用に選べって言う通達」
「? 何が来るんです?」
「ADFwー01の背面専用武装」
何を乗せるつもりだよと思っているとその武装の資料を見せるとファントムが顔を青くする。
その武装とはEPCM下でも問題なく動ける無人機の制御ユニットだった。
「って! 実験武装じゃないですか!」
更にファントムは上海上陸作戦で裏切ってきた無人機ブロウラーを思い出す。
ザイにハッキングされ自分達を撃ってきた無人機とアメリカのドーターを操るF/Aー18Eのアニマ、ライノもさえも撃って来たあの作戦でファントムは機体の制御ユニットであるアニマはあくまでも火器管制装置、グリペンと慧の関係が最も望ましい形であると認識しだす機会にもなった。そして同時に無人機という存在に対する生理的嫌悪も抱く切っ掛けとなる。
無論ながらバトラは長い事……よりかは濃密な関係を築いているファントムがそう言った事を抱いていることは知っている。だが、今回の話はバトラ個人としては戦力強化などの業務的な所では無く、今回の商談相手が心情的にどうしても断り難い相手であること、そしてこれが本部から新型ザイのデータを獲得した為の特別報酬でもある為に取り敢えずは買うつもりである。
「で? お相手は、女性ですか?」
ファントムも心情的な意味で断り切れないバトラを悟ってか何処か威圧的ないし怒気を僅かに孕ませた声で問う。
「……いい「嘘ですね」……何でベルクトが……」
ファントムか片宮姉妹が嘘を見抜くと思っていたが、言い当てたのはベルクトだった事もあり手強い味方が出て来た事に頼もしいと思うと同時に恐ろしいと思ってしまう。
「はい、女性です……」
「その方から何を買うつもりで、いつ来るんですか?」
「UAVです。そして今日の午後、民間エリアで飛行機で乗り付けて、そこから徒歩でこっちに「来ちゃったわ」
バトラの背後から無音で近付き、抱き締めて来た美人女性を見てファントムとベルクトは固まり、片宮姉妹は口と目を開いて固まる。バトラは早過ぎる登場に固まっていたが直ぐに復帰してブリキ人形の様な動きで顔を上に向ける。
「誰? あの人」
「アマーリア・トロボフスキー。私の実家、ダッソー社のUAV・兵装部門の部長兼兵器ブローカーであり、UAVエース。今回はバトラに売るUAVを勧めに来たらしい」
金髪碧眼の活発少女という言葉が一番合う雰囲気を漂わせるイーグルの言葉にアマーリアを護衛していた紫帯びた黒髪長髪のキャリアウーマンという言葉がぴったりなラファールが答える。
「アマーリア・トロボフスキー。ダッソー社のブローカーですね。確かにバトラさんほどの腕であれば常連、上客かもしれませんが、馴れ馴れしさが過ぎるじゃないですか?」
ファントムのその言葉にバトラは落ち着けと手で制し、アマーリアも自立するまでの子供を育てきった様な母親が持つ落ち着いた雰囲気でファントムに答える
「彼とは客と店員って関係だけじゃないのよ」
「ヴァラヒア事変の時に出会ってね。終局してからは自分の義息子にならないかって誘いも来たんだ」
それを聞いた片宮姉妹も何となく理解してしまう。
バトラ自身は悪ぶろうとするがそれでも隠し切れないお人好し、優しさが滲み出てしまう。巷で言うただ素直で優しいだけでなく少しは悪げがあるがそれが可愛らしい感じになってしまう息子や孫の様な雰囲気になってしまっている。
それに合わせて親しい友人や当時は片思いだが寄せられ、寄せていた相手が死んだとしても変わらない雰囲気に隠された薄幸感が子供がいないアマーリアの隠された母性かなにかを刺激してしまったのだと。
「アマーリアさん。時間は速いですが商談を始めましょう」
「もう! 固い、固すぎるわ。バトラちゃん。家族とお話しするつもりでいいのよ?」
歳の差は親と子の差が2人だが、アマーリアは腐っても美人。バトラを狙う乙女4人から見れば十分過ぎる強敵である。それを察してか、胃に穴が空きそうなので早く進めて下さいと目で訴えるバトラにアマーリアは残念そうにしながらも仕事の目付きへと変わり、資料を見せる。
内部は当たり障りの無いジェットエンジンを搭載した無人機達が占める中でバトラの目に留まった機体があった。
「なぁにこれぇ……」
見せられた無人機は三胴式の機体。エンジンはターブプロップエンジンを2基に串型配置でジェットエンジンが搭載されている。
胴体中央部は蝙蝠の様に幅広でそこに内臓懸架で2発、外部懸架で4発に20mm機関砲を2門備える。
「無人機同士のドンパチに限れば機銃が過剰ですよ」
無人機の搭載機銃としては無しか12.7mmが主流だ。20mmクラスからは重量的な問題で余り乗せたがらない。
それを聞いたアマーリアは頷いて答える。
「これね。航続距離重視の機体だけど、搭載量とか機動性とかは他と同じ位あるのよ」
性能諸元も悪くなく、サイズ的にもFー5クラスの小型機を買うと考えれば1機の予算で2機と保守部品が幾らか買える価格帯である、何よりもオプションパーツ次第では母機誘導だが、長距離ミサイルの運搬・発射もこなせる上に無人機にしては大柄で航続距離もあり、拡張性の高さ故に他の無人機の空中給油機としても運用可能な事もバトラは魅力に感じていた。
「あ、これは全翼機ですか?」
ファントムも気にしているのか覗き込んだ時に視界に飛び込んで来たのは全翼機の無人機で全体が蝙蝠の様な見た目をした半ステルス性能を持つ機体だった。
性能としてはターボプロップとジェットエンジンを1基づつ搭載したオリジナルの串型配置エンジンを1セット2つを搭載してマッハ1を超える程度の速力を有した上で完全内臓式で6発を懸架した上で機銃は機首横に20mmか30mmの機関砲を2基搭載する。
「ターボプロップ邪魔では?」
「これが重要なのよ」
思った事を呟いたファントムだが、完全ステルスのジェットエンジンのみの型では行動半径の問題で付いて来れ無い仕様になっていた。だが、こっちの型ならターボプロップの性能がいいのか巡航速度ならターボプロップだけで追い付けるので燃費向上による行動半径の増加でバトラの行動半径に付いて来れる機体に仕上がっていた。
「こっちは対地向けでしょうか?」
詩鞍が見つけたのは余りにも異質は無人機だった。
形状こそ普通の後退翼機だが、胴体に対して長い主翼に2基のターボプロップエンジンを推進式で搭載する事で作った余剰範囲のエンジン前方にレーダーなどの電子装備を納めた事で空いた胴体中央に、螺旋弾倉式50mmリヴォルバーカノンを搭載した上で翼にも多数の兵器を懸架出来る。
「Aー10みたいな機体と一緒に使うって事が多いわね」
速度はAー10程度で有り、無人機故に広域殲滅力は劣るが機銃での貫通力は優れている。運用次第ではAー10程の速度の機体なら専属の対空護衛機体としても使える。
これも魅力的に見えて来た詩鞍だが、詩苑は別の機体に目が付き、その内容を見て絶句した。
「水陸両用水素ロケットUAV……」
半格納式のフロートを2つ搭載した無人機で、水上に着陸する事で自動で水素燃料を作り出し、ロケットエンジンへと補給、点火する事で推力を得る無人機だ。
武装は胴体に無誘導投下型兵器を2発まで外部懸架し、胴体を挟む様に配置された爆弾倉に無誘導投下型兵器を6発まで搭載出来る。電子機器は無人機の操作に必要最低限のみと安い。だが、武装が貧弱かと思っていた詩苑だがアマーリアが爆弾発言を投下した。
「母機の誘導が有れば大型対艦ミサイルなら2発、ペンギンなんかの小型なら8発、強化型ボディなら大型対艦ミサイルを3発まで強化出来るわ」
速度性能も現行ジェット以上の速度が出せる上に専用コードで牽引すれば追加で対艦ミサイルを運べる。使い方次第では時間に糸目をつけなければ立地次第では無限に行動できる。
Fー2Xの対艦性能強化には持ってこいの無人機型ハードポイントの様な運用が出来る事に魅力を感じた詩苑はこれもいいですねとバトラに上目遣いで勧めるとアマーリアもこれでもか勧めて来る。
「べ、ベルクトお前は?」
多勢に無勢。そう判断したバトラはベルクトに話題を振って2人から逃げようとする。
振られたベルクトも一瞬だけ驚くが直ぐにバトラの意図を理解したのか資料のページを結構な枚数を捲ってコレですと見せる。
「それってアクロバット用よ?」
アマーリアがベルクトの指した写真を見て首を傾げた。
中央がVを逆さにした様にくり抜いた独特な形状の水平尾翼を持った胴体びジェットエンジンを1発と逆ガルウィングの前進翼にも後退翼にも見える独特なレイアウトの主翼には半格納式の大出力小型モーターを推進式で2基搭載し独特な形状の機体だった。
「ん? 元は戦闘向けなのか?」
使い手を選ぶ程の機動性故に扱い切れなかった事と機体形状に加えて、作戦行動をするには胴体中央に増槽を付けなくてはいけない為に武装が制限される問題で短距離ミサイルしか載せられないなどの制約も多く成功しなかった機体だったが、バトラはミサイルの豊富さに惹かれた。
翼端に1発づつ、主翼の斜めった部分に上下で2発づつ、モーター部分に1発づつと12発。機銃武装は12.7mmをモーター部分前部に二連装を1基づつ搭載している。
「あ、でもこれじゃないとドーターについて行けなさそうだな」
今までの無人機は動画もタブレッテルで見ていたバトラ達だが、対G無視の機動が出来る無人機でも機動性ではドーターにはついていけない為に対ザイ戦では追加のハードポイントとしか期待出来ない無人機だったが、この機体だけはドックファイトでも戦える性能を持っていた。
「エースかプロフェッショナル以外は置いてけぼりにする機動性にミサイル携行量……これ以外の選択肢が無いのでは?」
「ファントムも話も理解できるが正直に言うと空対空しかできないのはちょっとな……」
単機が単機が重要なPMCでは単能機は扱いに困る場合がある。悩むバトラだが、本社からは値段は気にしないから買いたい奴買えと許可を貰っている。
「この5種、3機づつ」
「わかったわ。直ぐに用意出来ると思うわ。ただ、ベルクトちゃんの奴はアクロバット用に外された奴を付け直ししないといけ無いから少し待って頂戴」
そう言いながらアマーリアは契約書を取り出し、バトラも急ぎでは無いからちゃんとした奴を寄越してくれと言いながら必要事項を手慣れた様子で書き込むとアマーリアは急用でフランスに戻る様にコンサルタント兼ボディーガードに言われると名残惜しそうにしながらも去って行く。
「楽しみですね」
「あわよくばスライス用の機体に出来るかもな」
「いい案ですね」
笑い合うファントムとバトラだが、後日に本社から少しは自重しろと言う文句と試験運用武装のデータと機体が交換条件に変えられてバトラはorz状態になる事には誰も予想だにしなかった。
あ、全てのガーリーエアフォースの二次創作を読んでいたらわかると思いますが最近はなんかライノの人気なので媚び売っとこうかと自分のボツ設定案からグラウラーが出ました。
ボツ案でもあるので使いたかったらパクって下さっても結構です。
自分は仕事柄パクられる事に関しては寛容的というかパクられるアイデアが一流でパクられないアイデアは二流以下という考え方です。