バトラ「打ち切り感が否めないが?」
終わり方は重要じゃない。終わったという事実が重要なのだ。(開き直り)
バトラ「………何も言うまい。何故に遅れた?予定なら先週に投稿出来たはずじゃ?」
PS4配備して帝国軍で同盟軍血祭りに上げてました。
バトラ「PS4配備おめでとう。これは餞別だ」
お。何くれ………グァアアアアアア(フォースチョーク)
バトラ「暗黒面の力を思い知れ」
『グキッ』『ドサァ』
真夏のある日の小松基地の食堂で食事を取っていた。
「慧さんたちは今頃、厚木で何してるでしょうね」
そう呟くのは琥珀の瞳にフリルのように波打った袖口にリボンがあしらわれた白いシャツを着て、下は落ち着いた紫色のコルセットスカートと言うお嬢様然とした印象を与える服装だが頭髪の鮮やかなライトグリーンがその印象を否定する。
その少女の名をファントムと言う。
ファントムは食べていたナポリタンの皿にフォークを戻してから、水の入ったグラスを傾け喉を潤す。
「歓迎パーティーで御馳走かも……イーグルも行きたかったのに〜!!」
そうカレーを食べる手を止めてスプーンを離さぬまま文句を流す少女はイーグルと言う。
金髪にサファイアのような青い瞳を持ち、黒い女性向けタンクトップに腹まで行かない程度の長さのデニム生地の上着を羽織った白い短パンの活発な印象を与える。
「まあ、出発から四時間経過だ。厚木に着いたとしても歓迎パーティーはないだろうな」
炒飯を飲み込んでから、冷ややかに言い放つ少年。
白髪に真っ白い肌と寒色に埋め尽くされた顔は冷たい印象を与えるが眼だけが透き通ったサファイヤの様に青く、それが全体的に幻想的で美しい印象を回りに与える。
身体には何処の国とも言えぬ青い迷彩服と、近づき難い印象をそこに付加してしまい残念だ。
その少年をバトラと言う。
「しかし、米軍もこちらの事はお構いなしですね」
ナポリタンを飲み込んでからうんざりした様子で話すファントムにバトラも水で喉を潤してからうんざりした様子で答える。
「トップは自分が言えば動いて当たり前だと考える。あそこはそう言う国だ」
「でも、なんで慧達と片宮達は厚木に行ったんだろう?」
イーグルはカレーを口に運ぶ。
「慧は彼方さんの都合。片宮姉妹は第七絡みだろうさ」
今回は視点をずらして、厚木組に視点を移そう。
「私達はわかりますけど、なんで慧さんたちも?」
詩苑が助手席に座る八代通に投げかける。
場所はバンの車内で目的地は小松基地から数十分行った先の鳴谷家だ。
「お前達は米軍への挨拶回りだろうが、慧・グリペンペアは彼方さんからの要望だ。全く何がこっちの全アニマとMS社のAJZ戦闘機を持ってこいだ。出来るわけ無いだろう」
八代通がイラついたのかダッシュボードを蹴る。
そうこうしている内に鳴谷家にバンが到着する。
八代通はこれから外出しようとする慧を何も言わせずにバンに乗せ、走らせる。
「ごめんなさいね。明華さんには私達からも口添えしますから」
「いいよ。面倒くさくなるから、今回は何ですか?今日は休みの筈ですけど?」
「先方が直前まで曖昧にしていてな。ついさっき今日これからと来た」
「先方?」
「アメリカ軍です」
「ありがとう詩鞍。でも、何でアメリカ軍が?」
「俺も分からん。ここで説明しても中途半端で余計に混乱するだろう」
「わかりましたよ。顔合わせだけなら一時間見てればいいですよね?」
「残念ですがそれは無理です。私の目的地は神奈川県米軍厚木飛行場。往復で六時間です」
神奈川県の中部にそれは存在する。
大和市と綾瀬市をまたぐ広大な敷地は数値にして506・9ヘクタール。この広さは小松などすっぽりと収まってしまう。
その広大な敷地では70機以上の軍用機が配備され常時千人以上の軍人が勤務し横須賀港湾設備と連携して艦載機を絶やさぬ様にメンテナンスを行う。同じ役割を担う基地は日本には無く、役目・規模共に在日米軍の最大級にして重要拠点だ。
そんな場所に慧・グリペンペアと片宮姉妹はチャーター機で降り立つ。
「慧さんも着陸の衝撃に備えてしまうみたいですね」
「兄様に一回だけ小型のプライベートジェット機に乗せて頂いた時はもう少し衝撃は無かったですね」
「兄様の腕と比べられる機長の身になりなさい」
片宮姉妹も慧も戦闘機に乗り慣れているために如何しても衝撃に備えてしまう様だが今回の機体は旅客機で専門のパイロットと言う事もありそれ程衝撃は来ない。
機体は指示された場所に駐機されると可動式タラップが接続され昇降口が開く。
慧が迷彩服を着込んだ米軍軍人の見上げる視線に怯みながらタラップを降りて行く。順番は前から八代通・慧・グリペン・詩苑・詩鞍だ。
片宮姉妹がタラップに乗ると一部の軍人が手を笑顔で振るのを見て片宮姉妹も手を振りかえす。
全員が地上に降りると硬い靴音が横から聞こえそちらを向く。
「ウェルカム」
細身で背に高い白人が立っていた。手足は細く肩幅に開いた脚がコンパスの様に見えてしまう位に細い。痩けた頬と落ちくぼんだ眼窩に尖った顎が印象的な身長2mの白人男性だが、猫背なので圧迫感が無い。
歓迎の言葉を発しているが八代通の姿を見た途端に暗い視線を向ける。
「ひ、久しぶりだな。こうして会うのは二年振りじゃないか?」
イントネーションは正確だがややどもりのある日本語。
「別に会う理由も無かったしな。ネットでお前の論文を読んでいるが、相変わらず人の後追いばかりで新味がないから直接議論する気にならない」
肩を無愛想にすくめる八代通を見て長引きそうだと考えた片宮姉妹は少し席を外し、第七艦隊の艦載機パイロットと久々の再会を楽しむ。
その後ろで八代通とウィリアムが口喧嘩を展開して、横では青髪の少女にグリペンと慧が凸られていた。
「ライノ」
ウィリアムのきつい口調で全員がそちらを向く。片宮姉妹は八代通の側に戻る。
戻っている間にライノとウィリアムは何かを話した。
「あ、改めて自己紹介をさせてくれ。DARPAのウィリアム・ジャンケルだ。専門は人口知能だが今ではアニマ・ドーターが専門だな。このライノも我々の作品だ」
ライノが芝居がかった動作でお辞儀をしてから言葉を発した。
「
にんまりと笑うライノに慧が慌てて頭をさげる。
「鳴谷 慧です。で、こいつが」
「JAS39D-ANM、グリペン」
「片宮 詩苑です。こちらは」
「双子の片宮 詩鞍です」
令嬢を思わせる一礼を見せる片宮姉妹だが、グリペンは少し頭を下げた位だった。
「詩鞍。作戦って聞いてますか?」
「いえ、何も。初めて聞きますよ」
ひそひそとした声で話す。
「な、なんだ、何も聞かされていないのか」
非難めいた視線を八代通に向けるウィリアム。
「急な呼び出しだったからな。全員纏めてやった方が楽だろう」
「お、横着者が」
肩をすくめて話す八代通を非難する。
「まあいい。我々が行うのは上海上陸作戦だ。大陸に橋頭堡を築き反攻の足掛かりにする」
「上海を………取り戻せるんですか」
慧が期待の眼差しをウィリアムに送る。
「無理じゃ無いでしょうか」
詩鞍がその空間に水を差す。詩鞍の脳裏には前回の作戦。海鳥島ザイFOB攻略戦の壁の様に迫り来るザイの光景だった。
「ウミドリ島の件は此方も知っているためにだからこそアメリカは東太平洋の第三艦隊を第七艦隊と合流させた上にアニマを導入する。その上で日本のアニマ達も協力してくれればきっと達成出来る」
力強く頷くウィリアムを見て、慧は体が震えた。その震えは恐怖の震えでないことは顔に浮かんだ笑顔が証明していた。震えながらもその両手の拳はきつく握りしめられている。
(母さんの仇を討つ)
こみ上げた衝動は、だが唐突に告げられた冷ややかな言葉に押しとどめられらた。
「戦場に…空に憎しみを持ち込もうとしていませんか」
「え………」
「三年前の戦争でお兄様が最初に教えて下さったは『空に、戦場に憎しみを持ち込むな。持ち込んだ者から犬死する』でした。今の貴方はその様な気がしたので声をかけさせていただきました」
「………大丈夫。ごめん」
弱々しく謝る慧にほんの少しの微笑みで返してウィリアムに向き直る。
「第三、第七艦隊とアニマ4機にAZJ戦闘機3機合わせてだけで中国に上陸する為の戦力にしてはいささか質が足りないのでは?勿論、兵器の質です」
「し、心配する必要は無い」
ややどもりながらもその目は自信を宿している。
ザイのEPCM下では通常兵器は鉄の塊に過ぎない。米軍は頼みの綱の
この現状を知る者なら中国上陸は夢のまた夢の話だと片付ける。
「アニマ・AZJSが対ザイのアプローチではないということさ」
頭上を通り過ぎて行った黒い航空機を見るまではだ。
蒼空を複数の航空機が駆け抜けて行く。
大型の直線翼に丸み帯びたストレーキの精悍なシルエットは先程までエプロンで佇んでいたF/A-18ホーネットだ。それが四機。二個編隊で飛んでいる。
ほんの少し機体を傾かせての旋回に伴い主翼に陽光が反射して輝く。迎え角で上昇し高度を稼いでいく。一連の動作の間も若干広いが二機の雀蜂は不可視の糸に繋がれた様にフォーメーションを保ったまま上昇する。見事な編隊飛行だった。
見事な編隊飛行をする雀蜂の10キロ先には黒いブーメランの様な物が飛んでいた。
黒いブーメランに挟撃を行う様に雀蜂が二機ずつ左右に別れる。
雀蜂から二本の白煙、もう一機も同様。四本のミサイルがブーメランに飛んで行き、僅かな間を置いてもう一個の編隊からも二発ずつ発射される。計八本のミサイルはどれも命中コースに違いなく回避は不可能に思えた。
が。
空は鮮やかな青を変える事は無かった。爆発も黒煙も発生せず、広大な青いキャンバスに目標を失ったミサイルの白煙が色を付けるだけだった。
ホーネットのパイロット達は見失った敵機を探しているのか直線飛行をしてしまっていた。
直線飛行をしていたのは5秒にも満たない時間だが、黒いブーメランにとっては敵のマーカーを戦術マップから消すには充分な時間だった。
事実、ホーネットを示すマーカーが戦術マップから一つ消えている。
そこからは、蹂躙・虐殺と言う言葉が似合うだろう。なす術なく雀蜂が戦術マップから消えて行った。
最後の一機が消えてからオペレーターの作戦終了を告げる言葉が紡がれ、モニタールームに誰のとは分からない溜め息が漏れた。
「ど、どうかな我々の研究成果は。中々の物だと思わないか」
ウィリアムは誇らしげに話す。
慧、詩苑、詩鞍はいきなり基地の建物に招待されてつい先程の模擬戦の映像を見せられた状況について来れずにいる様だった。八代通は腕を組んで椅子に座っており何も話す気はない様に見え、グリペンは訳が分からないと小首を傾げている。この空気の中慧が口を開ける。
「ええ、凄いと思います。凄いですけど…あれって何ですか?」
その言葉に詩鞍、詩苑の順で言葉を発した。
「ドーター………とは思えません」
「とすると無人機ですか?」
詩苑の言葉にウィリアムが薄い笑みを浮かべる。
「FQ-150Aブロウラー。対ザイ用の無人戦闘機だ。ライノがベースだが他国提供の戦闘データを解析してソフトウェア化した物を組み込んでいる。戦闘経験値なら初期のアニマ・ドーターと同じ……いや、それ以上の筈だ」
この話に慧の表情が明るくなる。中国上陸はおろか奪還さえも夢では無いと考えているのだろう。
「ドーターの劣化コピーと言う訳ですか。EPCM対策は如何なんですか?AZJSを持てないアメリカなりの解決策があるんですか?」
「も、勿論だ。我々のデータベースにが過去のEPCMパターンが大量に蓄積されている。そこからアニマがどう判断し、どう行動したかを解析すれば自ずと適切なアルゴリズムが出てくる」
「量産型と同じ理論ですか」
「その通りだ」
量産型AZJSはパターン化されたEPCMを元にそれを打ち消すジャミングを発生させる物であり、脳波との同調を必要としない又は複数の脳波との若干な同調を行うと言う物だ。
「ふん。粗悪な形態模写が実戦で通用すると思っているのか?大方EPCMの影響を解明出来なかったから統計に逃げたんだろう?」
八代通の挑発的な物言いにウィリアムも挑発的な物言いで返した事により専門用語が混じった高度過ぎる子供の口喧嘩が発生する。それを見た米兵に食事でもどうかと提案されてそれに乗る事にした一同はフードコートへと歩く。
その道中に慧からある質問が飛ぶ。
「どう思う?あの飛行機」
「戦力としての期待度は低いですね。純粋な工業製品ですから数は揃えられますがパターン外のEPCMが飛んできたら役に立たなくなりますよ」
基地の地図から慧に視線を移した詩鞍が冷たく言い放つ。
「詩苑は?」
「動きが単調なのに加えて反応速度も鈍いですから数が揃えら無いと難しいかと。あれでは逃げ回るのが精一杯といったところでしょうか」
少し考え込んでから答える詩苑。
「グリペンは?」
「詩鞍と詩苑に同意見。ただ、数が増えたら別。EPCM下でも充分に動ける仲間は貴重だから」
「八代通さんは嫌っていたけど?」
「ハルカは味方の損害を嫌うから。墜とされる事を前提に無人機を投入するのが嫌なんだと思う」
「そうか………バトラならどう言ったかな?」
「今回の相手は人では無いので兄様が何というか分かりません」
「兄様は無人機を嫌います。『偵察は分かる。でも戦闘まで無人機にやらせたらそれは戦争じゃ無い。本当の意味でのルール無きゲームになる』とおしゃってましたし」
バトラの言葉の意味を理解出来ないのか首を傾げて分からないと呟く慧だが夏の日差しがそれを視界諸共遮る。
「あ。丁度良いところに」
外で出たところにライノに捕まった。
ライノの手には右に見慣れたピザ屋のロゴが描かれた紙パックが4つ。左にはかなりのサイズのこれまた見慣れたファストフード店のロゴが描かれていた。
量を想像した片宮姉妹が胸の上の部分を押さえる。
「その量をお一人で?」
詩鞍が口を開いたがその声は震えていた。
「あはは、買い過ぎちゃって。ウィリーとの打ち合わせはお終い?」
常に眠たげな瞳が笑みで若干細くなる。
「終わったと言うか、出来なくなったと言うのが正しい気がします」
「難しい話になって長引きそうだから今の内に食事を済ませようって事になってな」
詩苑と慧が思い出しながら喋る。
「カフェテリア?」
「のつもりですが?」
「まさか………」
詩鞍が答え詩苑が気付く。
「さっきも言ったけど買い過ぎちゃってね。よかったらランチに付き合わない?」
その言葉が終わるとゴクリと唾を飲む音と腹の虫が鳴く音が聞こえた。
「慧」
掠れた声を出す主はピンクの飴細工のような唇を開けて荒い息を上げている。グリペンだ。
「私は今、多大な忍耐を強いられている」
視線の先にはピザの箱。
「分かった。ご馳走になるよ。詩苑と詩鞍は?」
「誘われましたし断るのも無粋ですしご馳走になります」
「詩苑と同じ意見です。折角ですのでご馳走になります」
「じゃあ、あっちに行こう」
そう言って指を指した先には機首の長い展示戦闘機。
(あれは何でしょう。気になりますね。後で兄様に聞きましょう)
そう考えた詩苑が展示戦闘機の写真を撮る。
その後は楽しいランチをしながらライノからのハイテンションを孕んだ質問責めに遭う慧を微笑ましく見る片宮姉妹の図が出来上がっていた。
「ねえ。何故、アメリカはブロウラーなんていう無人機を作ったんでしょう。誓約をして全世界に発表すればAZJ戦闘機が作れるのにですよ」
詩鞍が質問を出す。
「合衆国は実用主義の権化。AZJ戦闘機はいわば正真正銘の専用機。軍人の数だけ戦闘機がいる」
「ですが、純粋な工業製品です。一機作るのに時間がかかりましが装置を組み込むだけで対ザイ戦が出来ます。Fー22量産の理由にもなりますし大量生産されれば一機辺りの値段も下がります」
「そうだね。一部の政治家、特に元軍人や軍について理解がある政治家はその案を叫んだけど駄目だった。一つは対人戦への使用が自衛以外に認められない事。それだけの数を揃えるには軍事予算を何倍にしなければいけない事が特に問題になった」
それを聞き今度は詩苑が言葉を発する。
「ですが、ザイの事を考えると」
「駄目だよ。合衆国にザイは攻め込んで無いから政治家はAZJは誰でも使える戦闘機を減らす、対ザイ戦にしか使えないって言うデメリットしか見ない。合衆国が直接攻撃されれば世論が動くからそうなるだろうけど」
その言葉に詩苑と詩鞍の二人はいつかのバトラの言葉を思い出す。
『AZJ戦闘機がPMCにしか配備されていない理由?簡単だ世界は金か権力か武力でしか動かない。AZJ戦闘機は製作に金と時間が掛かる。正規軍に普及するのはザイに直接攻撃されて政治家が保身か世論が動き出した時くらいだろうさ。政治家は保身か世論がなきゃ都合の良い事しかしないのは万国共通だぞ』
「酷すぎます。それで苦しむ人が居るのに」
「政治家はそういうものだから。それに軍にしても対人戦で使える戦闘機が減るのは避けたいんだよ。万が一日本と開戦した場合にアニマの数は4:1だからあたし一人じゃとても手が回らない。だから通常戦闘機で補うしか無いしブロウラーなんていうまがいもの作っているんだろうけど」
「日本と開戦って、そんな場合じゃ無いだろう」
慧が口を挟む。
「そうだね。あたしも変だと思うし納得もいかない。だって外に敵がいるのに中にも敵を探している。でも『最悪に備えよ』は軍隊の基本だからね。世界中が敵に回った時を考えないといけない」
「「「………」」」
慧は理解出来ず、詩苑・詩鞍は理解出来るが故に黙るしか出来ない。
「ね、君たちはどう思う?その姿を模したあたし達もいつかは仲間割れを起こすようになるのかな?仲間と余所者を区別して対立の芽を探し続けるのかな?」
ライノが目に見えて暗い表情をする。
「『自分が信じなければ人を信じさせる事は出来ない』味方の作り方は政事と同じ所に繋がっている。そう兄様は言ってました」
「そして『互いに憎悪を持とうと平和の歌に集った者達のようになれたら最高じゃないか』そうとも言ってました」
「そっか………良いお兄さんだね」
「「はい!自慢の兄様です」」
二人は花が咲いたような笑みを浮かべ答える。
「な、何だこんな所に居たのか。てっきりフードコートにいるものだと思っていたから、さ、捜したぞ」
背の高い声。ウィリアムだ。
「ごめーん。私が呼び止めちゃった」
舌を出して悪戯っぽい笑顔を出すライノだが、紙コップが5つある時点でバレる嘘だ。
「な、鳴谷君にか、片宮君だったかな?少し時間が有るかな?グリペンも」
ライノの行動に何も語らずに話し出すウィリアム。
「有りますが、何か?」
「一つゲームに付き合ってくれないか?」
ウィリアムの話にあったゲームを慧がプレイする。
「もういいです」
結果から言うと何回かプレイして全て敗北した。
慧がプレイしていてのは戦術ゲームと言えるものであり、勝利条件はザイの殲滅か十年人類を生き延びさせる事。
「変わって下さい」
慧の座っていた椅子に詩苑が座る。
「まず、この軍隊がAZJ化されていない前提なのでまず勝てませんね。となるとまずは生産でAJZ兵器を生産すべきですね。夢物語ですがそれしかありません」
そう言って生産のタブをクリックするがAZJ兵器が存在しなかった。
「ありませんね」
「AZJは実装していない」
「あ、無理です」
何もする事なく匙を放り投げる。
「おい!」
「私の作戦はロシア軍の一部と中国軍全軍でザイを足止めして欧州・アメリカ・日本の軍隊をAZJ兵器のみで装備してから決戦だったんです」
「中国の民間人は?」
「放置ですよ?動かしたらザイが意地でも攻撃してくるじゃないですか」
完全に中国を生贄に捧げる様な作戦に慧が絶句する。
「慧さんは落ち着いてください。これはゲームですから」
「だけど!」
「私達、二人は兄様から捨てれるもの、捨てなきゃいけないものは何でも捨てなければ捨てれないもの、捨てたくないものを護れないと教わっています。詩苑の行動は私は正しいと思います」
「……………」
「まあ、落ち着いてくれたまえ。グリペンはどうだい?無理強いはしないが」
グリペンが慧を見つめる。その瞳はどうすれば良いのかと訊いている様だった。
「やってみれば良いんじゃないか?」
「じゃあ、やってみる」
そう言って椅子に座りゲームを行う。
最初は手短な軍隊を動かしてザイと交戦させるが即座に撃破される。しかも、中国奥地にしか目をやっていない所為で他方向から都市部が蹂躙されている。
「あのな「待って下さい。慧さんの目は節穴ですか?」…え?」
慧が助言を出そうとした時に詩苑が止めた。
「ユーラシア大陸を見てください」
ユーラシア大陸は一年でザイに占領されているがちらほらと民間人を表す緑の点が存在した。その場所は全てがインフラの整った環境では無いが故に人口は減っているが全滅はしていない。グリペンはザイの殲滅では無く人類の生存を考えてのプレイをしていた。
事実、都市部を離れた民間人をザイは攻撃を行っていなかった。
十年後世界はザイに支配されていたが人類は10億人が生存していた。
「な、何故だ!どうして君にその選択を行わせた」
「わからない。ただ、そうした方が良いと感じただけ」
「「「感じた?」」」
ウィリアムと詩苑・詩鞍の声が重なる。
「直感?」
グリペン自身が把握していない様だがウィリアムの興奮は収まらない。
「は、ハルカのプログラミングか?機械学習の影響か、それとも別の要因か?き、君は少し特殊なアニマと訊いているが、他の日本のアニマもそうするのか?それとも君だけが今の様な行動に出るのか?「ちょ、ちょっと、シャンケルさん」君の思考ルーチンと記憶領域を解析したいな。表面的な部分だけで構わない。ライノと何が違うのか。か、構わないだろう。今の人格データを傷つけたりはしないから、ほんの少しだけで良いんだ」
慧の制止を無視してギラついた目で早口でまくし立てるウィリアムの背後で大きな音を立てて扉が開く。
「「「八代通さん?」」」
眼鏡を掛けた肥満漢が不機嫌極まりない顔で室内を睨みつけ、そのままの顔で早足で室内に入る。
「人が打ち合わせで拘束されている間にうちの子供に何をやらせているんだ?勝手な事はしないで貰おうか?」
「妙な真似はしていない。ゲームをしていただけだ」
凄まじいスピードで首を振るウィリアム。
「帰るぞ」
「わかりました」「了解しました」「あ、はい」
有無を言わせない雰囲気に黙って付いていく四人の後ろからしゃがれ声が発せられる。
「ハルカ!我々人類には情報が必要なんだ。何故、もっと掘り下げない。今あるものをありのまま受け入れていては何も進まないぞ!その子達は宝の山だぞ!」
「お前はアニマというものを理解していない様だなウィリー」
氷の様に冷たい声音。
それ以上は言わず歩き出す五人にウィリアムは呼び止めなかった。
帰りのチャーター機の室内。八代通と通路を挟んだ反対側に座る詩鞍が八代通に話しかけた。
「八代通さん。少し良いですか?」
「なんだ?」
多少のイラつきを孕んだ声に一瞬だけ身を強張らせたが質問をする。
「さっきのアニマを理解していないってどう言う意味ですか?」
八代通が溜め息を吐く。
「あいつは………あいつはアニマをただのプログラムだと思っている。だから、データ解析だの分析だのと言う。ソースコードを読み解けば隠された真実がわかる筈だとな」
「確かに所々でライノさんやグリペンを物の様に話してる所が有りましたね」
「ああ。単純な生き物でもその思考を完全に解き明かせたりはしない。ザイのコアもな。あれをコンピュータと捉えた瞬間に本質が分からなくなる。だからこそありのままに受け止めて、教育や対話で俺たちの味方にしなきゃいけない。生き物を育てる様に根気強く、時間を掛けてな」
「なんか、こう言っては何ですかペットみたいですね」
「可愛くない奴が多いがな」
「ん」
慧の膝枕で眠るグリペンが身じろぎする。
「あら、声が大き過ぎましたかね?」
「あの、八代通さんこいつは人類の味方なんですよね。アニマはザイとは違うんですよね」
「当たり前だろう。今更、何を言っているんだ」
「グリペンは味方ですよ。貴方がグリペンを信じてあげている限り、グリペンは貴方を信じて味方でいてくれる筈です」
詩鞍の向かいに座る詩苑が窓の外から視線を慧に移して話す。それを聞いた慧はグリペンの手を起こさない程度に強く握った。
緋色の有翼獅子の少女もその手を握り返した。
バトラ「暫く、新作に取り込むらしいがオリジナル要素が強いらしくネタが自然湧きしたら書くレベルらしいが更新が遅れるやもしれんがよろしく頼む」
後、アンケートもお願い致します。
バトラ「やり損ねたか」
あの程度で死ぬ訳がアバババババババ
バトラ「物理がやり易い」