ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

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早いだろう? バトらないからだよ!

嘘です。時間がある内に書いたら、異様なまでに指が走っただけなので、期待しないで下さい。

作戦16 イヌワシが来て5日後を開始する。


作戦16 イヌワシが来て5日後

「カノープス。空域に到着した。戦闘を開始する」

 

《了解だ。ANTARES02、交戦を許可する》

 

背面急降下でザイの5機編隊に突撃する。タイプはM型という事もあり、問題無いと判断された為に単機でのスクランブルだ。

 

「そら、1機いただきだ!」

 

編隊の一番前のザイをすれ違いざまの一撃で撃墜する。

 

隊長機を失ったザイ達が右往左往している間にコブラ機動で機首を上に無理矢理向けて背面飛行で再突撃する。

 

「20mmはこれで弾切れだな」

 

左側二番目のザイを20mm機銃で撃墜後に右側のザイの後ろを取る。

ヨーをしながら、ミサイルを発射し、片方には30mm機銃を喰らわせてやる。

 

立て続けに4機も撃墜されたザイは最後の1機になってようやく、撤退の行動を起こすがミサイルに撃墜される。

「バーフォード、聞こえますか? 全機撃墜しました。周囲に敵影はあるか?」

 

《こちら、バーフォード。周囲に敵影無し。今度こそ帰還してくれ》

 

「ラジャー。RTB(これより帰投する)

 

3回もの立て続けのスクランブルに増槽4個を搭載し、捨てずに交戦したおかげでなんとかなっていたが、流石に3連戦もすれば燃料は尽きるので、3戦目が終わった頃には増槽は全て、投棄され、主翼の燃料も帰還分が余裕を持ってある程度だった。

 

「全く、今日はザイのバーゲンセールの日か何かか?」

 

通信機が仕事をしていないのを確認して愚痴を漏らす。

ここ、5日間でスクランブルの数が増えている。

 

新しい愛機であるIℓ(イリューシン)ー44 ウプイリもSuー33に搭載していたAZJシステムとの連動調整が上手くいっていない為に出撃を止めている。一応の目処が立っている。

 

《バトラ、かなり後ろにザイを発見した。近くのBARBIE01は航続距離の問題で無理だ》

 

新手かよ。まあ、BARBIE01は軽戦闘機だから仕方無い。

 

《俺も、ミサイルが無いから無理だぞ》

 

《仕方無い。領空内での戦闘になるだろうが、アルタイル隊に応援を要請する》

 

それしか無いだろう。片宮姉妹は別の方面に行っているが、ここに近い。

低速のAー10である故に遅れが生じる。

 

(厚い皮膚より速い足だっけ?)

 

何処かの誰かが言った言葉を思い出す。

 

(爺さんに在庫があるか聞いてみるか)

 

中・重戦闘機が欲しいところだが、運良くあるかな?

心配事を抱きながらも片宮姉妹とバンクしながらすれ違った。

 

 

 

 

 

 

 

「疲れた〜〜」

 

スクランブルから帰って、小腹を満たした後にIℓー44の最終調整をしていた。

度重なるスクランブルでRF-4TB-AZJの方が整備が追い付かない状況により不調を訴え始めたのだ。

 

流石にこうなると慣れてない機体とか、そんな事を言える状況じゃ無い。

信頼性の高い片宮姉妹の方も心配になって来る。

 

「あいつらも、2機目を考えさせるか?」

 

爺さんに在庫があるか訊くにしても彼女達の意思もある。

中国上陸作戦の頃の不和は解消されたが、流石に今回も彼女達の意思の無視はまずい。

 

「その前にあっちだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

技本の施設に足を踏み入れた俺は係員に聞いて、八代通の居る場所を訊き、検査施設に向かっている。

 

騒々しいハンガーやエプロンと違い、不気味な位に静かでひんやりとした空気が包んでいる。

 

喧騒から切り離された入り組んだ通路を歩き、検査室まで進む。

検査室の白い扉に数回だけノックしてから入る。

 

室内は長机にパソコンやディスプレイ、何かの記録装置など様々な物が所狭しと並べられている。

 

「どうした。なんで、ここに来た」

 

壁の方で慧と八代通が何かを話していたのだろう。

 

「少し、気になってな。亡命理由を思い出せないと聞いているから。気になって仕方無い」

 

その返答に八代通が溜め息を吐く。

 

「ガチガチにプロテクトがかけられている。長期記憶はおろか、感覚記憶や短期記憶まで暗号化されている。これを作った奴はかなりの偏執狂だぞ。ちょっと異常なまでのセキュリティレベルだ」

 

そう言われて、八代通の視線の先に目をやる。

 

ガラスで仕切られた向こう側で人間ドックで使用される器具に似た機械に肌と髪の白い少女が寝かされている。

色素の乏しい身体に目の赤い色だけが彼女に色彩を与えている。

 

「少し、良いか」

 

彼女を見ていると八代通に手招きされる。

 

それに答えて、部屋の隅に移動する。

 

「丁度良いから、お前にも訊くが、5日前の事を教えてくれ」

 

5日前……つまり、目の前で検査を受けている少女、ベルクトの亡命事件の事か。

 

俺はベルクトに視線を向ける。

 

色彩の乏しい彼女の皮膚だが、目の赤い色が宝石のように美しく輝かせる要因となり一種の美しさを生んでいる。

 

「そうか、バトラの方はどうだ?」

 

「え? あ、ああ……そうだな……」

 

どうやら長い間、見つめていたらしい。急いで思い出さなければ。

 

「そういえば……」

 

護衛中にロシア機の通信が聞こえていた。

 

「ロシア機の通信に少し、気になる事が」

 

「どんなだ? できるだけ詳しく」

 

そう言われて、通信だけで無く、状況も思い出し。

 

「最初は2機の追撃でしたけど、途中からフランカーが2機も応援に来たんですよ。その時の通信に『早く撃墜しろ! 他国に渡すな! さもなくば、我々の祖国が世界の敵になるぞ!』と言っていました」

 

「他は?」

 

「後は『何故、逃す! あいつは対ザイ戦の切り札だぞ!』とも」

 

「世界の敵? アニマとドーターは対ザイ戦の切り札だ。だが、どうしてそこに世界の敵という言葉が来る?」

 

「わかりませんよ」

 

『結局は収穫無しか』と腕を組んで壁に寄り掛かる八代通。

その姿に情報の無さからの苛立ちを感じられる。

 

「ちょっと、休憩するか。おい、ベルクトをこっちに戻せ」

 

スタッフが彼女から検査機材を外して行く。全てが外された後に上体を起こした。

 

「何か思い出したら連絡をくれ」

 

「了解した」

 

そう答えた瞬間に脇の扉が開き、スタッフに先導されて、普段着に着替えたベルクトが出てきた。

 

「ッ!?」

 

ドクリと鼓動が跳ね上がった。

まじかで見るとやはり似ていた。公園で合ったあの2人組と自分が初めて持ったウイングマンに……

 

長い睫毛の下で輝くのは赤い宝石の様な輝きを放つ瞳とそれを引き立たせる白い肌と髪。ワンピースから伸びる手足は戦闘機の高Gに耐えられずに折れてしまうのではと心配になる程に細い。そんな手足も指先まで白い。

 

(やっぱり、似ている……)

 

手足はもう少ししっかりしていたと思うので似ていないが、それ以外の外見は瓜二つなのだ。

その外見がトリガーとなって思い出す。

 

MS社の軍人には数少ない未成年の兵士。それも少女で初めての年下の友人であり、僚機であり、部下だった少女を思い出してしまう。

記憶の奥底にしまった筈の楽しく、輝かしく、残酷な記憶を……思い出させる。

 

「バトラ。彼女を2格に案内してくれないか? 現場にはあらかじめ、連絡しておく」

 

八代通の言葉で我に帰る。

「えっと……2格ですか? ええ、構いません。用事もあるので。ですが、なんで俺なんですか?」

 

「慧君はこの後、スクランブル待機だ。今は交代寸前だがな」

 

そう言えばそうだった。

 

「そうか。なら、ついでにやりますよ」

 

2格は片宮姉妹のA-10とSu-33のスクラップが近くにある。使えるパーツの剥ぎ取りが終わってないから行こうと思っていた所だ。

 

「ロシア美少女とのデートに洒落込め」

 

ロシア美少女って……否定できる要素が無いよな。

 

八代通とスタッフが仕事を始めたので邪魔だろうという事で足早に去る事にした。

 

「第2格納庫だったな。ここからだと……こっちだ」

 

「はい、お願いします」

 

(似ているな……)

 

「はい?」

 

「気にするな」

 

廊下に硬い足音が響く。彼女と俺の間には静寂だけが包む。何を話すべきかすらわからない。

 

後ろに目をやれば、赤い双眸がこちらを射抜く。

 

「?」

 

小首を傾げる仕草さえも彼女を思い出させる。

俺は何も無いかの様に前を向きなおる。だが、動悸は激しいままで、勘付かれ無い様にしながら呼吸を整えて、意識しない様する……事は出来なかった。

 

「ん? サイレン……スクランブルか……最近は多い」

 

屋外に出るとスクランブル警報が鳴っていた。

滑走路を山吹き色のF-15Jが滑走して飛び上がって行く。今回のインターセプターはイーグルの様だ。青い瞳は不機嫌を隠す事無く表して、金髪は怒りを示す様に揺らしながら機体に乗り込むイーグルが容易に想像できた。

何せ、交代数分前のスクランブルなのだから、イーグルの性格を考えると間違っては無さそうだ。

 

「いつもは少ないんですか?」

 

ベルクトが顔を向けて聞いてくる。

 

「2日か3日に1回か2回位だが、ここ最近は毎日1回はあるし多い時は3回位ある。今日はこれで3回目だ」

 

夜に1回か2回はあるかもなと言いながら、2格への道に乗る。

ベルクトが小走りで俺の後ろを歩く。そんな仕草さえも彼女と瓜二つだった。

 

(どうして、思い出す……あれは仕方の無い事だった……俺の力不足の所為だ)

 

思い出すのはウイングマンが撃墜された瞬間、それを意識しない為に話を切り出す事にした。

 

「ロシアはスクランブルはこの位ありそうだな。連中の勢力圏のすぐ近くだろう?」

 

その言葉にベルクトの表情が曇った。

(しまった。なんて、デリカシーに欠ける事を……)

 

彼女に記憶は無いのだから行こうと答えられるわけが無いのだ。

 

「すまん。記憶が無いんだったな」

 

「それもありますけど、私には多分ですが、実戦経験が無いんです。ザイと戦った事はおろか遭遇した事もありません。ドーター側の情報を探ってもそれらしいものは見つかってませんでしたから、おそらくは」

 

「そう……」

 

何も言わない。亡命するという事はそれなりの事があるからだ。不用意に突っ込むべき所では無いだろう。

 

「変……ですよね」

 

その言葉に俺が振り向くと彼女は俺から距離が離れていた。おそらくだが、立ち止まっていたのだろう。

 

「アニマなのに戦った事も無ければ、過去の記憶も無い。亡命を希望しておいてその理由も説明が出来ないなんて……私があなた方の立場なら怒り出すと思います」

 

「記憶喪失……と言うよりは思い出せないんじゃ無いのか? それか、思い出させないだけか」

 

記憶が消えて無くなるものじゃ無い。ただ、思い出せずに頭の奥底で眠るだけ。彼女はそれが全ての記憶だったという訳だ。

 

「何かの拍子に思い出すさ。何か有って自分が記憶を封印してるだけかもしれないしな」

 

それは俺だろう。だが、自分で記憶を封印したものは何かの拍子で簡単に解けるものだ。

 

「ただ、命令が……ありました」

 

「どんな」

 

「逃げろって。全てを捨てて何処までも飛び続けろって」

 

ベルクトが眉を寄せて、苦しそうに唇を開けている。心のドアを無理矢理こじ開けようとしている様に。

 

「無理するな。無理矢理は止めておけ。時間はたんまりとあるんだ。ゆっくり、機会に任せよう」

 

慌てて止める。そして、この空気をどうにかしようと自虐ネタを出す事にする。

 

「しっかし、大変な仕事だったんぜ? FCSが不完全で完全マニュアル照準で、ロシア軍にガン付けられたく無いから撃墜や損害を出さずにSu-35と空戦するんだから」

 

そう言うとベルクトが不可解な物を聞いたという様な表情になる。

 

「追いかけていたフランカーはSu-27ですよ?」

 

マジかよ……ロシア軍所属の奴が言うんだから間違い無いのだろう。故に言える言葉はただ、一つ。

 

「フランカーファミリーは分かりにくいのが多過ぎるんじゃーーーーーーー!!」

 

小松基地に俺の叫び声が響き渡り、小松市内で買い出していたバーフォードからお小言を貰ったのは完全な蛇足だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が叫んで直ぐに第2格納庫に到着した。

ついた頃には困惑の空気が流れつつも、作業を再開しようとする整備員の姿があった。

 

「作業中にすまない。八代通さんから連絡が来てると思うが、ベルクトのドーターを見せてくれ」

 

その言葉を聞いた班長が目を見開いた。

 

「おいおい、相変わらずの圧縮言語だな。本人が来るなんて聞いてないぜ」

 

あの野郎……相変わらずの圧縮言語か……

 

「あの……」

 

ベルクトが身体を強張らせて、こちらを伺っていた。

機体に触れていいのかわからない様子だった。

 

班長が遠慮せずに見ろと言うと安堵を露わにして一礼、機体に小走りで駆け寄る。

 

細く美しい指先がインテークの側面を撫でて、(なまじり)を緩める。白く長い髪が風に撫でられて浮き上がり、陽光を浴びた髪が幻想的とも言える白い光でキラキラと輝く。

 

その光景は巨竜に寄り添う北国の姫を思わせる。

 

「整備はできると思うけど、戦闘は可能ですか?」

 

実戦経験が無いとはいえ、アニマとドーター。世界情勢的に遊ばせておく余裕は無い。

特に今日の様なスクランブルが多いとなれば話は別だ。

 

「飛ばすはできるが、武装が無い」

 

「武装ならある」

 

俺の言葉に班長が目を見つめる。

 

「ウプイリの武装用に半分残して、半分を寄付しても良い。元々、Suー33はロシア機だし、ミサイルも機銃弾も東側規格の物を持ち込んでる筈だ。それに、中国の機体もこっちに逃げ込んでるじゃ無いんですか?」

 

「中国は東側の機体を運用しているし、Su-33はロシア機……調整無し、あるいは簡単な調整でいけるな……Su-33からハードポイントとかを貰っても良いか?」

 

元々は次の愛機の改修用に残したスクラップだが、ウプイリ自体が改造品だった事もあって、対ザイ用の武装を載せるのが精一杯だった事もあって、特に断る理由は無い。

 

「構わない。使えるパーツは全部使ってくれ」

 

「ありがとう。だが、羽振りが良いな。金をせびると思っていたが」

 

「危機的な状況だろ? 戦力が増えるのが、何よりの利益になる」

 

この言葉に心の中で、本当にそうか? と聞き返してくる自分がいた。だが、それに気付く事無く、班長が去って行く。

 

「班長! 3格のメンテ、1機こちらで引き受けれますか? あっちもう手一杯みたいで」

 

いや、無理だろ。ベルクトにサンダーボルトに自衛隊機……完全にキャパオーバーしてるぞ。

 

案の定、班長も無理と言っているがそんな場所に核弾頭が落ちる。

 

「私、手伝いましょうか?」

 

「あーーあーー……ベルクト……手伝うって、何を?」

 

「整備をです」

 

さも簡単に言うベルクトに遠慮の無い視線を浴びせる。

 

汚れの無い白い肌は美しいと言えるが、ベルクトの手伝える整備は力仕事だけという事を考えた時にその腕はとても頼りなく見えてしまうものだ。

 

「いや、あのな……お前じゃ無理だろ」

 

俺がそう言うと整備員が同意し出す。

 

「あんたは自衛隊の機体じゃ無いしお客さんの様なものだし、ゆっくり休みな。もういいだろう。作業に戻らせてくれ。あとがつかえているんだ」

 

片手を上げた瞬間に工具の音が鳴り、喧騒が蘇る。それでも、ベルクトは所在が無さそうに佇み、彼らの背中を諦められない様子で眺めている。

 

そんなベルクトに俺は頭を掻いてから口を開く。

 

「班長! スクラップからのパーツ取りだけど、こっちで勝手にやって良いか?」

 

「あ? ああ、やっといてくれんだったら有難い」

 

Su-47を戦闘に参加させるかどうかは上次第だが、戦闘可能にしておいて損は無い。武装は有っても、それを付けるパーツが無ければ載せられない。

Su-33のスクラップ解体でパーツを仕入れるのは彼らの仕事らしいから、彼らの仕事を盗む感じになったが、仕事を仕入れた。後は簡単だ。

 

「ベルクト、手伝ってくれ」

 

何かしでかしそうなベルクトを俺が拘束すれば良い。取り敢えず、雑用でもさせておけばなんとかなるだろう。

 

「はい!」

 

仕事が貰えて嬉しそうに笑うベルクト。

 

(そこも似ているな……)

 

こいつが来てから、いつも頭にANTARES04の事が蘇る。

 

(サーシャじゃない……わかってるけど……思い出しちまうな)

 

まるで、今まで思い出そうともしない俺を咎める様になんとも無い動作すらも思い出されていく。

 

(目の前の仕事に集中しよう)

 

スクラップまで、歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

「やっと、終わった……」

 

予想はしていた。

 

「この天気で遮る物無しですからね」

 

そうなのだ。Su-33のスクラップはシートを被せて、遮る物が一切無い中で安置されている。

そんな上々で真夏の昼間に工具片手に解体作業である。

熱中症に成らなかっただけ奇跡だろう。現在はスポーツドリンクを片手に洗い場の隅で飲んでいる。時折吹く風が心地良い。

 

「むぅ」

 

短くうねるベルクトに反応して視線を向ける。

拳を肩に寄せて覗き込む様な姿勢を取っている。上手く洗えない事が気に入らないのか細い眉を寄せている。

 

(こんなところまで似てるな)

 

気に入らない事が起きた時のスネ方まで似ていると少し微笑ましく思いながら、彼女の状態を確認する。

 

黒く汚れた手足を靴とソックスを脱いで洗っている姿は凄く涼しげだが、肝心の汚れが落ちていない。

仕方無い事だが、こういった機械汚れは研磨剤入りの洗剤じゃないと中々落ちない。

 

ハンガー脇にあるここの洗い場では洗剤すら存在していない。

 

「風呂だなこりゃ」

 

取り敢えず、ここの設備じゃ無理だと判断して水飛沫を頬に感じながら答える。

 

「それなりにすっきりしましたし、服はどのみちクリーニングですから」

 

貸した作業着を指差しながら喋る。

「髪とかまだ汚れ付いてるぞ」

 

「え? ああ、本当ですね」

 

そう言うとホースから水を直接かける。

 

(躊躇無しかよ)

 

深窓の令嬢という外見からは予想出来ない北国の森育ちという行動を見せる。

 

(あいつもその辺りアグレッシブだったな……)

 

女性オペレーターの2人が結構、その辺りなんかやってた覚えがあった気がする。

 

彼女が首を振って水滴を払い、蛇口を捻る。

 

「久しぶりに動けてよかったです。じっとしているとなんだか身体がなまってしまって」

 

「それは良かった。それなら整備の時は声を掛けようか? 基本的に専門的な整備以外は自分でやってるしな俺たちは」

 

その言葉にベルクトが首を傾げた。

 

「え? 自衛隊の人じゃ無いんですか?」

 

「服が違うだろう。俺はMS社所属の民間軍事会社の社員だ。仕事でここ、小松基地に滞在している」

 

ベルクトがそう言われれば、服が違うと呟きながら納得する。

 

「えっと……バトラさんでしたっけ?」

 

「ああ、アンタレス02 TACネームバトラだ。本名は訳ありでな」

 

本名に事はよく言われるので、深くは詮索するなと言っておく。

 

「空では守っていただいてありがとうございました。おかげで無事に日本に辿り着きました」

 

「仕事だ。気にするな」

 

そう言うが、ベルクトは頭を下げる。

 

「まあ、受け取っておくよ。取り敢えず、戻ろう。そろそろ、検査の時間じゃ無いか?」

 

「それもそうですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルクトが油まみれで帰ってきた事に八代通から取り調べを受けてから、アニマ達の事を考える。

 

(本当に同じ奴がいないな)

 

グリペンは物静かだが、唐突に何かを言い出す。ファントムは現実主義だがお茶目なところもある。イーグルは自信満々な性格と戦闘機の出自に似てるところもあるがそうじゃ無いところもある。

ベルクトも試験機というとこで物静かな雰囲気だが、航空ショーで一躍有名になった。

 

その外見から結構な数のゲームや性能からPMCで金を持っているやつは乗り回している。

だが、おそらくベルクトのドーターは試験機だ。PMC向けに生産された物じゃ無い。

実は試作機とPMC向け量産機だと大きな違いがある。

 

PMC向けはS-32の主翼がSu-47になっていて居るだけのS-32なのだ。一部の部隊は三次元偏向ノズルのエンジンに置き換えている。

 

だが、ベルクトのドーターには板を載せていた痕跡が無いのだ。

どんなに上手く加工したとしても、あるものが無くなった時に無駄は生じる。その無駄が無い。まるで最初から無かった様に。

 

この事からあれは試作機の正真正銘のSu-47だ。

 

(まあ、関係無いが)

 

量産型だろうと試作型だろうと俺には然程の問題も無い。

 

夕方に慧と交代して夜のスクランブル待機でハンガーの中に駐機されているウプイリのコックピット内で電子小説の投稿サイトを見ていた。

 

「お! 新作だ。読も読も」

 

【野良犬の咆哮】の新作が投稿されていたからタップした瞬間に携帯端末が圏外になる。

 

「あれ? おかしくね?」

 

日本で圏外など滅多に起こる物じゃ無い。

 

「何が起きている……」

 

携帯端末をしまって、格納庫の屋根を見る。その瞬間にスクランブル警報がなる。

 

この事を意識の外に追い出して、俺は仕事に赴いた。




Suー47の現実とエスコン界の事を考えてのオリ設定です。

Suー47はパクファとトライアルして安定性の低さと時代を先取りしすぎた故に没にされたが、赤字の回収の為にPMCエース向け量産型を売込んだら一部の部隊で運用されているという設定です。

生産コストが少し安い(それでも馬鹿みたいに高い)・機動性が鈍くなっている(三次元じゃなくて、二次元ノズル)・安定性が悪くなっている(エースだったら、全然問題じゃないどころか、高機動のトリガーにする奴もいる)位の差です

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