スプイリは元ネタの機体の改修機体であると同時に改造機ですので、色々と違うところがあります。
それでは作戦19 スラッシュを開始します。
<<よし。訓練終了>>
<<ありがとうございます……もう1度良いですか?>>
<<駄目だ。俺は良いが5回連続もやってるし、自衛隊員の訓練も考えないといけない>>
<<わかりました>>
外出が終わってから、ベルクトの訓練に付き合う様に八代通から言われた俺はシュミュレーターを使って、ベルクトと訓練していた。
あの飛行試験の後も時間が合えば訓練をお願いする様になった。
理由が、『早く、皆さんの役になれる様になりたい』だそうだがもうひとつの理由に恐怖心に勝つための様な気がするのだ。
横を歩くベルクトの口から言葉が紡がれる。
「私は強くなっているでしょうか……」
「飛ばすのはやっとだったのを今はミサイラーの様な動きだが、ミサイルを後ろから撃てる程度の働きは出来ている。大丈夫だ。ベルクトは強くなっている。自信を持て」
取り敢えずはベトナム戦争時のMig戦闘機みたいな事はできる様になったが、ドックファイトは難しいかな?
ドックファイトの訓練もしているが、何処か恐怖心で萎縮している感じだ。
ベルクトを横目で見ながらこれからの訓練をどうするか迷っていると胸ポケットにしまっている携帯端末から振動を感じた。
「ん? はい、もしもし……了解です。ベルクトも? わかりました」
「あの? 私もですか?」
「ああ、モニタールームに集合だ」
モニタールームに独飛のメンバーにMS社のメンバーが集まった。
周りをオペレーターや技術スタッフが走り回っている。
ファントムと慧の質問をまとめて考えると。
朝鮮半島から新型のザイが接近中で護衛もなく、低速で高高度を飛行するだけで進路と被った都市に直接攻撃の被害なしと、スクランブルソフトを無視してまで呼ぶ相手では無いと思うのだが。
「これの何処がこのメンバーを集める理由になる?」
攻撃能力の無いザイなら普通の戦闘機で迎撃できるはずだ。
「これを見ろ」
モニターに件のザイが映される。
形状は3本の灯台が付いたシャンデリアと言った感じだった。
灯台に当たる部分がローターの様に回転しているから、あれが揚力と推力を得ているのだろう。
ヘリコプターの様なタイプだ。
「見ての通り、制空型でも爆撃型でもない。成層圏付近を漂うだけの物理的には至極無害な存在だ。護衛機もないし爆弾・誘導兵器の発射能力も無い」
「何の問題がある?」
「そうですね。バトラさんの言う通り、こちらからちょっかいをかけなければ無害なら放っておいても問題無いでしょう」
ファントムの言葉に八代通が鼻で笑った。
「物理的にはな。こいつは通常の数十倍レベルのEPCMを巻き散らしている」
その説明の後でバーフォード中佐が説明を入れる。
「EPCMの被害範囲に入った都市では軒並み通信設備や電子機器がブラックアウトした。出力的にも電磁パルス兵器と言った方が良いだろう。韓国の政治や経済の主要都市は外れているが、それ以外の都市の被害は現在調査中だ」
それを聞いて、頭を抱える。
「感覚障害が発生していたら、事故なんかで甚大な被害が発生してるだろうな」
「お兄様の言う通りなら小松への侵攻は絶対に止めなければなりません」
「詩鞍の言う通りです。小松で感覚障害が起これば、どうなるかわかりません」
MS社の実働航空隊メンバーが反応するが、直ぐ動くには情報がもう少し欲しい。
具体的には、敵の性能だ。
「中佐。韓国空軍の動きはどうですか?」
「勿論、迎撃を行ったがEPCMの影響と小型戦闘機で航続距離の問題で発見に至らない。発見しても撃墜には至っていない」
「護衛も誘導兵器も無いんですよね? どうして、迎撃できないんですか?」
ファントムの言葉に八代通が答える。
「これを見て貰えばわかるはずだ」
そう言って、1個の動画を再生する。
韓国のFー5Eがザイに接近して、ミサイルをリリースするが目に見えない何かに弾頭部を切断され、あるミサイルは安定翼を失って見当違いの所に飛んで行く。
こんな物は見た事が無い。
「レーザーCIWS……」
「え?」
慧がファントムの方を向いた。
それにファントムが口角を歪めた。
「半導体レーザーを使った近接防御兵器です。威力・射程は大した事はありませんが、ミサイルを撃ち落とす位なら十分な装備です」
「それに加えて、EPCMの状況下……アニマとドーターのミサイルじゃなきゃ無理だな」
俺の言葉に片宮姉妹と慧が不思議と言いたげな顔をした。
「ハァーー……。いいか? EPCMの中で動けるのはドーターとAZJ戦闘機だけだ。で、今回の相手は3基のレーザーCIWSを装備しているんだ。対EPCM防御を施したミサイルを4発以上を全く同時に撃ち込む必要がある。これはAZJ戦闘機では無理だ」
「バトラさんの言う通り、同時発射はアニマでのデータリンクがなければ難しいでしょう」
ファントムの言葉に俺とカノープスメンバーが頷く。
「じゃあ、私達が集まった理由はなんですか?」
詩苑の言葉にバーフォード中佐が一歩前に出た。
「今回はMS社航空隊は敵の新型に対しての目視警戒を増やす為の物だ。ベルクトの試験飛行にてステルス機能を持った新型が確認されたのは知っていると思う」
その言葉に全員が頷くが、ベルクトだけは手が震えていた。
「今回も出現が予想される。レーダーが効かない相手である事と攻撃の瞬間に現れた場合は撃墜される可能性が高い。その防止の為に護衛について貰う」
「「「了解です」」」
立ち上がって、敬礼を送って直ぐに慧が手を挙げた。
「ベルクトは戦えるんですか?」
「慧。今回はアニマとドーターが4組必要になる。ベルクトがミサイルを撃つ事が限界の新兵だろうと出てもらわなければ困る。作戦を練り直すには時間が無い」
「バイパーゼロは?」
その質問に八代通が答える。
「既にスクランブル済みだ。台湾沖で別のザイと交戦している」
「大丈夫です。。私で良ければ是非参加させて下さい」
拳を握り締め、目を見据えて話すベルクト。
体が少し震えている。
「ベルクト」
慧が心配そうに話しかける。
「ご心配なく、バトラさんから訓練は着けて貰っているので」
「お前……」
慧の掠れ声が八代通とバーフォード中佐の手を打った音にかき消された。
「独飛、全力出撃だ。10分以内にハンガーに集合しろ」
「アルタイル隊、全力出撃。10分以内で出撃準備を終えろ」
「「あの不細工なシャンデリアを海に叩き落としてやれ!」」
変な所で息が合うんだな。うちの指揮官と八代通って……
4機の戦闘機がダイヤモンド編隊を組み、それの編隊の少し後ろで3機の戦闘機がデルタ編隊で後を追うように蒼空を進む。
<<こちら、カノープスのバーフォードだ。アルタイル隊全機、聞こえるか?>>
2つの編隊の遥か後方の上空を飛ぶ空中管制機【カノープス】からの通信が入った。
<<こちら、ALTAIR01。聞こえます>>
<<ALTAIR03、感度良好です>>
<<ALTAIR04も同じくです>>
<<良し。今回の任務はステルス機の警戒及び撃墜だ。ステルス機の特性上長距離ミサイルは恐らくだが、ロック不可能だ。その為、赤外線ミサイルを使用する近距離対空戦及び近接格闘戦が主となる。ALTAIR03と04には厳しい戦いになると思う>>
<<わかりました>>
<<了解してます>>
<<ステルス機が相手の為にこちらの電子的な支援は期待しないでくれ>>
<<了解です>>
バトラの通信を最後に通信機からの通信が止まる。
バトラは秘匿回線をベルクトに繋げた。
<<ベルクト。大丈夫か?>>
<<バトラさん……大丈夫です>>
これを聞いたバトラが息を1回吐く。
<<声が平時の時とは違うぞ。怖いんだろ?>>
<<……はい。こんな作戦の重要な場所に自分が居て、良いのかと思って……>>
恐らく、ファントム辺りからベルクトのミサイルを当てると言われたのだろうと辺りを着けるバトラ。
<<気負うなよ。やる事は敵の射程外から同時にミサイルを撃つだけだ。アニマとドーターはデータリンクなんていう簡単な方法があるんだ。ミサイルを撃って、当てて帰るだけ。シュミュレーター訓練より簡単な内容だ>>
<<……ありがとうございます。少し震えて肩の荷が降りました>>
安心したのか声が元に戻るベルクトにバトラはホッと息を吐く。
<<じゃあな。作戦終了後に話そう>>
<<はい>>
MS社のAZJ戦闘機が先に上昇する。
その後を追うように独飛のドーターが上昇する。
7機の機体の中で1番の上昇能力があるバトラのlℓー44 ウプイリが上空警戒をいち早く行う。
「ん?」
バトラが同じ位の高度を動くゴマの様な物を見つける。
<<バーフォード中佐。俺から3時の方向にレーダー反応はあるか?>>
<<なに? ……ないな……Tー50やFー22、35が飛んでるとは思えん……接近してくれ>>
<<了解……その必要が無くなった。向こうから来た。ザイのステルスタイプ! 数は5!>>
<<詩鞍! 援護!>>
<<詩苑! 救援!>>
サラと京香の指示で詩鞍と詩苑が同じ高度まで上昇する。
2機のAー10が到着した頃にはlℓー44とザイのステルスタイプは交戦距離に入っており、空戦を始めようとしていた。
<<バトラ、エンゲージ!>>
交戦直前に少しだけ上昇した事で速度を落としたが、高度を稼いバトラが左旋回を開始する。
ザイは一直線に動いた事で5機編隊の右端の機体がバトラの右斜め前方を横切る形となってしまう。
<<イン ガン レンジ ファイア>>
機首の横に格納された2艇の30mm機関砲の餌食となった。
30mm機関砲の弾はザイの右翼を切り裂き、ザイは揚力を失った方向に回転しながら高度を落としていく。
バトラは撃墜を確認した瞬間に左旋回の角度を推力偏向ノズルを使い急にすると右から2番目の機体の後ろに張り付こうとする。
ザイもバトラの存在に気付いて、回避機動を取ろうとするがタイミング遅く、完全に後ろに張り付かれてしまう。
ザイもただではやられまいと小刻みに機体を揺らしながら、上下左右と不規則な動きで照準から逃れようとする。
バトラも機体を巧みに動かして照準に捉えようとする。
バトラが照準にザイを収めた瞬間にザイが翼を海と垂直になる様に動かして、同じ様な格好になった別のザイとすれ違う。
「!? ……」
最初は驚いたバトラだが、空戦の中を長い間、バトラを生きさせた腕が無意識に動く。
機体がヨーで機体の向きを少し変えた同時に機関砲のトリガーを押し込み、機関砲が発射される。
30mm機関砲をまともに受けたザイが尾翼が胴体の末端ごともぎ取られて、残った物は海の方向に見えない坂の様な物で滑る様に落ちていく。
「次は!」
首を振り回すバトラが直ぐに取り逃がした敵機が後ろに回り込もうとする姿を見つける。
バトラも即座に背中を見せ合う様な旋回で後ろに回り込ませ無い様にするが残った2機が後ろに回り込もうとする。
多勢に無勢だが、lℓー44とザイの間を機関砲弾の曳光弾が遮る。
<<お待たせしました>>
<<後ろの貰いますね>>
片宮姉妹が到着した事で3対3のフェアの関係になった。
<<遅い!>>
<<Aー10なんですから、そんなこと言ってあげないでください>>
グレアムがバトラの愚痴に丁寧に答える。
その間もバトラとザイが巴戦の前哨戦である背後の取り合いを展開し続ける。
ザイが急な減速で均衡がザイに傾き、その瞬間にザイが人間には不可能な機動でバトラの背後についた。
「ック」
バトラが振り切ろうと機体を上昇させる。
ザイもバトラを追いかけて上昇する。
だが、高度1万5千mを超えた時にザイが失速した。
比較的小型のザイだった為に大型戦闘機のlℓー44の高高度性能についていけずに失速したのだろう。
「貰った」
エンジンの推力と全てのエアブレーキを利用、垂直上昇からハンマーヘッドで横転し、ザイに機首を向けた。
バトラの視界の先では失った揚力を復活出来ずに背中を見せて、ゆっくりと落ちていくザイが映る。
<<イン ガンレンジ……ファイア!>>
30mm機関砲がたった、1秒の射撃でザイは機体のほぼ全てがもぎ取られた様な損傷を残して、重力の鎖に引っ張られる様に海へと落ちていった。
<<ALTAIR01、敵機撃墜。流石です>>
グレアムが敵機の撃墜を賞賛するとバーフォードの通信が入る。
<<ALTAIR01、仕事ができた。今から説明する……>>
時間は遡り、ALTAIRの2機がバトラの敵機を請け負った所である。
ザイが急旋回で逃げようとするが、低速旋回で距離を放されても後ろに付き続けるAー10。
もう1機の方も急旋回をするが同じ方法で後ろに付かれている。
黒いAー10に追いかけられたザイがパワーダイブで速度を乗せて逃げ切ろうとする。
白いAー10に追われたザイは速度と推力の差で逃げ切ろうと上昇して、逃げようとする。
<<詩鞍>>
<<詩苑>>
この掛け声で何をするのか理解した2人のAー10が1秒に満たない機銃攻撃を開始した。
それを回避しようと舵を切ったザイ同士が衝突しかけるが、ザイはお互いに無茶な機動をする事で衝突を回避した。
だが、高度と速度を同時に逃がしてしまったザイを2機のAー10が逃すことはなく、アヴェンジャーガトリングの十字砲火を1秒喰らったザイが2機同時にバラバラにされる。
<<ALTAIR03、撃墜しました>>
<<ALTAIR04、撃墜しました>>
撃墜を確認した直後に通信を入れて、編隊飛行に移る。
<<ALTAIR01は高度1万1千を航行中です。貴方は高度を8千から9千まで上昇して周辺警戒を>>
<<ALTAIR04、貴女もよ>>
京香とサラの言葉に2人は素直に従った。
高度1万1千m上空にバトラとその愛機の姿があった。
仕事いうのは偏西風の中に引きこもるザイを【EML】汎用レールガンユニットで引きずり出すというものだった。
最初はイーグルとFー15の機銃で追い出す作戦が立たれていたが、バーフォードのEMLの方が成功率が高いという発言にファントムが乗ったのが始まりだ。
レールガン特有の弾速で風の壁を突き抜かせようという魂胆だが、バトラは内心では、乗り気では無かった。
「……レールガン……か」
右の上部ウェポンベイを見ながら呟く。
バトラにとって、レールガンというのはかなり、因縁深いものだが、そうは言っていられない。
バトラは上部ウェポンベイを解放した。
開けられたウェポンベイからEMLが展開され、折り畳まれた砲身が伸びる。
バトラのスプイリに載せられたEMLは充電時間の延長と装填弾数を1基6発としてそれを単列クリップ式から並列クリップ式に変更した事で小型化と軽量化に成功した。
そのおかげでレール強度がより強いものに変えられた事で連続発射可能数が18発まで増えた。
<<カウント……5……4……3……2……1……>>
<<ALTAIR01、スラッシュ!>>
攻撃の際に生まれる高温と発光に気付かれて回避行動をされるが偏西風に煽られたザイが偏西風の防壁から偏西風によって弾き出された。
守るものを失ったザイに4機の戦闘機からミサイルが発射された。
「ん!?」
バトラのIℓ-44の電子機器に異常が発生したが、AZJ装置が出力を増して、稼働。
即座に復旧する。
安心したバトラの耳に驚きの声が響いた。
<<BARBIE05が被弾! BARBIE01も損傷! ザイは健在です!>>
アリーナの叫びがバトラの耳に届いてからの行動は速かった。
目だけでEMLの電力チャージを確認する。
(左は撃てる!)
それを確認した瞬間にHUDに移されたサークルの中にザイを収めた。
<<スラッシュ!!>>
左のEMLから弾が吐き出されて一直線に飛ぶ。その速度は重力と合わさり、音速を遥かに超えていた。
弾丸はザイに命中し両断した。
柱の様な形のザイは撃沈された船の様に機体をV字にしながら落ちていく。
そこにグリペンの機関砲弾が降り注ぎ、完全に破壊した。
<<ベルクト! 応答しろ! ベルクト!>>
バトラが無線に叫ぶが、届くのはノイズばかりだった。
機体の表示も自動操縦に切り替わっていることを示している。
<<落ち着け、ALTAIR01! BARBIE05はBARBIE03が誘導する>>
バーフォードの言葉に落ち着きを取り戻したバトラが『すみません』と通信を入れる。
<<わかればいい。周辺警戒を厳にして、小松基地へと帰還する>>
<<ラジャー>>
<<了解です>>
<<わかりました>>
うん。やっぱり、戦闘シーンが浮かばないし、脳内の映像を文章化するのも難しいですね。