短いけど、ゆっくりしていってね!
ザイ・スピリダス撃墜作戦【亡霊成仏】から1週間が過ぎた。
その後の事も被害報告を纏める自衛隊はその間、一部の機能が低下もしくは停止する事態となった。
その中でも最も被害が大きかったのは、スクランブルできる機体の減った事だ。
自衛隊には撃墜された機体は居なかったが、全ての機体が大なる小なりの損傷を受けていて、各地の整備工場が連日フル稼働中らしい。
さらにMS社の整備工作艦(簡単な輸送船と小型航空機、戦車位しか整備工作できない艦)が応援で横須賀に入港。
機体修復を行っている。
そんな状態だろうとザイは御構い無しに日本へと侵入してくるがベルクトの亡命時に比べるとかなり減っているどころか通常の状態にまで戻っている。
理由としては、ベルクトに施された死の光【誘蛾灯】が効果を示さなくなったからだ。
方法というとZJAEシステムを常時発動してベルクトの【誘蛾灯】を相殺しているからだが、不定期でも、【誘蛾灯】と思しきEPCMは観測されておらず、八代通が原因を探っている。
さて、色々と言ったがこれは日本にいる片宮姉妹からのメールだ。
俺が今どうしているかと言うとバーフォード中佐と男性オペレーターを乗せたE-130(ZJAE仕様機)を連れて、ベルクトと一緒にミッドウェー島にあるMS社の基地から自衛隊小松基地に向かっている。
ベルクトの解体が決定していて、小松に帰っても待っているのは解体だ。
政治家共が自分の命を危険に晒すとわかっているものを身近に置く筈が無い。政治家は大抵の場合、人一倍自分の事が可愛いと思っている奴らだ。
そこで作戦終了後に小松で給油と簡単な整備をしてその日のうちに太平洋へと向かう事にした。
途中でMS社の空中給油機に給油して貰いつつミッドウェー島のMS社基地に着陸。
1日かけて整備をして、アメリカ本土にある本社基地へと移動。
そこで、ベルクトの採用が決まっている面接試験を受ける。
かなりに真面目に答えたそうだが、担当官がベルクトの可愛さに狂喜乱舞して物理的セクハラをしようとルパンダイブした所をSuー47好きの元スペツナズ隊員の4人がシステマで迎撃した。
俺は空中コンボをリアルで見たのは初めてだ。
見事過ぎるコンボだった。
『会社全体の仲が良いんですね』
そう楽しそうな笑顔で俺に言うが俺はただ単純にノリが中・高生なだけだと思う。
ベルクトの入社は問題無く決まった。
問題はドーターに部隊のエンブレムがつけられなかった事だが、シールにしたら問題なかった。
塗装は白くなるがシールは装甲の外だからだろう。
だが、それで1週間もかかるはず無く、装甲をチタン合金の装甲に張り替えたから長引いてしまった。
その間、ベルクトがロシア機乗り達に色々と迫られたり(主に男性陣)可愛がられたり(主に女性陣)近くでシステマ大会やったり(大抵、元スペツナズ隊員が圧勝する)が起きたりして出発したのは昨日で昨日の内にミッドウェー島に到着した。
その間もE-130はついて来ている。
そして、小松までの帰り道は民間機が少ない事と夜間飛行訓練と合わせて夜帰りを予定している。
<<そういえば、バトラさんが私に言った事を覚えていますか?>>
<<何か言ったかな?>>
ベルクトの通信が入った。
何を言ったか覚えていないし前振れも無い。
<<『夜間飛行をしながら星でも見ないか?』って言ったじゃ無いですか>>
<<ああ、初外出の最後に言ったな>>
<<こうして、誰かと星を見ながら飛ぶなんて初めてです>>
ベルクトが俺に近づく。
装甲キャノピーは閉まっているのでバックミラーで顔を確認できる。
<<仕事帰りでいいのか?>>
<<戦闘機で夜間飛行なんて仕事かその帰りじゃないとできないじゃないですか>>
変な所でロマンチストですねと笑うベルクトに居心地が悪くなって目視索敵を行う。
<<バトラがロマンチストな訳無いですね。土ボタルの光が青と緑に見えたんですから>>
<<やめーや! 人間的な目と動物的な目を持ってるって話はやめーや!>>
<<青だったら人間的、緑だったら動物的、白く見えたらロマンチストらしいな>>
<<バトラは人間の皮を被った節足動物じゃないですかね?>>
<<おお、マイケル。お前E-130のどこに座っている?>>
<<やめろバトラ! E-130の電子機器がどれだけ高いかわかってんのか?>>
<<私の命<E-130の電子機器ですか!?>>
飛行メンバーの楽しげな会話にベルクトが笑う。
<<本当に仲がいいんですね。生きていて良かったです>>
<<それは良かった>>
笑う声が絶える事無く、太平洋を渡って小松に帰った。
小松に帰って、3日後に試したい事があると言って八代通に呼ばれたベルクトとバトラ。
「EGG同期の状態をお前を含めた状態で観測する事にする」
「なんで、そんな事を?」
検査台にベルクトとバトラが横たわる。
バトラが横たわったまま話す。
「昨日、お前が名古屋まで飛んだ時に誘蛾灯が確認された。だが、お前が帰ってきたら誘蛾灯の発生が止まった」
八代通のその言葉にバトラが驚いた。
「スクランブルは!?」
「ZJAEで無効化してる。だが、観測はされた。そこで俺は誘蛾灯が止められるのはグリペンの安定稼働と同じ理由ではと思った訳だが、ビンゴだ」
八代通が折れ線グラフと湾曲した線が重なったグラフを見せる。
「わかるか!」
「まあ、簡単に言うと原因は分からないがお前が近くにいるとベルクトは通常のアニマだという事だ」
(君がベルクトの居場所になってくれるかとか言ってたな……あいつが……)
バトラは内心でヤリックにやってくれたなと思うが、ヤリックの仕業だという証拠が無い。
(ヤリック。ありがとうございます)
バトラとベルクトにはヤリックの仕業だと何故か確証が持てた。
「これからも、よろしくお願いしますね。バトラさん」
「此方こそ、よろしく頼む」
握手をする2人の耳にスクランブルの警報が響く。
「スクランブルか……」
「すまんが出てくれ。ドーターが君たち以外のものは整備中だ。すぐに出られるには君たち2機だけだ」
「わかりました。一緒に上がりましょう。バトラさん」
検査室から飛び出て、廊下を走る2人を走りながら見たバーフォードはサーシャとバトラが一緒に走っていると勘違いしてしまった。
そんな事をバーフォードが考えているなどつゆ知らずに戦闘機へと乗り込む。
2機編隊を組んで、日本海の方へと飛んで行く。
凍てつく北の大地を飛び立った白いイヌワシは極東の島国で青いサソリに助けられ、居場所を見つけた。
そして、白いイヌワシは青いサソリと共に守る為にその翼を翻し続けるだろう。
その命が尽きて、天をあまねく照らす星になるその瞬間まで……
次回から5巻に突入!
甘々回は次回の機会まで待ってくれ。
お前がそもそも甘々回が書けないだろ!
というツッコミは無しの方向で。
では、次回までアラート待機をお願いします!