空戦すると間隔空くね。まあ、別の奴も重なった所為ですが……。
始まり前に言っておきます。長過ぎて、話を切った。そして、セルユニゾンの小説で1番文字数が多い。そして、誤字脱字も多いと思うんだ。
だから、ベトコン(誤字脱字)を見つけたら報告下さい。スカイレイダーを出撃させます(加筆・修正をします)。
貴方の知る最善を成せ。
もし貴方がランナーであれば走れ、
鐘であれば鳴れ。
ーーーーーーーーイグナス・バーンスタインーーー
<<各機ブレイク!!>>
バトラのこの言葉でグリペンは急旋回をしながら、チャフとフレアを放出。ファントムは機体を45度傾けて上昇する事で自身のチャフとフレアを温存すると同時に高度を稼ぐ。ベルクトはJAS39Dの近くを飛行する様に機体を動かし、フレアとチャフをワンショットだけ放出し、フレアとチャフの壁を厚くする。バトラはブレイクの宣言と同時にシャンデルを2回行い、3機から離れた場所に移動すると同時に速度を高度に交換する。
ベルクトとグリペンの蒔いたチャフとフレアに2機の何方かが放ったミサイルは飲み込まれ、フレアとチャフに騙され爆発するがミサイルの爆風を押しのける様にアクアマリンとクロームオレンジの双発・双垂直尾翼の戦闘機が飛翔する。
クロームオレンジの戦闘機には主翼とコクピットの間にカナード翼まで取り付けられているのを見ると機動性を意識した機体だというのは見る者が見れば、分かるだろう。
2機が駆け抜けた所で空気の振動がベルクトとグリペンの機体に押し寄せる。
<<速い!>>
<<慧さん、ドックファイトに付き合わないで下さい! 相手の方が機動性は上です、深追いすると喰われますよ>>
<<そんな事言っても!>>
慧の焦燥に駆られた声が響く中でアクアマリンとクロームオレンジの戦闘機が長く伸びる飛行機雲を太陽の下で2つに分けると大きくターンを描きながら、慧の方へと戻って来る。2機の美しい機動に感嘆する慧の機体を目掛けて、2機の戦闘機から機関砲の弾丸が吐き出される。
<<どうするんだよ>>
慧は機体を翻しながら、焦った様に話し掛ける。
<<ベルクト。お前の機体が1番の機動性を誇り、練度はファントムが最高だ。お前達2人が勢子をやって、グリペンのロックオン範囲に誘導。
<<ディー・オーの姿が見えないけど>>
<<T-50はステルス機だ。目視索敵を行っているが見つからない。乱入するにしてもステルスのままなら索敵レーダーは使えない。使えば俺達に見つかるからな。兎に角、お前らとベルクトは数の有利が取れている間に各機撃破しろ。情けや容赦を少しでも加えたら……死ぬぞ?>>
<<……了解>>
<<了解……です>>
余りにも冷たい過ぎるバトラの声に慧とグリペンは寒気を感じながらも行動を開始する。
ベルクトとファントムがラーストチェカとジュラーヴリクに接近し、ラーストチェカもジュラーヴリクもベルクトとファントムの接近に気付いてお互いをガンの射程内に収めれば、双方共にアニマが操るドーター特有の鋭角な機動で背後の取り合いを始める。
慧も空戦への参加を戸惑っている様な機動で飛行し、
ファントムもベルクトも気取られない様に注意しながらラーストチェカとジュラーヴリクをアンブッシュポイントまで誘導する。
「ロックオン」
JAS39Dの機内でグリペンの声が響く。右手側の全周ディスプレイの遥か遠方に映し出されたジュラーヴリクにロックオン完了を示す赤いターゲットコンテナが重なっている。
慧はウェポンリリースボタンに指を乗せ掛けながら自問した。
「(ジュラーヴリクを本当に敵だと思っているのか?)」
慧の脳裏に警告をしてくれたジュラーヴリクの姿が蘇ると同時に
『情けや容赦を少しでも加えたら……死ぬぞ?』
バトラの冷た過ぎる声も蘇る。
「……FOX2」
悲しみを孕んだ弱々しい声で攻撃宣言を行い、慧の中で1番弱い力でウェポンリリースボタンを押し込んだ。
それでも、機体はどんなに弱々しく発されれた主人の命令でも、いつも通りに従い、翼下から長柄の飛翔体が飛んで行く。白煙を吐きながら、ジュラーヴリクへと猛スピードで飛んで行く。
ジュラーヴリクは回避可能な間合いでも、飛んで来る飛翔体に気付いていないのか回避機動らしい機動を取らない。
当たる。そう確信した慧の目に180度回転し頭を垂れたミサイルが爆発する光景が見えた。
「な……」
息を呑む慧の目の前でジュラーヴリクはそのクロームオレンジの翼を翻す。
その翼には一切の細かな傷さえも見られない。
グリペンが『もう1度』と呟くとターゲットコンテナがジュラーヴリクに再度重なり、赤く染まる。
慧も機体をバンクさせてウェポンリリースボタンを今度はいつも通りの強さで押し込む。
発射されたミサイルは緩曲線を描いて飛んで行くが、敵に突き刺さるどころか、被害すらも及ぼせない距離で爆発する。
<<慧さん、割り込みを受けています。彼女達、グリペンと同じ波のEGGをぶつけて、誘導波を上書きして迷走させているんです>>
<<そんな事が出来るのか?>>
<<理論上は可能です。事前にEGGパターンを押さえていれば、グリペンがラファールを操縦しようとした時と同じ様な方法でミサイルの誘導捜査出来ます>>
ファントムの通信が終わると同時にファントムとベルクトの放ったミサイルが命中し合い、空に赤と黒の花が咲く。
それを見たファントムの口から舌打ちが漏れる。
<<完璧に押さえられていますね。機関砲で仕留めないと>>
<<ちょっと待てよ! 彼奴らのミサイルは当たるんだろ? なのに俺達はガンで戦うのか? 無茶だろ!>>
<<バトラさんはミサイルが意味を成さないミサイル搭載の敵機相手にガンだけで挑み、撃墜しています。やれますよ>>
ファントムの言葉が終わると同時にロックオンアラートが響き、ミサイルの接近を知らせる。その数2発。
慧は奥歯を食いしばって操縦桿を倒すが逃げた先で別のレーダー信号に捕まってしまう。逃げる方向を誤った様だった。
<<ジュラを撃ったな、イポーシュカ。地獄に落ちろ。犯した罪の重さに震えて死ね>>
ラーストチェカの呪詛の様な言葉を聞き、背筋が寒くなる慧。あらゆる回避手段が意味を成さない距離でアクアマリンの装甲キャノピーが睨みつける。
「(やられる)」
慧はそう確信し、目を瞑った刹那。
<<慧さん>>
慧の耳に聞き慣れた優しさを感じさせる声に目を開くとアクアマリンの敵機に緑色の雨が降り注ぐ光景を見た。
アクアマリンの機体は被弾を防ぐ為に機体を翻すと同時に慧への攻撃チャンスを捨てた。
緑色の雨が降った方向に慧が視線を向ければ、ジュラーヴリクと空戦を繰り広げていた筈のベルクトが陽光をその巨大な機影で遮りながら急降下していた。
<<ベルクト!>>
<<これで……>>
慧の呼び掛けに答えないのか、答える暇が無いのか慧にはわからないが、ベルクトのSu-47に搭載された2門の30mm機銃から弾丸が吐き出される。
機体の少し上を狙って吐き出された弾丸はラーストチェカの回避行動により、1発も当たる事は無かった。
そして、ラーストチェカも黙って撃たれるだけの相手でも無く、機体を翻して、ベルクトへと反撃に移る。
「似てますね」
その機動はバトラが訓練で見せる反撃への機動に似ており、ベルクトは自分でもわからない程に落ち着いて、機体を操作する。
ラーストチェカの突進の速度を見定めて、機体を急加速、さっきまでとは違う速度でお互いの距離が縮まった事にラーストチェカは反応が遅れ、攻撃チャンスを不意にしてしまう。
ベルクトはラーストチェカが驚きで固まっている間にコブラ機動で頭をその場で上に向けるとスロットルを更に解放して急上昇を行う。
ラーストチェカはベルクトの下をSu-47のエンジンノズルを睨みながら通り過ぎようとした所でベルクトは推力偏向ノズルを利用して、機体を背中倒しで倒れさせる。
この行動にラーストチェカは当初の目的だった旋回は被弾面積を広げると判断して取り止め、加速による距離稼ぎに移行する。
それでも、ベルクトの機関砲に晒せれる事に変わりは無く、数発発射されるが運良く1発も当たらずに距離を稼ぐ事は出来た。
<<逃しました>>
<<突出し過ぎないで下さい。カバー出来なくなりますよ>>
ベルクトが『わかっています』と返答しながら、機体を水平に戻すのと、左翼側の空が揺らめき、波打つのは同時だった。
<<ベルクト!>>
突如として何も無かった筈の空間から機関砲弾が放たれた。激しい光の粒がファントムの機体に降り注ぎ、尾翼を食い破る。機体からは黒煙を吐き、破片を中空にばら撒く。
<<何!?>>
<<まさか!?>>
ベルクトとバトラの叫び声が重なると同時に鋭い風切り音が重なる。ぬるりと大気の青に塗られたマントを脱ぎ捨てる様にバトラのIℓ-44やベルクトのSu-47と同等のサイズを誇る戦闘機が現れる。
その機体はストレーキと一体化した主翼が女雛の様なシルエットを作り出していた。
方向舵の垂直尾翼は根元から動くタイプに加え、菱形の機首に扁平な胴体とコンパクトに設計されたキャノピー。わかるものが見れば、これはステルス性を意識した設計である事は直ぐに分かる。
不明なステルス機は双発のエンジンを吹かすと急上昇し、空に溶け込む様に消えた。
<<EGGも検知できない。目標を完全にロスト>>
<<予想を超えてきたな>>
苦汁を舐めた後の様な声でバトラが呟く。
<<ステルスでレーダーの目には捉えられず、光学迷彩で目視でも捉えられない。厄介な物を搭載するなイワン共は>>
<<どうするんだよ! EGGも捉えられない! 機械的なレーダーもステルスで意味が無いんだろ!>>
<<落ち着け。ステルスと光学迷彩で姿を電子的にも物理的にも消してくるか……反則級の技術だ。一方的に嬲り殺しに会うだろうなこれは。流石は第5世代機>>
バトラの言葉が終わると同時に頭上から突如として短距離ミサイルが慧の機体に向けて降ってくる。
慧は奥歯を噛み締めながら、パワーダイブをしながらのフレア放出で難を逃れる。
<<ディー・オーの洗礼はどうだい? 兄さん達>>
ジュラーヴリクが嗤いながら、心底愉快だと感じられるリズムに乗せて嗜虐的な声音が通信機から聞こえる。
<<レーダーステルス、スーパークルーズ、AESA、EGGをシールドしているからお前らアニマでも簡単には見つけられないぞ。固有色は
ラーストチェカとジュラーヴリクはバトラを除いたメンバーを力任せに包み様にして飛行する。バトラも救援に行きたいが2機で生み出す巧みな包囲網に自分から入れば嬲り殺しに会う事は分かっているので助けに行きたくても助けに行けない状況になっていた。
バトラは苦虫を一変に10匹は噛み潰した様な顔をしてこの状況を打破する術を探す。
ロシア側はエースクラスの敵2機にステルスに光学迷彩搭載の戦闘機1機の3機編成。日本側は4機で数的有利はあるが内1機は舵とエンジンをやられている。
更に見えない敵機と言うプレッシャーでバトラも思う様に動けないでいる。あらぬ方向を向いていても、何処を狙っているにはおろか、何処に居るのかさえ分からない敵は遮蔽物の無い空では想像以上の足枷を嵌める。
そこに居るだけで行動を制限させる。
それは実力者であればある程、効果が高いタイプであり、何も知らない・分らない未熟者であれば動けるが、経験や知識を積んだ実力者には以下に危険かわかってしまう為に行動を移せない。
簡単に言ってしまえば、ディー・オーの存在によりバトラが封殺されており、3対3の状況を作られ、1機は奇襲し放題というかなりのハンデ戦を強いられている状況だ。
その状況下でも慧は包囲網を抜ける為に速度を上げる。
慧の駆るグリペンが突出した瞬間に右翼方面の空間が一部分だけ揺らぎ、揺らぎから30mm機関砲の弾丸が飛び出す。
弾丸はグリペンの右翼を撃ち抜くが撃墜には至らない。
機体を左にバンクし、敵影を求める様に動かすがその瞬間にラーストチェカに背後を付かれ掛けているのに気付く。ベルクトも援護に向かおうとするがジュラーヴリクに背後を取られてしまい、援護に行けないどころか逃げるので手一杯と言う様子だった。
<<撤退しよう。今の状態じゃ危険だ。撤退して体勢を整えよう>>
バトラも的を絞らせない様に不規則に機体を動かしながら、撤退を推奨する。
<<でも、ファントムが舵とエンジンがやられてる>>
<<私と慧さんで敵を抑えます。バトラさんはファントムさんの護衛とエスコートをお願いします>>
<<……武運を祈る>>
バトラが少し考える様に口を噤んだが直ぐに口を開けて、行動に移り始める。だが、その瞬間にグリペンとベルクトがガックンと揺れると戦場から離れる様な軌道に乗り始める。
<<ファントム! 何をしている! コントロールを戻せ!>>
バトラは誰が何をしているのか即座に把握した瞬間に叫ぶ。
その叫びにファントムはふっと笑う。
<<半人前2人が殿を務めるなんてお笑い草です。余計な事は考えないでとっとと退避して下さい。ここは私が引き受けますので、バトラさんは2機を守ってあげて下さい>>
これを聞いたバトラにはファントムが何をしようとしているのかを即座に理解した。
ファントムは自分を犠牲にバトラと言う戦力を保険に掛けて、3機を生き残らせようとした。4機で残っても蹂躙されて全滅する位なら1機を確実に犠牲にする代わりに3機の生存率を限界まで高めることで被害の最小限化を図った。
そして、犠牲になるべき機体は負傷により満足な空戦を行えないファントム自身だった。
<<何をしようとしてるのかわかってるのか! お前の価値観と行動理念はなんだ! 人類の救済だろ! なら、生き残りべきはお前の筈だろ!>>
バトラはファントムがやろうとしている事を理解するとインカムに叫んだ。
<<ふざけるなよ! 何時ものお前だったら、俺たちを弾除けにバトラと逃げる筈だろ! 悲劇のヒロイン気取ってる場合じゃ無いだろ!>>
慧もバトラの叫びを聞いて、ファントムがしようとしている事を把握したのか同じ様に叫ぶ。
<<確かに>>
だが、ファントムから帰って来た声は酷く穏やかな物だった。何か憑き物が落ちたかの様な雰囲気を纏ったうふっと小さく笑う声が聞こえた。
<<本来なら慧さんの言う通り、バトラさんと逃避行をする所なんでしょうか……如何してですかね? 人類を救うには私では無く、貴方方だと思うんですよ>>
<<ファントム、遺言は受け取らねーぞ!>>
<<失敗だらけの人生でしたが、最後の最後に楽しい時を過ごさせて貰いました。礼を言いますよ、慧さん、バトラさん、どうぞ息災で>>
言い終えると同時に生き残ったエンジンを吹かして、ロシア機へと突貫するファントムの機体に左右から迫るロシア機が機関砲を発射する。
右からはラーストチェカが、左からはジュラーヴリクの機関砲弾が降り注ぎ、主翼に増設された垂直安定板とエアインテークを粉砕し、空対空ミサイルが発射された。
空対空ミサイルは余所見をする事無くエメラルドグリーンの亡霊を粉砕しようと飛翔する。
<<まず1機!>>
響くジュラーヴリクの
<<まだ、お前との約束を果たした記憶は無いぞ!>>
バトラの怒声と共に機体から青白い光が1回だけ発せられ、ファントムに飛来していたミサイルを全てを撃墜して見せた。
青白い光の正体はバトラが上部ウェポンベイに搭載していたEMLの砲撃。EMLの口径数とは辻褄が合わない程のインパクト範囲を利用して全てのミサイルにダメージを与え、破壊していた。
バトラはファントムの通路を塞ぐ様にファントムの前を飛ぶ。
<<いつの間に!?>>
ジュラーヴリクが驚きの声を上げる。
慧の通信が入ってから一足先に撤退通路の確保に動いていたバトラがファントムにミサイルが発射された後で行動を起こしたとしても遅過ぎる。
ならば、いつ行動したのか?
簡単である。ファントムが機銃の射線に入った瞬間には機体を上に120度回転させて、上昇。ラーストチェカとジュラーヴリクの上を取り、抜き撃ちの様に発射の寸前でウェポンベイからEMLを展開して発射したのだ。
ステルスを持つバトラのウプイリはレーダーに感知されないのとファントムに意識を向け過ぎたジュラーヴリク・ラーストチェカ・ディーオーはバトラの接近についさっきまで気付けなかったのだ。
<<ここは俺が引き受ける>>
<<待って下さい! 貴方は後の事を考えれば、生き残るべき人なんですよ!>>
ファントムの抗議にバトラは怒気を含んだ声で怒鳴り付ける。
<<そんな状態で殿を務めてもどの程度持つと思ってやがる! どうせ直ぐに追い付かれる! なら、俺が最初から殿をして、3機で撤退した方が数は多い!>>
ファントムの状況では碌な退避行動も取れないので1分も時間稼ぎするのは難しいだろう。被害の最小限化を図るのであればバトラ1機が残った方が3機での撤退は可能性が高い。
ファントムも自身の状況を把握しているが譲れない物があるのか引き下がろうとしないファントムにバトラは強硬手段として、主翼でファントムの主翼を押し上げて、バランスを崩させる。
垂直安定板や各種の翼が損傷した状態ではコントロールを掴むのが精一杯で、コントロールを取り戻した時は高度的な所で戦闘空域から離れていた。
ファントムがコントロール不能により錐揉みをしながら落ちて行くのとジュラーヴリクとラーストチェカがミサイルの照準をバトラに合わせ、発射するのは同時だった。
<<バトラさん! 今行きます!>>
ベルクトの通信を聞きながら、バトラは機体を風で舞う木の葉の様に動かして、ミサイルを躱すと通信を入れる。
<<今のお前では力不足だ。足手纏いにしかならない。撤退しろ>>
<<でも!ーーー>>
<<聞こえなかったのか? 俺は撤退しろと言ったのだ。これは命令だ>>
<<……>>
反転し掛けていたベルクトが元の撤退進路に戻り、離れて行く。
それをレーダーで確認するとジュラーヴリクとラーストチェカはロシア軍から警戒する様に言われている為に周りを旋回しながら包囲網を作っていた。
ラーストチェカもジュラーヴリクも本能で分かっていた。
ファントムに追撃を掛ければ火の玉になるのは自分達の方だと。だから、今は目の前の敵に集中する。
<<良いのかい? 私達3人にたった1機で挑むなんて無謀にも程があるぜ?>>
<<ああ、無謀だな。正直言って、恐怖で足が遊んでるよ>>
見下した様なジュラーヴリクの声にバトラは震える足を見る。
<<だがな>>
着け直した酸素マスクの下でニヤリと笑みを浮かべる。脳裏に思い浮かぶのは無茶や無謀を押し通して来たヴァラヒア事変とゴールデンアックス計画事件の作戦達だ。
バトラはバトラはHUDの台とディスプレイや各種メーターが付けられたパネルの隙間にテープで固定しただけのある機械のスイッチを付けた。
<<俺は恐怖を忘れる方法を知る、愚かな弱者だ>>
<<は?>>
意味が分からないと声を上げたジュラーヴリクの耳に音楽が聞こえ始める。
そして、目の前を飛ぶ戦闘機のキャノピーに装甲が装着され、センサースリットには黒い光が灯り、機体が真上を向いて急上昇を行う。
<<クソ! 逃がすか!>>
ジュラーヴリクは垂直上昇をするバトラを追い掛けて、上昇する。その間もジュラーヴリクの通信教からは音楽が鳴り響く。
ラーストチェカがジュラーヴリクを追って行動を起こした瞬間にバトラの機体から流れる音楽が間奏を終える。
バトラの機体が背中倒しに倒れる様にして自由落下を始める。
エンジン出力を0にしている為に赤外線ミサイルを放とうとしたジュラーヴリクはロックオンが切れてしまう。更に後ろを追っていたラーストチェカにもバトラの機体がのし掛かる様に落ちて来る様に見えてしまい、硬直してしまう。
如何に訓練した兵士と言えども、慣れない・初めての事には反応が遅れるのは良くあることである。
背中から回転して落ちる瞬間に腹部ウェポンベイからミサイルランチャーを露出させ、マルチロックオンを持ってラーストチェカとジュラーヴリクにロックオンを行い、終了と同時にマイクロミサイルを発射する。
<<クソ!>>
<<ジュラ!>>
見慣れない兵器に面食らいながらもアニマとドーターが使える高機動を生かして回避しようとするが発射されたミサイルは8発。それが4発各機に向かうだけでなく、回避経路を潰す様に飛来するがジュラーヴリクもラーストチェカも巧みに回避する。
その出力0の時を狙ってディー・オーが襲い掛かるがその瞬間にはバトラの機体のエンジンに出力は戻った後であり、
背中合わせのままオーバーシュートしてしまったディー・オーにバトラの機関砲は無慈悲に炎を吐いた。
その弾丸はディー・オーの1部に命中し、白煙を吐き出させる。さらに腹部ウェポンベイから4発、マイクロミサイルが吐き出させる。
赤外線を探知して追尾するマイクロミサイルに流石のディー・オーも回避を余儀無くされる。
ディー・オーに4発中、3発は躱されるが内1発が近接自爆で爆発したが元々、携行性と追尾性を優先したミサイルの為に直撃か複数の自爆でなければ撃墜が難しいマイクロミサイルである。たった、1発の自爆では損傷を与えるのも難しい。
実際、ディー・オーにが光学迷彩を使えなくさせるには愚か、自己診断プログラムにも引っ掛かる損傷を与えるにも値しなかった。
4機は格闘戦で失い過ぎた高度を稼ぐ為に上昇を行う。その時にバトラのセンサースリットが黒から黄色に変色する。
そして、バトラはジュラーヴリクにヘッドオンで接近する。
<<上等だ! 相手になってやる!>>
これにジュラーヴリクはガンで返礼しようと機首を動かすが、狙いが定まった瞬間にバトラはJの字を描く様に方向転換を行い、ヘッドオンから逃げて行く。
これにジュラーヴリクは面食らい、動きが鈍るがラーストチェカが追い掛ける。
<<逃がさない>>
だが、ジュラーヴリクに追い掛けられるバトラだが、バトラは特に気にしていないのか目に見えない何かを追いかける様に複雑な機動で飛び続ける。
<<如何して、ディー・オーの位置が分かるんだよ!>>
ラーストチェカは自分へのヘッドオンはディー・オーを奇襲ポイントに誘導する為のブラフだと今更になって気が付いた。だが、時既に遅く、バトラは完全にジュラーヴリクもラーストチェカも位置を把握出来ないディー・オーを捕捉していた。
そのバトラはラーストチェカとジュラーヴリクを無視して1番厄介な存在であるディー・オーの撃墜に動く、ラーストチェカがディー・オーの援護に入ろうとしているがディー・オーとバトラの速度差に素体となったMig-29が付いてこれず、援護に成り切って居なかった。だが、ディー・オーは速度を落としてラーストチェカの援護を受け様にも相手はカウンターマニューバにカウンターファイアで戦争を潜り抜けたカウンターキルタイプのエースパイロット。そんな相手に速度を落とすのは自殺行為でしか無い。
ディー・オーは引き剝がす事を諦めて、側面を取る動きを行い、バトラもそれに応える。
側面を取ろうとお互いに旋回を行い空に螺旋を描いて行く。ディー・オーも原因はわからないがバレているならと開き直ったのか飛行機雲を残す様な急制動を賭けて側面に回ろうとするが、バトラはすかさずカウンターマニューバを掛けるがディー・オーをいち早くそれを察して離脱を選ぶ。
だが、カウンターマニューバという諸刃の剣を得意とするバトラが一枚上手だった。
バトラはディー・オーがカウンターマニューバをする事を察した上で離脱を選択すると予想し、腹の下を通ろうとした瞬間にマイクロミサイルの発射ユニットが顔を覗かせていた。
<<!!?>>
『誘われた』そう判断すると同時にディー・オーはフレアを放出し、ミサイルの回避を試みる。
ミサイルはディー・オーの狙い通り、フレアへと飛んで行く。安堵からかディー・オーは通信機にも拾われない位の息を吐く。
だが、エースと言うのは1手先を見ずに相手の1手を読み、そこから同時に2手、3手を同時に打つ存在を言う。
マイクロミサイルはフレアに引っ張られる様に動くのとスプイリのセンサーラインが黒くなるのは同時であり、マイクロミサイルはフレアを無視してディー・オーへと迫った。
バトラはディー・オーが自分がカウンターマニューバを行えば、離脱すると読んだ上で1手目に離脱ルートを無理しなければ腹の下を通る様に機体を動かし、2手目にマイクロミサイルの発射だが、これをフレアで回避すると思っていたバトラは3手目に視線捕捉・視線誘導システムを起動していた。
これはヘルメットに装着された装置がパイロットの眼球中央の動きを見て目標を捕捉すると同時にミサイルなどの誘導弾を誘導するシステムである。
これはレーザー誘導方針の改良版で機首では無く目線でレーザー誘導方針のミサイルを誘導できるシステムであり、チャフやフレアなどの防御装置・装備を無効化しながら目標に迫る。
だが、ディー・オーもロシア軍の誇る特殊戦力の中の特殊戦力である。不測の事態にも的確に最善手を打つ。
ディー・オーはミサイルを投棄するとマイクロミサイルが飛来するのと合わせて遠隔自爆させる事でマイクロミサイルの撃墜を試みる。アニマの演算能力を持ってすれば背後から一直線に飛来するミサイルを撃墜するなど容易い事である。
そう、
上には上が居るのが世界の常識である。
バトラは4手目にマイクロミサイルの迎撃を予期して予防策としてミサイルに遅延推進を使用した発射した8発の内4発は発射と同時に推進させるが残るの4発は発射から2.3秒後に噴進する様に設定していた。
スタートが遅れれば、ゴールも遅れる。遅いのが速いのに混じり、速いのにタイミングを合わせれば遅いのを取り逃がすのは必然。
残りの4発は爆風を突き破りながらディー・オーへと牙を剥く。
ディー・オーも何とかしようと機体に無茶を強要して回避を試みるが飛来する破片とマイクロミサイルの超近接自爆に機体を大きく損傷し、機体の各所から黒煙を吐き始める。
<<ディー・オー!>>
<<こいつだけは!>>
ラーストチェカが逃げ遅れたファントムの背後に迫ろうとする。
グリペンとベルクトが護衛の為に動き始めるがバトラが圧倒していた事もあり、心の何処かで油断をしてしまっていたのか行動を起こすのが少し遅れてしまう。
ディー・オーに痛手を与えた返しの刃で機体を反転させて背面飛行に移るとそのままの状態で上部ウェポンベイのEMLを展開と同時に発射する。
放たれた砲弾は充分な速度は無かった為に速度も遅く、インパクト範囲も狭かったが右水平尾翼の全てと右垂直尾翼の7割、右主翼のエルロン全てを破壊するには充分だった。
<<やりやがったな!>>
ジュラーヴリクが怒りに身を任せて背後から接近してしまう。上層部から奴の背後を飛ぶのは極力避けろと言われたのにだ。そして、ミスを重ねる。確実な撃破の為にミサイルがあるにも関わらずガンでの撃墜を選択してしまう。
その選択はバトラに伝家の宝刀であるカウンターマニューバを抜かせる事になった。
バトラは機体を背面飛行の状態で機首の先端を起点に尾翼の部分のみを偏向ノズルを利用して斜め下に向けると同時に推力を低下させると同時に吸気の一部を専用の小型タービンを利用して逆噴射、エアブレーキも全開にして斜め下向きを保ったまま降下する。
<<……は!?>>
ジュラーヴリクが己の悪手に気付くが遅く、バトラの30mm機関砲が引き撃ちで発射される。
だが、戦闘機の引き撃ちはまず命中しない。
ジュラーヴリクはHiMATを使いバトラの側面からガンを放とうとする。
30mmの砲弾が爆発した様な音が空に響くとジュラーヴリクの装甲キャノピーに対阻塞気球用カッターが突き刺さっていた。
バトラは更に機体の左右を反転させてもう1度爆発音を発すると今度はSuー27の右エンジンのエアインテークの中に入り、異物混入からの爆発でジュラーヴリクは片肺を失った。
<<ジュラ! 撤退だ! 損害が大き過ぎる!>>
<<ありえない、ありえない。栄光あるバーバチカが撤退なんて!>>
<<命令違反の前にこれ以上続ければ全滅しかない! パクファ、EW起動! スモーク・オン!>>
アクアマリンの機体が煙幕を吐き出すと同時に痛手を負った筈のパクファからも全ての残弾を撃ち放つ。バトラはそれを100パーセントチャージのEMLで煙幕ごと吹き飛ばしミサイルを放とうとするが、度重なる無茶や破片で全ての発射機が損傷。発射出来ないで居た。
その間にパクファも追加でスモークを焚いて2機の姿を消すとEMLを計画してか3機は散開しながら去って行った。
バトラはEMLでの追撃を考えたがチャージ不足で有効射程外。ガンの追撃では燃料が持たないと判断して帰投のルートに機体を動かす。
バトラは間奏を奏でる音楽プレイヤーの電源を切った。
「はは……」
コクピットに虚しい笑い声が生まれる。
バトラは操縦桿を震える足で挟むとパイロットグローブを震える手を使い脱ぐ。
「震えてやがる……手汗も脂汗も酷いな……」
1分30秒にも満たない空戦だったがバトラ本人には相当な疲労と恐怖心を抱えていた。
恐らくだが恐怖心を忘れる方法を会得して居なければバトラは帰らぬ人になっていただろう。
無論、この方法は諸刃の剣であるが故にバトラは余り使いたがらず、使わないで済む状態に持って行こうとする。
<<バトラさん!>>
その通信と共にバトラの視界に白く美しい巨大な戦闘機が映る。
<<良かった……本当に……良かったです……>>
嗚咽混じりのベルクトの声がバトラに安心感と一時の平穏が来たのを認識させる。
そして、嗚咽が無意識に発せられる。
<<帰りましょう。私達の基地に4機、5人で一緒に……>>
バトラはベルクトに自身の声を聞かれまいとバンクで答え、前を飛ぶグリペンとファントムに合流。エンジンを低速の低燃費モードに切り替え、今回の作戦の拠点となる仮説飛行場へと飛んだ。
ベルクトの声を聞いた時に震えと汗が止まった事にバトラは気付いてはいなかった。
甘々回は次回に持ち越しです。
え? そんな砂糖生産して無いだろ、と言うよりネタ回だろって? わかってんだよ、そんな事は!!
あ、Nisshi様の小説とコラボしました。お暇が有りました是非、読んでみては如何ですか?