言い訳しますと新しい試みでトライアンドエラーを繰り返す中で石塚運昇氏の死去を知って痛心になってました。
エースコンバットを彩ってくださった石塚運昇氏にご冥福をお祈りします……
ゴッとベトナムの空を高速で移動する金属の塊が2つ存在した。
片方は陽光を弾く、この世の汚れなど知らないと言わんばかりに美しいパールホワイトの装甲で覆われたSu-47。
そのSu-47の後ろに無機質で最低限の防腐目的に所有者のいないテスト機であるが故か安っぽい白に翼の前方の淵のみを赤いライン付けしただけの塗装の機体、F/A-27だった。
<<アーアー。聞こえるかな?>>
<<感度は良好です>>
<<ロシア機に慣れたせいか米国製の操作が覚束ない……>>
バトラが不満を漏らす。
バトラの乗機は途中から値段的に優れたロシア系に偏っていた事から電子系が完全にロシア寄りになっており、昔は多く使っていた欧米風の電子系が直ぐに扱えきれていなかった。だが、身体が覚えていたのか数回使えば最低限に絞れば満足に動かせる様になっていた。
<<軽いテストは出来たね?>>
地上設備からキャスパーの声が飛ぶと軽い模擬戦をしてもいいと告げた瞬間にF/A-27に搭載された物をPMCに売る為に換装された旧式のレーダーが2機の戦闘機を捉えた。
<<居たぁ!! 遭遇しちゃった!!>>
<<やっと来やがったか。偉そうに強いなんて言われて、マジで強いのかよ?>>
まるで宇宙最強の狩人を見つけた様な叫び声をあげながら、灰系三色のスプリッター迷彩に主翼の両脇と下部が黄色いカラーリングが特徴なSu-37が現れ、その横を飛ぶ機体を見たベルクトが叫んだ。
<<なんですか! あの機体は!!>>
それも無理はないだろう。何故ならSu-37に追随するのは正面は正しく、レシプロエンジンをジェットエンジンに載せ替えたグラマンF7Fを赤く塗装した様な機体が飛んでいたからだ。
<<フレイムフライさんだな。PMCレイブン・アンド・リンクスに所属するパイロットだ。使用機体はジャンクのF7Fをジェット化してジェット向きになる様に各所に変更と強化を入れた機体だ>>
バトラからの解説を聞き、納得すると模擬戦の為にベルクトは離脱するとバトラを挟む様に2機の戦闘機がすれ違う。
<<エースの名は譲って貰うぜ、ガキが!>>
旧式レシプロ機をジェット化した戦闘機とは思えない機動で反転したフレイムフライが真っ直ぐに接近するとバトラはマニュアルでは可能と書かれていたエンジンパドルにカナード、主翼、尾翼全てを使った回頭とでも言える技術を使って機首を反転させる。
反転した瞬間に機体は空中で静止した様に見えたが直ぐにエンジンの推力により前進してフレイムフライとヘッドオンに挑む。
フレイムフライの機体はレーダーなどの電子部品を追加した故に機銃スペースを圧迫し、機首下部に突起を設ける事で20mmのリヴォルバーカノンを2門搭載しているのに対して今のバトラの機体は機首中央に20mmの多銃身砲を1基のみである。
まともに撃ち合えば撃ち負けるのはバトラの方だ。
2機は互いに模擬戦の為に1発も放っていない。
と言うのも今回の模擬戦では、レーザーなどを利用したシステムを使って撃墜されたかどうかの判定が下され、その被害によって搭載されたコンピューターが結果を表示するシステムで戦っている。
<<フレイムフライ、スプラッシュ>>
ヘッドオンの時にバトラは機首を右に振ってから横滑りさせていた事で被害は無かったが、フレイムフライは真っ直ぐに突っ込む度胸勝負をしており、バトラの機銃を回避行動無しで受けると言う判定を下されいた。
基地の司令所から通信は届くとフレイムフライは怨嗟の声を上げながら低空に退避して基地への道に付く。
フレイムフライのディスプレイには両主翼のエンジン脱落に、機首がミンチにされたと言う判定を下していた。
撤退するフレイムフライ見送っていたバトラの背後にSu-37が忍び寄る。
バトラがそれに気付いたのは完全に張り付かれる直前だった。
「油断した!?」
撃墜直後はエースでも油断してしまう場合がある。
それをしない為に索敵行動などがあるが今回は機体の挙動確認と被害状況の確認をしていた事で疎かになっており、張り付かれる結果になっていた。
「ジャン・ルイのくせにやる……」
バトラをパワーダイブで逃げるがジャン・ルイの駆るSu-37も追い掛ける。
海面ギリギリまで逃げたバトラは機体をバンクさせて海面を横切るように旋回させるとSu-37もバンクをしながら旋回させて追い掛ける。
バトラはココだと感じてバレルロールを披露してオーバーシュートを試みるが、ジャン・ルイはコブラ機動を行い、逆に機銃攻撃を放ってくる。
バトラの視界に胴体上部に機銃弾が命中した事を示すメッセージが警告音と共に示されるも、コンピューターは機体にトラブルは無いと判断したのか機体制御に制約は掛けなかった。
バトラは減速を行い機動力を高める。F/A-27も減速に合わせて主翼と尾翼が動き、それを見たジャン・ルイも減速してオーバーシュートしないようにするが旋回半径で負けたSu-37が自然とF/A-27を追い越してしまう。
「やっちまった!」
急いで上昇したジャン・ルイだが、既にバトラは緩上昇をしており、上昇の為に機首上げして背中を晒したSu-37を縦になぐ様に機銃を発射していた。
その事に気付いたのかスロットルを開きながら急旋回を行うもエルロンを損傷したと言う判定が下されたのか、右主翼のエルロンが下がり気味になり、バランスを大きく崩した。
それを逃す様なバトラでは無い。
機首を振って機銃の銃口を向けると指切りで連続した機銃攻撃を放つ。
HUDには機銃の弾道が表示されおり、連続して着弾する様になった。
このダメージでさらに運動性能が低下したのか動きが緩慢となり、機体の高度状態からコンピューターが危険だと察したのか海面ギリギリでオートパイロットが作動して、一瞬ではあるが対ザイ用の機体として最低限以上の改造が施された機体だからこそできる10G超えの機動で機体を海面から逃がしたが、逃げた場所でバトラの機体からフルオートで全弾を叩き込まれた。
突然の10Gを超える機動にフラフラと上体を振りながらもジャン・ルイは鬼じゃないか文句を告げる。
バトラはそれに悪かっと謝った瞬間、通信機から怒号が響いた。
<<実弾積んでたよな! 今すぐ戻れ! ザイだ!!>>
ジャン・ルイは『は?』と何を言っているのかわからない様子だったが、バトラは即座にレーダーを確認する。
旧式が否めない機材だが、確かに空港近くを不規則に飛ぶ光点と少し離れた場所に浮かぶ多数の光点が見えた。
ジャン・ルイもようやく状況を掴んだのか少し乱暴にスロットルを操作して飛び去って行くと、バトラも急ごうとスロットルレバーを握り直した瞬間。
<<AJZ戦闘機ではないんですよ?>>
ベルクトに警告をされると同時に追い抜かされる。
エルロンロールをしながら飛び去るベルクトのパールホワイトのボディから吐き出されるAL-31Fシリーズ3の炎が頼もしく見える。
元はバトラのSu-33に使われた強化と改造を施したAL-31Fシリーズ3は初めての大破で片肺を失ったベルクトのSu-47に2基とも移植され、今ではベルクトが独自に強化と改良、交換を行ってSu-47の巨体を空へと飛ばしている。
「久し振りの光景だな。仲間に前を飛ばせるのは」
隊長、そして対地から対空要員に変わった事で仲間は前を飛ぶ光景が久し振りに感じるバトラ。
それは自分は偉くも、強くも、役割も変化した事を示す経験。
「少し……こわいな」
戦う技術はあるのに戦う力が無い、今の状況がバトラには恐怖に感じられた。
バトラをそんな感情を打ち消そうとしたのか、機首を空港とは違う方向に向けた。
「こんなにも……」
緊急離陸した機体と既に飛び込んだザイとで既に空戦が発生しており、空港上空と近辺では空に網を張るかの様に飛行機雲が入り組んでいた。
その光景を見ながら、ベルクトはバトラの前に出た事を後悔していた。
自分の前に隊長機は無く、後ろに味方機の姿も無い。後ろも前も開けた視界にベルクトは並々ならぬ恐怖と不安を覚えた瞬間に、脳裏にある人物の言葉が蘇った。
『集中力を保つんだ。クールにね』
ベルクトは静かに『そうでしたね』と此処に居ないフッケバインに話し掛ける様に呟くと椅子に座り直し、目を閉じて一度だけ大きくゆっくりとした深呼吸をして目を開くと同時にミサイルの射程範囲に敵機を捕捉した。
敵はM型と制空型にしては珍しくないザイだったが、所々にN型が混じっている。それに対して上空に飛び上がった人類側の戦力はF-4 ファントムⅡやF-8 クルセイダーと言った旧式大型機に混じって、F-18 ホーネットやA-4M スカイホークⅡやMig-21、所によってはJ35 ドラケンにダッソー ミラージュⅢなどの旧式小型戦闘機の姿は多く見える中でF-14 トムキャットと言った高性能な機体が一層目立つ。
旧式ばかりの戦場に一抹の不安を抱きつつも、兵装選択を行った事で胴体に設けられたウェポンベイが開き、可動式のハードポイントがせり出して、4発の中距離空対空ミサイルとウェポンベイの扉に付けられた2つの短距離空対空ミサイルが姿を現わす。
<<ANTARES02、エンゲージ! FOX2!>>
1発の中距離空対空ミサイルが胴体から離れ、白い発射煙を吐きながら戦闘機を凌ぐ速度で飛翔する。
遅れて戦場に到着したベルクトの放ったミサイルはザイの不意を取ったらしく、狙われたN型のザイが碌な回避行動も取れずに爆散する。
N型1機の撃墜はベルクトの予想を超える戦果を生み出す。
<<N型が撃墜された!>>
<<誰だ撃墜したのは!>>
M型やアロー型はまだしも、高機動を誇るN型に苦汁を飲まされていたベトナムの各PMC部隊は、ベルクトがN型の1機を倒した事で士気が上がった。
<<ANTARES02です。N型は請け負います! 他をお願いします!>>
<<了解。行けるぞ! ダイブして接近>>
<<コピー。エンゲージ!!>>
真っ先に動いた部隊が現れた事で各部隊も時間差はあれど、機体を翻す。
あるFー4のみで構成された部隊は4機で固まった動いてザイに対抗する。
<<シーカーオープン。FOX2、FOX2>>
ザイとFー4が同時にミサイルを放つ。
M型のザイが放ったミサイルはレーダー誘導を必要とするミサイルだったらしく、回避行動が満足に取れずに撃墜される。
<<グッキル! グッキル! グッキル!>>
<<04、エンゲージ! シーカーオープン!>>
M型の背後に付いたF-4の部隊の4番機だが、M型はエアブレーキを発動させたのか急減速を行い、4番機の背後に回る。
<<後ろだ! ブレイクしろ!>>
<<ブレイク! ブレイク!>>
隊長機のF-4から叫ばれて回避行動を行なったが、既にザイはミサイルを4発も放っていた。
必中距離内で撃たれたミサイルを回避する事はF-4の様な高機動とは言えない機体では難しかったらしく、螺旋を描くように飛来したミサイルの最初の一撃が近接自爆で速度を奪い、立て続けに飛来した2発目がエンジンを完全に奪い、3発目の爆風で煽られて動きを止めた所に4発目が燃料タンクに直撃して木っ端微塵にされる。
<<よくも!>>
3番機のF-4が4番機を撃墜したザイを機銃で沈め、索敵の為に旋回をした瞬間にベルクトだけでは対処しきれなかったN型のザイに機銃で撃墜されてしまう。
<<ブレイク! ブレイク!>>
別の場所ではF-8が4発のミサイルに追われており、何とかフレアで捌いてこそいたが、1発が抜けてエンジンを破壊した事で推力とバランスを失ったF-8が錐揉み回転をしながら落下するとM型のザイがF-8が生み出した黒煙を突き破って現れた。
<<仇を!>>
そして、撃墜したF-8の僚機に20mm弾を4門から喰らわされて木っ端微塵にされ、その破片をエンジンから吹き出された炎で吹き飛ばしながらF-18が現れる。
<<シーカーオープン。FOX2、FOX2!>>
主翼に吊り下げられた4発が連続して発射される。
F-18から狙われたM型のザイはエルロンロールをしながら不規則に動く事で回避を試みる。
実際にセンサーは主翼の端に反応して3発が近接自爆で爆発するが被害を与えられ無かったが、エルロンロールと旋回で失った速度が原因で騙し切れなかったミサイルが直撃して撃墜される。
<<グッキル! グッキル! うわぁぁぁ!!>>
撃墜した事で驚きと嬉しさを混ぜて叫んだパイロットだが、別のザイから機銃で撃たれたのか主翼とエンジンから火を吹き出し、フォーエルカットが間に合わずにパイロットごと機体が爆発四散する。
その爆煙を躱す様にダイブしたアロー型3機から低空を飛んでいたJ35にミサイルが1発づつ放たれる。
<<ブレイク! ブレイク!>>
エルロンロールをしながらフレアを撒いた事で1発は防いだが、残りの2発に追われるJ35。
そして1発が背面で自爆した事で機体性能が下がった瞬間にトドメと言わんばかりに2発目が再び背面で爆発した事で機体が出火する。
<<ドーラ6、フォーエルカットだ! 消化しろ!>>
5番機のJ35が叫ぶ目の前で爆発するJ 35。
言葉を失った5番機の前を3機のアロー型が空港を目指して飛行する。
<<させるかよ! 仇は討つ!>>
別々にロックオンしてミサイルを2発放って2機を同時に撃墜し、仲間が撃墜された事で急上昇したアロー型に同じく急上昇を掛けながら機銃を放って撃墜する。
<<アロー7!>>
<<空港をこれ以上攻撃されたらまずいぞ!>>
<<逃すか! モーター点火!>>
海面ギリギリを飛行する爆装アロー型7機を見つけたMig-21が3機で構成された部隊は距離と速度から搭載されたロケットモーターを作動して背後から追い掛ける。
専用エンジンを使っている為に継戦力に問題は無いが速度が速過ぎる故に一時的に戦域を離脱せざるを得ない為に使いたくない方法だが、空港の滑走路を失えば、みんな仲良く海水浴である。
<<後ろからミサイル!>>
そんなMig-21に別のザイが放ったミサイルが接近する。
既に追撃体勢を整えており、自分の速度の関係上下手に旋回すれば空気抵抗で空中分解しかねないMig-21のパイロット達は攻めて撃墜される前に撃墜してやるとシーカーをオープンにした瞬間にミサイルアラートが消え、アラートが鳴り止んだ直後に自分達の左斜め上が赤く瞬いた。
Mig-21のパイロットが何が起きたのだと首を回した瞬間にミサイルにバラバラにされたF-14とベイルアウトに失敗して吹き飛んだキャノピーに頭を打ち付け、首が曲がらない方向に曲がったパイロットだった。
<<無駄にはしないぞ!>>
自分達の前を横切ってミサイルを引きつけたF-14のパイロットに敬礼を送ると同時にシーカーがザイを捉える。
<<FOX2!>>
ミサイルが放たれる。
アロー型のザイも高速で迫る3機に気付いて回避行動を取ろうとするが爆装が重かったのか、回避機動は鈍重の一言で対ザイ用に既存のミサイルを改造した間に合わせのミサイルでも命中し、各機からグッキルと賞賛の声が飛ぶ。
<<ANTARES02が!>>
そんな中で誰かの通信が響き、誰もが青空に飲み込まれない美しい白を吐き出す機体を探すと全員が直ぐに見つけた。
<<まずいぞ! あれは!>>
N型ザイ3機に追い回される白い鷲がいた。
エルロンロールやバレルロール、スプリットSなどの機動を使いながら、頻繁なスロットル操作で耐えながらも振り切ろうとするが前進翼の欠点である高速域での安定性欠如が如実に出てしまい、速度が出し切れないでいた。
「振り切れない……」
ベルクトが後ろをミラーで確認して呟く。
ベルクトのSu-47は高機動を誇るドーターだが、元々の役割は核爆弾の被害範囲に留める為の囮であり、そんな機体にお金をかける必要は無いという判断か操縦系統とキャノピー以外は殆ど原型機に近かった。
MS社に鞘替えしてからは戦闘機として運用する事から改造がされたが、大破した時は自衛隊預かりだった事もあってエンジンなどの僅かな部分しか弄れず、機体形状にまで手が出せたのは本社に顔を見せた時のみでその時も大規模な改修は出来ず、殆どが形状変更を行ったパーツへの交換のみで済む物が殆どだった。
「(もう少し大きければ……)」
ベルクトがカナード翼に足された僅かなウィングレットを見て内心で呟く。
安定性向上の改修は殆どが僅かなウィングレットの追加のみで済まさざるをえなかった。
そもそもな話で今回の様な問題が浮き彫りになったのはこれが初めてだった。
アンタレス隊の運用ではベルクトは片宮姉妹の直掩でそこまで速度がを必要としておらず、エンジン性能は持て余し気味だったのだが、今回の様な援護を受けられない状態での空戦となって初めて元々の機体性能以上の速度を出した故に発覚した弱点でもあった。
「(真っ直ぐに飛ばす分には問題はありません……ただ……)」
最高速に近い速度での旋回時に安定性が悪くなる。
その安定性の悪さで機動のキレを欠いており、振り切れそうで振り切れないでいた。
「ウプイリがこんな挙動ならバトラさんの腕って……」
<<ブレイクしろ! ミサイルだ!>>
ベルクトがその通信で考え事をしていた事を自覚する。
後方から白煙を吐きながら極彩色に輝くミサイルの3発が複雑な螺旋を描きながら迫る。ベルクトは機体を必死に翻した瞬間にミサイルが自爆するには遠い距離で立て続けに3発が爆発した。
「一体<<レフトターン!! FOX2!>>
言葉を遮って聞こえたバトラの声に従って機体を翻すとそれを追う様N型のザイが追い掛けるが、バトラの機体から放たれたミサイルがN型のザイに直撃する。
<<間一髪でしたね>>
こんな事は幾らバトラでも人間であるバトラに出来る事ではないと思ったベルクトの疑問を答えるかの様にファントムから通信が入った事でベルクトの頭の中で全ての謎が解けた。
今回の空戦にファントムは参加出来なかった。と言うのも長距離クルーズの所為で整備中だったファントムの乗機であるRF-4EJTP-ANMは襲撃直前に発生した地震の影響で格納庫が半壊し、機体は無事でも出庫が出来ない状況に陥っていた。
空港上空をなんとか離陸出来たバーバチカの2機と彗・グリペンの即席チームと居合わせつつも補給作業が満帆では無かったPMC部隊の機転で潜り抜けながら、ファントムの機体は何とか格納庫の外に引っ張り出していた。しかし、肝心の滑走路が途中から海面を滑る様に現れた水上機に改造されたであろうアロー型ザイの37mm砲で穴ボコにされてしまい、離陸出来るのが不整地に強い機体か短距離離陸性能の高い機体のみと言う状況だった。
カタパルトの無い場所では長い滑走距離を要求されるF-4型には離陸が難しく離陸を断念していたのだが、バトラとファントムが同時に思いついた。
『データリンクでファントムが捕捉・誘導を行うミサイルをバトラのF/A-27から放つ』
これによりミサイルキャリアーとしてバトラが起動した。今まで援護が出来なかったのは単純にデータリンクに戸惑った事とファントムの装備が完全手作業で手間取ったからだった。
<<バトラさん! 背後に敵機! 数は3! アロータイプ!>>
ファントムのレーダーがバトラの存在に気付いたザイの存在を捉えると同時にファントムが叫んだ。
バトラもそれに気付くとスロットルを開いて加速するがM型も追い縋る。
速度差で振り切ろうとしたバトラだが、ザイにロックオンされてしまい、ミサイルが3発も放たれる。
「舐めるな!」
アフターバーナー全開で垂直上昇を行う。3発のミサイルは狂う事なく追い掛けるが、バトラは余裕がある内に急減速させる事で翼を開かせて機動性を引き上げた瞬間に二次元パドルを巧みに操作して機体の向きを210度もその場で変えながらフレアを放出するとフルスロットルでパワーダイブを敢行。
これに対して遅れて発射された2発は追尾を続行したが、1発がフレアを誤認して自爆した。
「そのままついて来い!」
バトラが軽いEPCMを気力で吹き飛ばそうとしているのかミサイルに叫びながら海へとパワーダイブを続け、海面ギリギリで水平飛行に移る。ミサイルは1発は急降下の速度について来れなかったのか海に飛び込んだが1発が未だに追い縋る。
<<ベイルアウトを!>>
ベルクトが叫んだ瞬間にバトラがコブラ機動で海水を跳ね上げてミサイルにぶつける。
相当量の海水を浴びたミサイルは海水を機体と誤認して自爆、その頃にはバトラはコブラ機動から復帰しており、アフターバーナーを炊いて離脱していた。
<<前方と後方から先程のアロー型! それがラストです!>>
前方から来たアロー型に対してミサイルを放つとファントムが即座に前方の1機を捉えて撃墜し、バトラがその残骸を躱すと同時にコブラ機動を行うがアロー型ザイはそれを知っていたと言わんばかりにバトラを挟む様にコブラ機動を行っていた。
「っ!? だぁああああ!!」
バトラが珍しく叫ぶと同時にパドルを操作して機体を無理矢理に横にドリフトスピンをさせる様に向けさせて片方を機銃で撃墜するがミサイルも機銃も弾切れを起こす。
<<補給は!>>
<<終えている!>>
<<空港中心を基点に4時方向から突っ込んで来て下さい!>>
<<ヴィルコ! 1発で仕留めろよ! ファントム!>>
アフターバーナーを焚いて空港へ角度を調整して接近するのと空港から4発のミサイルが撃ち上げられたのか白煙が4本も上がり、バトラの後方を追い掛けるザイに迫り、寸分狂わず同時着弾でザイを木っ端微塵にするが死に際にミサイルを放っていた。
<<そのまま!>>
ファントムの指示にバトラはアフターバーナーを焚き続ける事で返答し、音速の2倍に近い速度で空港上空をパスした瞬間に空港の地面ギリギリを僅かに浮遊する戦闘機からミサイルが放たれ、ファントムの制御を受けてミサイルとミサイルがぶつかりあった。
<<助かった。貴官の名と所属を聞きたい>>
バトラは空港を囲む様に旋回しながら浮遊する戦闘機に問い掛ける。
浮遊する戦闘機のパイロットもバトラが自分を中心に回っている事に気付いて返答する。
<<此方はアクアビット社航空私兵部隊所属のXFA-33 フェンリア。コールサインはAQUABIT60、TACネームは無い>>
<<フェンリア!! つい最近のイギリス軍機じゃねーか!>>
バトラを助けた機体はかなり特徴的だった。
翼形状はカナードと翼端部に下反角の付いた主翼に浅い角度の上向き斜め水平尾翼で構成された、所謂スリーサーフェイス機だった。
垂直尾翼は存在しない事から左右2基のエンジンに装備された水平方向に可動する2次元ベクタードノズルによってヨーイングを行う事も容易に想像できるが、より目を引くのはサイズ違いに搭載される3基のエンジンだ。左右2つは同じサイズだが、中央の最も小さいエンジンが下方90度前後まで排気偏向がされており、これによりVTOLをしていた。
これこそが英国が作り上げた
対ザイ戦を前提にした機体と言う事もあり、通常キャノピーを装甲化した際に出来る無茶な改造故の違和感が無い、最初から装甲キャノピー設計の機体だ。
<<そんな高い機体を<<あ、アクアビット社はこれの開発元なんです>>
バトラも一瞬だけ引かれ、フェンリアの価格でフェンリルを購入しないかと英国から打診を受けていたが、その後の改造費を考えて見送った機体でもあった。
<<燃料残量の少ない機体から着陸しろ。出来ない機体は別の空港に行け。空中給油機を手配している>>
航空管制官からの指示を受けて大型機達は最寄りの空港への着陸を諦めて別の空港に行く為の給油を受ける為に編隊を組む。
編隊飛行は戦術的行動であるが攻撃や防御だけで無く、燃料消費を抑える為の行動でもある。
給油機の到着まで少し時間がある為に少しでも燃料を消費を抑える目的もあった。
<<ベルクト。最後尾に着くぞ>>
<<え? あ、そうですね>>
バトラとベルクトは編隊最後尾に着く。
ベルクトは一瞬だけバトラの言いたい事がわからなかったが、同じ機体同士で編隊を組む部隊を見て察した。
ここの部隊は殆どが2線級戦力であり、機種も可能な限りで統一しているので別機種同士での編隊飛行と言う地味に難しい技術を得ていない。故に別機種同士で編隊を組む事に慣れたバトラとベルクトが他に合わせられる位置に着いていた。
<<身体は大丈夫ですか? ついでに機体も>>
<<ああ。被弾はしてないよ。ハァッーー>>
バトラが盛大に溜息を吐いた事にベルクトが気になって問い掛けると自信を失ったバトラの声が通信機から吐き出された。
<<カウンターマニューバが読まれてた……>>
<<可変翼ですから>><<何を当然の事を?>>
可変翼は通常の機動戦には強いがカウンターマニューバなどの特殊機動戦では不利に働く事が多い。
マニュアル制御すれば良い具合に使えるのだが、マニュアル制御にするとまともに飛べなくなる可能性もある。
ベルクトとファントムの口撃にバトラがガックリとヘルメットとキャノピーをぶつけた音が響く。
<<……ガルム隊の機体にしよう>>
それを聞いたベルクトが装甲キャノピーで見えない事をいいことに盛大なガッツポーズを決め、ファントムが悔しそうにパネルを叩いた。
ベルクトからすればお揃いの固定翼の前進翼機。ファントムからすればベルクトにバトラとのお揃いと言うアドバンテージを取られたからだ。バトラからすれば整備費の掛かる可変翼機は相性が悪ければわざわざ選ぶ理由が無い。
<<それよりも少し離れた海上に岩が浮いていた。何か起きる事は間違いない。陸に降りたら身体を休めろ。最後の休みかもしれないぞ?>>
その言葉にベルクトは何を言っているんだとキョトンとして後方を見ると確かに薄っすらとだが、空中に浮遊する岩の群れが存在する光景を見て可愛らしい悲鳴を上げた。
だぁぁぁぁぁぁぁ!!
前書きが辛気臭いからここは張っちゃっけるぞ!
と言う訳で新機体ですが、ファルケンとモルガンのニコイチ機体になりました。
納得いって貰えるかわかりませんが選定方法を発表します。
単純に1から3なら多いもの。第4案が多ければ被った物かなければあみだくじで決める予定でした。
ですが、出てきた機体をボツにしたから登場させないのも悪いので登場はしてもらいました。
1番希望の多かったXFAー27ですが、ルート1でXFAー27と言う希望が多かったので迷いに迷った際に可変翼でカウンターマニューバってバレない? と言う理由で却下となりました。(本当はサイコロで決めました)
震電Ⅱは複数回登場済み、Suー37とYFー23はベトナムの戦力設定に合わないと言う理由で次回以降に、他の機体も次回以降に登場させます。
フェンリアは純粋に即席の対空ミサイル砲台させたかったので登場させました。
余談ですが、Ⅵ巻の表紙ってSuー37な気がします。Suー27にカナード翼って無かった覚えが……