ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

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今回はブリーフィング回です。って言うほどブリーフィングしてないね。


作戦57 アンタレス隊の真価

ベトナム政府を黙らせる事に成功した事で小松の地へと戻って来たバトラ御一行だが、直ぐにでもゲート破壊作戦の為の準備が行われており、久々の帰郷を味わう暇など何処にも無かった。そんな中でベルクトとファントムは目の前に鎮座する物体を見て心の底からウンザリした感情が漏れ出し、顔を染めていた。

 

油圧ジャッキに載せられたそのブツは円錐形の物体に大振りなアンテナと鰭を広げた様な熱帯魚の様な形をしたそれ。

そしてソレはベルクトとファントムに大小様々な黒歴史や戦果を裏表関わらずに残して記録よりも記憶に存在を刻み付けたブツ。

 

EGG分割投影機ことパラレル・マインズだった。

 

これにファントムは二度と使うかと己の心に誓っている所為か顔に怒りに近い感情が現れており、ベルクトはファントムの様な怒りよりも険悪感を露わにしている。

 

「げっ!」

 

そしてベルクトを所用で呼びに来たバトラがパラレル・マインズを見てか半歩だけ後退する。

 

そしてベルクトはバトラが無意識に漏らした言葉で本人の接近に気付いたのか、バッと音が立てそうな程の速度で振り返るとバトラもなんと言っていいかわからないと言う様な戸惑いの表情を浮かべていた。

 

コレの所為で彼もファントムとベルクト同様に大なり小なり、裏表で大変だったのだ。

主に直属の部下の女性3人の関係で。

 

互いに声にならない声や尻切れトンボにも程がある言葉が並び、伝えたい事が有るが伝えられる状況で無いと言う事で意味がなくなっている言葉が羅列されては風に晒されるバトラとベルクト。

 

「あぁーー! もう! 何をしているんですか! バトラさんはささっと要件をおっしゃって下さい! 進みません!」

 

こんな状況に巻き込まれたファントムは溜まった物ではないと叫んで先を促すと八代通とMS社の技師達がベルクト混ぜた調整が要るから呼んで来いと言われたと伝えるとベルクトは此れは幸いと言わんばかりに一言だけ述べると小走りで去って行く。

 

「全く……初心な童貞君じゃないでしょうに」

 

ファントムもだが、ラファール救出戦でバトラはベルクトの下着を見てしまい、ベルクトは事故でバトラに下着を見せてしまっている。それが今更ながらに恥ずかしくなった故の現象だったのだが、改めて無意識に思い出した場合の羞恥心と言うのは何かと大きい。

 

「残念な事にまだ童貞だよクソッタレめ! 悪いか!」

「いえ、悪くはないです(童貞なんですね……)」

 

ファントムの言葉に話題を変換したいバトラはキレ気味に叫ぶ。それにファントムは内心で何人か食べているか食べられていると思ったのか内心で驚きながらも経験からか参謀職として情報を漏らさない様に努めたのか表に出す事は無かった。

 

「で、今更ですが」

「何に使うのか、か? まあ、確実にアンフィジカルレイヤーへの防衛策だろうな」

「それはわかります。ですが、どうやって守るのかですよ」

 

ファントムの声を出した瞬間に答え合わせの時間だと言ったバーフォードの手がファントムの両肩を強く押さえる。

 

まさかの衝撃にファントムはバランスを崩して身体を大きく揺らすとバーフォードに文句を言わんとするが、上官で有ると同時に歯向かえない立場の人間に。さらに加えてバーフォードもそこまで強くしたつもりは無かったが不意打ちでダメージが大きくなった事を察して謝った事もあり、強く出し切れなかった。

 

「ブリーフィングルームに行くぞ」

 

バーフォードに連れられてブリーフィングルームへと赴いたバトラに少し懐かしい声が鼓膜を揺らす。

 

「おかえりなさいませ。お兄様」

「お帰りをお待ちしてしました」

 

詩鞍と詩苑だった。2人は椅子から立ち上がると恭しく頭を下げた事でバトラは歯痒さに似た感情を抱くがそれを察せなかった2人は久々に見るバトラの顔に綻ばせた瞬間にベルクトが額に汗で前髪を付けて現れる。

 

格納庫での調整を終えた後に小走りで来たからだが、バトラの出張に同行していた彼女に対して居残り組だった詩鞍と詩苑は恨めしそうな目で睨みつける。

 

「よし。全員来たな」

 

そんな彼女達だがバーフォードが話を進めようとした為に席に着き、何時もの様にバーフォードが司会を務める。

 

「此処に居るメンバーが今回の作戦に参加して貰うメンバーだ」

 

ブリーフィングルームに集まったのは独飛からはグリペン・と慧のペアとファントムが参加。MS社からはアンタレス隊全員が参加する。だが、アンタレス隊は今回の作戦の性格上少し特殊な参加の仕方をする事になっている。

 

その作戦なのだが、ベトナム組は作戦の内容をなんとなく察して居るが居残り組である片宮姉妹とカノープス搭乗員の一部はイマイチわかっていない為にバーフォードが作戦の概要を説明する為にPCを操作してプロジェクターに地球の画像を移す。

 

「北極海に現れたゲートから進行してゲートを維持している核を吹き飛ばす」

 

作戦内容を一言で示したバーフォードの声に連動した様に終点は北極海へと移されると詳しい内容を話すと言って北極海に浮かぶ岩石群を指示棒で叩く。

 

「現在、ザイは各地に我等がゲートと呼ぶ物を作っている。コレはグリペンが言うにはアンフィジカルレイヤーを利用した転送装置らしい」

 

バーフォードの声に合わせて各地の岩石群の画像が次々に現れる。

 

「コレが本格稼働すれば我々は背後を突かれてゲームオーバーだ。そんな事は許されない」

「ですがゲートの破壊は不可能だとされた筈です」

 

バーフォードの言葉に詩苑が手を挙げて発言する。

ゲートが発生した付近の各国は独自にゲート破壊を目的とした襲撃を行なっているが、岩石群の岩石を破壊しただけでは後で補充されるだけと言う結論に至っており、現状ではゲート破壊は不可能だと位置付けており、そう言う意味でバーフォードは肯定の意味を含めて頷く。

 

「ああ。従来の考え方、つまりはあの岩石群の破壊では不可能だ。だが、グリペンの証言とファントムの計算による破壊は可能だと言うことが判明した」

 

詳しく解説すると言って岩石群に飛び込む様にカメラが動いたのかのように画像が変わる。

 

「このゲートの中はアンフィジカルレイヤーが広がっている。色々とあるが物質が分解される空間だ。この空間の中にこのゲートを繋ぎ止める楔のような役割を担うコアがある。まあ、少しばかり特殊なザイだとも思ってくれ」

「どうやって破壊するんですか? 物質が分解されるって事は突入すら出来ない筈です」

 

詩鞍が挙手しての発言を聞いてバーフォードが画像をパラレル・マインズの画像に変える。

 

「知っていると思うがコレはアニマの意識をスライスと言う物に変えてザイを友軍機に変える装置だが、今回はコレを友軍機にぶつけてアンフィジカルレイヤーからの鎧とする」

 

スライスは物質が概念に限りなく近い物でアンフィジカルレイヤーから完全に守ってくれるか通常の物体よりも耐えられる可能性が高い。つまりは氷が溶けるならそれよりも溶けにくい物質でコーティングしてしまおうと言う事だ。

 

「突入の方法はわかりました。核の破壊はどの様に?」

「八代通氏が言うには戦術核1発で余裕がある位らしい」

「その核はどこから?」

 

ファントムとベルクトの言葉にバーフォードが話を続ける。

 

「核はロシアから提供される。そして今回の作戦はロシア正規軍所属の第972親衛航空戦隊アニマ飛行部隊、通称名バーバチカとの協働攻略作戦となる」

 

此処までで質問は有るかと告げたバーフォードのスライスを使った防衛が大丈夫なのか慧が気にしてか質問する。

 

「スライスはアニマの一部分だったな。彼女を心配しているのか?」

 

バーフォードの揶揄いに慧は顔を隠して否定しようとするとバーフォードが質問に答える。この辺りは大人なバーフォードに一日の長がある様だ。

 

「スライスの消滅に関してだが……細かな点は省くが、全く問題は無い事が確認されている」

 

これはシミュレーションでの計算故にぶっつけ本番より多少マシ程度の話なのだがバーフォードはあえてそこは話さない。現場に赴く人間に変な不安を抱かせればそれが原因で死にかねかいからだ。

 

「今作戦に関して機体に特殊な改造の必要は?」

「もうしている。元々は複座型もある片宮姉妹のXF-3の潰した後部座席、それとお前の機体の余剰スペースにザイのコアを押し込んだ」

 

その言葉の慧が大丈夫なのかと心配そうになると技術的な面だからとバーフォードが八代通に目配せすると八代通がこれに答える。

 

「別にコアで制御する訳じゃない。あくまでもスライスを定着させる為だけの物だ」

「それとスライスはベルクトの物を使うから安心してくれ」

 

バーフォードからの補足にファントムからの質問が飛ぶ。

 

「そこまでのスライスを分けられるんですか?」

「ファントムほど電子系が強い訳で無いが、Su-47は余裕があるドーター。それにこう言ったらダメかもしれんが……アニマとしての性能にも余裕がある」

 

バーフォードの発言に担当オペレーターであるマイケルとバトラが複雑な心境になったのか顔を伏せ、言った張本人でもあるバーフォードも顔を歪める。

 

「気にしていません」

 

そんな3人にベルクトは微笑む。

 

「私が人間だったら、アンタレス隊には居れませんでした」

 

普通の人間なら如何に才能があろうともMS社がアンタレス隊に期待するのは『情報不足な状況下での作戦行動に即座にして臨機応変に対応出来る部隊』と言うものなのだが、これは満足なブリーフィングや打ち合わせ、擦り合わせが出来ない状況下でもその場でパイロットの技量を持って作戦を成功させる為の部隊とも言い換える事が出来るだろう。

 

成功率を単なる技量で増やすことは、非合理的で有るが、不測の事態が予測可能回避不可の状況で行われる高難易度作戦では技量で成功率を上げるのは支離滅裂に思えるが念入りなブリーフィングが出来ない状況なら逆に合理的に成功率を上げられる。

 

MS社が選定する精鋭部隊は高難易度作戦を困難な状況下でも技量を持って成功させられるだろう部隊と言う名目で選定され、その精鋭部隊の1つにアンタレス隊の名を記しているのはこう言った今回の様な情報不足の高難易度作戦の際に選定しやすいする為で有る。

 

そしてベルクトがアンタレス隊に入りしたのはアニマやドーターの運用する上で都合が良かったと言う意味も有るが、それと同じだけの理由としてアンタレス隊の存在意義を損ねない程度の技量がドーターのダイレクトリンクによる操縦ならそれだけの手腕は有ると言う点も含まれている。

 

無論ながら経験不足故に遅れを取るがそこはシミュレーションでも補えるし、今は戦争中故に生き残れば否応無く経験は積む為にそこまで危険視されていなかった。

 

つまりはアニマだからこそアンタレス隊に在籍出来ている訳であり、ベルクトとしてはアニマとしての性能が求められるならそれに全力で答える所存であり、頼られるなら本望だと心から告げたベルクトに暗い表情をして3人は杞憂だったかと安堵の笑みを浮かべて頷く。

 

「ベルクトにはバトラの機体とダイレクトリンクを行い演算能力を稼いでいる。これで4機にスライスを纏わせても充分なスライスを確保出来た」

 

だが、それはバトラ機体が無事で有るからこその事でもあり、スライスの数から作戦が一定時間経過するまで、具体的にはスライスを一定数消耗するまで被弾が許されないと言う枷をバトラに付ける訳だが、バトラはバーフォードから枷をつけられても大丈夫だと告げる。

 

「自信満々ですね」

「ウチの部下なら俺1人くらいは守りとうしてくれるさ」

 

ファントムの茶々に流し目で片宮姉妹とベルクトを見るバトラが答えると見られた3人は力強く頷く。

 

「それと特殊な改造を施した機体はXF-3と新機体のADFX-03だ。各員が間違った機体に乗らない様に。他は……よし、具体的な行動の説明に入るぞ。突入班はアンタレス隊の4人と4機、独飛の3人と2機、バーバチカのフランカーとファルクラムの2人だ」

 

メンバーを改めての紹介でバーバチカの面子を見たベルクトとファントム、バトラの目付きに鋭さが宿る。

 

「全機はスライスを纏わせた状態でゲートに突入。ザイ防衛隊を掻い潜って核に接近した後に核弾頭を発射してこれを破壊する」

 

具体的と言いながらそこまで細かくないどころかぶつ切りも良いところなバーフォードの言葉だが、これで良いとバトラは内心で頷く。

 

こんなぶつ切りなブリーフィングしか出来ない状況から行われる作戦で無ければ、アンタレス隊の真価は測れないのだから。




この後の展開どうしよう……
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