ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

88 / 92
さぁ、終わりが見えてきましたが、後何話で終わるのか?


作戦71 時には穏やかなじゃない昔話を

「……あー、ファントム?」

 

MS社に貸し出された格納庫の中で翼を休めるバトラの愛機。その機首下に膨れっ面でしゃがむ頬が微妙に赤いファントムにバトラは手に雪を入れたビニール袋を下げながら声を掛けていた。

 

「なんですか?」

 

持ってきた雪で頬を冷やすファントムがバトラの視線に気付いてジト目で問い掛けるとバトラは周りに視線を這わして、何かを確認するとファントムの当てるビニールを支えるのを無言で変わると耳打ちする様に語り掛ける。

 

「何故……」

 

何かを言おうとするも肝心の言葉が出てこないバトラにファントムはバトラの言いたい事がわかっているのか同じ様にバトラにだけ聞こえる声で答える。

 

「ザイの戦いの繰り返し。それを起こしたのは慧さんとグリペンです。それの終わらせ方を決めるのもあの2人であるべきです」

 

「なら、尚更に……」

 

自分達がやろうとしている行動はその2人への背信行為とも言えるのではないか? とバトラは目で語り掛けるがファントムは慧さんには言いませんでしたが、と前置きを置いて語り出す。

 

「確かに繰り返しを開始したのは2人で、終わらせ方を決めるのもあの2人であるべきと言いましたが、今の……この時代を生きる人間には、この時代の進み方を決める権利と義務があります」

 

「その義務を為して権利を行使する意思があるなら、お前はそれに従い、そして力を貸すのか?」

 

「えぇ、それが他者の意思を実現する為に生まれた私達であり……貴方の意思を叶えたいと思った私の意思でもあります」

 

真っ直ぐに見つめるファントムの目とその言葉の真意を自分なりの理解をしたバトラは敢えてソレの答え合わせをせずに自衛隊に貸し出されている格納庫の方角へ顔を向ける。

 

「戦争は多くの教訓も残す。それが負であれ、正であれ、人に様々な成長と変化を強要する。今は彼にとって人として成長する時期だ。そして、この時期は未来に影響を与える。彼の望む未来、俺の望む「「「俺達の、間違いではないですか?」」」」……そうだな」

 

何処から聞いていたのか詩鞍と詩苑、そしてベルクトの3人が現れるとバトラは申し訳無そうにしながらも微笑み、3人の言葉に同意する。

 

今ここに居るメンバーでこの戦争を終わらせる。詩鞍と詩苑は何の疑いも無くそう信じているからこそ、バトラはベルクトとファントムを連れ帰らねばならないと心の中で誓い直す。

 

〈〈世界経済に大きな被害を齎しています〉〉

 

誰かが持ち込んだのか分からない古い外観のラジオから、日本語の報道が流れ出す。

 

MS社でも日本での活動に染まったのか、ラジオの報道番組はアメリカと日本の物と出身国の物が入り乱れ易くなっていたが、今回は日本の物だったらしく、5人は耳を傾けると凶報。と言う物しか流れなかった。

 

「やっぱりかぁ……」

 

ヴァラヒア事変にゴールデンアクス事件と全世界を巻き込んだ戦争とも紛争とも言える戦いを前線で生き延びた生き証人であるバトラは今回の戦力移動で起きると思っていた銃後の世界の被害が予想通りの展開になってしまった事に何とも言えない表情を浮かべていた。

 

「心苦しいです……」

 

ベルクトが小松の町も被害にあったと聞いて、憂いる様に片手を胸の前で握り込みながら告げる。

 

つい最近まではこんな凶報は無かったが、最終決戦に向けた戦力移動によりザイとの戦力バランスが崩れ、銃後の世界に戦火が飛び火してしまった。小松の町も自分達が離れた事により被害を受けてしまったとベルクトは感じてしまう。

 

「だが、中国に比べればマシだ。今後の政治家人生を棒に振るつもりで何振り構わず動けばコントロール可能な状態だ」

 

ザイにより滅ぼされた中国では政府のコントロール力を超える被害や状況が続いた事で難民が溢れてしまう事になる。しかも、中国の一人っ子政策の影響か出生届を出されていない無国籍、存在しない筈の人間まで難民とかしたのだから手に負えない。

 

ニュースは防衛する軍隊の批判に変わろうとすると詩苑の口が開く。

 

「他の方々の尽力あってこそ、この被害なんですよね……」

 

無論ながら上の人間が穴が空いた所を開きっぱなしにはしない。空いた穴には訓練を終えたばかりの新兵や2線、3線級のPMCパイロットで航空戦力の穴埋めを行うがアンタレス隊の穴を埋めるには遠く及ばない。

 

「もうすぐ終わるんですよね? こんな戦争……」

 

詩鞍の縋る声が虚しく響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Xデイと決めた1月7日の日の出から既に10時間以上は過ぎた頃に一向にバーフォードからも八代通からも作戦開始の通達はおろか、作戦の最終確認の命令すらこず、いき込んでいた地上クルー達は肩透かしを食らった様で脇に集まって温かい飲み物でまだか、まだかと愚痴を零していた。

 

「で、7日経った訳だが……ご感想は?」

 

そんな格納庫でカップ麺を手に詩鞍へ煽る様な発言をすると詩鞍は何と言えば良いかわからずに顔を怒りから赤くするだけだったのだが、ラジオからはここ1週間で更に被害が増えた各国の報道が流れており、都市部では電気ガス水道のいずれか、もしくは全てに被害を受けて生活インフラもままなら無くなったと報道される。

 

「ヴァラヒア事変やゴールデンアクス事件ではこんな事は少なかった……でんすよね?」

 

「ん? ああ、アイツらは人間だからな」

 

詩苑の言葉にバトラは頷き、あの時の事を思い出すとバトラの代わりにファントムが答え始める。

 

「当時は正規軍が各地を防衛して、被害が出やすい攻勢はPMCにほぼ一任でしたからね。曲がりなりにも銃後を守る軍は居ましたらからね」

 

「今回は正規軍もPMCも関係無く数と質を揃えて来たからこうなってる。まぁ、当時も銃後の攻撃は……」

 

バトラが少し辛そうにしながらも心配そうに金属のカップを握るベルクトに目を向けるが直ぐに視線をズラすと微笑みをカップ麺の容器で隠す用にスープで喉を潤してから告げる。

 

「バラウールの砲撃だったり、東京やロンドンではステルスの巨大……アレは攻撃機か?爆撃機か?」

 

「調べた限りですが……」

 

バトラの疑問にベルクトが自信なさげに声を上げる。

 

「スピリダスは攻撃機、オルゴイは爆撃機かと」

 

スピリダスは電磁砲と誘雷兵器での地上攻撃から爆弾以外での攻撃を行うと言う所から攻撃機と、オルゴイは機体重量に倒してハイパワーなエンジンによる高い機動性を持つが地上攻撃は爆弾のみだった事から爆撃機と判断していた。

 

「まぁ、兎に角だ。巨大航空機での単機強襲だった。奴らは戦力差を加味して戦略目標をいち早く達成する事で大戦略の自分達の国の建国を行おうとし、ゴールデンアクス事件の首謀者、オリビエリはサンフランシスコを襲う事で経済的な支配を目論んだ」

 

「そう言う点ではヴァラヒアやオリビエリとザイは似てますね」

 

「? どう言う事だ?」

 

空になったカップをゴミ箱に放り込んだバトラが問い掛ける。

 

「ザイが銃後の世界を襲うのは、人間の文化的な生活を壊す為です。そうなれば経済的なダメージから戦争行為をさせられなくなる。文化を持つと言う点を巧みに攻めています」

 

今回の戦争も人類は世界を守ると言う大義名分で戦っているが、言い方を変えると今の文化形態を維持する為に戦っている。そして戦争を起こすのも文化が発端であり、文化によって成り立ち、文化によって終わる。

 

ヴァラヒアも核は明確な力を持つと言う文化を使う事で無理矢理に建国を行おうとし、オリビエリも経済という文化に傷を与え、その傷を自分が癒す事経済を支配しようとした。そしてザイは生活インフラと言う今の文化を支える人間を支える文化を無くす事で大勢の人類を消そうとする。

 

「速く終わらせないと!」

 

そう言ってバーフォードの場所に向かおうとする詩鞍の袖をバトラは掴んで辞めさせる。

 

「なんで、止めるんですか!」

 

詩鞍の言葉に脇に置いていた金属のカップで喉を潤すと苛つきを必死に隠した表情のバトラが言葉を紡ぐ。

 

「日本の独断で作戦決行を早めたんだ。当然ながら各国の政府はそれに文句を言うさ。早める前の作戦計画でもゴネる国が多くて大変だったとバーフォード中佐から聞いている。今ごろ高官達はパワーゲームの真っ最中だ」

 

俺たちみたいな現場の人間が行っても邪魔になるだけだと止めるバトラに詩鞍はどうすれば良いのかと食って掛かる様に迫ると意外な場所から言葉が飛んで来た。

 

「私達はただ全力を尽くすべき時に尽くすだけです。今は身体を休めましょう。此処で騒いで疲れてました。だけは、避けるべきです」

 

ベルクトの珍しく荒い声を上げるその光景を見た人間全員が固まっているとベルクトは、ハッと表情を強張らせると急に恥ずかしくなったのか白い肌を余計に赤くしながら顔を伏せて近場の飲み物に手をつけて飲み干すが……

 

「それ俺のカフェモカ……」

 

カップ麺と言う塩っぱい物を食べた後はほんのりと甘い物が欲しくなるバトラ。

 

此処が寒冷地と言う事もあって甘いココアでは無く、ココアにインスタントコーヒーを足したほろ甘くもほろ苦いカフェモカを用意していたのだが、用意してくれたスタッフが何のイジメかグツグツと煮立つ物を出した事で冷ましていた物をベルクトが飲んでしまった。

 

『ベルクト?』

 

誰の声か分からないが、ベルクトは意図していないがバトラが口つけた物を飲み干すと言う暴挙を犯してしまった。

 

ただ此処で誤解が無い様に記しておくが、此処でベルクトに怒気を向けるメンバーの中にバトラは含まれておらず、向けるメンバーの理由はバトラとの間接キスを成し遂げてしまった事に関してだ。

 

ジリジリと躙り寄る3人の黒と緑の少女達が発するプレッシャーから逃れようと白い少女が駆け出すが3人の少女達はそれを逃す気が無いのか追い掛けて何処かに行ってしまう。

 

「平和だな〜〜」

 

それを見送った少年が新しいカフェモカを入れる為に立ち上がりながら、決戦前とは思えない言葉を吐き出す。

 

決戦の時は静かに、だが着実に近付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の未来を決める分水嶺と共に……




(多分描いてる本人が一番)わかりません!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。