ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

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 長らくお待たせしました。

 そしてエスコン25周年らしいですね。嬉しい限りです。これからも続いて欲しいコンテンツの1つでもあります。
 
 そしてガーリーエアフォースは劇場版でもOVAでも良いから原作4巻を!!


作戦73 戦いの中の戦い

 寒空から降りる冷たい空気に晒された空港に非常事態を知らせれるサイレンの音がその冷たい空気全てを震わせて温めるかの様に鳴り響く。

 

「グリペンのパイロットは無事なのか?!」

 

「急いで救助班を向かわせるんだ!!」

 

 JAS39 ANM グリペンの滑走路事故。対ザイ戦において確かにエースと言うべき仕事をこなしてきた機体とパイロットの事故は否応無く正規軍の軍人達に尋常では無い衝撃を与えていた。

 

「基地要員は早くあの残骸を退けろ! VTOL機は対空防衛装備でその場で出撃させて護衛につかせろ!」

 

「空中にいる機体で燃料不足な奴はいるか確認しろ! 今の連中は武器も燃料も無いかもしれないんだぞ!」

 

「大型格納庫に連絡!! もしかしたら空中給油の可能性がある! 滑走路が開き次第進入出来る様にしておけ!」

 

「空中にいる連中全員に連絡! 燃料の消費を抑えつつ空中にて待機と命令! こんな所で燃料切れからの墜落死などさせるな!」

 

「周囲に急設した臨時飛行場に連絡! 艦載機と丈夫な脚を持つ陸上機はそっちに着陸させろ!」

 

 そんな混乱を貫く様に民間軍事会社の管制官の誰かが叫ぶと他の管制官達も立ち上がり自分の制服を見せつけると同時に叫べば、それだけで自分の会社がこの連絡を行うから誰かが別の事をしろとボディーランゲージで意思疎通を行えば、別の会社がこの状態で気付いていない穴やすべき事を会社単位で空中にいるパイロット達へ送られる。

 

「情報を統合して混乱を避けるんだ!」

 

 そして地上管制塔から送られて来た情報を空中管制機に乗る管制官達はその情報を適宜修正すると同時に適切に送って行く。更には各機体からの報告も分かり易く可能な限りで脳内のみの編集を行い口頭で地上管制官に送れば、地上管制官も適宜、臨時飛行場に降りられる機体でかつ降りなければならない機体から優先して降ろして行く。

 

<<バトラ。お前の機体は後だ。先にシャッターを持つ機に乗った連中から下ろす>>

 

<<エンジン吸気口にシャッターを持つ機体から優先ですね。了解です。給油機は上がりますか? 低出力半滑空飛行も限界がありますよ。臨時飛行場は開きますか?>>

 

<<そっちもまだ臨時ですまんが駐機場の整備が終わり次第、飛行時間が少ない奴から優先する。お前たちエースは最後の方になる。何とか給油機は飛ばすがそれも先に着陸させて細かい破片を飛ばしてからだ>>

 

<<バトラ、了解した。もう少し耐える。それとあの2人は?>>

 

<<慧君の方は無事だが念の為に医務室へ、グリペンは八代通氏の場所だ。まだ詳しい報告が上がっていない。上がり次第には連絡する。オーバー>>

 

 通信を切られると同時にバトラは大きく息を吐きながら背もたれに身体を倒し直す。決して座り心地の良い座席。とは言い難い射出座席だが、それでも操縦桿から手を離す事が出来るのは人間であるバトラにはありがたかった。

 

「もう少し掛かりそうですか?」

 

「あぁ、先に異物混入に強い機体から優先して降ろして安全確保を行うつもりらしい」

 

「わかりました」

 

 機体の残骸や瓦礫を撤去出来てもまだ細かい破片は残る。普通ならそれも掃き掃除などで取り除くが今回は時間が惜しいからと細かな破片は空気供給口に異物混入防止用のシャッターを持つ機体着陸させる事でその時の風圧と衝撃で安全になる程度まで破片を飛ばそうと地上で判断されていた。

 

 最初は正規軍側ではこいつらマジかと言う顔にしていたが、PMCでは割と良くある事だと片付けられて固まる背後をPMCの戦闘機が優先的に降ろされて行く。

 それを見ていたファントムは酸素マスクをつけない口を動かしてバトラの鼓膜を優しい声音で揺らす。

 

「もう少し持たせてみせますから、居眠りくらいならしてもかまいませんよ?」

 

「そう言う訳にはいかん。それよりもこの後だ。グリペンのドーターが無い以上は作戦の根底が覆るぞ」

 

 その言葉にファントムは少し以外そうな表情を浮かべ、バトラが首を傾げる。

 

「バックアップは私とベルクトが持っているので問題ないですよ? バトラさんとの計画もある種では懸念材料が少なくなるので楽かと。お父様にはバトラさんとの計画を省いて説明してますからね」

 

「兎に角は地上に無事に降りる事だ。でなきゃ話が進まない」

 

 暫く空中で待機しながら他人に聞かせるのは避けた方が良い会話を交わしていた2人の耳に無線の呼び出し音が掛かり、2人は同時に口を塞ぐとバトラが無線を操作して通信を繋げる。

 

<<ANTARES01、着陸を許可する。吸い込む様な破片はないだろうが滑走路が傷ついているので中止されたし>>

 

<<ANTARES01ラジャー。アプローチを開始する>>

 

「You have control」

 

「I have control」

 

 ファントムが両手を前に掲げて操縦権が無いことを示すとバトラが操縦桿とスロットルレバーを握ると機体は一瞬だけグラつくが過ぎに姿勢を水平に戻すとゆっくりと滑走路へ最適な角度でアプローチを開始する。

 

<<進入コース適正>>

 

<<ギア、フラップダウン,エアブレーキ>>

 

 徐々にスロットルを落としながらエンジン出力を抑え、エアブレーキを使って更に速度を調整して進入速度と角度を調整して行く。

 

<<速度、適正速度内>>

 

 地面と近付くと地面効果翼で上がろうとする機体を機首を上げて減速する方法で更に減速する事で無理矢理に近い形で機体を更に下げ、後輪が地面に触れると即座に前輪が地面と触れ合う。同時にバトラはエアブレーキとブレーキを掛けて機体に制動を掛ける。

 

<<お見事です。ANTARES01>>

 

 適正位置に機体を止めたバトラは管制官の指示を受けて機体を誘導路に乗せると地上基地要員が誘導を引き継ぎ、機体を駐機場へと向かわせるが、途中で誘導が変わり、偽装された格納庫へ誘導され、エンジンを切る様に指示されてバトラはエンジンを完全に沈黙させる。

 

「お疲れ様です。ファントムさんも。この人の機動は大変でしょう?」

 

 格納庫の中ではタラップを機体に横付けされ、それを登って顔を覗かせたのは見慣れた顔の担当整備兵だった。最前線とあってかその腰には工具と一緒に拳銃がぶら下がっている。

 

「えぇ、いつも傷物にされます」

 

「そう言う誤解を受ける様な言い回しやめてくれないか?」

 

 ハーネスを外されて逆側に取り付けられたフラップで地面に脚をつけたバトラをコクピットから確認したファントムがバトラに呼び掛ける。

 

「バトラさん」

 

「どうしたファント、ム?!」

 

 上を見上げた瞬間にファントムがバトラの腕を目掛けて飛び降りるとバトラが条件反射に近い速度で反応してファントムは力強くキャッチするとファントムとバトラの身体が当たる音と共にファントムのキャッと言う小さくも可愛い声が漏れるが周りが驚きの声を上げていた事もあり、その声は本人にしか聞こえなかった。が、その光景はジェット戦闘機のエンジン音を飛び越すほどの叫び声が格納庫に生み出す結果となる。

 

「あぁーーーーーー!!」

 

 それは後から入って来たベルクトだった。

 開け放ったキャノピーから身体を持ち上げて力の限り叫ぶベルクトの格好は威嚇するかの様なポーズだが、周りの整備員からは出る場所は出たベルクトのプロポーションが対Gスーツにより強調されてしまい、若い整備士は露骨に目を背けてしまう。

 

「早く梯子を下さい!」

 

 鬼気迫るベルクトの言葉に若い整備兵がすぐに指示された物を取り付けると駆け下る様に降りたベルクトがバトラに抱えられる形で更に密着するファントムに詰め寄り、引き剥がそうとする。

 

 そしてベルクトの叫びを聞いて一足先に降りていた片宮姉妹も到着すると3人がかりでファントムを引き剥がしに掛かる。

 

「お前ら! 作戦はまだ続いてるんだから、気を張り続けろとは言わんが、少しは緊張感を持ってくれ!」

 

 バトラがファントムを降した事でそのまま3人に引き摺られる形で引き剥がされたファントムとそれを行った3人の顔を見渡しながら告げるバトラにファントムがいの一番に口を動かした。

 

「でしたら。バトラさんがこの中の誰を選ぶか明言されたらどうです?」

 

 ファントムの言葉に固まったバトラにベルクトが追撃を掛ける。

 

「そうですね。誰かを選べば他の人は引き下がるしかないでしょうし。(私は引き下がるつもり無いですが)」

 

 ベルクトの言葉に頷いた詩鞍が更なる追撃を掛ける。

 

「そもそもの話でお兄様がその気にさせたらなんて言うからです。(詩苑なら恨みませんよ。私もセットですからね)」

 

 詩苑も詩鞍の言葉の後に追撃を掛ける。

 

「その癖にファントムさんに急接近するんですからこっちは気が気じゃないです(ファントムさんを選んだら詩鞍と凸るだけですけど)」

 

 4人からの総攻撃にバトラは『あー』やら『うー』と言葉を探す様にしながらも大きく息を吸う。

 それを見た恋する乙女4人が身構えた瞬間にバトラは急速回頭180度をぶちかましてそのまま逃走を選択。MS社航空戦力組の中では最高峰の陸戦能力を持つバトラに乙女達は置いてけぼりを喰らい、バトラはぶっちぎると言う表現が当てはまるほどの距離を開けると同時に視界からフェードアウトすると適当な段ボールに影に隠れる。

 

「(一応はちぎったとは言えどもこのまま逃げ続けれるとは思えないよな……何処かに隠れて一晩経てばいいがファントムは恐らく部屋に張り込むだろうし……)」

 

 八方塞がりだ。と言う言葉があえて内心でも口にせずに頭の中に押し込む。基地の外に出られない以上はいずれは捕捉される。そして捕捉されれば面倒事は間違いない。楽しい事は好きだが面倒な事は嫌いなバトラは何としても今回の事を気にしては要らない状況まで逃げ続けなければならない。

 

 何もかもが重要な場所でヘタれるバトラが悪いのだが……

 

「あの……どうかされました?」

 

 そんなバトラに遠慮がちに語り掛けて来たのはアイドルを思わせる赤やピンクの服で身を包み、薄いピンクに柔らかな白い光沢のある髪が僅かに傾けた首に揺らされた泣き黒子のある可愛らしい顔立ちの少女。

 この人類の最終局面とも言うべきタイミングで歴史の表舞台に現れたアニマ、FX-3B ANM 震電Ⅱだった。

 

「ちょっと仲間とトラブってな。逃げてる所だ」

 

「それは大変ですね。ほとぼりが覚めるまで私の部屋に身を隠しますか?」

 

 震電からの誘いにバトラの頭が直ぐにメリット、デメリットの算出を開始する。

 震電と自分の関係は殆ど無に等しいが震電は完全に日本のアニマだ。依存とも言える程に日本はMS社の関係は近くこれ以上の接近は必要が無く、外交官の様な立ち位置で接近したとは考えづらい。

 

「何が見返りだ?」

 

 外交辞令が苦手なバトラはデメリットの算出の為に直接的に聞いてしまう。外交の場ならば悪手も悪手だが、兵士として考えれば決して悪くない。そして震電はそんなバトラの事情を知ってか知らずか、少し恥ずかしそうに顔を僅かに伏せながら告げる。

 

「その……私は艦上機なのでお話する人は固定されてしまいますし……閉鎖的な空間なので昔話以外は殆ど一緒で……」

 

 暫く黙ってしまう震電だが、バトラからのそれだとどう言う事なのかわからないから早く続きを話せと無言の圧力を加えられながらもゆっくりと言葉を探す様に続きを語る。

 

「エッジさんや色々な人から、そのー……MS社の一番機のお話がよく出てくるので気になってて……」

 

 その後は『あう』や『あぁ』などの言葉が続くが、要はバトラの昔話や質問がしたいと言う事だろうとバトラは結論を下す。

 

「要は俺の昔話を聞きたい。そう言う事だな」

 

 震電は少し恥ずかしそうに小さく頷くとバトラはそう言う反応をする物ではないだろうにと聞こえない様に呟くと震電の案内を元にスニーキングミッション並みの安全確認を行いながらも、何度か危ない場面に遭いつつも震電に貸し出されている部屋へと辿り着く。

 

「あ、お茶入れますね!」

 

 長丁場にするつもりなのだとバトラは勧められた椅子の上で何処か楽しげに肩を竦めていると作り置きだったのか直ぐに戻って来ると楽しみですと子供の様な笑みを浮かべる震電が昔話を催促を始めたのと同時刻のとある格納庫。

 

「此処のパーツが凄い擦り切れてる!」

 

「こっちはもうグラグラってレベルじゃねー! 此処だったから助かる様な物だぞ!」

 

 それ以外の各所でも悲鳴と怒号が混じった声が上がる。その音源は自衛隊の隊服を着た機付員だった。

 自衛隊ではまず見ないであろう機体の消耗具合に慣れてきた筈なんだがなと呟きながらもやはり部品の壊れっぷりから悲鳴が上がってしまう。

 

「今回の通信ログやフライトレコーダーから考えればこんなのまだマシだよ。エースオブエースと訓練した時は廃棄寸前だったんだからな」

 

「いや、あれは寧ろ廃棄にするべきです」

 

「あの時のは全バラしてパーツ交換95%しただけだろ?」

 

「あの時はまだ訓練用の軽戦でしたからね。それでもコクピットの内部と配線とフレーム以外は全交換でしたね」

 

 そんな会話をしながらもしっかりと整備を行うのはバトラと共に今まで戦い続けて来た熟練整備兵達だ。

 此処までの戦いでもっと酷い消耗があったと言われると自衛隊員達は自分達の所だったら面倒くさい事になっているなと思いながらもいい経験だと思いながら作業の手を進める。

 

「RF−4EJ AMN TPB スコーピオファントムか……流石は元が自衛隊機だな。しっかりしてるし他の国の官給品に比べると部品点数が変わらずに剛性を高めている」

 

 RF−4EJ ANM ファントムをベースにバトラのF−4のパーツを使ってニコイチにされた機体だが、元になった機体の素性の良さがキーとなり予想よりも良い機体となっていた。

 

「こっちも初めてって事でちょっと浪漫に走りすぎたなぁ」

 

 そう言うのは熟練の自衛隊機付員だった。今回の機体の改造に関わった責任者で此処まで培って来た技術と趣味で作っていた研究ノートを引っ張り出して改造に参加。結果として設計段階での余裕を食い潰して機体限界を超えてしまい、アニマ単座操縦でも慣れを有する機体にしてしまった。

 

 パーツの品数低下。これがこの機体にとってはいい方向に傾いている。

 パーツの品数低下の際に壊れた際に副産物として危険性を生むであろう場所を優先で減らす様に作ってあるおかげで多少の故障でもワンフライト。それこそ損傷しながら帰還する程度なら正規軍のそれよりも安全にフライトする事が出来る。

 

「自衛隊でPMC仕様のファントムを使うのは無理だな」

 

 逆にそれは機体寿命の低下を意味する。

 無論ながら過去の新造に近いレベルでの修理を行えば問題無いがそれを正規軍でしろは当然ながら無理な話。MS社の前例も機密が無い旧式訓練機だったからこそだ。故にPMCでは基本的では有るが直せない機体は壊した奴が自腹を切って買い換える。専用機運用のPMCであるからこその対応であり、メーカーも買い替えが基本思想ゆえに機体寿命の延伸はそれをマーケティングポイントでない限りは軽視する。

 

 機体の金は同じレベルの性能の敵機を十数機撃墜すれば釣りが来る程度の値段なのだから。

 そして自衛隊では国民の血税で買うのだからそんな使い捨て品は買えない。買った方が最終的にも安いのは知っているが国民感情的に許されないし、それを言葉遊びで問題化させる政治家と国民が少なからず居る国なのだから……

 

「まぁ、官給品にも官給品でいい所はあるしな」

 

 1番は機体寿命だが、内装パーツの質、そして正規メーカーのパーツが使える事だ。そっちの方が確実性も高いしちゃんと最低限の品質を保証してくれる。PMC仕様は買い手の目と仕入れる人間の目と信頼がないと飛んだ瞬間に墜落もある得る為に正規軍では官給品としての正規仕様が購入される。最悪は機体はPMCでパーツは正規品だが、物によっては取り付けるボルト穴が無いなどで改造をしないと付けられない物もあるので現実的では無い。

 

「本当にパーツの取り付けをPMC仕様に改造した甲斐がありましたね。これが自衛隊仕様の国内製造仕様のまんまだったと思うと……」

 

 のだが、バトラとファントムの機体ではその両方が混在している。と言いてもPMC向けパーツはバトラのデータや意見を元に開発された専用厳選パーツ、最悪はオーダーメイド品なので問題無い。そしてもしも正規品のみだった場合は異物混入で墜落の危険がある壊れ方をしていた。

 

「まぁ、壊れたパーツはユニット毎に交換だな。そうすれば次の作戦に間に合うだろう」

 

「自衛隊じゃあり得ない言葉だな」

 

「パイロット以外全交換よりはマシだな」

 

 いや、それは機種転換か機体交換。と言う言葉を自衛隊の機付長は何とかして飲み込んだのと同時に滑走路に新しい爆音が響いていた。




 と言う訳で乙女の戦いと整備士の戦いでした。

 因みに最後のパイロット以外交換はオメガ11です。
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