ゼツは今、姫島神社へ続く階段を上っている。
だが、怒りのオーラを噴出しながらだ。依頼内容がとんでもないくらい理不尽極まりないからだ。
「さて、もうすぐか」
腰から赫子を出し、仮面を形成する。
「さて、俺を怒らせたことを後悔させるか」
階段を上り終わると、そこには小さな黒い髪を後ろでまとめた女の子が大人に捕まっている。恐らく例の堕天使の娘であるとゼツは推測した。
「む、《ムカデ》がきたぞ。娘の目隠しを取れ」
一人の男がゼツに気づき、捕まっている女の子の目隠しを取る。
「お母様! お母様!!」
涙を流しながらその女の子と同じ顔の女性が拘束されている。
「これは、依頼とは違うぞ。どいう了見だ貴様ら」
ゼツは周りを取り囲んでいる集団に問う。
「愚問だな、ムカデ殿。我々は、うぬの仕事を楽にしてやったのだ。さ、早くその女と娘を殺せ」
そんなことを言っても全てがウソであるとゼツは確信する。
「わかった。「では」死ぬのはお前等だ!」
ザシュッ!
「げぼはぁっ!?」
女性を拘束していた男の腹を赫子が貫通した。
「な!? 血迷ったか、ムカデ!!」
ゼツに向かって怒鳴り散らすが、それ以上に怒っているのはゼツだった。
「それはこっちの台詞だ。貴様ら、よってたかってなんの力もない少女と女性を捕まえおって。発情期か、貴様ら」
仮面で表情はわからないが、怒りのオーラを噴出していた。
「貴様らに生きる価値なし。ここで死ね」
左手の親指で人差し指をパキッといわせた。
「「「「うぬなど怖かねぇ! 野郎ぶっ殺してやらあああああああああああ!!」」」」
少女と女性を拘束していた連中も混ざり、ゼツに一斉に襲いかかるが、
「面倒だ。落ちろ」
右手の指をパチィンッと鳴らすと黒い穴から無数のやせ衰えた腕が襲撃者を全員拘束した。
「な、なんだ!? これは!!」
「その腕は、奈落の青銅門《タルタロス》の囚人達の腕だ。タナトスが新しいオモチャを探しているらしくてな。貴様らが丁度いい。じゃ、タナトスによろしく」
腕に捕まれた襲撃者達は、飲み込まれた。
「さて、後でタナトスに電話するとして。大丈夫かい、お二人さん?」
仮面を解除し、その顔を二人に向けた。
「はい、大丈夫です。娘ともども助けていただき、ありがとうございます」
母親が頭を下げると、隣にいる娘も「ありがとうございます」と言って頭を下げる。
「俺はあいつらが気に食わなかっただけ。それと、女の子に涙を似合わないから」
彼の言葉に顔を赤らめる二人。その時、「朱璃ー! 朱乃ー!」上空から男の声が聞こえ連中の増援かと思って警戒するが、その背中からは黒い翼が10本も生えた男だった。ゼツはその男に見覚えがある。
「バラキエル? じゃあ、この二人が」
ゼツはふとあることを思い出した。堕天使勢力からある依頼をされたとき、その案内人としてバラキエルと会っていた。そして、彼には人間の女と馬鍬ってできた娘がいると話していた。
「お前、ムカデか。何故ここに?」
ああ、やっぱりこの二人か。
彼は心の中でそう呟いた。
「安心しろ。俺は、この二人を助けただけだ」
ゼツがそう言うと、バラキエルは納得した。
「そうか。お前には恩ができたな。娘と妻を助けてくれてありがとう」
こうして、ゼツによる鬱クラッシャーは完了。
ようやく原作に移れる。長かったなぁ。