死戦女神は退屈しない   作:勇忌煉

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第11話「一番下は努力家」

「会わせたい人がいる?」

『はいっ! そうなんです』

 

 合宿に強制参加されられることが決定してから数日後。暇なのでタバコを吸っているとヴィヴィオから通信がきた。

 どうもアタシに会わせたい人が二人ほどいるらしい。なぜかアイツが思い浮かんだのは気のせいだろう。

 

「どうしようか?」

〈一応会った方がいいかもしれません〉

「……んじゃ、会ってやるよ。一応な」

『ありがとうございますっ!』

 

 そんなに嬉しいかね? ただ会うだけだぞ?

 それにしても妙な予感がするな。今までご無沙汰だった奴ともうすぐ会えるみたいな予感が。

 

『それじゃあ、時間と場所は――』

 

 

 

 

 

 

 

「サツキさ~ん!」

 

 ヴィヴィオに言われた時間と場所になんとか到着できた。間に合わなかったらボイコットするつもりだったんだけどな。

 ていうかここ、練習場じゃね? 今すぐ帰ってもいいだろうか?

 

「お前が引率か。ノイズ」

「まあな。あとノーヴェだ」

 

 ま、当然といえば当然か。

 

「そんで、お前らもいるわけか」

「「あ、はいっ」」

 

 二人とも元気よく返事してくれた。うんうん、ガキはそうでないと。

 ……でだ。なんか予感というものが当たってしまったんだけど。

 そう思いながら、アタシはノーヴェの隣にいる短髪のクソガキへ視線を向けた。

 

「なんでお前がいるんだよ?」

「いやいや、それはこっちのセリフだから!! なんで――なんで姉さんのような人がこんなところにいるんだよ!?」

「「「姉さん?」」」

 

 アタシを姉さんといったコイツの名前は緒方イツキ。女みたいな名前だけどれっきとした男子だ。

 いわゆる末っ子というやつで三姉弟の一番下だ……立場的にもな。まさか再会するなんて思ってもみなかったけど。

 ちなみに今は中等科1年だから……つまり年齢的にもガキんちょってことになるな。

 つーか姉貴といいコイツといい、最近身内と再会することが多くなっている気がする。

 

「せ、先輩」

「なんだよ?」

「今姉さんって……」

「言わなかったか? この人も俺の姉さんだよ」

「先輩、二人もお姉さんがいたんですか!?」

「普通なら苗字で気づくだろ……」

 

 ……ちゃんと話してなかったのか。ていうかお前、ヴィヴィオらと仲いいんだな。

 さすがにリア充ではなさそうだが……男友達はいなさそうだ。どうでもいいけど。

 

「今までなにしてたんだ?」

「それはこっちのセリフだつってんだろ。俺はあんたら二人と違ってちゃんと練習に励んでたんだよ」

 

 こうやって話してみるとマジで似てないんだよなぁ。コイツだけ努力家ってやつだし。

 タバコも吸わないし、酒も飲まない。盗んだバイクで走り出したりもしない。

 こんなに似てないイツキだが、それでも似てるところはある。ま、それについてはまたの機会だな。

 

「ところで……お前誰だっけ?」

「またですか!? リオ・ウェズリーですっ!」

「悪い悪い。確かリ――∵♪☆◆◇△●■だっけか?」

「それっぽく言ったつもりでしょうけど、最初の一文字以外を早口で誤魔化さないでくださいっ!」

「うるさいから黙れ、ウ(ry」

「先輩まで!? さっきまでちゃんと呼んでくれてたのに!」

 

 ……ああ、やっぱりお前はアタシの弟だよ。どうあがいても似てしまうのだから。

 少なくとも同じではない。努力家という時点でアタシや姉貴とは大違いだ。

 

「おいノーヴェ。さっさと後ろの奴を出せよ」

「おっとそうだったな」

 

 さっきからノーヴェの後ろに隠れているイツキと同い年ぐらいのガキんちょがようやく出てきた。

 って待て、コイツは……

 

「お、お前……」

「前に会ったそうじゃねえか。コイツから話は聞いてるぜ?」

「姉さん……」

「待てイツキ。とうとう一線越えちまったか、みてえな顔でアタシを見るな」

 

 ノーヴェはイヤな笑みを浮かべ、イツキには犯罪者を見るような軽蔑の眼差しを送られた。ムカつくな、その顔。

 そうだ、コイツは始業式があった日の夜にリアルファイトしたカラコン娘じゃねえか。

 

「確かインドネシアだっけか?」

「イングヴァルトですっ!」

 

 そうそう、そんな名前だった。完全に忘れてたけどな。

 

「アインハルト・ストラトスです」

「ラインハルト・ストライク……だと……?」

「アインハルト・ストラトスですっ!」

「略してアイちゃん」

「そ、その呼び方はやめてください……っ!!」

 

 なんだそのキュンとくるような呼び方は。もしかしてお前、狙ってたりする? アイちゃんとやらも顔を真っ赤にしてるし。

 それにしてもあり得ない。奴はブ○イドに一刀両断されて死んだはずじゃ……生きていたのか?

 

「――ラインハルト! 死きてはずじか!?」

「だからアインハルトです!」

「落ち着けサツキ。いろんな言葉が混ざって未知の言語になってんぞ」

「ていうか次世代語だな」

 

 ヤベェ。焦りすぎた。

 

「で、そのストラトスがなんの用で?」

「イツキさんがいるとペースを乱されるので単刀直入に言います――もう一度私と勝負してください」

「却下」

 

 その言葉を聞いた瞬間、アタシは条件反射で答えていた。嬉しい限りではあるんだがな。

 ふとイツキを見ると何を言ってるんだこの子は、という表情になっていた。

 

「おっと悪い。判断を早めてしまったな。理由は?」

「あの勝負は引き分けだったからです」

「はぁ!? 姉さんと引き分けたってマジかよ!?」

 

 え? あれ引き分けだったの? あとイツキ、うるさいから黙れ。

 信じられないのはわかるが見方によってはそうなるんだろうな。

 

〈先に起き上がった方が勝ちだなんて誰が決めましたか?〉

「アタシだ」

 

 てっきりアタシが勝ったものかと思ってたよ。ルールって大事だな。

 まあ、ケンカにルールもクソもねえけど。

 

「返事だが、やっぱ却下で」

「なぜですか?」

「勝負自体は喜んで引き受けたいんだが……いかんせん場所が悪い」

 

 だってここ室内だし。人多いし。居心地が悪いし。

 

「あのときは街頭試合だったから受けたんだ。それに手の内は見せたくない」

「姉さんに見せられる手の内なんてあったっけ?」

「黙れイツキ」

 

 毎回横から口を挟むんじゃねえよ。少しは空気を読めバカヤロー。

 そんなんだから姉貴に殺されかけたんだろうが。

 

「ま、とりあえず今日は却下だ。またの機会にしてくれや。機会があればの話だがな」

「…………はい」

「どうしても納得がいかないのなら、ちゃんとした場所を用意してくれ。気が向いたら相手してやる」

 

 本気は出さないがな。

 

「そういやサツキ。あたしとアインハルトが喧嘩してたとき、近くにいたのはなんでだ?」

「なんのことだ?」

 

 ていうかいつだよそれ。仮に近くにいたとしてもアタシはなんも知らねえよ。ずっとケンカしてたんだし。

 ……ああ、始業式の翌日か。なんかそれっぽい音もしてたし。

 

「で、お前は何をしてたんだ?」

「夜道を散歩してた」

「嘘つけ」

 

 まるで打ち合わせしていたかのような返答である。うん、ムカつくほど見事だ。

 

「喧嘩してたんじゃないのか?」

「そのようなことがあろうはずがございません」

 

 実は毎日してるんだよね、とか言ったら間違いなく殺される。

 やめろイツキ。さっさと吐いちまいなよって面でニヤニヤすんな。

 

「そうか。それじゃあ――ラト。あの日、サツキは何をしていたんだ?」

 

 

 ダッ(アタシ、猛ダッシュ)

 

 

『おいっ! サツキ!?』

『姉さん!?』

『さ、サツキさん!?』

『どこにいくんですか!?』

 

 背中の方から声が聞こえてくるがそれどころじゃない。ラトは口が軽いから間違いなく暴露される!

 

〈失敬な。これでもプライバシーは守る方です〉

「嘘つけ! お前わりと喋るだろ!」

〈否定はしません〉

 

 改めて、アタシの愛機はまるで信用できないことがわかった。

 一度逃げたからには戻るわけにもいかず、結局大暴れしてから帰ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ。伝え損ねちゃったよ」

「そうですね……」

「ところでアイちゃん」

「その呼び方はやめてくださいっ!」

「やだ。そんなことよりも、姉さんと引き分けたってホントかよ?」

「は、はい……」

「へぇ……ならそれは奇跡と思っといた方がいいよ」

「え?」

「ま、合宿辺りで再戦できるだろうからそのときに思い知ることになるさ」

「……誰が相手でも、私のやることは変わりません」

「…………あっそ」

 

 

 

 




 リメイク前では進みすぎたせいで登場させるタイミングを完璧に失ってしまったキャラです。

《今回のNG》TAKE 25

「ところでアイきゃん」
「………………きゃん?」
「…………ごめん。言ってみたかったんだ。後悔はしてない」
「は、はぁ……」


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