死戦女神は退屈しない   作:勇忌煉

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 今回もイツキ視点です。それと……

『混ぜるな危険』

 とにかくこの一言に尽きます。


第14話「混ぜるな危険」

「サッちゃん?」

「んだよ」

「タバコはあかんって言うたやろ!?」

「うるせえな。こちとらバイト先でいろいろあって疲れてんだよ。ちょっと黙れ」

「……ご飯は?」

「ない」

「えぇ――っ!?」

「だからうるせえんだよアホ!」

「アホはサッちゃんやろ!」

「なんだとこの乞食!」

「乞食ちゃう! お代官様や! それとアホなんはサッちゃんやて何回言うたらわかるんよ!?」

「んだとゴラァ!! それはこっちのセリフなんだよ!」

「あかんあかん! サッちゃんのパワーで腕十字はあか――あ、でも手におっぱいの感触が」

「あ゛ァ!?」

「ちょちょちょちょい待ったァ!! サッちゃんこれ以上は洒落にならへアァ――ッ!! いや、ほんまにお願いやサッちゃ――」

 

 

 

 

 

 

 

「ご無沙汰してるわ、八神さん」

「敬語やったら褒めてあげたんやけど……」

 

 俺は今、姉さんの付き添いで八神家に来ている。はっきりと言おう、今すぐ帰りたい。

 まず俺と会話しているのは八神はやてさん。スミ姉と同い年のセクハラ狸である。

 まあ、なんで狸かというと俺にもわからない。でも狸である。

 

「私は狸ちゃうよ?」

「嘘つけッ!!」

 

 この通り、心まで読まれてしまう。あれ? 狸って読心術にも長けていたのか?

 

「ところで姉さんは? 先に来てるはずなんだけど」

「あー……実は――」

 

 

『オラオラどうしたァ! んなもんかァ!?』

『それは私の台詞だ!』

 

 

「――シグナムと手合わせしてるんよ」

「アホかこのクソ狸!!」

「なんで私が責められるんや!?」

 

 なんてことをしてくれたんだ! これで48回目だぞ!?

 八神さんを無理やり連れて表に出てみると、案の定というべきか姉さんとシグナムさんが凄まじい勢いで模擬戦をしていた。

 いや、あれはもはや決闘だ。しかもだんだんと激化してるように見えるんだが……!?

 俺は思わず姉さんを止めに入った。シグナムさんの方は八神さんがなんとかしてくれるだろう。

 

「姉さんストップ!! それ以上はヤバイって!」

 

 主に周囲への被害が。

 

「離せクソがァ!! 邪魔すんじゃねえよ!!」

「これ模擬戦だから! タイマンじゃねえから!」

 

 スミ姉に負け劣らず歯止めが利かねえのは相変わらずだなおい!

 

「なんでいつもやり過ぎるんや……」

「すみません。少し熱が入ってしまいました」

 

 声が聞こえた方を見ると、すでに止まったであろうシグナムさんと呆れた感じの八神さんが会話していた。止まるの早くない?

 それとシグナムさん。結構不満そうに言ってるところ悪いけど入った熱は絶対に少しじゃない。

 

「ほら、シグナムさんは止まったから姉さんもストップしろ!」

「ざけんなオラァ!! まだ終わってねえだろうがぁ!!」

「たった今終わったんだよ! それぐらい認識しろやこのアマァ!!」

「んだとゴラァ!? ぶっ殺すぞテメエ!」

 

 マズイ。矛先が俺に向いてしまった。

 

「待て姉さん! 今のは言葉のあやなんだ! だから止まって――」

「くたばれぇ!」

「ぶふぉ!?」

 

 弁解をしようとしたら姉さんの拳が顔面に打ち込まれ、俺はきりもみ状態になって吹っ飛んだ。

 理不尽にもほどがあんだろ……これのどこがいいお姉さんなんだよアイちゃん……。

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんの用だ?」

「ミウラの家庭教師になってほしいんよ」

「死ね。ていうかミウラって誰だよ」

「姉さん。断りの返事ならともかく死ねはどうかと思うんだ」

 

 あれから数十分後。俺を殴り飛ばしたからか姉さんは落ち着きを取り戻した。つまり俺の犠牲と引き換えに今回は止まったわけだ。

 にしても姉さんが家庭教師……。ヤベェ、似合わなすぎて笑いしか出ねえ。

 

「八神さん。マジで考え直した方がいいよ?」

「アタシもイツキと同じ考えだ」

「そうは言うてもなぁ……サツキの場合、苦手なだけで無理ってわけやないやろ?」

「めんどくさい」

「ならイツキがやるか~?」

「ぜってーにしねえよ」

「バカにできるわけねえだろ」

 

 悔しいが姉さんの言う通りだったりする。俺はスミ姉や姉さんと違って勉強はできない方だ。

 なのでその面に関してはアイちゃんに教えてもらっていたりする。わりとマジで。

 

「もし受けてくれるって言うんなら――」

「断るつってんだろうが」

「――お給料出したるわ♪」

「喜んで引き受けよう」

 

 わお。見事な手のひら返し乙。

 

 

 ――というわけで――

 

 

「初めましてっ! ミウラ・リナルディです!」

「おう。弟がいつも世話になってんな」

 

 なってねえよ。

 

「まあ、さっさと始めようか(ドサッ)」

 

 姉さんはそう言うと同時にどこから取り寄せたのかわからない教科書の山を荒々しく机の上に置いた。

 まあ、勉強はできても教えるのには向いてないからなぁこの人たち。

 

「ふぇ!? こ、こんなに!?」

「いちいち思い出すのめんどくせえんだよ。引き受けたからにはお前を優等生にまで仕上げてやる」

 

 今の姉さんは乞食女ことアホミ――ジークさんのせいでお金が必要になってるからな。

 そんな妙に気合いが入った姉さんを見てリナルディは焦りまくっていた。

 

「さて、これからお前を徹底的に叩き直す。覚悟はよいか?」

「「叩きのめす!?」」

「……叩き直す、だ」

 

 そんなこんなで姉さんによる徹底指導が始まった。

 

 

 

 

 

「A、B、C、D、E、F、G――」

「あまりにも基礎すぎんだろ!? アルファベットなら俺でも言えるぞ!?」

「黙れイツキ」

「――H、I、J、K、L、M、S!」

「…………え?」

「……ポテトじゃねえよ? L、M、N、だ」

「は、はいっ! すぅ~……L、M、S!」

「「N!!」」

 

 

 

 

 

 次の計算をしなさい。

 

 α×χ

 

「…………あれ? 数字は?」

「それが式だ」

「あぅ……」

「……姉さん」

「んだよ」

「もう少し簡単なやつにしてやれよ!」

「待て! これ中学で習う範囲の問題だぞ!?」

「嘘つけ! どう見ても高校レベルじゃねえか!」

「いやマジだから! マジで中学で習う範囲の問題だから!」

「ふ、二人とも落ち着いてください~っ!」

 

 

 

 

 

 次の漢字の読みを答えなさい。

 

 胡桃

 

「こんなの習ってませんよぉ~!」

「いや、中学で習う範囲だぞ?」

「あんたの言う中学って地球の方だろ!?」

「そうだが?」

「ここはミッドだ! それとその漢字は絶対に高校レベルだろ!」

「気にすんな」

「気にするわっ!」

 

 

 

 

 

「や、やっと終わりました~……!」

「お疲れさん」

 

 かれこれ数時間。ようやく全教科の問題を解いたらしいリナルディは机で項垂れていた。

 それにしても姉さんには呆れるよ。地球とミッドじゃ内容が違うってのに……。

 

「あれ? サツキさんは……?」

「そういえば……」

 

 姉さんの奴、どこいったんだ?

 

「ちょっと探してくるから待ってろ」

「あ、はい――」

 

 

 ――ドォォン

 

 

「……は?」

 

 なぜだろう。イヤな予感しかしない。

 

「マジで待ってろ! ここから動くなよ!?」

「ひゃいっ!?」

 

 慌てふためくリナルディをスルーし、俺は一心不乱で階段を駆け抜けて表に出た。

 なんせ二階の部屋で勉強してたからな。――リナルディだけが。

 

 

「あっははは!」

「やはりこの時間は楽しい!」

 

 

「またかぁああああああっ!!」

 

 姉さんとシグナムさんが再び模擬戦という名の決闘を繰り広げていたのだ。それを目撃した俺は思わず膝をついた。

 あれだけやってまだ懲りねえのかよ!? 姉さんはともかくシグナムさん! あんたさっき八神さんに釘を刺されてたはずだ!

 

「二人ともやめいっ! もうええやろ!」

 

 たった今駆けつけた八神さんが叫ぶも、二人は熱中しているのか全く反応しない。

 ええい、こうなったら力ずくだ! 八神さんも同じことを考えてたらしく、シグナムさんの方へと走っていった。

 

「姉さんストップ! いい加減やめろってんだ!」

「またかテメエ!! 離せよおい!」

 

 後ろから姉さんを羽交い締めにするも、全く止まってくれない。

 

「そんなにケンカしたいなら裏路地でやってこいや! 周りに迷惑かけんじゃねえよ!」

「じゃかましいっ! テメエには言われたくねえんだよ!」

 

 ごもっとも。

 

「とにかくストップ! 止まれこのアバズレ!」

「誰がアバズレだゴラァ!!」

「ごふっ!!」

 

 今度は姉さんの横蹴りできりもみ状態にされ、再び吹っ飛ぶはめになった。

 ちくしょう。なんで俺ばかりこんな目に……!

 

 

 閑話休題。

 

 

「ちくしょう。二回も邪魔しやがって……!」

「待ってほしい。なんで俺が責められてるんだ?」

 

 俺を蹴り飛ばして落ち着いたらしい姉さんは、お茶を飲みながらもまだ引きずっていた。

 ……俺、そこまで悪いことしたか?

 

「ミウラはどうやった?」

「んー……あれだ。イツキ並みのアホだった」

「いや、あれと同列にだけはしないでくれ」

 

 さすがの俺でもアルファベットぐらいは言えるし、漢字も読める。

 

「まー、やるだけやったし約束の給料くれよ」

「イツキに渡しといたはずやけど?」

 

 そういえばそうだったな。さっきトイレに行こうとしたとき八神さんから封筒を渡されたんだ。

 まさかあれが給料だったとは……まあ、なんとなくわかってたけど。

 

「ならいいか。帰るぞイツキ」

「へいへい。ではまたの機会に」

 

 とりあえず必要最低限の挨拶を済ませ、八神家から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、給料も確かに受け取ったことだし暴れに行くか」

「たまには普通に帰れよ」

「だが断る」

 

 帰り途中、姉さんがいつものように暴れに行こうとしていた。

 少しは休めよ。どんだけタフなんだよあんた。

 

「俺には関係ないから別にいいけど」

「あっそ。じゃあな」

 

 そう一言だけ告げると、姉さんはどこかへと走り去っていった。

 相変わらず速いな。もう見えなくなったぞ。

 

「さて、俺も帰るかな」

 

 今日は晩飯なんだろうな。スミ姉も久々に帰ってくるらしいし。

 

 

 

 




 バトル回ではないのでさすがに詳しい戦闘描写までは書けなかった。

《今回のNG》TAKE 99

「――H、I、J、K、L、M、N!」
「「そこはSだろ!」」
「ふぇぇ!? なんで合ってるのに怒られるんですかぁ~!?」


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