「来てしまった……」
〈ついに来ちゃいましたね〉
「久しぶりねースミレちゃん」
「メガーヌこそ久しぶり」
約四時間後。目的地である無人世界カルナージには無事に到着した。否、してしまった。
挨拶は一通りいや、適当に済ませた。顔見知りばっかだし。
「なんですと!? 1.5㎝も伸びたのに!」
ふとそんな声が聞こえる。声の主はキャロのようだ。ていうか――
「――1.5㎝
「そ、そんなぁ!?」
現実とは残酷なものだ。どんなに誤魔化しても意味がないほどに。
ちなみにアタシもそこまで伸びてはいない。かといって伸ばすつもりもない。
「アインハルト・ストラトスです」
「あ、うん。よろしくね、アインハルト」
しかし切り替えは早いんだな。ん? あれは……なんだガリューか。
「!?」
「あー! 大丈夫ですアインハルトさん!」
「あの子は……」
ストラトスがいきなり構える。まあ、初めてアイツを見れば大体はそういう反応をするわな。
ちなみにアタシは初対面で攻撃を仕掛けている。なんせ殺り甲斐がありそうだったんでね。
「私の召喚獣で大事な家族。ガリューって言うの」
「し、失礼しました!」
「わたしも最初はびっくりしました」
あ、そういやコイツの主はルーテシアだったな。ていうか忘れてた。
ちなみにイツキはというと姉貴にもみくちゃにされている。どうりで静かなわけだ。
「サツキ。お前も来るだろ?」
「何が?」
「……話聞いとけよ。川遊びだ」
川遊び……ああ、あの水をぶった斬るやつか。
「また割っていいのか?」
「………………やり過ぎるなよ?」
「…………」
〈前回の記録を更新できるといいですね〉
ノーヴェの忠告に思わず目を逸らしてしまう。今回は何分ほど持つだろうか。
そしてラト、余計なことを言うな。ノーヴェの警戒心が強まったじゃねえか。
「じゃ、着替えてからアスレチック前に集合しよう!」
「「「「はいっ!」」」」
「ちょっと待て。なぜ姉貴がそっちにいる?」
「おやおや? もしかしてサツキちゃん、私がいなくて寂しいとか~?」
「死ね」
ちょっとでも気にしたアタシがバカだった。そうだそうだ、姉貴も大人だったな。
でもイツキはどうすんだ? 確かアイツだけ男だろ?
「イツキ。お前はどうすんだよ?」
「川遊びに決まってんだろ。アガルタが俺を待っているんだぞ!?」
だろうな。お前のことだからそう言うと思ってたよ。
もしここで行かないとか言ったらお前は偽物だ。間違いなく。
「水着に着替えてロッジ裏に集合だ。いいな?」
「あいよ」
さてさて、お楽しみの川遊びだ。
「暇だな……」
「お前も泳げばいいじゃんか」
「めんどいからやだ。それにさっき泳いだし」
「撮らなきゃ後悔する……!」
川に来たのはいいがやることがなさすぎる。ちなみに水着は青のビキニだ。今は上着を着ているがな。
あとイツキ。お前はまず鼻血を拭いた方がいいぞ。写真を撮る前に。
「つーかよ、これちょっとキツいぞ……」
「お前、年齢のわりにはどっちかというと大きいもんな」
「!?」
否定はしない。どこが大きいかは察してくれると嬉しい。
イツキ。アタシのキツいって言葉に反応してこっち見んのはやめろ。
「しかもお前、泳ぐのも速くないか?」
「自慢にもなんねえよ。潜水に至っては体をくねらせとけばスピード出るぞ?」
「それであんなにスピードが出せるのはお前だけだ」
魚というか……半魚人だっけか? ああいうのを真似すれば泳ぎは楽勝だ。
体をくねらせて泳ぐやつはエイ○アンでも見れば大体はできる。潜水も結構いけるしな。
ちなみに泳いでる最中にイツキを溺れさせたのは内緒である。
「にしてもよ……アイツらの水着って小学生が着ていいもんなのか?」
「ヴィヴィオの水着はそれなりに珍しいぞ」
ちなみにラトとイツキの愛機であるセラはヴィヴィオのデバイスであるクリスが持ってくれている。
偉いぞクリス。少なくともイツキよりは偉いぞ。
「ビキニにスク水に……後はなんだっけか」
「ワンピースタイプだよ」
まずヴィヴィオ。アタシと同じビキニタイプを着ている。色は明るい方だ。
次にティミル。ぶっちゃけコイツが一番小学生らしい水着を着ているぞ。つまりスク水。
その次にウェズリー。イツキの言ったワンピースタイプ、しかもフリフリ付きのな。
ルーテシアもタイプ的にはウェズリーと同じやつのようだ。多少違った点はあるけど。
最後に今上がってきたストラトス。黒のビキニタイプ……ブルータス、お前もか。
「ビキニ率高くねえか?」
「それがいいんだよ……!」
「ノーヴェ。この変態を殺してもよいか?」
「やめとけ」
ちくしょうめ。
「ヴィヴィオ、リオ、コロナ! ちょっと“水斬り”やってみてくれよ!」
「「「はぁ――い!」」」
「このときを待っていた!」
〈待たなくていいです〉
「ヤバイ。ちょっと輸血しよ……」
なんてことを言うんだお前は。川遊びなんてぶっちゃけ水斬りのためだけにやってるんだよ。
ていうかイツキ。お前って奴は……こんなときにまで輸血すんのかよ。
お、始まった始まった。ティミル、ウェズリーが次々と水柱を立てていく。そして――
「――いきますっ!」
最後はヴィヴィオだ。三人の中で一番大きな水柱を立てやがった。音もスゴいのなんの。
「アインハルトもやってみる?」
「――はい」
「……お前らはやらないのか?」
「アタシは最後だ」
「写真を撮るのに忙しい」
「サツキさんの場合は毎回ド派手ですからね。あとイツキはアウトだよ」
まあ、ルーテシアの言う通りではある。そんで毎回やり過ぎて説教を食らうのだ。
それとイツキ。お前の場合、撮影よりも輸血の方が忙しいだろ。
「…………!」
ストラトスの方を見てみると、相応の轟音と共に大きな水柱が立っていた。
「天然シャワー!」
「水柱、五メートルくらい上がりましたよ!」
「……あれ?」
しかし当の本人は納得がいってないようだ。どっかでミスったか?
「お前のはちょっと初速が速すぎるんだな」
どうやら初速に誤差が生じていたらしい。
少しそれらしい説明をすると、ノーヴェはお手本と言わんばかりに脚で水斬りを披露してみせた。おおう、ちょっと水底が見えたぞ。
「――こうなる」
それはお前だからだ。思わずそういうツッコミを入れたくなった。
だが説明の最中にそれを入れるのは野暮というものである。
ストラトスはさっきとは違い脱力した構えをとる。そして拳を突き出すと再び水柱が立った。
んー、最初よりは進んだっぽい。
「そんじゃ、最後はサツキだな」
「やっと順番が回ってきたか」
待ちかねたぞ。首を鳴らしながら下半身だけ水に浸かり、ストラトスのそれによく似た構えをとる。
周りを見るといつもの三人組は目を輝かせながら、ストラトスは真剣な表情でこっちを見ていた。
なんか期待されているな。ならその期待に応えてあげようじゃないの。
「……っ!」
アタシは拳や脚ではなく掌底を突き出した。
すると今までで一番の水柱が立っただけでなく、川が文字通り真っ二つになった。
さて、後は――
「――これが何分持つかな?」
「だからやり過ぎるなつったろ!」
「っ……痛えなこんちくしょう!」
何も本気で叩くことはねえだろ。地味に響いたぞ。
「スゴ~い! これどうなってるのかな?」
「道ができちゃってる!」
「本当に凄いです……」
ガキ共は一時的にできた道ではしゃいでいた。よく見ればあのストラトスまでいる。
喜んでもらえて何よりだ。イツキもあれぐらい子供だったら悩むことなかったのにな。
「どうすんだよこれ……」
「そのうち元に戻るだろ」
「そのうちってお前な……」
「川ってホントに真っ二つになるんだな……」
ホントにそのうちとしか言いようがない。前回は三分ほど持ったけどな。
頭を抱えるノーヴェの隣では、イツキが珍しく興奮していた。
〈マスター、三分経ちました。記録更新です〉
「マジか。だとしたら……」
五分いけるか? 思わずそんな希望を抱いてしまう。
「あー!」
「道がなくなっていく~!」
「え? え?」
しかし、それは儚い夢となった。川が少しずつ元の形を取り戻し始めたのだ。
ガキ共も結構慌てている。ストラトスに至っては少し混乱してやがるぞ。
仕方ないな、一時的なものだったし。
「ラト、記録は?」
〈約四分半です〉
五分とまではいかなかったか。それでも新記録であることに変わりはない。
「アタシは戻るよ」
「おう。言い訳考えとけよ」
「待った姉さん! とりあえず考え直すんだ!」
「死ね」
余計なお世話だ。
それとイツキ、テメエは後でフルボッコだコノヤロー。
「なんか凄い音がしたけど……サツキかな?」
「きっとサツキちゃんだね」
「川を真っ二つにでもしたんだろうな」
「ところで皆は大丈夫ー?」
「だ、大丈夫でーすっ!!」
「バ……バテてなんかいないよ……?」
「倒れた状態で言われても説得力皆無だわ」
「なんであんたは涼しい顔してんのよ……!」
「お前らとはモノが違うんだよ」
《緒方サツキについて》
雷帝
「扱いが雑とはいえジークの面倒を見てくれることには感謝していますわ…………羨ましい」
砲撃番長
「中等科からの腐れ縁っつーか……まあ、友達だ。本物の不良だって知ったときにはびっくりしたけどな」
不良シスター
「えーっと……う、トラウマが――」
※頭を抱えながら倒れてしまったので取材は断念せざるを得なかった。
アホ○ア
「美味しい料理を作ってくれるええ人や。あとは………………(ポッ)」
天瞳流師範代
「そうだね……活発すぎるかな。試合ではいつもやり過ぎている。対戦相手の安否が気になるよ」
魔女っ子
「……決して良い人ではない。でも嫌いになれない。そんな感じ」