「――死ぬぞ」
「「「っ!?」」」
アタシのその一言で試合は始まった。ストラトスはかなり警戒しながら構えている――いや、アタシの殺気に押されたという方が正しいか?
どうやら今の宣言がかなり効いたらしい。嘘はついていないがな。
イツキとヴィヴィオも蛇に睨まれた蛙のような表情になっている。そこまで響いたのかよ。
「どうしたよ? こねえのか?」
「……………………参ります」
返事を返すまでに結構間が空いたな。ちなみにアタシは構えていない。だってそんな必要ないし。
さて、どう暴れようかな? いつも通りにいきたいところだがそれじゃコイツ相手だとおもしろくない。
たまにはやり方を少しだけ変えてみるか。いい機会だし。
「おっと」
前回同様、気づけば目の前に左拳があった。
アタシはそれを受け流すと同時に左腕を掴み、そのままストラトスに背負い投げをかます。
そして仰向けになったところを思いっきり踏みつけた。
「…………っ!?」
「同じ手が何度も通用するわけねえだろうが」
仰向けになったストラトスの顔を見下ろすように覗き込む。
表情を見る限り一瞬何が起きたのかわからなかったって感じだな。
ま、悪く思うなよ。手を抜かないって約束した以上は容赦しねえ。
「っ……」
意外と効いたらしく、ストラトスは立ち上がりつつもその整った顔を歪めていた。
「なんだ。そんなもんか?」
答えはしなかったが、雰囲気から察するに否定の意を示しているな。
少し距離を取ってから再び構え、今度は
だがな、それは今のアタシに言わせれば攻撃してくださいと言っているようなものだ。
「――このっ!」
ストラトスの眼前に一瞬で詰め寄り、しゃがみ込んでその体勢から奴の顔面目掛けて右脚による回し横蹴りを繰り出す。
完全に意表をつかれたのか、ストラトスは反応すらできずモロに食らってしまった。
手を抜くことをやめたアタシは他の連中ほど優しくはねえ。一方的になったとしても決着が付くまで気を緩めることはないだろう。
ストラトスはなんとか踏ん張っていた。おおう、痛そうに右の頬を押さえてら。
そしてすぐにその場で構えた。どうやら距離を取ることはやめたらしい。
「……っ!」
お次は拳……殴り合いをご所望か。しかし――
「…………」
それに応えるようなことはせず両手を交互に使って拳を受け流す。
右、左、右、左。こんな感じで拳のラッシュを打ち込んできたが、それらも受け流すことにより回避した。
それでも数発ほど顔や胴体にもらってしまったが、その分に関しては正面から受けきった。
それが気に入らなかったのか、ストラトスは左蹴りを入れてきた。アタシはこれを受け止め――
「あーらよっとぉ!」
――そのままジャイアントスイングで投げ飛ばす。木に激突するとまではいかなかったようで、受け身を取って着地していた。
チッ、ぶつかっていればいいものを。根性だけはそれなりにあるってか。
「まだやんのか?」
「はい……。このままじゃ終われません……!」
少しふらつきながらも立ち上がったストラトスは、再び歩法からの拳による一撃をアタシの顔面に打ち込んできた。
アタシはそれを難なく受けきる。おおう、ほんの少しだけ効いたな。ほんの少し、だけど。
「ふんがっ!」
今度はストラトスが逃げられないように両手で肩を押さえ、頭突きを脳天にブチかます。
こればかりはストラトスにとっても予想以上の威力だったらしく、またしても仰向けに倒れた。
「はぁ……はぁ……」
しかし、それでも踏ん張りながら立ち上がった。マジかよ。
ちなみに今の頭突きはかつてハリーやジークですら一撃でダウンさせたものだ。
「おいおい、ちょっとやる気を出しただけでこれかよ?」
「…………っ!」
ストラトスは一瞬だけ悔しそうな表情になるも、すぐにいつもの無表情に戻って構えた。
ここまでやられてまだ闘志を失ってねえとは少しおもしれーな。
「はあぁぁっ!!」
なんか叫びながら右拳を懐に打ち込んできたが、それを避けずにあえて食らう。
それをチャンスとでも思ったのか、次に左拳を顔面に打ち込み、脇腹に右蹴りを入れてきた。
アタシはそれを待ってました! と言わんばかりに受け止め、右のエルボーを受け止めた右脚に二発ほどブチ込む。
右脚をやられたストラトスは体勢を崩すもなんとか踏ん張っていたが、アタシがそこに前蹴りを入れると見事に倒れた。
「オラ立てよゴラァ」
当然休ませはしない。アタシはストラトスを無理やり立たせてから顔面に右の肘打ちを二発ほど打ち込み、頭突きをかましてから前蹴りを入れる。
今度は倒れずに踏ん張ったが、アタシにとっては都合がいい。
再びストラトスの拳が二発も懐に打ち込まれたが、アタシはそれを意に介さない。
ふらついているところを見逃さず、両手で奴の頭を固定し、しゃがませてから横へ吹っ飛ぶように膝蹴りをかました。
「それで終わりか? あァ?」
倒れたストラトスを踏みつけようとするも、ほとんどかわされてしまった。
さすがに全部は食らわなかったか。ストラトスは回避した勢いで立ち上がった。
とはいえ、フラフラなのは変わらないが。すると奴は体勢を整えると同時に魔法陣を展開した。
「覇王――」
またあの技か。以前は気が緩んでいたから脳震盪を起こすはめになったが……もうしくじらねえ。
「――断空拳!」
そんなことを考えていると、おそらく必殺であろう一撃が右の拳として繰り出された。
だが、アタシはこれを……
「っ!」
あえて避けずに受けた。ご丁寧に顔面かよ。
「サツキさん!?」
今まで全く喋らなかったヴィヴィオが初めて声を発した。
そりゃそうだわ。防御もなしに必殺の拳が顔面にぶつけられているのだから。
ただし、それをぶつけたストラトス本人は違う意味で驚いていた。
「…………え……?」
「うん、良い拳持ってんじゃねえか」
なぜならアタシは平然としていたからだ。顔がそこそこ痛むから効かなかったわけじゃない。
だけどアタシは倒れるどころかふらつきすらしなかった。つまりはそういうことだ。
攻撃の受け方を変えればこんなもんよ。普段はあんまりしないんだけどな。
「けどな――それじゃアタシには勝てねえよ」
ストラトスの懐に膝蹴りを入れ、前屈みになったところで胴辺りを両腕でクラッチし、奴の体を反転させながら頭上まで跳ね上げ――
「くたばれオラァ!」
――足下に思いっきり投げる形で叩きつけた。
《緒方サツキの良いところ》
雷帝
「……良いところ……?」
砲撃番長
「……良いところ……?」
不良シスター
「良いところ……え? 良いところ?」
アホ○ア
「美味しい料理を作ってくれるところやな。あとは合鍵を(無断で)くれたり、お風呂を(無断で)貸してくれたり、(無断で)泊めてくれたり、(無断で)一緒に寝てくれたり……こんなとこやね」
※サツキの人権はどこにもありません。
天瞳流師範代
「ないね(笑)」
魔女っ子
「…………これから探す。だから大丈夫」